魔法少女?ノ魔女?裁判 作:まのさば脳焼き人間
今回、殺人事件から捜査パート。裁判パート終わりまで一気に駆け抜けます。
そして炙りビン要素はほとんどありません。期待してた方からの落胆の声が聞こえてきそうです。
炙りビンじゃなきゃ嫌だという方はブラウザバッグをお願いします。
では本編どうぞ。
監房で時間を潰していると、俄かに懲罰房が騒がしくなる。
20時にハンナとアンアンの声。そして21時にハンナとココの声。そしてそのあとすぐにどたどたと騒がしく足音が行きかう音。
(始まったのか......殺人事件......。)
スマホの通知を確認してすぐに、俺はラウンジへと向かっていった。
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「ミリアちゃんが殺されたなんて、それは本当なの......?」
ナノカを除いた全員が集まってすぐ、マーゴがエマたちに詰め寄る。
「本当ですわ。わたくしたちは、見てきましたの。」
「明らかに殺されていたの?」
「それは、そう、かもしれません......。拘束されていましたし、誰かに刺されなければ、あんな風には......。」
「はぁ......そう......ということは、魔女裁判をやる、ということよね。」
「裁判とかマジだるいんだけど。別にさ、あのおっさんが殺されたってどうでもよくね?だってあいつ、裏切り者じゃんよ。」
「黙れよクソ女。」
「んなこと言ってさあ、ヤンキーがやったんじゃないの~?気球壊されてめっっちゃキレてたよね?」
「マジで燃やすぞ。」
そうして集まった子たちが誰が犯人かを探るように会話をする。
そこにゴクチョーがやってきた。
ゴクチョーからは、原作と同じような内容が語られた。
・今夜0時に【魔女裁判】を開廷する。
・捜査時間は1時間半。それまでに今いる囚人から殺人犯を特定すること。
・外出禁止時間ではあれど捜査は出入り自由とする。
そしてマーゴからは「捜査は単独で行うように」と提案された。
そして、各々捜査を開始するために行動を開始するのだった。
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「なんで誰もここに来ねえんだろうな......。」
俺はいの一番で焼却炉に来ていた。
もし、アンアンが直接殺したのならば、アンアンの衣服にはミリアの返り血がべっとりと付着しているはずだ。
ダストシュートの稼働は月曜15時。アンアンが夜にミリアの監房を訪れていた場合、その衣服の処理は出来なかったはずだ。
(女の子の下着とか服とか目にしちゃうけど......。)
俺は出来る限り下着は見ないようにしながら、みんなの衣服を焼却炉に並べ始めた。
そして......。
(なるほど......証拠としてかなり弱いわけだ。)
確かにそこには返り血がべっとりついているアンアンの衣服があった。
しかし、滴るように浴びているからか......他の衣服も同様に返り血でべっとりと濡れていた。
よく目をこらせば、アンアンの衣服の方が血で濡れているように見えるだろう。ただ、度合いで見れば比較的な程度で明確にアンアンがやったことを示す証拠になりえなかった。
(時間の無駄だったな......いや。逆に新たな証拠としての可能性がないだけ、俺が原作に介入する隙間がないってことなんじゃないか?)
俺は安堵とも落胆ともいえる気持ちを抱えたまま、衣服を焼却炉に戻していった。
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ゴーン、ゴーン。
そうこうしているうちに鐘の音が鳴り響いた。
俺はすぐに裁判所まで向かう。
(今回は特に捜査中にバッドエンドはなかったしな。今回も順当に行けばエマが犯人を特定するだろう。原作介入する要素なんてほとんどないはずだ。)
しかし......どこか不安になってしまう。本当に原作通りに進んでいるのだろうか?
