魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第32話「別れの挨拶はいらない」

今回の捜査......マーゴとメルルが裁判所内に残り死体保全を行い、俺とココがエマについていくこととなった。

俺は遠巻きにしかナノカの死体を見ていなかったものの、言語化できない違和感にずっと苛まれていた。

 

そして、エマは裁判所内のナノカの死体を調べたのち、水精の間へと俺たちを案内した。

 

地下へと向かうエレベーターに3人で乗ろうとしたとき、エレベーターのブザーが鳴り響いた。

 

(そういや2人乗りの制限があったな。2周目で明かされる情報だったっけ?)

 

「2人乗りらしい。往復すると時間がかかるだろうし俺はここで待ってるよ。」

「えぇ~。ルナっち行ってよ~。あてぃし、殺人犯と一緒にいたくない。」

「ココちゃん......。」

「エマが人前で誰か殺す事はしないだろ。あぁそうだ。お前らにこれやるよ。」

 

そう言って俺はいつも身に着けているマフラーをエマに、コートをココに渡す。

 

「地下は寒いってエマが言ってたろ?これで寒さもある程度緩和されるはずだ。」

「ありがとうルナちゃん......。」

「ルナっちの匂い......すぅ~......はぁ~。」

 

そうして二人とも地下へと向かっていった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

【桜羽エマ視点】

 

金庫の中にあったレポートをパラパラとめくってみる。ルナちゃんが上着とマフラーをくれたおかげでココちゃんもボクも寒さに思考が奪われることなく落ち着いて捜査することが出来ていた。

(ルナちゃんには感謝しなくちゃ。)

 

「......え!?」

 

そこには驚きの内容が記載されていた。

 

「ルナちゃんに見た目がそっくりな......天音、ソレイユ?」

 

見た目はほぼルナちゃん。唯一違うとすれば瞳の色。

 

ルナちゃんは月の色を彷彿とさせる青白い色。

でも、目の前の資料に記載されている女の子は、天真爛漫そうな見た目の上に、瞳の色は太陽のようなまばゆいオレンジだった。

 

 

「天音ソレイユ。15歳......魔法は......未来視!?1年以上の未来を見通すことが可能......危険要素過多の為、管理人による直接の管理が必要。」

 

まるで、ルナちゃんが持つ魔法を強くしたかのような内容だった。そして、その後ろのページには、見知った顔の男の子の資料が記載されていた。

 

「天音ルナ。15歳......機関にて処分対象。備考......フロント企業を利用したビル工事の高所物落下による事故死を検討。魔法は......」

「......ちょっ、エマっち!!こっちきてー!!」

「どうしたのー?」

「いいから早くきてよ!これ......ヤバ......!」

 

 

そこですぐさま意識がココちゃんに向かう。気になる内容だったけど、時間は有限だからココちゃんの方へと向かう。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

エレベータの音がしてエマとココが戻ってくる。

体を震わせてまだまだ寒そうな様子だった為、そのまま上着とマフラーを貸し出す。

 

「おかえり。その様子だと色々収穫があったようだな。」

「うぅ~。さむさむ。ルナっちの上着があって助かった~。」

「......ルナちゃん......。」

「......なんだ?エマ。」

 

エマがこちらの様子を伺うように俺の名前を呼んでくる。地下の資料でも見たのだろうか?俺の魔法とか色々バレてそうな予感がした。

 

「ルナちゃんは......ルナちゃんなの?」

「俺は俺だ。地下で何を見たのか知らないけど。ここにいるのは間違いなく天音ルナだ。」

「そっか。うん、分かった。」

 

ゴーン......ゴーン。

 

 

そこで鐘の音が鳴り響いた。俺たちは揃って裁判所へと赴く。

 

(アリサがトレデキムで死んでいない以上、トレデキムが地下にあったことが議論に上がることはまずない。ともすれば2周目にココが記憶を引継ぎしたとしても、トレデキムによるココの殺人事件が発生しない可能性がある。

 

いや、もう、起きた事は仕方ない。今を生きていくことに全力をかけよう。)

 

裁判所に全員揃った段階で魔女裁判の開始を告げるゴクチョーの合図が響き渡る。

 

 

序盤はやはり、死体の状況からの認識合わせから始まる。

 

ナノカに外傷はほとんど無く、肉体が凍っていたことから原因はアリサのように凍死だとマーゴが証言し、それに対しエマが口の中に傷があったから外傷はないは誤りであると訂正が入る。

