Muv-Luv Alternative ~Boder of War~   作:Light planet

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今回から大規模作戦ということで、ある方の作ったマブラヴ風マップメーカーを使用して挿絵ならぬ挿マップを作ってみました。多少は見やすくなってくれると幸いです。


マップメーカー
https://alphonse-av98.github.io/TacticalMapTool2/


Log:5 開戦の通り

2000/4/12 地球軌道上

 

真っ黒な地球の表面を滑るように移動する影が8つ。国連の再突入駆逐艦だ。彼らはエンジンを使用せず、アポジモーターで軌道を修正しながら進んでいた。遠目に見るとゆっくりに見えるその歩みだが、自転との相対速度を考えると極めて高速と言える速さだ。

 

「エイラートよりステーションへ。まもなく投下予定ポイントに到達。繰り返す。投下予定ポイントに到達。」

 

『ステーション了解。HQとの交信を行なう。しばし待て。』

 

「エイラート了解。こちらの待機可能時間は5分だ。」

 

エイラートの通信士は、静かに窓の外を見た。今、地球上では新たな軍事作戦が始まろうとしていた。通信士の祖国、イスラエルを舞台とした戦いだ。

 

『ステーションよりエイラートへ。作戦開始命令を受信。各艦投下を開始せよ。繰り替えす。投下を開始せよ。』

 

「艦長!許可が下りました!」

 

「各艦セパレーションスタート。地上の奴らにプレゼントの時間だ!」

 

通信士が張り上げた声に、更に大きな声が答えた。その声に反応した乗組員達は、慣れた手つきで作業を開始する。

 

ガコン、という音が船体に響いた。離脱していく再突入殻には、AL弾や弾薬コンテナがすし詰めにされている。これから地上で始まる作戦において極めて重要なモノだ。

 

観測士が全てのコンテナが突入したことを認識し、乗組員へ伝達する。そして通信士は、再びステーションへ交信を行なった。

 

「エイラートよりステーションへ。我が艦隊は全艦投下に成功。作戦第一段階を達成した。繰り返す。作戦第一段階を達成した。」

 

 

2000/4/12/05:55 洋上 コルベール級ミサイル巡洋艦「カネット」ブリッジ 作戦司令本部

 

ブリッジでは幾人ものオペレーターが画面と向き合い、

 

「国連軌道艦隊よりMRV投下を確認!弾着まで約30秒!」

 

オペレーターが艦内で報告をした頃、空を引き裂いて落ちる流星が多数。宇宙より投下された再突入殻だ。真っ赤に赤熱化した再突入殻は自ら空中で分解し、中身を空にばらまいた。雨のように降り注ぐ砲弾。そこに…

 

ジュワァッ!!

 

地上から閃光の矢が伸びる。光線属種のレーザーだ。それは正確に砲弾を射貫き、次々と蒸発させていく。だが、これこそが人類の戦術だった。融解、揮発した重金属はレーザー発射により発生した上昇気流と合わさり、空にある湿った空気と接触した。そして金属粒子に水分がまとわりつき、濁った雲が形成される。

 

「地上からの迎撃を確認。AL弾撃墜率96%。」

「光線属種の座標予測開始。」

「重金属雲発生。濃度25……39……」

「各艦攻撃準備。」

「座標予測完了。データリンクに転送します。」

「69!重金属雲、規定濃度に到達!」

「第二段階開始、AL弾搭載艦は砲撃を開始せよ。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

2000/4/12/06:07 洋上 ファーゴ級軽巡洋艦「アンカレッジ」ブリッジ

 

「国連より砲撃命令!」

 

艦隊は既に標準と装填を終えて、後は引き金を引くばかりにしてあった。

 

「目標!BETA群予測座標A1!1番から4番、発射(ファイア)!!」

 

ダダダン!!! 艦長の号令にあわせ、47口径Mk20mod3 3連装152mm砲が轟音と共に弾頭を発射した。ファーゴ級8隻に加えて、服砲とはいえフランス海軍のアルザス級戦艦2隻にモンタナ級1隻まで加わった飽和攻撃。並の防衛陣地なら跡形もなく更地になる火力が投射された。だがこの一斉射もレーザーによって次々と撃墜されていく。しかしこれも想定内。重金属雲は更に濃度を増し、BETAのレーザーをかすれさせていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

2000/4/12/06:23 洋上 コルベール級ミサイル巡洋艦「カネット」ブリッジ 作戦司令本部

「第二次AL弾攻撃、迎撃率76%。」

「艦隊のAL砲弾残量55%。」

「濃度上昇72……80……」

「各主力艦艇、攻撃準備。」

「…85!!重金属雲濃度、規定値に到達!!司令!」

 

