Muv-Luv Alternative ~Boder of War~   作:Light planet

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Log:6 進軍のじゃり道

2000/4/12/07:40

 

「邪魔よ!!」

 

FWS-G1突撃砲から発射された劣化ウラン弾が要撃級を蜂の巣にする。凄まじい速度で戦場を侵攻するフランス陸軍第131戦術機甲大隊、当然その先頭には、突撃前衛たるベルナデッド・リヴィエールがいた。

彼女の戦闘力は圧倒的だった。二丁の突撃砲で接近しながら要撃級を撃破し、飛び掛かろうとした戦車級には兵装担架から射撃を浴びせ、そのまま主腕で次の敵を攻撃する。それでも負けじとジャンプした戦車級の集団相手には、跳躍ユニットを使って機体を大胆にスピンさせる。機体の各所に着けられたカーボンブレードで戦車級を切り刻みながら、跳躍ユニットの加速力が乗った回し蹴りで不意打ちを狙う要撃級の頭を蹴り砕いた。サッカーボールのごとく吹っ飛ぶ要撃級の顔を横目に、突撃級に36mmを撃ちながら120mmを発射。36mmや120mmは突撃級の正面殻に弾かれるが、これは全くダメージを与えていないという訳ではない。命中箇所にはへこみや傷がつき、それが重複すればひびも入る。牽制のように撃ち込まれた36mmはFWS-G1突撃砲の精度とベルナデッドの技量により極めて狭い範囲に命中し、その衝撃は甲殻に多数の細かな傷を付けた。そしてその中央に命中した120mmAPCBCHE弾は細かな傷を大きな破壊へと変換することで、BETAの肉質へ食い込んだ。ドパン!!突撃級が木っ端微塵に爆発する。だが、BETAの進撃は終わらない。胴体が破裂した突撃級を飛び越え、要撃級がベルナデッドのラファールに襲いかかった。

 

「遅い!!」

 

要撃級がその腕を振り下ろすより先に、ラファールが懐へ飛び込む。要撃級を振り払うように動いた左腕、固定式のSDDfB-1カーボンブレードが振り下ろされる筈だった腕部を断ち切った。バランスを崩した要撃級は無様に転がり、追撃するよりも前に横合いから飛んできた36mmにより黙らされた。これはベルナデッドの射撃ではない。

 

『テスト4!今日も絶好調だな!!』

 

「テスト6!獲物を捕らないでくれる!?」

 

テスト6の駆るラファールだ。テスト18は突撃砲を左腕に持ち替え、兵装担架からBWS-5B(フォルケイトソード)を抜刀した。

 

『はああああ!!!』

 

振り下ろされる死に神の鎌が要撃級を真っ二つに切り裂く。振り下ろした腕を跳ね上げ2匹目の要撃級も両断し、3匹目を左腕の36mmで迎撃しながら体勢を整えるテスト6のコックピットに警報が響いた。突進してくる突撃級だ。しかし、衝撃は来なかった。ベルナデッドの撃った120mmにより、突撃級の胴体が粉砕されたからだ。

 

「これでチャラにしとくわ!」

 

近接密集戦、あるいはハイヴ内での混戦において長刀は有利──この理論を、ベルナデッドは明確に否定していた。長刀はその性質上即座に攻撃するのは難しく、攻撃後の後隙も大きい。接近する以上BETAの反撃に遭うリスクも高い。しかし突撃砲ならばいかなる姿勢でも、主腕あるいは兵装担架を最低限向けることが出来れば、その最高火力をBETAにたたき込むことが出来る。弾薬問題も訓練や補給で克服可能であり、むしろ長刀のもたらす補給では回復できない機体負荷こそ長時間戦闘が予想されるハイヴ内戦等では致命的な弱点となる。故にベルナデッドは結論づける。攻撃する際に要求される自機の体勢、友軍や敵との距離、火力を発揮するまでの行動の必要数といったあらゆる面において、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『テスト1より各機へ、そろそろ122(シーニュ)大隊が到着する。我々は先行し、フォーメーション、グスタフ・ワンでM1へ向かう。』

 

「了解!!」

 

跳躍ユニットから鋭い音を響かせて、竜騎兵達は進軍を再開した。

 

 

2000/4/12/07:54

 

