あの魔女達には、バカしかいない   作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ

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実は昔、別サイトで投稿してました。

 一応、1話完結を複数並べるイメージで書いています。
 いきなり話の流れがぶった切られたりしますが、そういう仕様です。

 


1

 

 

 

 辺りは焼き焦げ、ヤムチャしやがって……なクレーター跡が無数に出来ている。荒れに荒れてしまったせいか此処がどこであったかすら分からない。強いて言うなれば、()()富士山が傍らで控えている事が特徴か。

 

 パステルカラーで彩られた不思議な装甲をした、人みたいな顔の四足獣の“怪物”が4人の少女達と対峙している。

 彼女達も彼女達で中々に個性的な衣装ではあるが、各々がそれなりに、とは言えない程の傷を負っていた。1人は既に地に伏してしまって、何とか意識だけ保っている様な状態である。

 

 

「今です!私ごとやって下さい!」

 

 

 そう叫んだ紺のドレスアーマーの彼女は、既に装甲と呼べる箇所は砕けてしまって殆ど残っていないし、全身の痛々しい傷からは多くの血を流し、朱の迷彩を描いている。

 そんな状態でもなお笑って、巨大なタワーシールドで“怪物”の攻撃を受け止めて抑えている。

 

 

 

「オッケー助かる!クライちゃんは後でアイツの治療よろしく」

 

「えっ!?ちょっ待ってベリーさん待って!治療なら2人で一緒にやりましょうよ!ねぇ!」

 

 

 そんな盾持ちの言葉を聞くや一切の躊躇い無くライフルをくるりと一回転させて魔法の弾を装填している、ベリーと呼ばれた橙と灰色のメイドは流れる様に照準を化物に合わせた。

 勿論、盾持ちの彼女もその射線に入っている。

 

 そんな彼女の後ろで、1人だと効率が悪いんじゃぁと喚いているのは大きな筆を持った和装の少女だ。別に盾持ちの心配はしていない。ただ、その後の怪我の治療を自分1人で行うのが嫌なだけである。手間だからだ。

 

 悲しいかな彼女の言葉は見事にスルーされ、ライフルの銃口に光が集まっていく。盾持ちごと射抜かんと力が圧縮されたそれは、光の筋となって放たれた。

 

 

「ラスボス風情が偉そうに、いい加減にくたばんな!」

 

 

 真っ直ぐに伸びる光の筋は、盾持ちの左肩から肘辺りまでを貫通し、タワーシールドもブチ抜いて、とうとう“怪物”の眉間に風穴を空けて、体内にある心臓とも言える結晶を撃ち砕いた。

 

 力の源である結晶を失い、ボロボロと体を崩壊させる“怪物”を確認したライフルを構えたメイド風の彼女は、少し焦って大筆の彼女に指示を出している。

 

 

「治療は後!思ってたより崩壊が速い、隔離と封印を急いで!」

 

「やってます!けどまぁ、割と間に合いそうです」

 

 

 指示よりも速く行動していた大筆の彼女は、大小2本の筆を使い虚空に黄と紫で何やら図形を描いている。

 速く正確に、一画のミスさえ許されずに行う最後の大仕上げだ。時には描いた図形すらも足場として駆け上り、時には筆を放り投げて持ち替えて、一心不乱に踊るように舞うように描いたそれは、まるで大きな大きな鳥籠である。

 

 不意に動きを止めたのはきっと、その鳥籠が完成したからなのだろう。

 

 少し離れた場所で頭上に黄色で円を描くと、悲しい事に鳥籠にも巻き込まれていた盾持ちが落ちてきた。

 

 

「グーさん。早く立って下さい。邪魔です」

 

「いたた……これでも私、結構な怪我人なんですが?重傷者なんですが?もう少し優しくして下さい」

 

「あとでね」

 

 

 軽口を叩きながら、何処からか取り出した1枚のコインを鳥籠に向けて弾いた盾持ちは、流石に限界だったのかその場でしゃがみ込んでしまった。

 因みに、あのメイドにやられた傷が1番痛いらしい。いやホント、本気で。左腕を押さてえ蹲ってしまったのだから相当である。彼女の防御力は相当ではあるが、回復は得意ではないのだから勘弁してほしい。

 

 そのコインの着弾に合わせて、メイドは1枚のカードを、大筆は1つのサイコロを鳥籠に向けて放っていた。

 

 