国連地中海方総軍、アントワーヌ・ジラール中将は落ち着いた声で宣言した。

 

「面制圧開始。下等生物に身の丈を教えてやれ。」

 

 

2000/4/12/06:26 洋上 モンタナ級戦艦「メイン」

「目標、テルアビブ沿岸地帯!!主砲、撃てェ!!」

 

2000/4/12/06:28 洋上 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「ヨークタウン」

「目標ホロン市街地後。攻撃開始。」

 

2000/4/12/06:30 洋上 アルザス級戦艦「フランドル」

「目標、ガザ地区中央市街地後!VLS発射の5秒後に砲撃開始!」

 

2000/4/12/06:30 洋上 コルベール級ミサイル巡洋艦「ジャンヌ・ダルク」

「アシュケロン沿岸をロック、ミサイル発射管1番から8番、発射!!」

 

 

怒濤の砲火がイスラエルの沿岸部を焼いた。当然BETAはレーザーで迎撃する。しかし重金属で出来た雲がレーザーを減衰させ、砲弾の破壊には至らない。次々着弾する砲弾は要塞級の胴体を粉砕し、突撃級を打ち砕く。ミサイルは要撃級を引き裂き、爆風は光線級を消し飛ばす。あっという間に、地上はBETAの体液で染まった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

2000/4/12/06:45 洋上 コルベール級ミサイル巡洋艦「カネット」ブリッジ 作戦司令本部

 

「面制圧完了。」

「艦隊の砲弾残量、残り60%。」

「作戦第三段階へ移行。」

「海兵隊攻撃機部隊は展開開始。」

「通常戦術機部隊は海岸線の制圧率が40%に到達次第順次発艦せよ。」

 

 

2000/4/12/06:52 海中 リュピ級強襲潜水艦「カサビアンカ」

 

『海兵隊ども!食事の時間だ!さっさと行かないと大食いの米海兵隊(デブ)に全部喰われるぞ!』

 

「了解!今日は私たちが大食い自慢する番だ!!」

 

フランス海兵隊の衛士、コールサイン:スィーラ1はA-6のコックピットで食べたレーションの袋を握りつぶした。出撃の時間だ。

 

『誰がデブだ聞こえてるぞ!おっと失敬、長々ちまちま喰うのがフレンチ・マナーだったな。』

 

『さっさと行け!!それとも海兵隊のおしゃべりは仕事なのか!?』

 

オペレーターの憤慨をスルーしながら、慣れた手つきで上陸シークエンスを開始した。ごぼりと大泡が海面に上り、ロックが解除されたA-6が沿岸へ進んでいく。海面付近に上昇し、まずは多目的兵装庫を展開。上陸前に海岸へ120mmを発射し、戦車級を吹き飛ばす。ここで命中率から弾薬をケチるようなイントルーダー乗りは変形中にかじられて死ぬことになるのだ。

 

「スィーラ1着地(ランディング)!!沿岸部掃討を開始する!!」

 

『こちらサラマンダー1!同じく着地!!』

 

次々と上陸していくアメリカ・フランスのA-6。迫り来るBETAを圧倒的砲火でなぎ倒し、人類の領域を拡大していく。するとスィーラ1のコックピットに警報が響いた。A-6の天敵、突撃級だ。

 

「邪魔だ!!」

 

が、いちいち突撃級におびえすくむほど海兵隊は暇ではない。突撃級の予測進路にAPCBCHEを発射。もともと120mmAPCBCHE弾にはHE弾として運用できるようにセレクターが設定されており、最新の爆薬により榴弾としても高い火力を持っていた。地面に突き刺さったAPCBCHE弾は0.5秒ほど遅れて爆発。ちょど真上にいた突撃級は足下からの爆風で胴体を粉砕された。しかし突撃級を一匹撃破したところで何も始まらないのが対BETA戦だ。次は要撃級の群れが迫る。その先頭の一匹が、スィーラ1に向かって飛び掛かった。

 

「海兵隊を…」

 

対するスィーラ1は、右足を一歩退き、まるで東洋の正拳突きのような構えを取る。

 

無礼(舐め)るなァ!!」

 

ガァン!!腕部のスパイクマニュピレータが胴体を貫き、追撃の36mmが要撃級をクズ肉に変えた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

一方洋上では、空母から次々と戦術機が発艦していた。アメリカ海兵隊所属のF-18E(スーパーホーネット)である。ダークブルーの機体はその推力を活かしミサイルがごとく海面を飛んでいた。