『ヘルム1よりCP。合流地点M1にて131大隊と合流し周辺地域を制圧。252大隊及び131大隊に被撃墜あらず。現在122大隊を待っているところだ。』

 

『CPよりヘルム1へ。122大隊は後数分で合流できる地点にいる。しばし待て。』

 

『ヘルム1了解。』

 

ふう、とダンは大隊長の無線を聞きながらコックピットで一息ついた。252大隊は先ほど補給を終え、現在は補給中の131大隊と変わって周辺を警戒している。しかし周辺のBETAは駆逐され、現在視界に映っていない。

 

「化け物かよ…」

 

『化け物って?』

 

「フランス軍のことですよ。俺たちより激戦地を通ってきたのに、俺たちより速く到着して完全に制圧って…』

 

『機体が違うからね。』

 

131大隊の戦術機はフランス軍の最新鋭機たるラファールだ。ルカの本にその強さが長々と書かれていたが、あの長文は嘘ではなかったようだ。

 

「それはそうですけど…」

 

『私たちは私たちの役割を果たす。それに集中しなさい。』

 

『そういうことだヘルム16。まだまだ戦闘は続くんだ、油断するなよ?』

 

了解(ラジャー)、ヘルム2。』

 

雑談をしているとレーダーに反応があった。この識別は122大隊機のものだ。

 

『シーニュ1よりヘルム1へ。すまない、遅れたな。』

 

『ヘルム1よりシーニュ1。なあに、フランス人が食事に時間をかけるのは知ってたさ。』

 

122大隊も全機が合流地点に到着した。隊長機であるゲグラン機は血まみれではあるが、汚れているだけで傷一つついていなかった。

 

『シーニュ1より連隊各機へ。観測情報によると現在光線級は事前の予測通りポイントα付近に集結中であり、最低でも重光線級10体、光線級22体はいることが予測されている。』

 

『となると規模は連隊から弱旅団ってところか…』

 

『その通りだテスト2。光線級周辺の要塞級は30を下回らないだろう。これより我々α連隊は部隊を二つに分ける。まずは我がシーニュ大隊が陽動としてBETA群の進行方向正面から仕掛ける。次に進行方向の右側面からテスト大隊とヘルム大隊が攻撃。テスト大隊は直衛の要塞級を引き剥がせ。ヘルム大隊はその火力で光線級どもを血祭りに上げろ。異論はないか?』

 

連隊という規模を活かした、やや強引ながらも優れた作戦だ。誰も異論は無かった。

 

『よし、では早速行動に移ろう。全機、移動開始。』

 

「了解!」

 

推進剤、弾薬共に十分。さあ、作戦開始だ。

 

 

2000/4/12/08:20

 

『BETA群確認!正面方向、距離2000!!』

 

「全機、後退しつつ攻撃開始!間違っても突っ込むな!!」

 

122大隊の機体が攻撃を開始した。122大隊が展開した地域は砲弾や爆撃で出来たクレーター地帯。戦術機達はクレーターから顔を出して射撃し、BETAが接近したら次のクレーターに飛び込むという方法で光線級の発射を阻害していた。戦術機の全身が隠れるほどはないクレーターだが、クレーターのくぼみに入った戦術機を攻撃する為には戦車級どころか歩兵級まで横にどける必要があり、それは密集したBETA群には不可能だった。

 

ダダダン!!ミラージュ2000の持つDFA-55中隊支援砲が火を噴く。3点バースト射撃で発射されたAPFSDS弾は突撃級を真正面から貫通し、その活動に致命的な異常を与えた。次は弾薬をHE弾に変更し、フルオート射撃。爆風の嵐が巻き起こり、小型種や要撃級(ソフトターゲット)が次々と吹き飛ばされていく。

 

『スコア伸ばし放題だ!!どんどん来やがれ下等生物ども!!』

 

『オラオラー!!レーザーが無きゃこの程度なんだよお前らはぁ!!』

 

『気色悪いわね!!さっさと消えなさい!!』

 

次々と現れては、次々と死体になるBETA。ハイヴ攻略戦ではこのまま現れる量が処理速度を上回りかねないが、今はそうではない。足の速い中型BETAが次々と前線に移動したことで、群れ全体の()()は下がりつつあった。

 

「頃合いか…テスト大隊、ヘルム大隊、攻撃開始!!」

 

 