「でもやっぱ、分霊箱なら7つに分けたいよねぇ」

 

「何ですかそれ。ボクにも分かるネタで言って下さいよ」

 

「んなっ…あの映画シリーズを知らない…だと!? よし帰ったら皆で鑑賞会しよっか、書籍もグーちゃんが全部持ってる。安心していいよ」

 

 

 ラストバトルもこれで終了か。

 崩れ落ちる“怪物”は鳥籠に残滓すらも絡め取られ、コインとカードとサイコロに纏めて吸収されていく。

 

 最期の置き土産とも苦し紛れにも見えるやけっぱちな攻撃を撒き散らすが、メイドと大筆の2人がその尽くを撃ち落とす。

 あの“怪物”も、これ以上の抵抗は出来ないのだろう。なにせ力の源である結晶が既に無くなっているのだから、姿を維持する事すらも限界の筈だ。

 

 ほんの数十秒にも満たないうちに鳥籠は姿を消した。残されたのは、それらを吸収した妖しい輝きを放つ3つのアイテムだけ。

 

 

「グーさん。応急処置はしましたよ。あれを回収して帰りましょう」

 

「あの、添え木じゃなくて痛み止めか治癒の魔法が欲しいのですが…ほら私、あの不良メイドに左腕に穴を空けられてしまっていて…」

 

「我儘は後で、帰るまでがボス戦です。体力は出来るだけ温存しておきたいので」

 

「わ、わがまま…?貴女の回復速度なら誤差なのでは……?」

 

「この後、誰がご飯用意すると思ってるのかな?ボクだよ?」

 

 

 今にも泣きそうな盾持ちを駄々っ子を見るような目で見ていた大筆は、3つのアイテムを回収すると、黄色のインクで円を描いてからメイドを呼ぶ。

 

 

「やぁやぁコダマちゃん、君にも来てもらうよ」

 

「貴女達は、一体何を……くっ、離して下さい!」

 

 

 若草色で柔らかなレースのドレスを纏う少女は未だ立ち上がる事も出来ず、何を考えるのか分からないメイドを睨みつける様に見上げている。

 メイドは大筆に呼ばれている事に気付くと、荷物を抱き上げるが如く若草色の彼女を担ぎ上げるとスタスタと大きな筆の描いた黄色の円をくぐって行った。それに続いて半べそな盾持ちが円をくぐる。

 

 最後に大筆が灰色のインクを一帯にぶち撒けた。焼跡やクレーターにインクが掛かった事を確認した大筆も、黄色の円をくぐり姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、何処かの家の1室に4人は集まっている。若草色の彼女は煩かったのでもう一度気絶させて(眠ってもらって)いる。

 

 

「とりあえず治癒の魔法をお願いします。そろそろ痛みが限界なんです。いい年した私が泣き喚きますよ?良いですか?ほらもう泣きそうですよ?」

 

 

 そんな盾持ちを可哀想な人を見る目で見るメイドはリボルバーに緑色の弾を6発装填し、大筆も筆先を緑に染めた。

 メイドは3発ずつ盾持ちと若草色の彼女に撃ち込み、大筆は2人を面倒臭そうに塗りたくった。

 

 これが言っていた治癒の魔法らしい。パッと見ではもう殆ど傷は残っていない。

 

 

「一応言っとくけど、傷は塞がりはした。ただ完治じゃないからね。暫く…まあ、明日明後日ぐらいは安静にしときなよ」

 

「ありがとうございます。でも怪我の半分以上は貴女にやられました」

 

「グーちゃんも纏めて攻撃した方が確実に当たるからさぁ、仕方ないね、うん、仕方がないんだ。…ところでコダマちゃんはどうする?うちの子にする?」

 

「それも悪くないですね、楽しそうですし」

 

 

 やっちまったものは仕方がない。話を逸したいメイドは、傷の塞がった若草色の彼女に視線を向けた。

 

 ちょうどタイミング良く意識が浮上してきたのか、身動ぎをする彼女に優しく、そう、無駄に刺激しないように優しく声をかける盾持ち。

 今まで散々におちょくって来たのだ、メイドが。若草色の彼女が並々ならぬ敵対心を持っている事を皆知っているのだ、このクソメイドに対して。

 

 しかし3人はこの若草色の彼女の事が大好きだ。きっと何とかなると信じたい。

 

