魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第19話「絶望はいつも汝のすぐそばに」

アンアンの処刑は滞りなく進んでいく。

 

「ミリアちゃんじゃない......。アンアンちゃんが殺したかったのは、ボク、だったんだね......。」

「?何をいうのだ?お前は、佐伯ミリアの中身だろう......?」

 

 

そこから明かされるのは、アンアンがなぜミリアを殺したのか......。なぜミリアがエマに入れ替わったと嘘をついたのかが独白された。

 

 

「ボクが...ボクが死ねば......。」

 

俺はエマにかけよって後ろから抱きしめるようにその両耳と両目を塞いだ。

アンアンの魔法によって自殺しようとする可能性があるから、俺はそうならないように声をかける。

 

「お前が気にする必要はない。お前は悪いことはしていないんだから。」

「そうですよ!殺人を犯した魔女はアンアンさんです。」

「エマさんは何も悪くありませんわ!」

「教えてください。気になるんですよ。なんでエマさんを殺そうと思ったんですか?」

「わがはいの周りには今まで誰もいなかった。でもここで、初めて誰かがそばにいてくれた。話さなくても、友達になってくれた......!」

「満たされてはいけないなんて、エゴでしかないわね。だってあなた、ここでの暮らしに満たされていたんでしょう?あなたは幸せな暮らしを手に入れたくて、身勝手に佐伯ミリアを殺したのよ。それが事実なの。いい加減、認めなさい。」

 

そうして、アンアンが本当に絶望したような表情を見せる。

 

「そう、か......。わがはいは、幸せだったのか。満たされたくて、またやってしまったのか......。」

 

アンアンの目からはとめどない涙があふれていた。泣きじゃくるような涙ではなく、自身の失敗を取り返しのつかないところで気づいてしまったかのような涙だった。

 

「......幸せを願って、ごめんなさい......。そして......ルナ、お前のことが......いや、これは呪いになってしまうな。わがはいの中に秘めておこう。......ルナ、今までありがとう。」

 

そうして首にナイフをあてがい、そのまま刃を食い込ませる。

悶え苦しむ絶叫が裁判所に響き渡る。

 

そうして、魔法が強くなっているはずだとマーゴが言い、全員が耳を塞ぐ。

俺もエマの耳を塞いでいたけれど、エマはやんわりとその手をどけた。

みんながエマに耳を塞ぐよう言うものの、エマは首を左右に振った。

 

「アンアンちゃんは......もうそんなことはしないよ。」

 

そして、しばらくすると、アンアンの体がぼこぼこと変形していき、それに合わせて舞台のカーテンも閉じられていく。

 

「これにて終幕になりますので、彼女は永遠の牢獄へと閉じ込めます。」

 

(アンアンは......最後に俺に何を言おうとしたんだろうな。もう今は聞くことなんて出来なくなったけれど。)

 

俺は、アンアンが最後に考えていたことについて思いを巡らせる。

きっと、「今まで迷惑をかけた」とかなのかな。俺はそんなこと思っちゃいないのに。

 

”私が言うのも野暮ってものよねぇ。じれったいわ、ちょっとやらしい雰囲気......にしようにも当人はなれはてちゃったし。”

 

お前のような奴にアンアンの気持ちが分かるかよ。

 

 

全員が悲痛な面持ちで裁判所を出ていく。エマは全速力でどこかへと向かって行った。

 

「ちょっといい?」

 

俺も自分の房に戻ろうとした時、ナノカに声をかけられた。

 

「明日、時間あるかしら?朝食の時間...ここに来てほしいのだけれど。」

 

そう言って場所を示すナノカ......。

(ここで断る理由もない...よな?特に原作になかったイベントだし、原作乖離の予兆かもしれないから、踏み込んどいたほうがいいよな。)

 

「ああ。分かった。朝食の時間...そこに行けばいいんだな。」

 

 

そう返答すると、ナノカはどこかへと向かっていった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「約束の時間に......約束の場所......もしかして、俺に触れようと画策しているんじゃ......。」

「その心配はないわ。安心して......。」

 

呟いた瞬間、ナノカが現れた。少し驚いたものの、突然触れられるよりはマシだと思い、ナノカに向き直る。

 

「それで?どうして俺をここに呼び出したんだ?」

「......昨日、佐伯ミリアの遺体に触れたわ。それは昨日の裁判でも話したことではあるんだけど......あなたは昨日の昼、佐伯ミリアと会って話していたわね。」

「......ああ。」

「......私は、嘘をつくのがとても苦手なようね。昨日の裁判で実感したわ。だから......取り繕うのはもうやめにするわ。」

「......???」

 

ナノカは大きな溜息をついたかのようにつぶやいた。

 

俺は猛烈に嫌な予感がする。何か......前提から崩れるような気配がひしひしと伝わってきた。

 

 

 

「あなたの魔法は【???】。あなたの語る未来予知は姉の魔法を騙ったもの。あなたには前世の記憶があって、私たちのことも物語として知っていた。」

 

 

 

「......は?」

 

 

は?

