ハンドラーは、ジャブローの地上ででゆっくりとコーヒーを飲んでいた。
「階級は、特別に二階級昇進で中佐になり独立モビルスーツ隊の指揮官として正式に認められた。正直、マドラス基地の司令官になれるだけでも大収穫のつもりだったがまさか、ジャブロー所属の独立モビルスーツ隊は、予測できなかったな。ジオンがジャブローを攻めたと聞いた時は驚いたが防衛戦に間に合ってればもっと昇進できたかもしれないな」
「そうですねハンドラー」
隣には、アシュレイ中尉とガードドック隊の隊員達が控えていた。
「戦争の主導権は、ジオンから連邦に移ってようやく、宇宙へ進軍するようだがシープ1は、どう考える?」
ハンドラーがコーヒーのおかわりを貰いながら訊ねた。
「まずは、ソロモンの攻略から始まるでしょう。ジオンには国力がありませんからソロモンが落ちれば降伏する可能性はありますがギレン・ザビの性格を考えたら徹底抗戦を貫くでしょう」
「そうだろうな。キャリフォルニアももうすぐで攻撃が始まってるようだがモビルスーツの数を考えたらキャリフォルニアが落ちるのも時間の問題だろう。おそらく、北米での任務が来ることはないだろう」
ハンドラーはそう言ってゆっくりとコーヒーを飲んだ。
「となると次に来る任務は、アフリカの攻略でしょうか」
ハンドラーは、立ち上がり少しだけ前に進むと。
「ハウンド1はどうなっている?」
振り返ってアシュレイ中尉に訊ねた。
「よっぽどこたえたのでしょう。未だに立ち直れず回収した遺体の前に足を運んでいるようです」
「そうか。(任務が来るまでに立ち直ってくれればいいが・・・・まぁいい。もし、ここでリタイアするのならそれまでの存在だっただけだな)」
ジオン本国のとある酒場、そこでは未成年でありながら酒場で酒を飲んでいるレックスの姿があった。
「なぁ、アイツって【黒騎士のレックス】だよな?なんで、本国にいるんだよ?」
「お前、今更?ほら、敵前逃亡と」
「いや、それは知ってるよ。敵前逃亡と婚約者を殺しただろ?そうじゃなくて仮にもエースなんだろ?ソロモンかグラナダのどちらかに連邦軍が攻めて来るって話を聞いたし援軍に行かねーのかよ?」
「バーカ、婚約者以前に味方を殺して逃亡するような奴だぞ?そんな奴が最前線に立ったとして安心して背中預けられるか?いつ、裏切られるのかも分かんねーのに」
「確かに」
同じように酒を飲んでいる一般兵の声を聞いてレックスは、兵士を睨みつけた。兵士は、そそくさに金を払って出て行った。
「クソ!」
レックスの頭の中にあるのはドーベルへの憎しみだけだった。愛していたリーファは、もうどこにもいない。あの時、ドーベルがリーファを殺したからだ。と、レックスの頭の中ではそう記憶していた。一種の現実逃避かそれとも無理矢理自身の嘘で記憶を捏造しているのかは、分からないがドーベルにトドメを刺そうとして結果的にはレックスが殺した瞬間の立ち位置をレックスは入れ換えていたのだ。
だから、あの時、リーファが庇ってくれたのはあくまで自分そして殺したのはドーベルだと強く捏造していたのだ。
「マスター!もっと酒をよこせ!」
「もう、それ以上はやめておいた方が。それに君は未成年でしょう?」
「うるさい!!俺を誰だと思ってるんだ!!フェンシングの天才で黒騎士って呼ばれた英雄なんだぞ!!」
そう言ってマスターの胸ぐらを掴もうとすると。
「彼の分の酒代は私に回してくれ。そして今の分も私から奢らせてくれ」
隣に座った客がそう言ってマスターに金を払った。
「誰だお前?」
「私は、ビスト中尉。所属はギレン親衛隊だ」
ビスト中尉の所属を聞いてレックスは、目を丸くした。
「総帥の親衛隊がなんのようだ?」
「なに、君をスカウトしに来たのさ」
「スカウト?」
マスターから出された酒を受け取りレックスは、酒を飲んだ。
「ギレン総帥は、オデッサやマドラスでの働きを高く評価している。マドラスではちょっとしたトラブルがあったみたいだがな」
そう言われてレックスはビスト中尉の胸ぐらを掴んだ。しかし、ビスト中尉は動じず続けた。
「ギレン総帥は、君に開発中の新型モビルスーツを任せたいと言っていた。どうだ?のってみるか?」
ソロモンの攻略作戦がもうすぐで始まろうとしている中、ドーベルは、相変わらず、リーファが死体の前にいた。今でもドーベルは、辛そうな顔でリーファを見つめ後悔をしていると。
「ドーベル」
死体保管室に入って来たのはレベッカだった。
「なんのようだレベッカ」
ドーベルが訊ねるとレベッカは、問答無用で近づきドーベルを殴った。
「っ!!」
突然殴られたドーベルは、死体が保管されている遺体保存ロッカーに叩きつけられた。突然のことにドーベルは何が起きたのか分からずにいた。
「いい加減にしなさいよドーベル」
レベッカは、そう言ってドーベルの胸ぐらを掴んだ。
「ジャック達から聞いたわ。あなた、リーファさんから遺言を受け取ったんでしょ!?」
「遺言?」
「そうよ!あなたの幼馴染を!黒騎士を止めて欲しいって言われたんでしょ!?」
「レックスを止める?」
「そうよ!確かに幼馴染が死んだのは悲しいかもしれないけど、今は彼女の遺言を叶えなきゃいけない責任がドーベルにはあるのよ!」
レベッカは、そう言って胸ぐらから手を離すと。
「もし、彼女との遺言を破棄するようなら私はあなたと別れるわ。私が惚れたのは仲間思いで正義感を持った強い男。だけど、幼馴染との約束を簡単に無かったことにするような男は私は大嫌いよ」
そう言ってレベッカは、部屋を出て行った。
「・・・・・・リーファ、俺は・・・・もう、戦いたくない。なんで、レックスを止める大役を俺に任せたんだよ」
そう言ってドーベルは涙を流し。
「分かってるよリーファ。俺にしか・・・・いや、俺がやらないといけないってことくらい分かってるよ」
頭では分かっていてもドーベルは、レックスを殺したくないという気持ちが強かった。だけど、レックスの腕はドーベル以上、殺さずに無力化させる自信なんて無かった。
「どうすればいいんだよリーファ」
そう言ってドーベルは、悩み続けるのだった。