何か......何か致命的な間違いを犯しているような......。
(いや......今更だ。何人も少女たちを見殺しにしている時点で俺はもう地獄行きが確定しているんだ。それに......原作通り進めば1周目はどうせみんな死ぬ運命なんだ。これは3周目の布石....3周目の布石なんだ。)
俺はそう自分に言い聞かせながら、裁判所へと歩を進めた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
裁判所の中には、エマとナノカ以外が揃っていた。
しばらく待つとエマと一緒にナノカも入ってくる。
開口一番ナノカに牙をむいたのはアリサだった。
「てめえ...どの面下げてここにやってきてんだよ。」
「私がしたことについては何も言い訳しないわ。ただ、佐伯ミリア殺害の魔女裁判には出るべきだと思ったから。」
「黒部ナノカさん、今までどこにいたんですか。ずいぶん探したんですよ。まあ、今は魔女裁判が優先ですから、黒部ナノカさんの処分については後で......。
魔女裁判のルールについては、皆さんもう理解されていますよね?」
それにみんな同意していく。
いよいよ始まる。
「それでは、魔女裁判開廷です!」
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(また......エマの検討違いの反論劇が始まるのか.......原作介入は本当にしたくないからあんまり目立ちたくないんだけどな......。)
少女たちの議論を聞きながら俺は物思いに耽る。前回のノア殺害の魔女裁判はスムーズとは言えずともゲーム中だとそこまで多く間違いをしているような内容じゃなかった。
(つまり、物語上では1時間以内に終わってる描写でもゲームだとかなり時間がかかっていて、それが現実で起こると1時間じゃ収まらないってことになるのか?)
??????
(は?......じゃあなんだ?どう足掻いても魔女を決める議論は1時間で決めるのは土台無理じゃないのか?)
俺がその考えに至る中、議論が着々と進んでいく。
パリーンッ!
・
・
・
パリーンッ!
・
・
・
パリー
・
・
・
パリー
・
・
・
パリ
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・
・
パリ
・
・
・
パ
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・
・
パ
・
・
・
p
・
・
・
p
・
・
・
......え?
第一回裁判でポンコツな裁判をしていたあのエマが、ほとんど正解の反論をしている。
......何か悪い物でも食べたか?
(いや......これが正常なんだ。俺が関わらない方が物語はうまく進むんだ......。)
そして、議論がゴクチョーさえも交えた内容へと移ろっていく。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「すでにどの証拠も議論しつくした!これ以上話したとしても、【誰も新たな情報】など出せまい!これ以上の議論など無意味なのだ!...むしろこのような言いがかりでわがはいを処刑しようとする桜羽エマ......やつにこそ【投票すべき】である!」
「なんだかそんな気もしてきましたね!エマさん、投票しちゃってもいいですか?」
「良くないよ!?」
???
あれ???
なんだか様子がおかしいな???
「えっと...えっと......これも話した......これも話した......。」
「エマさん......。もうほとんどの証拠品は議論しつくしたと思います......。だからもし【新しい見解】が示せるなら、それは議論の始めから変わった状況......。そこに、私たちの知らない事実があるかもしれません!」
「うん......!分かったよ、メルルちゃん......!でも......新たに見解を示せる人って......。」
「......どうした?もう話す内容がないなら、魔女として大人しく投票されて処刑されてしまえ......みな、【エマに投票しろ!】。」
「そ...そんな......ど、どうしよう......助けて、ルナちゃん。」
は???
なんでこんな時に俺の名前を???
これはお前が解決するんだろう?原作じゃそうだったじゃないか。
”原作は原作。ここは現実で起きている魔女裁判......もし、ここであなたが助けなければ......エマちゃんはどうなっちゃうのかしらね......。処刑されちゃうのかしら?”
