ドーベル・ウィンターズには、2人の幼馴染がいた。
1人はレックス・フォーラー。ドーベルの親友だった少年で3人グループのリーダー的存在だった子だ。
もう1人は、リーファ・メイル。彼女もドーベルの親友だった少女でバイオリンが得意な美少女だった。
子供時代、レックスは、フェンシングの大会に参加し何度も優勝したことがあった。いつしか、レックスは、フェンシングの天才と呼ばれるようになった。
リーファもバイオリンのコンクールで何度も優勝を手にし天才バイオリニストとして有名になった。
そんな天才達の幼馴染をしているドーベルは、はっきり言ってただの凡人だった。特別、頭が良かったわけでもケンカが強かったわけでも足が早かったわけでもない。2人のような何か特別な才能を持っているわけでもない普通の子供だった。それでも3人はとても仲が良かった。
そんな3人の関係に亀裂が入ったのは中学に入ってからだった。
レックスもリーファも学校ではすぐに有名になり2人が幼馴染だと分かると2人は付き合っているといつ噂が流れるようになった。周りの連中は、2人の関係の邪魔にならないように適切な距離を保っていたが昔からの付き合いのあるドーベルはそんなウワサも気にせず交流を続けていた。
そんなある日だった。
「なんで、あんな凡人がメイルさん達と一緒にいるんだ?」
「さぁ、というかアイツ分かってんのかな?フォーラーさんとメイルさん、2人の関係の邪魔になっていることに」
「ボコして分からせるか?」
「そんなことをしたら2人の邪魔になるだろ。ここは優しく教えてやるんだよ。お前は2人の邪魔になってるんだって」
クラスメイトの会話を聞いたドーベルは、自身に何かしらの不幸を起こしてくると思い自身の身を守る為にドーベルは、2人と距離をとるようになった。
月日が経ち中学ももうすぐ卒業。ドーベルも受験勉強で多忙の日を送っていたある日。
「ベル」
「リーファ?」
リーファが話しかけて来た。人気の少ない場所に呼び出されると。
「今度、バイオリンのコンサートがあるの。大きなコンサートでいろんな音楽の先生が来てくれるの。そこで私はバイオリンを演奏することになったの。よかったら、来て欲しいの。ダメかな?」
そう言って、コンサートのチケットをくれた。
この時、ドーベルは気づかなかった。リーファは、少し頬を赤くしそして緊張しているのか少し声が震えていた。
(受験勉強中だけど、たまには息抜きも必要だし久々にリーファのバイオリンを聴くのも)
そう考えながらコンサートの日にちを確認すると。
「あー、ごめん。無理だわ」
「えっ?」
と、断った。
「この日は、俺、高校受験受ける日なんだよ。試験事態は午前で終わるけどこの日は、無理だな」
「わ、私の演奏の時間は午後からなの!高校受験が終わってからでもいいから」
「無理言うなよ。仮に近場でやってたとしても受験で疲れてるから聴きに行くのは無理だって」
ドーベルはそう言って立ち去った。
高校受験が終わりドーベルは、少し気持ちが軽くなっていると。
「ドーベル」
久しぶりにレックスが話しかけて来た。
「お前、どう言うつもりなんだ?」
「えっ?」
「こっち来い」
ドーベルは、人気の少ないところに引っ張られると胸ぐらを掴まれ壁に叩きつけられた。
「なにすんだよレックス!」
「なんで来なかったんだドーベル!お前が来なかったせいでリーファは、バイオリンを弾けなかったんだぞ!」
「ハァ?」
「あのコンサートは、リーファの全てが掛かっていたんだ!なのに、1番聴かせたい人が来なかったせいでリーファのバイオリンの評価は、最低だったんだぞ!お前がリーファの努力を無駄にしたんだぞ!どう責任をとるつもりだ!?」
「何言ってんだ?俺だってその日は受験があったんだぞ?確かにリーファのコンサートにも興味はあったけど今の俺は他人よりも自分のことで精一杯だったんだよ。レックスみたいにスポーツ推薦を受けたわけでもリーファみたいに音楽の推薦を受けたわけじゃないから2人みたいに好きなことを優先してる暇はなかったんだよ」
ドーベルはそう答えた。
「だいたい、その話が本当ならリーファの奴、何やってんだよ。自分のコンディションくらいちゃんと管理しとけよな」
ドーベルは、胸ぐらを掴んでるレックスの手を無理矢理離すとそのままその場を後にした。
それからだった。3人の関係に亀裂が入り溝が生まれたのは。レックスとリーファは、ドーベルと話すことはなくなった。
そして、月日が経ち、中学卒業の日、卒業証書を貰いドーベルも無事、中学を卒業することになった日、ドーベルはレックスとリーファを探していた。こんな喧嘩別れみたいなので終わるのはドーベルも嫌だった。だから、リーファにコンサートに行かなかったことを謝ろうと思っていた。
そしてドーベルは、見た。
卒業生達がクラッカーを鳴らしレックスとリーファを祝っていた。そして、2人はその大衆の前でキスをしていた。
(・・・・・こりゃ、完全に場違いだな。仕方ない、また今度、出直すか)
廊下から中を見ていたドーベルは、そのまま、家に帰ることにした。
そして帰宅後の夜。突然、家族会議が開かれた。
「最近、ジオンの独立デモが激しくなってるんだ。このままいけばもしかしたらジオンは、地球連邦政府と戦争をすることになるかもしれない。だから、そうなる前にジオンからサイド6に移住しようと考えてるんだ。住む場所も新しい仕事もすでに見つけてある。それで悪いんだけど、ドーベル、頑張って受かった高校なんだけど、辞退してくれないか?」
ジオンからサイド6への移住計画だった。ドーベルもまだ、やり残したことがあったけど親の言うことには逆らえず了承し、ドーベルは、リーファに謝ることができないままサイド3から姿を消したのだった。