Muv-Luv Alternative ~Boder of War~ 作:Light planet
小説を読む際の参考になると幸いです。もちろんここから情報は増えていきます。
ダーン・メイエル(ダン)
本作の主人公。18歳。元オランダ人。緑の目にアジア人の血が混ざった黒みがかった髪の青年。訓練学校では特に射撃と状況判断に優れているとされたが、近接戦闘の腕は並。ルカとは訓練学校からの友人。コールサインはアーメット1-4
ルカ・ラッファーロ(ルカ)
ダンの友人。19歳。イタリア系二世。青眼金髪。アメリカ国籍を持つため軍隊に所属する必要は無かったが、兵器オタクを押さえられず入隊。当初は衛士になるべく訓練を受けていたが、訓練中の事故による負傷を理由に整備士へと転向した。ダンに戦術機の知識を日々詰め込んでる。
アイナス・ジュベール(アナ)
ダンの同僚。24歳。可憐な容貌と子供のような体躯が合わさり童話のヒロインのような見た目をしている。身長が低いことを気にしており、新しく衛士が来るたびどうにか大きく見せようとしている(参考 Log:1)。衛士としての腕は自信相応に高く隊の切り込み隊長を務める。コールサインはアーメット1-2
エラン・サンダーパス(エラン)
ダンの同僚。21歳。丸眼鏡と小麦色の肌に少年のような小柄な体躯の人物。いかつい名前の割に常に表情が柔らかく、怒ってる表情ですらどこか安心感を与える。衛士としては視点が広くサポート能力に長けている。コールサインはアーメット1-3
ヨハン・アンダーソン(ヨハン)
ダンの部隊の隊長。35歳。第二中隊の隊長を務める白い肌に銀色の髪を持つ大柄な男。一部の兵士からのあだ名は「ポーラーベア(白熊)」。高い技量と長年の経験により衛士として非常に安定しており、ナイフファイトは隊で最強。コールサインはアーメット1-1
跳躍ユニットのロケットエンジンが爆音を上げる。推進力を乗せたCIWS-1Aの一撃は、要撃級の顔モドキを真っ二つに引き裂いた。ビキン!!CIWS-1Aの武器ステータスが、破損の文字で上書きされる。
「11匹!!」
活動停止した要撃級を飛び越し着地、反転し36mmを掃射。戦車級をはね除けながら、左腕のCIWS-1Aを投棄。兵装担架からWS-16Cを取り出し、そのまま要撃級を攻撃する。
「12匹!!」
体勢を整え迎撃を続行。迫り来る戦車級と要撃級を撃退しつつ、無線に呼びかける。
「
『健在だが…移動は難しい!』
既に僚機のうち2機がロストし、残ってるα1とも分断。ハイヴ内でこのザマでは、BETAの餌になるのは時間の問題だ。かといって。
「クソッ!!」
無尽蔵に湧き出てくるBETAをいくら迎撃したところで、状況は好転しない。残弾を浪費するだけだ。
「オらァ!」
120mmAPCBCHEを連射し正面にいたBETAを一気に吹き飛ばし、その隙に大きく跳躍。ハイヴ内ではいくら飛んだところで光線級には撃たれない。もちろん推進剤の節約は重要だが、推進剤を抱えたまま噛み殺されたら本末転倒だ。しかし。
「音感!?
着地地点脇の壁面が崩落し、構造物の残骸をかき分けBETAが出現する。突撃級だ!