 絶対に要らん事をするアホメイドは大筆に任せて、盾持ちが目を開いた彼女に視線を合わせて身を屈める。

 

 

「おはようございます。乱暴に連れてきてしまい申し訳ありませんでした。お目覚めのばかりで恐縮ですが、少々お時間を頂けませんか?そうそう、貴女にも治癒の魔法を施しました。身体に違和感が無いかのご確認を願います」

 

「貴女は……いえ、ありがとうござ──ぃ゙ッ!」

 

 

 にっこりと穏やかに微笑む盾持ちに毒気を抜かれたのか、戦闘中の尖った精神はなりを潜め……なかった。

 ペチン、と彼女の額に輪ゴムが飛来したためである。目を向ければメイドがこちらを見ているではないか。

 

 あぁコイツ、やりやがったな。と大筆と盾持ちの心は1つになっていた。が、そんな2人を無視してメイドは淡々と話し始めた。

 

 

「これで君を許した事にしよう」

 

「は? 何で──「黙って聴きなよ、聴かれた事にだけ正直に答えなさい。君の意見は後でゆっくり聞くからさ」

 

 

 手にしたリボルバーを弄びながら全く感情を感じられない声音で話すメイドに、ただただ絶句する。普段あれほど適当で能天気な彼女からは想像も出来ない態度に、大筆と盾持ちさえも動きを止めている。

 いつの間に武器を持ち替えたのだろう。

 

 

「さて……

 1つ、君1人の独断。

 1つ、君単騎での突撃。

 1つ、敵戦力の過小評価。

 1つ、撤退するタイミングの喪失。

 1つ、命を賭ける場所と意義。

 言いたい事は沢山あるけど、この5つを責めよう。君含め我々の過程はどうあれ、最善ではないにしろ結果は及第点には届いたか、ら……ねぇ!」

 

「痛ッ」

 

 

 左手の五指を折って語り、その握った拳を若草色の彼女の脳天に叩き落とす。許すと言った者がやる行いではない。が、あまりの迫力に、拳を避ける事も受け止める事も出来なかった彼女は痛む頭を抑えて涙目で睨み返す。

 それを一瞥してもメイドの口は閉じる事はない。

 

 

「はいるちゃんの話、最後まで聞いていないそうだね。説明の途中で飛び出して行ったと聞いているよ。慌てた彼女から来た連絡は『今すぐ行って助けてくれ』だ。駆けつけてみれば既に瀕死じゃないか。 ()()()() 最後まで話を聴か無かったんだい?」

 

 

 『どうして』、メイドが言った途端に若草色の彼女の雰囲気は変わった。動揺や不安、敵対心や反抗心に覆われていた心が、怒りで塗り潰されたからである。

 顔を上げ、メイドに詰め寄りながら言い返す。

 

 

「どうして……ですって? あの“怪物”を倒し、消滅させる為に決まっています。えぇ確かにあれの強さは想定外でしたし、私1人力では及ばなかったのは事実。増援や撤退も考えるべきでした」

 

「だったら──「貴女達が犠牲になってもいいと?」

 

 

 今度は私の番とばかりに言葉を被せる。

 そして、その言葉に若干の引っ掛かりと心当たりがある3人は全てを察し、元凶の姿を思い浮かべていた。

 

 

「あれを討伐ではなく封印するのは……まぁ、納得はしませんが理解しました。ですが!その代償に、封印の人柱として貴女達3人を犠牲にするのは、余りにも…あまりにも……貴女達はそれで良いんですか!?確かに、私達は味方同士ではありません。それでも、何度も共に戦ってきました。言葉を交わしてきました。…私達は味方同士にはならないかもしれませんが、敵同士でもありません!私は、貴女達と…友人にはなれたと、思っています。貴女達が私をどう思っているのかは知りませんが、私は…私は友達が犠牲になると分かっていて見送るなんて事、したくないんです。私はそんなにも頼りないですか?確かに貴女達程強くはないですが、何も出来ない程弱くは無いつもりです。本当に、貴女達を犠牲しなければいけないんですか?皆が無事で済む方法を探しませんか?私も…、一緒に頑張ります……だから…、だからみんなで……おねがいします、生きてくれませんか?」

 

 

