魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第25話「俺には何も変えられない」

俺は捜査の始め、シェリーと二人きりで会話していた。

 

「で?......話ってなんだ?」

「単刀直入に聞きます。あなたの未来予知は牢屋敷のシステムで殺されるときに発動する......と嘘をついているのは本当ですか?」

「......シェリーなら......いや、俺の行動があまりにも迂闊だったのかな。ほとんどの人にバレてそうだな......。」

「隠すならもう少しバレないようにしませんと。」

「......そう......だな。で?そうだったとして、どうしてその話を今したんだ?」

「いえ、今回の裁判......私が犯人です。」

「......。」

「驚かないんですね。やっぱり未来予知自体は嘘じゃないということですね。」

「......何が言いたい?」

「今回の殺人事件。私はハンナさんから完全犯罪を目指すようにお願いされました。でも、多分あなたには私が犯人だと筒抜けだと思うんです。それに私、多分処刑されても魔女になれません。なんとなくわかるんです。」

「だから先んじて未来予知が発動する俺に言って裁判で釘を刺しておこうってことか。」

 

シェリーは首を左右に振る。

 

「どうしてあなたが今回の殺人で疑われているのか、何が起きているのかはわかりません。でも、予想することは出来るんです。」

「......。」

「あなたの未来予知は、未来予知というより......運命予知だと、私は思ってます。」

「運命......予知。」

「あなたは牢屋敷の呪いだろうと、殺人だろうと......その人の死の運命を垣間見てしまうんじゃないでしょうか?だからレイアさんの殺人の時もノアさんの部屋を撮影したり、一回目の裁判でノアさんの死んだ状況から魔法の検討を付けたり、誰が怪しいかわかってきたので、残り10分で推理が出来たんです。」

「それだと、俺がヒロやノア、ミリアを見殺しにしたんじゃないのか?俺はそんなに冷酷な人間に思われていたのか。」

「いえ、2回目までの裁判とハンナさんの様子を見て、この牢屋敷そのものが魔女因子を強くさせることを目的としているように感じます。さしずめ、私たちを魔女にするための家畜小屋でしょうか?」

「......酷い表現だな。」

「はい。そして、そんな牢屋敷だからこそ、あなたは初日から私たちの命運が見えていたんです。普通に生きてたら、ほとんどの人が老衰で往生しますからね。あなたの魔法でも悲惨なものを見ることは少なかったと思います。初日の牢屋敷で、あなたはラウンジにきてからずっと目を閉じていました。」

「それでも、そのときヒロを助けない理由はないはずだが。」

「あなたが介入して助かる命であれば、あなたは自分の命さえ差し出して助ける人だと私は思います。ナノカさんに撃たれかけたミリアさんの時がそうでしたから。ヒロさんの時は、あなたが命を差し出しても助けられなかったから見殺しにするしかなかった。たらればの話にはなってしまいますが。」

 

要領を得ないシェリーに答えを急かすように俺は聞く。

 

「それが今回の俺が犯人と疑われている状況にどうつながる。」

「もしかして、あなたは嫌になったんじゃないでしょうか?ずっと私たちの死に様を見続けてしまうことに対して。それで、私を生かして自分を処刑させようとしたんじゃないでしょうか?」

「なら、それでいいじゃねえか。お前はハンナから完全犯罪をしてくれとお願いされている。俺は犯人だと自分から進言している。利害関係は一致してると思うが。」

 

「それでいいかどうかは......少し考えさせてください。裁判が始まる頃には答えを出します。」

 

そうしてシェリーとの会話が終わった。俺が原作から踏み外すための第一歩。シェリーなら賛成してくれると思っていた。

 

思いこんでいた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

議論が終わり、魔女を選出する投票は俺以外、シェリー含めて全員がシェリーへと投票していた。俺は俺自身に投票していた。

 

「ざけんなよ......なんで自分から処刑されに行くんだよ......俺が魔女だっていえばお前は処刑されずにすんだのに......」

「ふざけてんのはおめぇだ天音。なんで橘を庇ったりしたんだよ。」

「そうよ......黒幕だなんて言って、まるで魔女として処刑されようとしてたみたいじゃない。」

「あーもういいじゃん......そいつも、シェリーもまとめて処刑しちまおうぜ。」

 

ゴクチョーが疲れたような口調で言葉を発する。

 

「いやぁ~仕事を増やしたくないんですよねぇ~。今回は一人だけ処刑で勘弁してもらえませんか?処刑台の調子も悪いので。次回同じことが起きたら2人とも処刑ということで。」

「まぁ、今回は私しか犯行は行っていないので......ルナさんは関係ありません。どうして私の代わりに処刑される流れにしたかったのかは、後で彼に確認してください。」