その傷をつけたのは地下にあった氷でそれが意味するところはナノカは地下で口の中を怪我したことになると論理を展開する。

 

地下の処刑台に死体を移動するにはゴクチョーでさえも簡単に開けられない堅牢な扉を突破しなければならず、仮に開けたとしても履歴が残る為、前の裁判から開いてない状況を踏まえるとほとんど密室と言っても過言ではないとマーゴが発言する。

 

エマが魔法の銃の弾丸の数が合わないことは検討するべきであると議論の方向を変え、消費された3つの弾丸のうち、2つまで特定でき残り1つが特定できていないと言う。その特定できない弾丸を撃ったのは正規に地下室へ入った黒幕だと証言する。

 

ただ、マーゴが議論を死体の状況に戻し、地下室から処刑台に入るには覗き窓くらいのスペースだけが存在し、誰も通れないとココがその発言を補強する。

そこにエマが待ったをかけ、ナノカは分割されて小さくされて処刑台に移動した後、魔法を使われて元に戻されたと推理する。

 

 

そして、メルルがナノカを殺した犯人だと告発する。

死体や無機物でさえ一瞬で治療することが出来る魔法で、今まで手を抜いていたと説明する。

 

ナノカの口についていた傷はダイイングメッセージで、犯人に治されないように目立たない箇所に自傷したと説明する。ナノカは即死せず、地下室にはもっとダイイングメッセージがあったと言い、金庫の血が付いた番号。671は囚人番号だったことを指摘し、メルルが犯人だったと付け加える。

 

メルルがエマが黒幕でも成立する話だと反論し、もっと話すべきだと諭す。

 

(この後の展開は......原作だとアリサがトレデキムで死んだからこそ、黒幕がナノカを殺したと証言できる補強が入った。今、アリサはトレデキムで死んでいない。ここはどうなるんだ?......エマはどうやってこの局面を乗り越えるんだ?)

 

 

 

議論はやはり収束していく。予定調和のように。

 

「これは地下で見つけた金庫の中に入ってた薬なんだ。」

「【B】って書かれているわね。それはいったい何の薬なのかしら?それがどうしてメルルちゃんが黒幕だという証拠になるの?」

「【魔女を殺す薬】。マーゴちゃんが教えてくれた、不死の魔女すら殺してしまう強力な毒薬。マーゴちゃん。その名前、覚えているかな?」

「ええ、もちろん。......名前は【トレデキム】。それはたしか......ああ!?」

「ど、どうしたんだよ!?」

「ラテン語【13】を示す言葉......!そのラベルに書いてあるのは......!」

「......そう。この薬瓶に書いてあるラベル。これは【B】じゃなくて......【13】だったんだ!つまり、この薬が【魔女を殺す薬】なんだよ!!」

「......なになに!?それが地下にあったら、なんで黒幕を示す証拠になんだよ!?」

 

(魔女を殺す薬を出したところで、この薬で死んだ人間なんてどこにもいない。なんでエマはこんな時にそんなことを......?)

 

「ナノカちゃんの死体をよく見てほしいんだ。体のいたるところが魔女化によって変化している。魔女は死なないのに、死んでいるんだ!!」

 

はぁ!?

 

「はぁ!?!?」

「うわルナっちうるっさ!?」

「あ.....ごめん。......続けて......。」

 

「う......うん。ナノカちゃんは地下で殺されたんだけど、魔女化が進行していた状況なら、たとえ銃弾であっても殺しきれなかったんじゃないかな?だから黒幕はトレデキムを使ってナノカちゃんを確実に殺したんだ。その後で体を分割して処刑台で元に戻した。それでも証拠となる魔女化を魔法で治そうにも、戻すことはできなかったんじゃないかな。」

 

「魔女を殺す薬が使われると、経口摂取であれば数分で。傷口から入ると即座に効果が表れるわ。そして、死後......瞳が半透明に硬化する。まるで宝石みたいに。」

 

「目を閉じているようだったけど、瞳を確認してみると結晶化していたんだ!これはナノカちゃんが黒幕しか知らない毒薬で殺されていることを示してるんだ!!」

 

「ナノカちゃん自身が魔女殺しの薬を知っていて、魔女化した状況から自死を選ぶためにトレデキムを服用した可能性もあるわね。そうなるとアリサちゃんが地下へ行った21時から朝までに処刑台で死んだ可能性もある。」

 

「エマっちがナノカを殺した可能性があるよね。ナノカの自死に見せかけるような感じで。」

 

 