「ぐああああ!」
ダンのF-16が派手に吹っ飛ばされ、壁面に衝突した。左の跳躍ユニットのアームがねじ切れ吹き飛び、網膜投影が機体の破損報告で埋め尽くされる。それでもなんとか立ち上がった機体に、BETAが押し寄せてきた。
「あああああああ!!!」
無事な右腕で突撃砲を撃ち続ける。しかしそれで押し返せる程度の濁流ではない。
そして、要撃級の一撃が、ダンのいるコックピットを完全に貫いた。
2000/3/21/10:25
「はぁああああぁぁぁ…」
フライトジャケットに着替えたダンは、大きくため息をついた。生存時間17分、作戦失敗。今回のハイヴシミュレータの戦績だ。臨時編成応戦訓練──TFTCと略されるそれは、ハイヴ内での部隊離散を想定して、普段とは異なる小隊編成でハイヴシミュレータに挑むという訓練だ。あの後孤立したα1も撃墜され、ダンのいたα小隊は全滅した。
ハイヴシミュレータなら、ダンも訓練兵時代に何度か行った。ヴォールク・データを基礎とするハイヴシミュレータは全世界で訓練に使用されているが、シミュレータの難易度は地域ごとに個性が出る。ダンもそれをルカ経由で聞いていたが、今日、その認識が甘かったことを思い知らされていた。
休憩室兼モニタールームに入ると、ヨハンとエランが座っていた。
「お疲れ様!」
「どうだ?うちのハイヴシミュは。」
「ハードすぎますよ隊長…ヴォールク・データと全然違うじゃないですか。」
「そりゃ、ウチのデータはアンバールハイヴ用だからな。フェイズ3ベースのヴォールク・データとは違うさ。」
H09、アンバールハイヴ。スエズ運河にもっとも近いハイヴであり、外縁部のハイヴとして国連の優先攻略目標の一つでもある異形の城塞。その攻略こそがこの基地の最大の役割と言えるが…
「と言っても隊長、俺たちのF-16は軽戦術機ですから、そもそもハイヴに突入するのには向いてませんって。」
「そうだな。」
ヨハンはあっさりと肯定した。
「だが、もし俺たちしかやれなくなった時は、突入しなければならない。」
「それはそうですけど…その日の為に、訓練を?」
「ああ。その日の為に、だ。」
遠くを見つめるヨハンと、複雑な表情を浮かべるダン。
「二人とも!アナの部隊が始めるよ!」
二人の間にあった言い様のない空気を、エランの呼びかけが壊した。モニターでは、アナの参加した
このシミュレーションではハイヴ内の指定ポイントまで移動することが出来たら目標達成となる。が、ハイヴ内の地形や指定ポイントはシミュレーション毎にランダムであり、指定ポイント自体もノイズ塗れの通信などから割り出さねばならない。いわく、中隊がハイヴの崩落やBETA襲撃などで離散し、通信状況が悪い中で指揮官に合流の呼びかけをされている、というシチュエーションだからだそうだ。
β小隊のF-16は密集隊形を維持しながら、BETAの濁流をかき分けて行く。ハイヴ内戦闘では、いかに弾薬と推進剤を
『β1より各機!正面にBETA群だ!』
『こちらβ3!後方よりもBETA群!さっきのやつらが反転してきやがった!』
このように挟撃されることだ。前方からは要撃級、後方からは戦車級。だが先ほど飛び越えた群れには突撃級もいた。旋回でモタついているのだろうが、反転して追撃してくるのは時間の問題だ。
『β2より各機、突撃級が来る前に正面突破で行くわよ!』
β2──アナの声で部隊が動き出した。このような状況では小隊内での明確な指揮系統はなく、その場で最適な選択をしたものに皆が追従する。前衛にβ1、β2。後衛にβ3、β4。前衛が要撃級を黙らせ、後衛が追いすがる戦車級を吹き飛ばす。
『邪魔よ!!』
アナは次々と要撃級を撃破していく。目標切り替えのペースが速い。とっさ判断能力に差があるにしても、速すぎる。あっという間にBETAの体液で出来たレッドカーペットが完成した。
「すげえ…なんだよあの速度…」
ダンはモニターのなかで繰り広げられる戦闘に圧倒されていた。速い。BETA群の処理速度において、β小隊はα小隊を大きく上回っている。完全にランダムに編成される都合、部隊間での衛士の練度にムラががあることを考慮しても、圧倒的だ。特にアナは、
