魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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前書きのネタはあったりなかったりするので今後ここはないかもしれません。

ここからは予約投稿で2日毎に投稿されます。


第3話「百合の間に男が挟まるとか死にたいのか?」

 

 

ヒロの死体が片付けられた後、まだ部屋には血の匂いが充満していた。

次に起こるイベントの為、俺はゴミ箱を持ち出した。

顔色が悪いココに向かって突き出すと、彼女は両手でゴミ箱を持って、顔を覗き込むようにして…。

 

「ぐっ、げええぇっ」

 

吐き出した。

俺は精一杯背中をさすってやる。

そんな中、レイアは中央まで移動し、部屋に響き渡るようにして声を出す。

 

「みんな、聞いてくれ!」

 

その声にみんな目を向ける。

ココも顔を青くしながら聞く耳を立てている。

 

「私たちはどうやらここで共同生活を強いられることになる。それがいつまで続くのかは分からないが……今は大人しく従おう。

知り合ったばかりではあるが、私はキミたちをできる限り守りたい。

先ほどのヒロくんのような振る舞い、また、あの状況下でアリサくんの逃亡は全員に危険が及ぶかもしれない。

今後は勝手な行動は謹んでもらいたい。」

「チッ…」

 

レイアの言葉にアリサはバツが悪そうに舌打ちをする。

 

「まずは、自分のポケットを見てくれないか。各自スマホを配給されているようだ。

残念ながら圏外だ。外との連絡手段にはならない。

我々は捕まって閉じ込められたのだから、当然だろうが…。

このスマホの中に【魔女図鑑】というアプリが入っていた。

先ほどゴクチョーも言っていたが、【魔女図鑑】はルールブックらしい。牢屋敷のマップや規則、我々の囚人情報が入っていた。

この【魔女図鑑】に記されたルールブックを遵守し、生活していこう。全員、しっかり目を通しておいてくれ。」

 

その説明を聞きながら、これから巻き起こる数々のバッドエンド選択肢を思い出している中。

それは唐突に訪れた。

 

「…ねぇ、ルナちゃんみたいな男の子でも、魔女になるのかな?のあ…分かんないや。」

 

 

 

は?

「は?」

 

 

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

 

……

………

 

 

 

「「「「「「エエエェェェェーーー!?!?」」」」」」

 

 

 

「……いや、…あの……ノア?………なん………どうして?」

 

かろうじて質問になっているギリギリの俺の嗚咽にノアが答える。

 

「のあ、お絵描きがだいすきだから、人の姿を描くのもだいすきなんだ。

ルナちゃん以外、みんな女の子で描けるんだけど、ルナちゃんを何度見ても女の子として描けるイメージがね。湧かなかったんだ。

だから、ルナちゃんは女の子じゃなくて、男の子じゃないかなって。なんとなく思ったの...。」

 

 

魔法ありきとはいえ、天才的な発想力と最終章で見せた類稀なる観察眼。

無害だと思っていた。

けれど、危険視しなければならない相手なのだと手遅れになって知ってしまった。

 

「あら〜。そうだったのね。

私も薄々ルナちゃんは男の子じゃないかと思っていたけれど、その動揺した様子をみるに、どうやら本当のことのようね。」

 

「っ!?…宝生、マーゴ…」

 

俺の目論みが如何に甘かったか痛感させられる。

宝生マーゴも、詐欺師として活動している実績があるために、人の嘘や挙動に敏感なのはよくよく考えてみれば当然の話だ。

俺が男であることをすぐさま見抜いてもなんら不思議ではない。特に途中からかなり強い視線を感じたので宝生マーゴの中には強い違和感があったはずだ。

 

 

「な、なんですって!?こ、こここ、こんなに可愛らしい方が、ま、まさか。ほっ、本当に、だ、男性ですの!?」

「わぁ!本当に男性なんですね!この状況はもしかして、ラノベとかでよくあるハーレムものってやつなんでしょうか?」

「それにしては状況が物騒すぎるというか…現にヒロちゃんが死んじゃってるんだし……」

「あぅぅ......お、男のひ...ひとと、お...おなじ...へ、部屋...う、うぅぅぅ...」

 

ハンナ、シェリー、エマ、メルルが俄かに騒ぎ出す。

 

「私はそれより、二階堂ヒロが動き出してからの天音ルナの行動の早さが気になったわね。」

「エマくんが飛び出そうとしてた時も、すぐ捕まえていたようだし。」

『わがはいの魔法に対抗してたことも気になるな』

 

ナノカ、レイア、アンアンも各々が気になったことをこの場で聞いてくる。

 

俺は両手を上にして降参のポーズを取った。

 

 

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 

「まず、一つ。俺がここに連れてこられたのは、女に間違われたというより、俺も魔法が使えたからだと思う。」

「なるほど〜。性別は特に考える必要はないと!ではでは、どんな魔法を持っているのでしょうか?」

 