 堰を切って溢れ出た言葉はもう、止まらない。

 必死に抑えて堪えてきた感情が涙になって流れ出ていく。

 彼女にとって、3人はある意味では心の支えになっていた。味方ではないけれど、敵でもなかった。時に共闘し、時に対立して、たまには助け合って、しょっちゅう追い掛け回して、気付けば『最強』なんて呼ばれる様になっていた自分を、尽く負かしてきた圧倒的な強者達。自分よりも強くて、優しくて。この重たい『最強』の仮面を被る必要の無い存在。

 そんな簡単に負けたりしない。彼女にとって目標でありライバルだった3人が犠牲なるなんて。信じられるハズがなかった。

 

 

 

 「「「…ッスゥーーーーーー……」」」 

 

 

 対して、泣き出してしまった彼女から露骨に目を逸らし、互いにアイコンタクトをとっている『最強』よりも更に強い3人。

 

 気付いてしまったのだ、致命的な情報のすれ違いに。

 

 

 犠牲?

 いったい何の話だ? 

 死ぬかも知れないリスクは…背負っているな、うん。殺るか殺られるかだからね、承知の上さ。そういう戦いだからね、うん。

 

 まさか、本当の本当に最悪の事態を想定したプランの話ではなかろうな。

 それこそまさかの仮定の話だぞ!?

 

 人柱とか犠牲って、本当にどうしようも無くなった時の最終手段としては上がってたよな。

 欠片も実行するつもりは無いけど。死にたくなんかないし、まだやりたい事だっていっぱいあるし。

 

 でも、このリアクションを見る限りそうなのかも知れない。

 

 

(((アイツの入れ知恵か……)))

 

 

 メイドに、大筆と盾持ちの視線が突き刺さる!

 逃さねぇぞ、テメェの監督不届だ何とかしやがれ。と2人の目は雄弁に語っている。

 

 お前が説明しろ、と。

 

 

「やぁ〜…あの〜、コダマちゃん?その……落ち着いて?ほら皆無事だよ、ここに居るよ。…だから落ち着いて聴いて欲しいんだ」

 

「……はい…」

 

「その計画と言うか作戦ね、そもそも実行するつもりは無かったよ。実行したくても、はいるちゃんが居ないと出来ないからね。そして何より、まだまだ死にたくないしね。マジカル☆ミラクルな魔法パワーであと300年は遊んで生きて行くつもりさ!…ね、はねるちゃん!」

 

 

 努めて明るく、普段の3割増しぐらいおちゃらけて言うメイドを、大粒の涙を溜めた瞳で見つめる若草色の彼女。まだ、疑っているみたいだ。

 困ってしまったメイドさんは、うっかり大筆を本来の名前で呼んでしまった。

 

 

「ベリーさん…いえ、(よど)さんの言うとおりです。ボク達に、死ぬ気はありません。そうですよねグーフアップ改め、 千歳(ちとせ)さん」

 

 

 すかさず、援護にはいる大筆。

 と言うより、この一瞬で色々を諦めただけな気もするが、否定せずに盾持ちへもパスを回す。キラーパスだ。

 

 今まで頑なに教えて来なかった本名を明かされたのだ、この際全員巻き込んでやる。

 それに本名を隠していはしたが、そんな大層な理由なんて無い。面倒事が増えそうだった。ただそれだけである。

 

 

「ええ、勿論です。私達に自分を生贄にする予定は入っていません。魔法少女コダマではなく、三上 (こだま)さんの友人として約束しましょう」

 

 

 こうなったら、この子もこちら側へ引きずり込むしかない。知恵の回る3人は、示し合わせたかの様にそれぞれ慰めの言葉を紡いでいく。コレが大人の対応だ、実にスマートな切り抜け方だとは誰も思わない。

 

 ダメ押しとばかりに、盾持ちとメイドが変身を解いた。さあさあここで大詰め、なんだかんだ言って付き合い自体はそれなりに長いものの、変身前のいわゆる本来の姿を晒すのは初めてである。これこそが信頼の証だ。

 通常の魔法少女は変身をしなければ年相応である。つまり、変身している彼女の前でそれを解く事は『貴女を信頼しています』と言っているに等しい。

 

 メイドも盾持ちも大筆も、実は普通ではない。

 変身しなくともそれなりに戦えるのだが、そんな野暮な事を語る必要は無いだろう。

 

 変身前の私服に戻った(メイド)千歳(盾持ち)は、しれ~っと壁際に離脱していた大筆を見る。

 

 

「おんやぁ〜クライペイントちゃぁ〜ん、どうして君は変身を解かないんだぁ~?」

 

 