 

『バイパー1より各機、NOE解除後ジャンプで侵入、光線級の第二波をやる。先に行ったA-6部隊(イントルーターズ)がレーザーで炙られる前に突っ込むぞ!」

 

了解(ウーラー)!!」

 

海岸線に近づいたタイミングで、編隊が跳ねた。前面に展開するA-6部隊を飛び越え、突撃砲を構える。A-6の全高は25m。これを超えるような高さで飛べば、光線級に狙われるのは確実だ。無数の初期照射が突き刺さり、コックピットに警報が鳴り響く。

 

「やれェ!!」

 

『了解!!』

 

バイパー隊の声に答えたのはA-6達だった。彼らはデータリンク経由で届いた光線級の座標に向けて、次々120mmを発射。データ通りの座標でのんきにレーザーを照射していた光線級を吹き飛ばした。それと同時に空中にいたF-18E部隊が地上に一斉射撃をくらわせ、A-6部隊に迫るBETAを蹴散らした。

 

「着地!!騎兵隊の到着だぜ!」

 

『何が騎兵隊だ!後1秒遅れたら消し炭だったんだぜ!?』

 

「お前らが1秒後れるなんてあるか、ないだろ!!」

 

これこそが、海兵隊。互いにためらいなく背中を預けることが出来る信頼こそが、海兵隊をDevil Dogsと言わしめる最大の理由だ。

 

『バイパー1より各機へ、ポイントB-22-3に光線級哨戒(レーザーヤークト)!!陸軍(アーミー)どもの花道を開けるぞ!!』

 

海兵隊に了解(ウーラー)以外の返事はない。雀蜂(F-18E)達は毒針(AMWS-21)を構え直し、次なる獲物の元へ跳んだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

2000/4/12/07:36 洋上 ニミッツ級戦術機母艦「カール・ヴィンソン」

 

「作戦、どうなんですかね…」

 

『マップで見る限り、問題なく進んでそうだけど…やっぱ心配になる?』

 

「そりゃ、まあ…」

 

『落ち着けヘルム16。俺たちが焦ったところで何も変わらん。』

 

「…そのコールサインも、正直慣れません、ヘルム2。」

 

聞き慣れないコールサインに肩をふるわせながら、ダンが呟いた。現在252大隊のF-16は空母で待機している。後は発艦命令を待つばかりだ。今は艦橋との一方行回線を開きながら、いつもの小隊メンバーと会話してた。

 

「…んぁ、緊張しますね…こういう時に衛士がやるルーティーン!みたいなのって無いんですか?」

 

『うーん…生き残った後の予定を立てるとか?この後やることがあれば、「それをやるぞ!」ってやる気が出るんじゃない?』

 

『私は買い物予定よ。せっかくの休暇なんだから、新作の服を見たいわ!』

 

『アナ、まだ着てない服3着あるでしょ。』

 

『今回の休暇で着るからいいの!!』

 

前線の衛士はその性質上常に待機状態であり、やることがないからと言ってもそれが自由に使える時間という訳ではない。そんな衛士にとって数少ない「休暇」とは1ヶ月に付き3日提供される非番の日のことだった。ダン達の番は、ちょうどこの作戦が終わって基地に戻った頃だ。

 

アナとエランの言い合いをBGMにダンは初の「休暇」に思いをはせていた。映画か、本か、あるいは──

 

「あっそうだエラン、次の休暇の時、一緒に出かけないか?」

 

基地周辺の歓楽街について案内でもしてもらう。ダンはそう考えた。

 

…何故か1秒ほど時間が固まったように感じた。

 

『……はぁ!?』

 

『え…あ、はい!よろしくお願いします!!』

 

『艦橋より252大隊へ。作戦は第四段階へ移行。全機発艦せよ。繰り返す。作戦は第四段階へ移行。』

 

『ヘルム1より各機へ、仕事の時間だ、気合い入れて行くぞ!!』

 

「了解!!」

 

雑談が強制中断された。ニミッツ級の4つのカタパルトから、ヘルム1、3、4、5が発艦する。次に6から9、そして10から13まで。ニミッツ級はその部隊展開能力を存分に発揮し、瞬く間に一個中隊を送り出した。

 

『ヘルム16、第4カタパルトへ。』

 

「ヘルム16了解。」

 