『シーニュ1より攻撃命令!テスト1よりテスト大隊各機へ!突入してガードを引き剥がすぞ!!竜騎兵(ドラグーン)の雄志をアメリカ軍(アーミー)に見せつけろ!!』

 

32機のラファールは跳躍ユニットを起動させ、正面の山岳を一気に飛び越えた。

 

『いたぞ!!要塞級37!』

 

『小隊単位で攻撃!!光線級の射線を意識しろ!!』

 

作戦通り、中型BETAの多くが陽動部隊に向かって行ったため、光線級のガードは手薄になっていた。しかしそれでも要塞級は37体もおり、中型BETAも少なくなったといっても多数と言って十分な量がいた。

 

『テスト2より小隊各機、右の3体を狩るぞ。』

 

「了解!!」

 

ベルナデッドは小隊長の命令に答え、四丁の突撃砲を正面に構えた。まず兵装担架の二丁からAPFSDS弾を発射。要塞級の垂れ下がった胴体に命中したことを確認すると、今度は主腕の突撃砲でAPCBCHEを叩き込む。寸分違わずAPFSDS弾が開けた穴に命中した弾頭により、要塞級の胴体が大きく削り取られた。これでは衝角の発射も、胎内のBETA放出も行えない。

 

ベルナデッドが胴体を破壊する傍ら、テスト2とテスト5は接合部にAPCBCHE弾を撃ち込み、テスト6は長刀で接合部を切り裂く。右側の足4本を破壊された要塞級は、力なく倒れた。しかし、これでもまだBETAとしては「生きている」らしく、光線級は攻撃してこない。要塞級のうち7体が同じように倒され、BETA群の右側面に簡易的なバリケード陣地が形成された。

 

 

『いくぞ野郎ども!!目玉野郎を血祭りにあげるぞ!!』

 

「了解!!」

 

要塞級のマーカーがいくつか消滅したのを確認し、252大隊も突入を開始した。手前にいた要塞級が倒れたことで空いた隙間からいくつもの予備照射が発射され、そのうち一本がダンのF-16に突き刺さった。

 

「死ねぇ!!」

 

ダンはレーザーを恐れるより前に、殺意でもって応戦した。レーザーの射線が通るということは、こちらの射線も通るということなのだから。36mm弾の雨により、ダンを狙っていた光線級は肉塊へと変わった。

 

F-16達は着地することなく低空で飛行し、群れの奥に潜り込んだ。周辺のBETA達は光線級を守るように、入り込んだF-16に向かい始める。しかしそれは、先ほど展開した131大隊のラファール達に背を向けることと同義だった。

 

『おっと、俺たちとの遊びはもう終わりかい!!』

 

『浮気とは感心しないなあ、クソッタレども!!』

 

尻を向けるBETAに対して容赦なくたたき込まれる攻撃。特に旋回が遅い要塞級はラファールを迎撃しようと右に回り、今度はF-16を迎撃するべく左に回りと完全に状況に振り回されていた。

 

『レーザー属種確認!!一匹残らず平らげろ!!』

 

光線級をその足で踏み潰しながら、ヘルム1が勢いよく着地した。兵装担架と合わせた4門の突撃砲が、光線級を高出力照射前に次々と刈り取っていく。

 

『死んで!!』

 

『死にさらせ!!』

 

ダン達の小隊も着地し、攻撃を開始。エランとアナは36mmで光線級を吹き飛ばしていた。

 

『ウスノロがぁ!!』

 

一方ヨハンはナイフの一閃で、瞼を閉じようとした重光線級に致命傷を与えた。半端に開いた瞼から体液を垂れ流し、重光線級は足下にいた小型種を巻き込んで倒れた。

 

「食らえ!!」

 

ダンももちろん攻撃した。36mmは重光線級に何発も命中したが、致命傷にはなっていない。重光線級はうっとうしそうに瞼を閉じて、その攻撃を遮った。

 

「甘いんだよ!!」

 

ダンは120mmを瞼に1発撃ち込んだ。弾種はHESH弾。瞼に貼りついた弾頭は炸薬を起爆させ、その衝撃は瞼を伝わり瞳自体を破裂させる。瞼の中から血涙を流し、また1匹重光線級が倒れ込んだ。

光線属種は絶対に味方撃ち(フレンドリーファイア)をしない。故にこのような要塞級に囲まれた状況では、光線属種どもは「どの戦術機を撃っても貫通したレーザーがBETAに当たる」という状況に陥り、反撃出来なくなってしまうのだ。

