おっさん、転生特典でスキル『おっさん』をもらう。   作:荒井竜馬

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第6話 冒険者ギルドと借り

「ギルドか。冒険者ギルドと商人ギルド、どっちに行くか迷うところだよな」

 

 異世界アニメでは冒険者ギルドと、商人ギルドというのが存在した。その両方に登録をすると言うのもあるが、どちらに重きを置くかで物語が大きく変わっていく分岐点でもある。

 

「え、おっさんが登録するのは冒険者ギルドじゃないのか?」

 

 ノエルは当たり前のような顔でそう言うと、きょとんと首を傾げた。それから、見えてきた街の中でも大き目な建物を指さす。

 

「というか、もうそっちに向かっちゃってるんだけど。ほら」

 

「おお、ここが冒険者ギルドか」

 

 俺はノエルに指さされた建物を見上げてそんな感動の声を漏らした。

 

 アニメなどで見たことのあるテンプレな感じの冒険者ギルド。ここに来る途中にレンガ造りの家や建物は見てきたが、その中でも冒険者ギルドと言われると特別な建物のような気がする。

 

 俺は何度もアニメで見てきた冒険者ギルドを前に、興奮を隠しきれずにいた。

 

「まぁ、とりあえず、冒険者ギルドにも登録は必要だよな」

 

「ていうか、おっさん手ぶらだし、商人するのは無理なんじゃないのか?」

 

「……それもそうだな」

 

 確かに、商人ギルドに登録するような主人公たちはみんなそれ専用のスキルを持っていた。それに対して、俺は『おっさん』というスキルがあるだけだ。

 

 いくら便利なスキルだといっても、『おっさん』のスキルを使って商人になる未来は見えてこない。

 

 身分証明を作るにはこっちの方がいいよな。

 

「じゃあ、入るぞ」

 

 俺がそんなことを考えていると、ノエルが冒険者ギルドの扉を開けた。

 

 すると、そこにはまた何度もアニメなどで見た冒険者ギルドの景色が広がっていた。

 

 役所と居酒屋を併設しているような造りをしていて、依頼が張り出されている掲示板には冒険者と思われる男たちが群がっている。カウンターには制服を着た職員たちが数人いて、冒険者と何かの手続きをしていた。

 

「おおっ、マジでアニメの中みたいだ」

 

「おっさん、おっさん。こっち来てくれ。早く手続き済ませようぜ」

 

「ああ、そうだったな」

 

 俺はノエルに案内されながら空いているカウンターへと向かった。俺たちがカウンターに近づいていくと、二十代くらいの女性が俺たちに営業スマイルを向けていた。

 

「こんにちは、今日はどのようなご用件ですか?」

 

「おっさんに冒険者ギルドのカードを発行して欲しいんだけど」

 

 ノエルは冒険者ギルドのカウンターに両肘を乗せて前のめりになる。それから、くいっと俺のことを親指で指さした。

 

 カウンターの女性はノエルの言葉を聞いて、視線を俺に向ける。

 

「冒険者ギルドへの新規加入ということでよろしいでしょうか?」

 

「はい。それでお願いします。身分証明が必要と言われまして」

 

「そうですね。冒険者ギルドから発行されるカードを持っていれば、それが身分証になりますから。それでは、簡単にご説明しますね」

 

 カウンターの女性はそう言ってから、冒険者ギルドの役割と冒険者ランクについて説明をしてくれた。

 

 冒険者ギルドの役割としては、アニメなんかと同じで魔物の討伐や素材の採取の依頼を発行する場所らしい。

 

 冒険者のランクは八段階に分かれていて、上からS、A、B、C、D、E、F、Gのランクに分かれるとのこと。

 

 そして、俺は一番下のGランクから始まるらしい。騎士団から冒険者になるなどのバックグラウンドがある人を除いて、基本的に一番下の冒険者ランクから始まるらしい。

 

 それから、他にいくつか基本的な説明を受けて、手続きは順調に進んでいった。

 

「それでは、最後に入会費ですね」

 

「入会費……入会費?」

 

 手続きを終えて冒険者カードが発行される寸前までいってから、俺はそんな女性の言葉を聞いて顔を引きつらせる。

 

 それから、ポケットをがさごそと探して見るが、当然そこには都合よくお金が入っているようなことはなかった。

 

 そうだよな。こっちに転移したときに初めに確認したし、お金を持っていたとしても日本の金しか持っていない。

 

 俺が笑って誤魔化そうとしていると、それに気づいたノエルが俺の顔を覗き込んできた。

 

「おっさん、どうしたんだ?」

 

「いや、その、田舎から出てくるまでの間に色々あってな、無一文なんだよ」

 

 俺がノエルにだけ聞こえるようにそう言うと、ノエルはマジかよと言って眉を下げた。それから、ノエルは小さくため息を吐いた。

 

「仕方ないか。おっさん、うちがお金貸してやるよ」

 

「え? いいのか?」

 

「おっさんには助けられたしな。このくらい、当たり前だろ?」

 

 ノエルはそう言うと、俺の代わりに財布を取り出して金をカウンターにいる女性に渡した。

 

 女性は一瞬躊躇って俺をちらっと見てから、ノエルから渡されたお金と引き換えに冒険者カードを俺に手渡す。

 

 ……いいのだろうか。アラフォーのおっさんが小学生くらいの子供にお金を借りてしまって。

 

 俺はじっと発行されたばかりのギルドカードを見ながら、そんなことを考えてしまった。

 

「さ、さすがに、子供にお金を借りたままにはできん」

 

 普通に大人としてマズいだろ!

 

 俺は頭を横にブンブンと振ってから、冒険者ギルドの入会の手続きをしてくれた女性に尋ねる。

 

「あの、すぐにできる依頼とかないですか? できれば、入会費を返せるくらいの報酬の奴がいいんですけど」

 

 俺がそう言うと、職員の女性はいくつかの依頼書を持ってきてくれた。

 

 持ってきてはくれたのだが……まるで文字が読めないぞ。

 

「えっと、この場合は翻訳家の力を使えばいいのか?」

 

『おっさんスキル発動:おっさん翻訳家』

 

 そんな声が脳内に聞こえてきたと思った次の瞬間、依頼書に書かれている言葉がスラスラと読めるようになった。

 

 うん。これなら依頼の内容が分かるな。

 

「おっさん、おっさん。うちも一緒に行っていい?」

 

「え? ノエルは待っていてくれていいんだけど」

 

「いいや、うちも一緒に行きたい」

 

 俺が断ろうとすると、ノエルは首を横に振ってから真剣な眼差しを俺に向けてきた。

 

 何をそんなに真剣になっているんだと思ったところで、俺はノエルが真剣になっている理由に気がついた。

 

 これって、俺がお金を返さずに逃げると思っているから、逃がさないために同伴したいってことか?

 

確かに、このまま俺がとんずらする可能性もあるわけだしな。

 

「すまないな、ノエル。一緒に来てくれ」

 

 ここで無理にノエルを置いていく方が怪しまれるだろう。そう考えて言うと、ノエルはニカッと笑ってからサムズアップした。

 

「うちが案内してやるから、安心してくれ! おっさん方向音痴だもんな!」

 

 ……どうやら、ノエルが心配していたことは俺が想像していたことと全く違っていたらしい。

 

 そんなことがあって、俺はノエルと共に異世界にきて初めての依頼を受けることになるのだった。

 

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