 

 

は???

 

 

 

「以前。サンルームが様変わりした日に図書館の解読をしていたわね。その時、あなたはうたた寝をしていて......私はあなたに容易に触れることが出来たの。」

「...あの時......か。」

「続けるわね。その物語では、魔女裁判が開廷される殺人事件の他に、私たちが不意に死ぬ運命がいくつもあった。あなたは私たちがそういった事故死が起きないように行動を起こしていた。」

「......うっ......。」

「......大丈夫?」

 

吐き気が込み上げてくる。その様子にナノカは心配そうに声をかけてくる。

 

「だ......大丈夫...続けて。」

「そう......。あなたは自分が本来いない物語を、物語通りに進めようとしていた。これまでの行動はその裏付けで合っているかしら......。」

「......あ、あぁ......。」

「なら......あなたはこの黒幕を知っているということよね?」

「......知っているが、教えられない。」

「そうよね......あなたに触れても、その物語についての詳しい情報は知ることは出来なかったわ。」

「......そうか......。」

「その物語の結末は......どうなるのかしら......。」

「教えられるわけ......ないだろう!」

「......そう、ごめんなさい。でも......あなたの反応である程度どういう結末なのか予想はついたわ。その結末は、どうしようもない絶望のバッドエンドか......もしくはかなり難易度の高いエンディングになるのか...。少なくとも、殺人と魔女裁判を見過ごしている時点で、あなたはその物語に関わる気はないのだと推測できるわ......。」

「......俺...俺は......。」

「あなたの性格を考えて、少女たちを見殺しにしてきた理由はいくつか思い浮かぶわ。助けられなかったのか......助けない方がよかったのか......。」

「......うっ......おぇ......。」

 

吐き気が込み上げてきて、思わずその場で吐いてしまう。ナノカは心配してくれているものの、俺はそれどころじゃなかった。

今まで見ないようにしていた。死ぬと分かっているのにその子を助けなかった傍観者だと言われているような...いや、事実言われているのかもしれない。

 

自身の手を見てみると、爪が伸びているような気がした。

 

 

「わ...悪い。続けてくれ......。」

「そ......そう。助けない理由については、私の方でもなんとなく想像がついてるわ。魔女因子の殺意がある以上......目の前の命を救っても、また別の命が狙われるのは想像に難くないわ。いえ...私が言いたいのはそういう事ではなくて......。

 

佐伯ミリアに言っていたことは本当のことなの?」

 

「......んぇ?」

 

「桜羽エマが...真相にたどりつくべきだと。数多の死を乗り越えた先で真相にたどり着くことこそが今の状況を変えられる可能性があると......。」

 

もう取り繕う必要もないくらいに赤裸々に暴露されていた。

 

目の前がぐらぐらと揺れるような感覚がある。

今......立っているのか倒れているのかさえ感覚がなくなっている。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

【黒部ナノカ視点】

 

「倒れてしまったわね......。」

 

青い顔をしたまま、彼は地面に倒れこんでしまっていた。

少し......詰めすぎたのかもしれないと後悔する。

 

別に......彼が全て助けられるとは露ほども思っていない。彼だって、本来ここに来たくて来ているわけじゃないのだから。

 

私はよく知っている。誰かを助けるということは......自分を含め、誰かを助けないということ......。

 

結末を知っているうえで、誰かを身勝手に助けるということは......その結末で助かる予定だった人が助けられない運命にあってしまうかもしれないということ。

 

リスクに対するリターンが少ない......いや、誰かを助けたところで、その子の殺人衝動を何とかしない限り、次のターゲットは自分を含め、他の子になるかもしれない。そうなると、そのリターンでさえ意味がないものになってしまう。

 

下手なことをせずに物語通りに進めることが彼の望みなのかもしれない。

 

(黒幕についてもう少し詳しく聞きたかったけれど......私が聞いてもはぐらかすそうとするだけ。......自分の実力で見つけるしか方法はなさそうね。)

 

 

私は彼を牢屋敷の近くまで移動させた後、すぐさま別の場所に移動した。

 

「......私は、何を犠牲にしてでも......黒幕にたどり着いて復讐を完遂する。でも......黒幕を知っているはずの彼は......どうしてまともなまま、ここにいられるんでしょうね......。」

 

”うふふ......歯車のズレる音が聞こえてくるみたい......彼の魔法も強くなったようだし、もう少し彼とお話でもしましょうか。”




次回更新は11月20日になります。

次回
第20話「爆発オチなんてサイテー!」


※追記

アンケート募集します。この他にも1周目終了時点で書いてほしいお話ありましたら感想欄で感想書いたのちに書いてください。

2周目以降のお話や、3周目以降は募集してません。

1周目終了後に書く話

  • もう我慢できん!早く2周目に行け!
  • 1周目のIF世界線(ダイジェスト気味)
  • 姉が牢屋敷に行った世界線(1周目準拠)
  • ルナの処刑シーン
  • ルナの中学時代
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