脚部をカタパルトに固定すると、システムが射出方向と合流ルートを表示した。空母の正面にある大陸は黒い雲で覆われ、ときおりレーザーが何かに発射されている。光線級がいる戦場。戦術機が真に戦うべき戦場であり、初陣とは桁違いに危険な領域だ。ダンは目を閉じ、息を吸って、そして目を開いた。どれだけ危険だろうと、いつかは行かなければならない戦場だ。覚悟はできた。

 

『ヘルム2、14、15、16、発艦どうぞ。』

 

跳躍ユニットのエンジンを始動させる。ヒュウウウゥゥゥン…とエンジンが回転する音が低く響いた。

 

『ヘルム2、出る!』

 

『ヘルム14、出るわ!』

 

『ヘルム15、出ます!』

 

「ヘルム16、出る!!」

 

ぐいと引っ張られるような感覚と共に、機体が発射された。ダンは教本通りに機体を制御し、つま先の風で海面を切りながらNOEを開始。目的地は合流地点M(マイク)1。フランス側から発艦した部隊と合流し、そこでα連隊を形成するのだ。沿岸部に接近すると、通信回線に新たなチャンネルが表示された。アメリカ軍海兵隊だ。

 

海兵隊(ネイビー)より陸軍(アーミー)へ、こちらはそろそろ弾切れだ。前線にいた光線級は片付けたがそこまでだ。後はお前達に頼む。』

 

『ヘルム2了解。海岸制圧を感謝する。』

 

『こっちはこれが仕事だ、いちいち感謝するな。』

 

射撃しながら後退するF-18Eと入れ替わる形で、F-16達が戦場に飛び込む。正面からは突撃級に要撃級、そして戦車級以下小型種のごった返した群れが押し寄せていた。

 

『ヘルム1より各機、強引に押し通るぞ!!』

 

「了解!!」

 

前進しながら武器選択を操作する。ダン含めた何機かのF-16には、肩に巨大なコンテナが取り付けられていた。

 

「ATACMS起動!!発射!!」

 

F-16 1機につき32発、それが計6機分。192初のミサイルが殺到し、正面のBETA群を吹き飛ばした。群れ全体からしたら大したダメージではないだろうが、252大隊が突破するきっかけには十分だった。

 

『食い破れ!!』

 

弾幕を纏う大隊が、迫るBETAを破壊し侵攻する。しかしこれはまだ前哨戦。合流してからが、本番だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




国連地中海方面総軍第3艦隊(UNMC 3rd Fleet)
フランス海軍で編成された艦隊。フランス海軍の主要艦艇の多くがこの艦隊に所属しており、アルザス級戦艦2隻、シャルル・ド・ゴール級戦術機母艦2隻、コルベール級ミサイル巡洋艦以下多数の艦艇で構成されている。

国連地中海方面総軍第7艦隊(UNMC 7th Fleet)
イスラエル海軍で編成された艦隊。スーパータンカーベースの戦術機母艦やロケットコンテナ船などで構成されており、軍艦らしい軍艦は少ない。

アルザス級戦艦
フランス海軍の戦艦。4隻の建造が計画され、現在は第二次世界大戦を生き延びた2隻が対BETA戦仕様に改修され運用されている。BETA大戦前に近代化を進めていたフランス海軍はAL弾運用に適したシンプルな火砲を持った艦艇が少なかった為、1番艦アルザスは日本帝国の紀伊級やアメリカのアイオワ級と異なり服砲を多く残したまま改修された。
1番艦アルザス
2番艦ノルマンディー(第二次世界大戦で戦没)
3番艦フランドル(アルザスと異なり、完全に服砲を廃し対地攻撃に特化)
4番艦ブルゴーニュ(建造中止)

リュピ級強襲潜水艦
フランス海軍の潜水艦。A-6を運用するためのいわゆる「母艦」だが、ソードフィッシュ級のライセンス生産品ではなく独自の艦艇となっている。ソードフィッシュ級と比較してVLSの搭載数で勝る。

ファーゴ級軽巡洋艦
アメリカ海軍の巡洋艦。AL弾運用がメインであり、対地攻撃を主任務とはしていない。第二次世界大戦時に13隻が計画され、10隻建造。その後BETA大戦向けに現存していた前級のクリーブランド級軽巡洋艦にもファーゴ級相当にする改修が行なわれた為、現在は元クリーブランド級含め23隻がファーゴ級とされている。
1番艦ファーゴ
10番艦アンカレッジ
11番艦クリーブランド(元クリーブランド級軽巡洋艦ポーツマス)

モンタナ級戦艦
アメリカ海軍の戦艦。アルザス級同様AL弾運用のため服砲を多く残している。
1番艦モンタナ
3番艦メイン
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