 ここぞばかりにと淀はニヤニヤと責め立てる。

 傍から見れば、ギャルが子供をイジメている様にしか見えない。実際、淀を見る若草色の彼女の目には批難の色が乗っている。

 

 

「解きます、解きますって!先に言っとくけど、ボクの趣味じゃないからね!早乙女さんに着せられただけで、ボクの趣味じゃないからね!本当に勘違いしないでよね!ボクの趣味じゃないからね!」

 

 

 とても大事な事なので3回言いました。

 大筆が変身を解くと、そこにはフリフリのレースが可愛らしい、服を着たお人形さんが俯いて佇んでいた。

 

 

「よっ!はねるちゃん、可愛いよ!」

 

「恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ、よく似合っています」

 

 

 茶化して写真を取り始める淀と見当外れな慰めをする千歳を無視して、はねる(大筆)は若草色の彼女に向き直る。恥ずかしいのは一旦忘れよう、はねるは大人であった。

 良く考えたら、彼女に対してまともに名乗った記憶が無い。

 

 

「改めて自己紹介を。ボクは卯月(うつき) はねる。君達が呼ぶところ【色飾(しきしょく)の魔女】クライペイント。よろしくね、谺ちゃん」

 

「ええ、よろしくおねがいします」

 

 

 不思議の国から出てきた様な、触れれば壊れてしまいそうな、儚げな少女は照れくさそうに手を差し伸べた。

 その手を引かれて立ち上がった彼女は、少し屈んで視線を合わせ笑顔で答える。

 

 その隣から、千歳が何処から出したのか水で湿らさたハンカチを差し出した。

 

 

「どうぞ、気休めですが使って下さい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「では、私も改めて自己紹介をしましょう。私の名前は千賀 千歳(せんが ちとせ)と言います。貴女達には【塔壁の魔女】グーフアップ、なんて呼ばれていますね。よろしくお願いします」

 

 

 ハンカチで目を冷やしていた彼女に、そのままで聴いて下さいと言って千歳が名乗る。

 

 割と雑な扱いを受けていた気もするが、やはり彼女が代表だったみたいだ。JKギャル、甘ロリ少女、清楚美人なら、何となくそんな気もする。一番まともに話が通じそうだ。

 

 して、次はお前だと千歳に促されて、淀が躍り出る。

 

 

「やぁやぁ流々川 淀(るるかわ よど)こと、【読全の魔女】ハックルベリー。取るに足らなくて、どうしょうもない存在さぁ……。趣味は真面目な子をからかう事、得意な事は他人を不愉快にして自分が愉快な気持ちになる事。よろしく、こだまちゃん!」

 

「貴女は、何時もこうなんですか? はぁ、よろしくおねがいします」

 

「次は君の番だよ、こだまちゃん」

 

 

 淀に言われて気が付いた若草色の彼女は、自分の変身を解いた。

 ここまでされては変身して身構えている方が情けない。3人に負けっぱなしとは言え、『最強』の魔法少女であるプライドが帰ってきた。

 

 泣いて喚いて心に余裕が生まれた彼女は、真っ直ぐに3人を見据えて胸を張って答える。

 

 

「私は、三上 谺(みかみ こだま)。[魔法院]及び[外敵対策省]所属、魔法少女『最強』のコダマです。貴女達に勝てた例はありませんが、近い内に勝利する予定です。いい加減“魔女”を辞めて私と一緒に来ませんか?」

 

 

 さっきまでの弱々しい姿とは打って変わって、自信を持った態度と笑顔を持って3人に右手を差し出した。

 

 因みに“魔法少女”とは、[魔法院]に所属しており、国の許可を得てその特異な魔法を使って怪物と戦う者の事である。

 そして[魔法院]に所属しておらず、好き勝手に魔法を使って活動する者が“魔女”と呼ばれており、普通は追われて捕まるはぐれものだ。コイツ等は、ちょっと長く活動していて色々アレな“魔女”である。

 

 それはそれとして、3人は差し伸べられた手を気付かなかった事にして部屋から出て行こうとする。

 

 

「ちょっと!?何処へ行くつもりなんですか!また逃げる気ですか!!」

 

 

 あまりにも自然に出て行くものだから、うっかりそのままの体勢で見送ってしまった谺は、慌てて声を上げて追い掛けて部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





とりあえず完結を目指します。

何かあればコチラへ、応えなくても怒らないでね
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