(これで......議論の方向は二つの可能性に分けられた。ナノカは地下で銃で撃たれた後にトレデキムで殺されて処刑台に分割して移動させられた。

 

ナノカは昨日の時点で死んでいて、死ぬのに電気椅子が下がった後の処刑台で自死した、もしくはエマがナノカを処刑台の上でトレデキムを利用して殺した。

 

......エマがアリサを殺したことになっているのはもう変わらない事実ではあれど、最終局面になるための条件が全て整えられた。整えられてしまった。......ただの偶然......か?......わかんねえ。わかんねえよ。なんでこうも過程は完全に違ってるのに結果は収束していくんだよ。もうわけわかんねぇ。)

 

俺が混乱して頭がパンクしている間にも......議論は最終局面へと向かう。

 

 

「黒幕である犯人は桜羽エマさん......!あなただったんです......!」

「黒幕はキミだ......氷上メルルちゃん!」

「こ、こんなん......どうしたらいいんだよ......!」

「自分の頭で考えるしかないわね。」

「無理言うなよ!昨日ルナっち見つめて幸せな気分で寝たのに、寝起きは真逆の最悪だったし、ワケわかんねー!」

 

(このセリフが出たってことは......ナノカはココの顔写真を見てたか......。)

 

 

「地下で死んだ証拠は......あるよ。これだ。これは地下の金庫に入っていたボクたちの情報が載ってる、紙の資料だ......。」

「それがどうしてナノカちゃんが地下にいた証拠になるのかしら?」

「ココちゃん。キミの魔法を教えてくれるかな?」

「えぁっ?......あ、あてぃしの魔法は【千里眼】......。どんな遠くにいる相手でも、見える魔法。その条件は......。あてぃしを【見てる】こと。配信を通してとか......。【写真】、とか。」

「コ、ココちゃん......!それは......!」

「え?」

「......ココちゃんは今朝冷凍室に行ったとき、夢の中で冷凍室とナノカちゃんを見たって言ってた。最初聞いた時はただの夢なのかと思ったけど......。その時......実際の地下の冷凍室にはナノカちゃんがいたんだ。そして......。資料に載った、ココちゃんの顔写真を見てたんだよ!」

「えええ!?」

「ココちゃんは寝ながら【千里眼】の魔法を発動していたのね。そして......ナノカちゃんを見た。」

「あの夢......【マジ】だったの!?」

「ココちゃんは寝ながら魔法で犯行を目撃したんだ。それがナノカちゃんが今朝、地下にいたっていう証明だよ!」

「そん......な......!?」

「......ココちゃんが目を覚ましたのは朝9時頃だったわね。もしナノカちゃんが裁判所で殺されたなら、そのときすでに処刑台にいないとおかしいわ。処刑台は【下がっていた】のだから。」

「たしかに......思い出してみれば、あれは地下の冷凍室にいるナノカだった気がする......!あてぃしが地下に行った時に感じた既視感......それが原因だったのか......!だんだん思い出してきたけど......エマっちの言ってること、多分本当だと思う!あてぃしが見たのは......【後ろから銃で撃たれたナノカ】だった!

 

撃たれた時に魔女化してたかどうかはわかんね〜けど、でも銃で撃たれて即死してなかったって事はきっと魔女化が進行してたんだと思う!

 

......エマっちの言っていた『銃で殺しきれなかったから毒薬を使った』ってこと。信じるよ!!」

「その時間、ナノカちゃんが地下にいたのだとしたら、メルルちゃんにしかナノカちゃんの死体を移動させることは出来ない。私は直前までルナちゃんが眠っていたのを知っていたから、ルナちゃんにアリバイがあることは証明できるわ。つまり、メルルちゃんにしか犯行は不可能ね。私も、エマちゃんを信じるわ。だって、そっちの方が筋が通っているから♡」

 

「メルルちゃん。おそらくだけど、ボクがアリサちゃんを殺してしまったことは事実なんだと思う。でも、ナノカちゃんを殺したのはメルルちゃん、キミだ。キミが、ボクたちを牢屋敷に集めた黒幕で......ナノカちゃんを殺した......犯人だ!!どうして......ボクたちを裏切ったんだ!!」

 

 

糾弾されてみんなの視線を集めるメルル。涙目になりながらもメルルは反論する。

 

「そ......そんな!!エマさん!!私は裏切ってなんて!!だって......だって!!......最初から、計画している通りですから......。」

 

そうして、事態は最終局面へと向かう。




次の更新は12月20日になります。

次回
第33話「選択は自由」
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