 

 

2000/4/12/08:36

 

『全機反転、残敵を狩りながら合流するぞ!!』

 

《了解!!》

 

陽動に動いていた122大隊も後退をやめ前進を開始する。狙うは131大隊と252大隊を包囲するべく動き出した要塞級の脇腹だ。

 

一方252大隊の光線級狩りも佳境を迎えていた。周辺の要塞級はフランス軍に蹴散らされ、1桁になるのも時間の問題だ。しかしこれは、光線属種も射線が通り躊躇鳴く照射するようになった、ということでもあるのだ。

 

『光線属種、残り11!!』

 

エランの支援突撃砲が予備照射を開始した光線級を撃ち抜いた。

 

『10!9!』

 

アナは四丁の一斉射撃で、他の小型種ごと光線級2匹を肉片に変えた。

 

『8!!」

 

ヨハンはナイフで瞼をこじ開け、重光線級の瞳にゼロ距離からAPCBCHE弾を捩じ込んだ。

 

『7!!』『6!!』『5、4!!』『3!』『2!』

 

大隊メンバーも次々と撃破していく。

 

「ラス1!!」

 

ダンを狙って、重光線級が顔を向けた。射線を通すべく、さあっと正面のBETAが退いた。両者の間には、誰もいない。そこだけ切り取れば、さながらガンマンの決闘場だ。ヒィイイイン……光線属種が照射前に放つ独特の音が響いた。一方のダンも、ゆっくりと突撃砲を構えた。

 

バァン!!

 

 

 

シュウウウ…F-16の装甲が煙を上げた。一方、重光線級は予備照射を止め、直後に胴体が破裂した。

 

 

『はいそこボサッとしない!!』

 

「…ッ!!光線属種、全個体撃破!!」

 

アナの声がやけに良く響いた。走馬灯にも似た引き延ばされる感覚の余韻で、たっぷり1秒は止まってしまっただろう。ダンは慌てて撃破報告を叫びながら、再び押し寄せる要撃級を攻撃する。

 

『シーニュ1より連隊各機へ!残敵掃討に移る。一匹も逃がすな!!』

 

「了解!!」

 

ダンは支援突撃砲に持ち替え、バースト射撃で狙撃。3発の弾はギロチンのごとく、アナの背中を狙う要撃級の首を切り落とした。

 

「チェックシックス!」

 

『さっきの分と相殺よ!!』

 

 

2000/4/12/09:00

 

α連隊による連隊規模BETA群αの迎撃は、無事完遂された。

 

 

2000/4/12/08:56

 

「グール1よりCP。沿岸部は完全に制圧。繰り返す、沿岸部は完全に制圧した。」

 

『了解グール1。お前達はその場に留まり、周囲を警戒の継続せよ。』

 

「グール1了解。」

 

 

「ま、制圧なんて俺達はほぼやってないんだがな。」

 

イスラエル陸軍所属の衛士、コールサイン:グール1はCPとの通信が切れてからコックピットで呟いた。今ごろ仏米の連隊やその後入ったイラン陸軍(ペルシャ猫)ラビ達(エリート部隊)がBETAを蹴散らしているだろう。大した腕もなく、機体もF-4E(旧式)である彼の部隊に任されるのはいつでもこんな任務だ。もっとも、彼自身はこの任務を気に入っていた。

 

「テキトーにセンサー回しながら突っ立ってるだけで仕事扱いとはなあ…新型渡されるエリートさんが可哀想になってくるぜ。」

 

『全くですな、隊長。』

 

『頑張って腕磨いてやらされるのが死地送りとは…真面目ちゃんはつらいねえ。』

 

わははははと無線で笑い声が響く。沿岸警備部隊の空気は、緩みきっていた。あまりにもスムーズに進む作戦、順調な成果を上げる突入部隊。海兵隊と飽和砲撃により制圧された沿岸部には、既に沿岸警備部隊の役割など残っていなかったのだ。

 

『ん?なんだこの波形…』

 

「どうしたグール7?」

 

『さっき、センサーに妙な反応があって…』

 

「センサーの反応って…整備不良なんじゃないか?」

 

『いやでも、このセンサー、昨日交換したヤツですよ?』

 

 

 

そう、この時までは。

 




BETA戦書くの、難しい…
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