うるさいうるさいうるさい。
ただ......ここでエマが死んだら元も子もないのは確か。
時間は......開廷から30分か......ここまでサクサクだったし......仕方ない。助け舟を出すか。
「......まだいくつか......検討できていないことがある。」
「ルナちゃん......。」
「......なんだと?」
「ゴクチョー。お前は途中から裁判にて発言をしている。ここからは、ゴクチョーの......牢屋敷側の管理体制についても交えた議論をしていきたい。犯人...魔女探しに協力してくれるか?」
「......なるほど?フクロウ使いの荒い人ですねぇ......。」
「......黒幕ほどじゃないさ。」
「何か言いましたか?」
「いや何も......。みんなも、議論にゴクチョーを入れるけど、問題ないよな?」
「......ウチはいいぜ。もちろん他の奴らも文句ねえよな。」
「......ふん......!」
ここから更に、ゴクチョーの...牢屋敷側の意見を取り入れながら議論が進んでいく。
・
・
・
「みなさんに配られるスマホは、予め全員が統一された規格となるようにしてますし、かなり多くの機能を持たせているんですよ。その分、初期化には時間がかかりますが、みなさんの手元に配られるのは工場出荷状態になるようにしています。なので、誰かひとりのスマホに【特別な機能】がついていたとかはないはずです。それとも何か【不具合】でも?」
パリーンッ!
「......ちょっと待って。それってこれまでの話と、矛盾があると思うんだけど......。」
そろそろ......裁判も終盤になるな。.......時間は残り10分。
なるほど......エマがスムーズな推理をすれば時間内に間に合うのか.......。
神様もなかなか酷なことをする。いや、この場合だと牢屋敷側か......。
もしかして、エマは......俺がいない方が原作通りの推理力を発揮するんじゃないか?
じゃあ...原作のまのさばと...今の牢屋敷。どこに違いがあるんだ?
どうして俺はここにいるんだ???
どうして俺は原作と関わっているんだ???
答えをいくら考えたところで何も出せない。そう考えている間にも展開は進み......エマがミリアに電話をかけていた。
「......きゃあああーーー!!」
「この声......!」
「佐伯ミリアの......悲鳴。」
「ハンナさんが録音した物と、同じ声でしたね!」
「どうして......アンアンさんから......!」
「......あ......これ......は......。」
「......あ~、もう~......。こういうびっくり系のホラー、おじさん苦手なんだよね~。って録音してない!?も~、恥ずかしいなぁ。そんなのわざわざ送らなくてもいいって、アンアンちゃ......。」
「......もう......やめて......!!」
エマが真実を告げる。
「......今のは、ミリアちゃんのスマホIDに電話をかけたんだ。つまり......今アンアンちゃんが持ってるのはミリアちゃんのスマホっていう事だよ。佐伯ミリアちゃんを殺した犯人は、キミだ。夏目アンアンちゃん!!」
・
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・
「わがはいの、大事な友人との......最後の思い出を......。消せるわけ......ないだろう。」
そうして観念したのか、アンアンがミリア殺害の経緯を独白していく。
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魔女を選出する投票は...全員一致でアンアンになった。アンアンはエマに投票していた。
みな、彼女の魔法の恐ろしさを体感しながら、早く処刑しろと急かす。
「業務時間外ですので、巻きで進行しましょう。大変申し訳ないのですが、皆さん。さっさと処刑ボタンを押してください。」
そして、スマホの画面に表示される処刑のボタン。俺はそれを、アンアンとの思い出をよぎらせながら押し続けた。
(少なくとも、アンアンは俺に気を許していたように思う。それが、魔女因子によって誰かを殺さなければならなくなるまで......殺意が抑えきれなくなるまで感情が増幅された。一見普通の気弱な少女に見えても...魔女因子はそれを全て覆いつくす。)
綱渡りのような原作ルート。俺という荷物を増やした状態で渡り切ることができるのだろうか......。
いや、渡り切るしかないんだ。
俺の決意が固まる頃には、処刑ボタンのゲージは満タンになった。
”原作というものを一番に信じて全く疑わずに行動する。まるで質の悪い宗教ね。原作という神のみを信奉するあなたは、その神が存在しないと知った時......どんな反応をするのかしら。楽しみね。”
その声は聞こえないふりをした。
次回更新は11月18日になります。
次回
第19話「絶望はいつも汝のすぐそばに」