ラプチャーは残らずぶっ潰す! 作:マカミ
「俺のルールだ。正義でも善意でもない。ただ俺が守りたいものは守る。俺が気に入らないものはぶっ潰す」
『ローンウルフインパクト!』『滅亡迅雷インパクト!』
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「夢を貫くのも、骨が折れるな……」
満身創痍の男はそう言って倒れ伏した。その両目からは血が流れていた。
滅亡迅雷.net。かつての敵であり一時は仲間であった存在をこの手で倒した。新たな悪意の体現者。ZAIAエンタープライズ最高経営責任者、リオン・アークランドの目論見により世界の敵になってしまった滅、迅、雷、亡の四人のヒューマギアたち。
ヒューマギアを兵器ビジネスとして運用しようとしていたリオンの計画を阻止すべく、集合知能システムに接続して仮面ライダー滅亡迅雷となり、人間を、リオンを殺害した。
METSUBOUJINRAI will be extinct.
告げられた言葉。ヒューマギア全ての夢を阻む存在となってしまった自分達を完全に滅ぼすため、ヒューマギアの夢と自由を、シンギュラリティに達し芽生えるだろう心を守るため。
だから、滅亡迅雷は滅びなければならない。
ヒューマギアの夢を守る仮面ライダーとして彼らに出来る事は、行き過ぎた正義の末路として滅ぼされるしかない。それを成し遂げる正義の味方に選ばれたのが───不破諫という男だった。
突然、伏せていた体が起こされた。
「しっかりしろ! 不破!!」
「……刃か?」
その声は対人工知能特務機関A.I.M.S.で不破の上司を務めていた刃唯阿のものだった。
「どうしてこんな無茶を……? 自分だけ突っ走って……!」
彼女の声は震えていた。抱えているその腕からも震えが伝わっていた。視界が霞んでいて視認できないため体がぼろぼろなのは感覚的に理解できていたが、どうやら傍から見ても酷い状態らしい。
「……命捨てようなんて、大それたこと考えてた訳じゃねぇ……」
ただよ、そう続けると、震えている刃の手を掴んだ。刃の息をのむ音が聞こえる。
「……覚悟決めてる奴ら相手にするなら、こっちも覚悟決めねぇとな……」
ふっ、と鼻で笑い。さも当然のように言い放った。
「それが、仮面ライダーだろ……?」
意識が朦朧となる。刃が不破の体を揺さぶって何か言っているがもう聞き取れなかった。精神も身体もとうに限界を越えている。
(すまねえな、刃……)
結局の所、最期まで迷惑をかけてしまった。心残りではあるが彼女ならやってくれるという確信がある。
人とヒューマギアの共存。
長く険しい道程だろうが、きっと。
街の平和を守る仮面ライダー。仮面ライダーバルカンこと不破諫はついぞ目を開くことはなかった……。
───はずだった。
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「……きか……」
誰かを呼ぶ声が聞こえた。
「し……ん」
女性の声だ。懸命に誰かに呼び掛けている。
(こっちは疲れてんだ……。少し休ませてくれ……)
こちらはすでに死んだ身。意識がまどろみに落ちようとしていたが……
「ショック!」
「っぐぁ!?」
ドン! という衝撃が胸部に与えられたため堪らず目を覚ます。
「なんだってんだ……」
「指揮官! 大丈夫ですか!?」
「あん?」
傍らを見やると先ほどの声の持ち主が佇んでいた。着崩しているがどこかの制服らしきものを身に着けている女性。その傍にはAEDが展開されており、よく見てみると自身の体に除細動パッドが装着されているため彼女が自分を起こしたのだろう。
「私の声が聞こえますか? 聞こえるなら笑ってみてください!」
「は? 笑う?」
ぎこちないが笑って見せる不破。
「所属先を言ってみてください!」
「株式会社、仮面ライダーバルカン」
「どこですかそれは!?」
しっかりしてください、と再び体を揺さぶられる。そこでふと違和感に気づいた。
(何だこりゃ?)
死に体だった体は多少の擦り傷こそあるものの五体満足であり、後遺症は残っていない。
自身が身に着けている衣服は黒のビジネススーツではなく茶色の制服だった。このような服は見覚えがない。
それどころか自分がいる場所すら分からなかった。眼前には輸送機らしき物の残骸、その向こうには廃墟が広がっている。
「ここはどこだ」
「っ! 作戦区域へ移動途中、対空火器に攻撃されて輸送機が墜落しました。いま、爆発音を聞いたラプチャーが集まってきています」
「作戦? 墜落? ラプチャー?」
不破の脳内にはてなが浮かぶ。
滅亡迅雷.netを破壊してどれだけの時間が経ったのだろうか?
ソルドたちは保護されたのだろうか?
刃はヒューマギアと人類の共存のために何をしているのだろうか?
「来ます!」
四足歩行の機械兵器。怪しい赤い光を放ちながら倒壊した建築物を乗り越えてこちらに向かってきている。
「あれがラプチャー……」
「混乱しているとは思いますが、今から私を指揮してください」
「俺が?」
「できますか」
「……分かった」
装着されていた除細動パッドを引きはがして立ち上がる。
残骸を調べてみるとアサルトライフルを見つけた。チャンバーチェックを行い壊れていないことを確認する。
「その小銃はニケ専用火器です! 指揮官は使用できません!」
彼女の説明を聞き流してスコープを覗く。試しに一番手前にいたラプチャーにを狙って発砲した。
バン! 放たれた銃弾は赤く光るコアに直撃。機能停止したラプチャーはその場に転倒した。追随するラプチャーはお構いなしに機能停止したラプチャーを踏みつけて侵攻している。
反動を吸収できず後ずさってしまったが問題ない。アサルトライフルをフルオートに切り替える。
「コツは分かった。おまえは奴らの隙を突いて撃ってくれ。取りこぼした奴は俺がやる」
「ニケ専用火器を、平然と……?」
「おい、聞こえてんのか?」
「りょ、了解!」
困惑している様子の彼女だったが呆然とする時間はない。こうしている間にもラプチャーは迫ってきている。
遮蔽物に身を隠す。彼女も同じように瓦礫に身を隠した。
「そういや名前を聞いてなかったな。名前は?」
「えっ? マリアン、です」
「マリアンか。俺は不破諫だ。頼りにさせてもらう」
「はい! マリアン。戦闘モードへ移行。……エンカウンター!」
彼女───マリアンはマシンガンを構えラプチャーに指向する。
(聞きたいことは山ほどあるが、まずは目の前の敵をぶっ潰す!)
二人の銃撃がラプチャーを迎え撃った。
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