β小隊のシミュレーションが終わった。作戦時間は19分で全機生存。ハイヴシミュレータは全滅か全機生存の二択になりがちとはいえ、この結果には大きな差をダンは感じていた。映像を脳裏で反芻していると、アナがモニタールームへやって来た。
「アナ、お疲れ様!さすがはウチのエース!」
「こんなのどうってことないわ。で、アンタの感想は?」
アナはダンに話を振った。
「ああ、めっちゃ…すごかった。」
あまりにも中身のない感想だ。アナも思わず「こいつは馬鹿か?」と言いたげな目になってしまった。
「で、質問なんだが、あんな速度でターゲティングをどうやってるんだ?」
「ターゲティング?」
「BETAに攻撃を開始してから、次のBETAへ攻撃を移すのが俺より明らかに速い。あれはテクニックとかそういう話じゃなくて、そもそもの機体システム側に差があるように見えた。」
「ああ…」
アナは少し考えると、ピンときたようだ。
「隊長、ダンを少し借ります。」
「おう。色々教えてやれ。」
ヨハンは快諾した。
「C小隊のシミュレートは!?」
「後でログを見なさい!行くわよ!」
「そんな!って力強!?」
二回り小柄なアナに引っ張られていくダンだった。
2000/3/21/10:56
アナに引っ張られてたどり着いたのは戦術機ハンガーだった。整備用簡易ヘッドセットを二つ拝借してどんどん進んでいく。
「アンタの機体は?」
「そこの機体です…」
「ダン?どうしたデートか?」
ルカがいた。
「これのどこがデートに見える!?」
「失礼、ちょっと機体を弄らせて?」
アナはヘッドセットを付けると、ルカより受け取ったキーボードをたたき始めた。
「やっぱり…アシストレベルを……生存判定は…………ダン。」
「はい!」
「コックピットに乗って。仮想シミュで起動。」
ダンも簡易ヘッドセットを付けてコックピットに乗り込んだ。起動キーを入力するとヘッドセットの網膜投影や整備用PCのモニターに安い3Dポリゴンで出来た仮想の戦場が表示された。
戦術機にはいくつかのモードが搭載されているが、その一つがこの仮想シミュレートモードだ。主に機体の初期セットアップで活用されるモードで、整備やセッティングを行った後に「機体が実際にどう動くのか」を調整するのに使用される。仕組み自体はシンプルで、外部コンピュータに接続し機体の機動データをそのまま3Dポリゴンで作った「仮想の機体」に反映させるというものだ。本来ならJIVESを使うべきだろうが、常にBETA侵攻の可能性がある最前線ではわざわざ挙動チェックのためだけに実機を動かす贅沢などやっていられない。そんな前線の事情を把握してか、衛士訓練校でもこのシステムは頻繁に使用されほとんどの米軍衛士が使うことが出来る。
…ただの経費削減かも知れないが。
「まずは元の設定でやるから…撃ってみて。」
アナが指示を出すと、3匹の要撃級が表示された。訓練用で動かないそいつらを、順番に撃ち抜いていく。
「次はこの設定で。」
アナがキーボードを何度か叩いた後、再び要撃級が3匹表示された。そのまま撃ち抜いたが…
「どう?」
「なんというか…ロックオンの挙動が軽くなったか?」
基本的な操作感こそ変わらないが、ターゲットを切り替える際の挙動にラグが減ったように感じた。
「やっぱり。」
アナは声こそ上がってないが、どこかうれしそうな声で返答した。
「アシストを変えて、ロック強度を下げたの。どうせ訓練兵時代からイジってないんでしょ?」
戦術機は衛士が手足のように動かせるが、機械的な補正も多数介入している。その一つがFCSだ。例えば突撃砲を使用する際、衛士はBETAを認識し大雑把に狙って突撃砲を向ければ、後はシステムが細かな標準をまかなうため、後はタイミングを計って射撃するだけで良い。この補正に対する俗称が「アシスト」だ。もちろんこのアシストを完全に廃したマニュアル入力というのも可能だが、それを完璧に使いこなすためには人体とまるで構造が異なる戦術機を「己の体」と認識する必要があるため、一般的には行われない。極東では一部訓練で使用するという噂もあるが、今のところそれは噂でしかない。
