ラプチャーは残らずぶっ潰す!   作:マカミ

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「素晴らしい指揮でした。 指揮官」
 
 


CHAPTER.00-2 再起

 

 

 /

 

 

「クリア! 非戦闘状態に転換します」

 

「了解。たいしたもんだ」

 

 迫りくるラプチャーを全て撃破した不破とマリアン。

 

 けたたましく鳴り響いていた警報音も途絶え、廃墟に再び静寂が訪れる。

 

「……あ」

 

「おっと。ケガしたのか?」

 

 体勢を崩してよろけたマリアンを受け止める不破。

 

(こいつ見た目のわりに重いな)

 

 およそ成人女性の体重ではない。まるでヒューマギアのような───。

 

「悪い。さっきニケって言っていたが、それは一体何だ?」

 

「えっ? ……先ほどからもしかしたらとは感じていたのですが、指揮官はもしかすると健忘なのではないでしょうか?」

 

 健忘。類語では記憶喪失。輸送機墜落の心因または外傷による健忘なのではないかとマリアンは疑った。

 

(確かに、滅亡迅雷.netと戦ってからの記憶が何も思い出せない。記憶喪失ってのはあながち間違っていないのかもしれねえな)

 

 ラプチャー、ニケ。どちらも聞き覚えのない用語だった。

 

「恐らくな。ラプチャーにしろニケにしろ、ちっとも思い出せねえ」

 

「やっぱり! でも、どうしましょう。記憶障害についての専門知識は持ち合わせていません……」

 

「あー。ほっといたら治るだろ。たぶん。それよりもラプチャーとニケについて教えてくれないか?」

 

「は、はい。教範程度の内容しか教えられませんが」

 

「構わない。少しでも情報が欲しい」

 

「分かりました。まずラプチャーについてですが……」

 

 

 /

 

 

 ラプチャーとは、人類の天敵にして、地上の支配者。

 

・人類を殺すことのみを目的とする機械兵器群であり、約100年前の第一次ラプチャー侵攻に突如出現した。

 

・人類はニケをもって応戦したが圧倒的な戦力差により敗北、地下へと退避する結果となった。

 

・ラプチャーの外見・機能は多種多様で、掌サイズの小型機から輸送船級の巨体まで存在する。

 

・100年にわたる戦いの中で数多の研究が行われたが、その起源・目的・構造はいまだ完全には解明されていない。

 

・ラプチャーは主として無機物から構成されるが、一部には生体部品に似た柔軟素材が用いられている。

 

・多くの個体は赤く発光するコアを外部に露出させており、それが動力源であると同時に最大の弱点でもある。発光状態によって活動の有無が識別可能である。

 

(わけ分かんねえな。第一次ラプチャー侵攻? 100年前だと? はっ! 俺は浦島太郎かっての)

 

 謎は深まるばかりである。この説明が本当だとするならば不破は100年もの間眠っていたことになる。

 

 冷凍睡眠でもされていたのなら話は別であるが。

 

(……もっとわけが分からねえのは)

 

 ニケとは、人類が地上を奪還するために作り出したヒューマノイド型対ラプチャー汎用兵器。

 

・アークの三大企業がニケ制作を担っており、大きく分けて量産型ニケと特化型とが存在。また作られた世代によって第1~第9世代まで存在する。

 

・量産型は外観が数パターンしかないのに対し、特化型はワンオフでありそれぞれ異なった外観や能力、高い戦闘力を備える。

 

・多くのニケの外観は10代から20代の女性の姿をしており耐久性、腕力、五感など人間のそれを遥かに凌駕する。

 

・ニケになるための適性を持った人間から摘出した脳を、機械と生体部品で出来た体に移植したヒューマノイドであり機械の体であるため外見上は年を取らない。

 

・ある程度の損傷は自己修復され、脳が無事であれば普通の人間であれば即死するほどの大怪我を負ってもボディの交換により以前と同じように活動できる。

 

(倫理観はどこ行ったんだ? 道徳的にもアウトだろうが)

 

 この話が本当ならば、目の前の彼女はヒューマノイドということになる。

 

 人とヒューマギアの中間の存在。それが不破の思うニケの認識だった。

 

 二つの説明を聞き終えて気になったことがあった。

 

「なあ、ヒューマギアはどうなってんだ?」

 

「ヒューマギア? それは何でしょうか?」

 

「!」

 

 ヒューマギアを知らない。そんなはずはない。

 

 仮に100年前に衰退してなくなってしまったとしても歴史上に名を残しているはずだ。

 

《ヒューマギアは人類の夢だ!》

 

 夢に向かって飛ぶ若者の言葉が幻聴する。

 

 辛い役回りを押し付けてしまった。飛電インテリジェンス社長、飛電或人。

 

《不破さん。あいつらの事を、頼む》

 