シェリーが元気いっぱいに聞いてくる。他のみんなも興味があるのかじっと静かに俺の次の言葉を待っている。

 

「あ〜。信じるかどうかはお前たち次第だが、俺の魔法は限定的な未来予知だ。」

 

ま、嘘なんですけどね。

本当の能力は別にあるものの、それをバラすと辻褄が合わなくなる為、ここでは原作知識を未来予知として利用する。

 

「おおぉ〜!未来予知!!なんだかすごく強そうな能力ですね!」

「そうか。だから君はヒロくんやエマくんの行動を……。

?、……待ってくれ。それだと少しおかしくないか?」

 

「おそらく蓮見レイアが疑問に思ってるのは、【どうして二階堂ヒロを助けなかったのか】というところよね。」

「そうだ!ありがとうナノカくん!……そこのところはどうなんだいルナくん。事と次第によっては君が黒幕の可能性もあるからね。」

「...人が死ぬのが分かってんのに、おめえはみすみす見殺しにしたってのか!?」

 

それぞれの会話を聞きながら、俺は原作にあった描写のうちいくつかを抜粋することで信憑性のある話をでっち上げた。

 

「まず一つ。限定的な未来予知といったが、これはかなり条件が複雑になる。

 

予知できる範囲は1分から30分までの間のランダムな範囲。

予知した内容は、その世界に俺、天音ルナがいなかった時に何が起きるのか。

予知の発動タイミングは、他者が介在しない殺人事件…例えば、牢屋敷内にある呪いとかによって誰かが殺される可能性が浮上した時。ヒロを殺した奴は看守。あれもまた牢屋敷内にあるシステム...俺の予知も発動する範囲内だ。」

 

「牢屋敷の…」

「の、呪い!?」

 

そうエマとアリサが恐怖に引きつった声を上げる。

 

(物語の途中で出てくるバッドエンドのうち、人が死なないものや人が死ぬまで数日以上を要するものはあるけど、それは言わない方がいいな。)

 

そんな中、シェリーはなおも分からないといった様子で質問を投げかけてくる。

 

「魔法の内容は分かりました。それでもやっぱり、どうして【ヒロさんを助けなかったのか】が解決していないと思うんですよ。」

 

そこに俺は解答を示す。

 

「あの場では、火かき棒を持ったヒロを助けようと間に入ると、余計にヒロが暴れてしまう上に魔女化してしまう。魔女化したヒロはラウンジにいるみんなを手当たり次第に攻撃して、目を覆いたくなる惨劇がそこで発生してしまうんだ。

信じるかどうかは任せるしかないが、あの場はどう転んでも【ヒロを助けることはできなかった】。

その後の俺の行動は...まぁ、偽善みたいなものさ。」

 

まぁ、詳しい内容は違うものの、納得しては貰えると思う。

 

「...にわかには信じがたいが......現に魔法がある以上、我々がとやかく言っても解決しない問題だ。そして、実際にノアくんやアンアンくん。エマくんが彼によって助けられている。」

 

「あてぃしもルナっちにはゲロ吐くところを助けられたしね。...ゲロ吐くところを男子にフォローされるって、今考えてみるとかなり恥ずかしい気もするけど。」

 

レイアは完全に納得していないものの、ひとまずは俺を黒幕判定から外したようだ。ココも恥ずかしがりながらフォローしてくれてる。

アンアンとナノカは納得してないものの、ここで議論の発展をしても意味がないと感じたのかひとまず引き下がったようだ。

 

「...ねぇ、行動の怪しさはひとまず置いておくとして、これから私たちは男子1人を加えた14人の共同生活をしなければならないのよね?...お風呂やお手洗いのルールを私たちで加えないかしら?

今後、...いろんな事故が発生しない為にも......ね?♡」

 

「...そうですわね。彼が獣のような男性だとは思えませんが...彼と私たちでは性別が違う以上、そういったルールはしっかり私たちで決めていかなければなりませんわ。黒幕側に想定外があったのか、そういった部分を適当に決めたのかわかりかねますが、魔女図鑑にそのような記載は一切ありませんでしたし。」

 

「...そ、そうですね。え、えっと、これから皆さんで一緒に生活する以上、ふ、不便かもしれませんが...そういった事故は防いだ方が、よ...よろしいかと、お、思います。」

 

マーゴ、ハンナ、メルルは俺という男子と生活するためにも、自分たちでルールは作るべきだと主張する。

 

「俺もそれは同意だ。そういったルールは明確に示さないと、不幸な事故が発生した時に俺に非があるのかお前らに非があるのかくらいは明確にしておきたいからな。」

 

そうして、メンバー全員で今後の俺を含めた屋敷内のルールを改めて決めていった。

 

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 

「よし。概ねの内容は決まったかな。みんなにもルナくんにも、不便をかけてしまうけど、どうか協力してほしい。」

「ルナちゃんはともかく、他のみんなは節度ある行動が出来ると信じているわ。こんな閉鎖されたところで男女間で拗れるなんてゴメンだもの。」

「俺もそれは同意見だ。俺はお前らに極力関わるつもりはない。俺は一人で生きていく。」

 