「アシストを変えたって、どこを変えたんだ?ロックオン時の精度補正とかは合わせているんだが…」
「撃破判定、よ。判定のシステム判断レベルを落として、衛士への依存度を上げたの。そうすれば、システムにロックを持っていかれなくなるわ。」
戦術機のFCSには、一種の「目標固定」機能がついている。これは戦争初期にBETAの生命力を見誤り、「撃破判定が出ているBETAから攻撃された」という事例が頻発したため設けられた機能だった。衛士が一度BETAをロックオンすれば、システムは撃破出来たと判断するまで対象のBETAに対する仮ロックを継続し、光線級による予備照射やより近距離への新たなBETAの接近といった緊急事態以外で、衛士が新たな目標選定を行う際にはその「攻撃済BETA」をフォーカスするように設定されている。
「ロックを持っていかれる?」
「そう。あったでしょ、0.6秒ぐらいロックオンが死んでるBETAに行こうとするの。」
「まあ…あったけど…そんなもんかと思ってた。」
「呆れた!」
アナはため息をついた。
「システムのBETA撃破判定には、すこしだけど時間がかかるの。BETAはどうなったら『死んだ』と言えるのか、はっきりしないから。だからシステムは迅速かつ確実に撃破を確定させる為に、BETAがあからさまな死体になるまで攻撃するよう設定されているわ。」
強靱な生命力を持ち、その割には主立った内蔵すらないBETAをいかにして「死んだ」と見なすかは極めて難しく、現状では「活動不能なほど身体構造が損壊した」ことが唯一の死亡の根拠である。しかし構造を完全に破壊せずとも、36mmがある程度命中すれば活動停止することも少なくない。
「新兵でも扱いやすいようにってことなんだろうけど、私からすると邪魔なことの方が多かったわね。」
「ちょっと待て、俺だってまだ新兵だ。」
「あら、あなたの腕を見込んでのことだったのに。」
アナはにやりと、意地悪そうに笑った。
「アシストを完全に止めたわけじゃないわ。でも、かなり弱くしたから、自由に
適当にレバーを操作すると、今まであった「照準が吸い付く」感覚がなく自由に狙ったままに標準を動かせた。だが。
「じゃあ、いままで機体がやってた撃破判定は?」
「当然、衛士の感覚に依存するわ。もちろん撃破判定計測自体は続けてくれるけど、今までみたいにシステムにとってわかりやすい死体になるまで撃ち込むわけじゃないから、だいたい既に攻撃を終えて標準を外したタイミングで出すようになるわね。」
「感覚って…身につく前に死にません、それ。」
「そう、だから勉強しなさい。今までもやって来たことでしょ?」
死なないために、学ぶ。なるほど今までもやって来たことだ。
「です、ね。アイナス中尉!ご指導、ありがとうございます!」
コックピットから立ち上がり、少々あからさまな敬礼をする。
「ま、いいわ。疑問を素直に聞いて来たのは嫌いじゃないし。」
意外な返答だった。
「他は知らないけど、ウチの小隊はみんなこれだから。4番機であるアンタも、早くできるようになることね!」
マジか。爆弾発言を置いて、アナはハンガーから去って行った。
「お疲れ様!」
ルカが現れた。
「お疲れって、お前どこに行ってたんだ?」
「どこって、横で見てたが?変な改造をされたりしたら俺が怒られるし。」
機体を預かる整備士とは、そういう立場だ。
「しかし撃破判定の調整とは……前線の衛士って、ああいうものなのかな。」
「どうだか。ただ、全員が全員あれぐらい強いなら、ここまで人類は追い詰められてないんじゃない?メカニックの無責任な感想だけどね。」
同感だ、とダンは返した。今回の話は、ダン自身が言ったようにうかつにやれば死を招く行為だ。訓練校ではあんなこと習わないし、他の部隊ではどうかも分からない。
「そういう人から色々言われたんだ、お前はエースの卵ってことだろ。自身持てよ。」
「だ、な。」
照れくささから妙な返事が出た。
「さあ!そんなエースの卵君は資料室にGO!午後の閲覧申請、速くやらないと受付に変な顔されるよ!!」
げえっ
既に時計は、12時を指そうとしているところだった。
今作に登場する戦術機等の設定は全て作者の独自解釈・オリジナル設定です。