「シェリーちゃん......どうして......。キミはハンナちゃんを......友達を殺したんだよ!?」

「そんな明るくいいやがって......おめえに心はねえのかよ!?」

「無駄だって。こいつ殺したことに良心の呵責なんて感じちゃいない、心のないバケモンなんだって。ルナっちも、そいつをかばおうとした狂人なんだよ。」

「なんで......なんでだよ......シェリー。」

 

俺は涙が止まらないままシェリーに問いかける。そんな俺を見てみんなギョッとしたような目線を向ける。

 

「どうしてルナちゃんはあんなにも泣いているのかしら。まるでシェリーちゃんに死んでほしくないかのような。」

「あぁーもううっせえなあ。男が泣きやがって女々しいんだよクソッ!」

「み......みなさん、もうやめてください。」

「んなこと言って、メルルもシェリーに投票したんだろ。」

「それ、は......。」

「犯人だもんね。投票するしかないもんね。......この偽善者が。」

 

そんな中、ゴクチョーが声を上げる。

 

「それでは皆さん、ちゃっちゃと処刑ボタンを押してください。」

 

俺は押すのを躊躇いながらも、なんとか処刑ボタンを押し切った。

 

「はい、OKです!これより魔女の処刑を執行します~。あ、処刑台の調子が悪いので今回は、そのままこの場にある処刑台を使います。」

「なるほど、わかりました。」

 

 

そのまま処刑台に拘束されていくシェリーを見上げる。

 

ゴクチョーが、処刑の邪魔をすると看守が断罪することを告げる。

 

「邪魔しないっての。シェリーはまごうことなき、クソ女じゃん。そこのメス男子が介入するとも限らないけど。」

「そうね。遊び感覚の人殺しに狂人を演じる嘘つき。どちらもあまりにも危険人物だわ。友達ごっこに付き合わされていたエマちゃんたちには心底同情するわね。」

 

俺はマーゴをきっと睨む。

 

「あら、怖い怖い。事実を言っただけじゃない。今度は本当に誰かを殺しちゃうかもね。ルナちゃん♡」

 

 

 

「ちょっと待ってくださぁい!それはちょっと聞き捨てなりませんね!エマさんと私たちは友達ですし、ルナさんは私たちを思って行動したんですよ!」

「はぁ???まじでどっかのネジ飛んでんの?どこの世界生きてたら、友だちだって思ってるヤツを殺して、そんな奴の代わりに死のうとするやつがいるんだよ。」

「好きだからこそ殺した......なんてパターンもあるけれど。シェリーちゃんの場合、理性的すぎて当てはまらないように感じるわ。ルナちゃんも......シェリーちゃんが好きだから庇おうとした......という線は薄いわね。」

「殺された遠野はお前を恨んでるだろうし、ここにいる桜羽や氷上も。おめえのことなんかもう誰も友だちだなんて思っちゃいねえよ。天音も、なんでそんな奴を庇うんだよ!」

「それでも私は、友だちだと思ってますし、ルナさんも......彼が優しいからこそ私を生かそうとしたんです。」

 

 

「ハンナさんを殺したことに、私は何を思う必要があるんでしょうか?後悔?罪悪感?悲しみ?怒り?自分で殺したのに、それを感じる必要がありますか?その感情に意味はあるんですか?ハンナさんが生き返るわけでも......」

 

 

「なんで正直に言わねえんだ!!シェリー!!!」

 

俺は叫んでいた。周りの視線が痛々しく俺を見る。

 

「ルナさん。私はハンナさんを殺した魔女です。これ以上庇うと、あなたも魔女になってしまいますよ。」

 

そうこうしている間に、看守が火をつける。それはまるで歴史に出てくる聖女を魔女として断罪した一幕に見えてしまった。

 

「知るかよ!!俺は......お前が本心から......恨みや憎しみでハンナを殺したわけじゃないってのを知ってるんだよ!!」

「え?......ルナちゃん......それってどういう」

「なにか......変です。」

 

「うぅうぅう......うぅうぅ......あついなぁ......これ、ほんと、きっついですね......。」

「変です!シェリーさん、再生してないです......!」

「え......?」

 

 

「そうだよ。そうなんだよ。......恨みや憎悪で人を殺せば......魔女になってしまう。シェリーは......処刑されても魔女にならずに死んでしまうんだよ。」

「ほ......本当に死んじゃうの!?」

「......でしょうね。」

「......やっぱ、どうかしてるよこいつ......。」

「べ、べっつにさぁ、い、いいんじゃん?だって犯人はコイツなんでしょ?その事実は変わんないんだし、死んで当然じゃん。こんなヤツさぁ!」

 

 

 

「......ルナさん。あなたの口から......話してください。今回の私の動機と......ハンナさんの結末を......。」

 

シェリーは静かに泣きながら俺に懇願する。

俺は過去、みんなに語った魔法と矛盾することに構う事なく......喋った。

 