俺はそう言って部屋を後にする。そろそろ監房に戻る時間だ。

 

「それはウチも同意見だ。こんなとこに一秒だっていたくねぇ。すぐに出てってやるからな。」

 

アリサも続くように部屋を出ていく。

監房に続く道とはアリサは別方向に向かっていった為、おそらく脱獄を企てているようだ。

特にアリサが死ぬ場面ではなかった為、無視してそのまま監房にすすむ。

 

そして自分の房にたどりついた後、俺は最初に目が覚めたベッドに身を投げ出した。

 

(原作は進む。今のところは順調に1週目が進んでいる。このまま何事もなくエマ魔女化エンドまで進められればいいが。)

 

1週目はエマが魔女化し、【魔女を殺す魔法】によって、全人類に埋め込まれた魔女因子が暴走して死に至らしめられる。魔法を持つ俺も、最長でその時までしか生きられないのだろう。

 

原作改変を目指して動くのもよくある展開ではあるが、ヒロの3週目で結局全員が救われるのだ。それは黒幕のメルルや大魔女でありすべての元凶であるユキも例外ではない。

それが俺の動きで崩れ去ってしまうと罪悪感と嫌悪感でストレスが高まってしまう。おそらく、俺が魔女化するなら、3週目以外だと原作から乖離することが確定したときだろう。

 

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 

それは昔の記憶だった。俺には姉がいて、その姉も魔法が使えた。姉の魔法は【未来視】。まがい物の未来予知である俺のものとは違い、本物の未来予知だ。

 

「姉ちゃん...姉ちゃんは未来が見えるんだよね。どうしていつも使わないの?」

 

俺は姉の背に向けて問いを投げかける。姉はいつも決まってこう返すのだ。

 

「そんなの、【つまらない】からに決まってるじゃない。未来は分からないからこそ楽しいものなんだから」

 

聞けば、姉は本気を出せば1年先の未来さえ見通すことが出来たらしい。ただし、それはいつも【俺がいない世界だったら】という前提だった。

姉はいつもその魔法を欠陥だと嘆いていた。

 

「だって、ルナがいない世界なんて見ても意味ないじゃない。私の世界の中心は、いつもルナなんだから」

 

でも俺は、その魔法を欠陥だなんて思わなかった。だって、【俺がいない世界】の方が正常なんだから。

 

姉がいつも魔法を使用するときは、いつも【俺がいない世界】で、もし【俺がいる世界だったら】を見越して使っていた。

その日も、たまたま姉と一緒に最寄りのショッピングセンターに行って、母親から頼まれていた買い物をして、姉と並んで帰っていた時だった。

姉は唐突に虚空を見て、そのすぐ後に、全身を使って俺を突き飛ばした。

 

俺は何があったのか分からず、姉に手を伸ばしかけた。

すると、姉の上に巨大な影が見えて、

 

そして、

 

そして

 

 

 

ホーッ、ホーッ

 

「っ!...はぁ...はぁ...ッ!...はぁ...はぁ...」

 

その場でばっと起き上がる。色々考えている間に寝落ちしてしまったのか、スマホのフクロウの音声によって起こされた。

今は17時。夕食とシャワーの時間だ。

 

「え...えと...そ...そのぉ...だ、大丈夫...ですか?」

「?」

 

メルルがこちらを覗き込み、心配そうに声をかける。

 

「え...えと、かなり...う...うなされていたようだったので、し...心配して覗いてました。ふ...不快にさせてしまったならご...ごめんなさい!」

 

メルルは申し訳なさそうに頭を下げてくる。目の端にたまった涙が俺のベッドに落ちそうな勢いだった。

 

「大丈夫だ。ただ夢見が悪かっただけだ。うるさくて迷惑なら一人部屋になったエマに相談して俺が一人部屋になろうか?」

「だ、大丈夫...です。そこまで...うるさかったわけではありませんし、少し呼吸が荒いように感じたので、様子を見ていただけです。」

「そうか。夕食の時間だよな。先に行っててくれ。俺は少し顔を洗う。」

 

そう言ってメルルを先に行くよう促す。

己の気持ちの整理もさることながら、この後のイベントに選択肢があったはずだからだ。

 

 

そうしてしばらくすると、アリサの声が廊下に響いた。

 

「離せ!クソッ.....,。離せよバケモンがよぉ!ふざけんな!なんでウチが!」

 

そう言って看守に抱えられたアリサが目に付いた。俺はエマがその様子を見ていることに気づいていつでも飛び出せるよう見張った。

 

(たしか、ここですぐにエマが後を追ったら、懲罰房で閉じ込められて、その後シェリーに認識されないという事態が起こった。その後、エマは懲罰房内で自殺した。)

 

「きっと、殺されはしないはず。」

 

そう、そう言って懲罰房内に向かって...

 

 

え?




次回投稿は21日になります。
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