 もしかすると察していたのかもしれない。ゼロツードライバーの機能で、戦いの結末を。

 

 自分のせいだと背負わなければいいのだが……。

 

 (おっと)

 

 思い出に耽っていた頭を掻きむしり更に質問をする不破。

 

 飛電インテリジェンス。対人工知能特務機関A.I.M.S.。ZAIAエンタープライズ。滅亡迅雷.net。

 

 馴染みのある企業・組織たち。しかし、マリアンは知らなかった。

 

(だー! うだうだ考えても仕方ねえか)

 

 不破は救急品袋から包帯を取り出すと、マリアンの損傷している脚部に包帯を巻きはじめた。

 

「……あの、指揮官。こういうのはニケには全然効果がない……」

 

「根っこのところは人間なんだ。捻挫なら固定しねえとな」

 

「ふふ。指揮官はお優しいのですね」

 

「どうだかな」

 

 緩まないようしっかりときつく巻き終えた。

 

 マリアンは不破が巻いた包帯をじっと見つめていたが、ふと思い出したかのように声を上げた。

 

「ランデブーポイントはこの近くです! 移動しましょう!」

 

「お、おう」

 

 

 /

 

 

 ランデブーポイントにたどり着いた二人だが、そこには誰もいなかった。

 

 真新しい足跡があることからいたことは間違いなさそうだが……。

 

「え……どうして誰もいないんだろう」

 

「合流予定の輸送機が撃墜されたんだ。作戦変更を余儀なくされたんじゃないか?」

 

 ダダダダーッ!

 

 遠くから銃声が聞こえた。接敵しているのかもしれない。

 

「射撃音……! 行きましょう!」

 

「よし!」

 

 銃声が聞こえた方向へ走っていくと二人の人影を発見。すでにラプチャーと交戦している。

 

 二人の近くの遮蔽物まで走り抜けた。

 

「合流します!」

 

「うわ! びっくりした!」

 

 大げさな反応を示したのは癖毛のボブカットの少女。携行しているのはグレネードランチャーだろうか。回転式弾倉を持った珍しいタイプの武器だ。

 

「マリアンです。指揮官と共にランデブーポイントに無事到着しました」

 

「え? 本当に? あの爆発で生き残ったの?」

 

 目をぱちくりと瞬かせて驚いている。次に不破のほうを見やると珍妙なものを見つけたような視線を向ける。

 

「ニケはまあいいとして、あなた人間よね?」

 

「そうだ」

 

「……怪しい。本当に指揮官なの?」

 

「……何が言いたい?」

 

 空気がひりついたが、もう一人の少女が間に入る。髪を腰まで伸ばし、鋭く研ぎ澄まされた瞳に生真面目な性格を感じる。携行火器はかなりカスタマイズされたアサルトライフルだ。アンダーバレルにはグレネードランチャーが搭載されている。

 

「ちょっと失礼します。指揮官認識コード、アクセス」

 

「うん?」

 

 不破の制服を凝視すると固まってしまった。しかしすぐに動き出すと言葉を紡ぎだす。

 

「分隊04-Fの指揮権、変更完了」

 

「ラピ! こんな正体の分からない人間とそんな軽率に!」

 

「緊急事態よ。ラプチャーが現れた」

 

「それは、そうだけど」

 

 正論で言い負かされて言葉が詰まっている。感情的な少女と論理的な少女とで対照的に見えた。

 

「現時点を以って、あなたは私たちの指揮官になります。前指揮官は命令を下せる状況ではないため、別途の命令権引継ぎプロセスはありません」

 

 論理的な少女は淡々と説明していく。

 

「一刻を争う状況です。詳しい説明は戦闘が終わってからにします」

 

「問題ない」

 

「マリアンと言ったわね? 所属と兵科は?」

 

「シルバーガン分隊所属です。兵科は短機関銃射手です」

 

「……兵科もちょうどいいわ」

 

 はあ、と感情的な少女はため息を吐くとグレネードランチャーに次弾を装填する。

 

「指揮官様! どうするの?」

 

「命令をお待ちしております」

 

 二人の少女の視線が不破に向けられる。

 

 そうだ。命令を下す前に聞くことがあった。

 

「おまえら、名前は?」

 

「え? あそっか。私はアニス。よろしくね! 指揮官様!」

 

「ラピです」

 

 アニスとラピ。

 

 感情的な方がアニスで、論理的な方がラピ。

 

「俺は不破諫だ。───これより前方のラプチャーを殲滅する! 俺に続け!」

 

「ラジャー」「よし、やってみよう!」

 

「エンカウンター!」

 

 

 /

 

 

「え? 指揮官様も戦うの? というか撃てるの? それ?」

 

「ああ。これよりキツイやつを撃ったこともあるから大丈夫だ」

 

「……怪しい。本当に人間なの?」

 

「……何が言いたい?」

 




 
 
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