「ハンナは死ぬ間際まで......ストレスで魔女になりつつあることに苦しんでいた。ある時、ハンナは語ったはずだ。『自分が魔女になりつつあるから、その前にシェリーに殺してほしい』。『人として死にたい』と。そして、シェリーが魔女として処刑されない為に、完全犯罪を目指してほしいと。」

 

「嘘......ではなさそうね。」

「じゃあ......シェリーちゃんは。」

 

「シェリーは!!友達の......ハンナの願いをかなえる為に!!友達を殺したんだ!!!これが、友情以外のなんだってんだ!!!」

 

俺は絶叫していた。相変わらず目からはとめどない涙があふれてくる。言葉まで濁らなかったのは、俺がみんなに伝えたかったのと、シェリー自身に聞いてほしかったからだ。

 

「......正解......です。私は、ハンナさんに人として死んでほしくて......殺しました。ルナさん......あなたはここに来た初日から、私たちの死の運命を見続けてきたんだと思います。それが......きっと罪悪感にまで成長して、私が人のまま処刑されて死んでしまう未来が許せなくて......きっと、私の代わりに処刑されようとしたんです。」

 

「......っ、ばかあぁぁぁ!!!シェリーちゃん、心が壊れてなんかないじゃないか!友だちのために、やりたくないことをやったんじゃないか!!ぜんぶ、ぜんぶ友だちのためだったんじゃないか!!処刑を中止してよ!シェリーちゃんは魔女じゃないんだよ!いなくなっちゃう!!消えてなんて言ってごめんねぇ!あんなひどいこと言ってごめんねぇ......っ。シェリーちゃん!シェリーちゃん!シェリーちゃん!!」

 

「泣かないでエマさん。見せつけてやれましたよね?私たちは友だちだって。ずっと仲良しだって。」

「あああぁぁぁ......ぁ......。」

 

エマの喉から、かすれた悲鳴のような声が漏れる。シェリーの肉体は復活せず、全てが燃えて朽ちていく。

 

「......最後に......ルナ......さん。」

「......ぐすっ......なんだよ。」

 

シェリーは最後の力を振り絞って声を出す。もう意識さえ朦朧としているのか、言葉がつっかえている。それでも、伝えなければならないのか......言葉を紡ぐ。

 

「あなた......は、さい......ご、まで、見届ける......義務が......あ、ありま......す。わ、たし......たちが......どのような......結末に......なる、のか。死を......垣間......見た、あなたには......それを.....見届ける......義務が......あります。......それ、が......私が......残せる......これまで死んでいった......私たち、への......贖罪...で、す......。」

 

そして......シェリーはそれっきり何も言わず、死んでいった。

 

 

「なんか......さすがにちょっと後味悪いですねえ......まあ皆さん、ドンマイです。ゆっくり休んでください。これにて閉廷にします~。」

 

そうしてゴクチョーは飛び去って行く。

 

俺の喉はもうかすれた声しか生み出していなかった。やがて、みんなが周りを取り囲んでいることに、その時ようやく気付いた。

 

 

「ねぇルナちゃん。この後......ラウンジに来てくれるかしら?あなたに関する重要な話し合いよ。」

 

 

マーゴに言われて......俺はようやくその時になって、俺のウソが......もう後戻り出来ないと悟るのだった。




次回更新は12月2日になります。


ここで作者なりの原作への解像度を以下に述べます。

このシェリハン殺人事件ですが、シェリーはハンナから完全犯罪を目指すように言われてますが、シェリーは完全犯罪を目指してなかったように私は思ってます。

以下に理由を述べます。

・犯人不在の証明が出来なければ漏れなく全員処刑のルールをシェリーが把握していないはずがない。その上で犯人が存在するかのように犯行の現場を残している。
・ナノカにわざと銃を撃たせる時に、血痕を残さなかった。人が傷つくと血が出ることを知っているシェリーが赤い液体なりを使って用意しない理由がない。
・ゲストハウス2つが持ち運びで荒れると分かっていて残り1つを荒らすことをせずに朝の時間まで現場を放置した。


「犯人分からなくなるとゲームじゃなくなるやろがい!」というツッコミがあるかもしれませんが、それを言ったら野暮というものです。

だから、シェリーは完全犯罪を目指しつつも、ある程度証拠を残して自分が犯人だとなるように誘導してたんじゃないでしょうか?
自分の犯行のせいで誰かを犠牲にしない為に。


ここで本作に戻ります。
前話で「......忘れてました。ルナさん......あの時撃たれていましたもんね。」とシェリーは発言していましたが、バリバリ覚えてました。

上記の発言をすることで、「その疑いをカバーをするのをすっかり忘れていた」とみんなに印象付ける為ですね。確実に自分が犯人だと決定づける為に。

以上。作者の考察のような怪文書でした。



次回
第26話「エッチなことしたんですね?」
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