ラプチャーは残らずぶっ潰す!   作:マカミ

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「ふん! 朝飯前よ!」
 
 


CHAPTER.00-3 再起

 

 結果、ラプチャーの殲滅はものの数分で事足りた。

 

 統率のなっていない群れはあっという間にハチの巣になったのである。

 

「楽勝だったわね……」

 

「改めて。ラピとアニスです。急な要請にも係わらず応じていただき、ありがとうございます」

 

「気にすんな。緊急事態だろ」

 

「ところで、どうして急に指揮官を地上へ?」

 

「それは、」

 

 言葉の詰まるアニス。マリアンはすぐに察した。

 

「まさか」

 

「───そう、前の指揮官様は死んだわ」

 

「…………………………」

 

 不破は黙ってアニスの話を聞いている。

 

「対人火器をラプチャーにぶっ放しちゃったの。『ラプチャー! 人類の敵!』とか言ってね。小口径の火器がラプチャーに通じるわけないのに、どうしてあんなことを……」

 

「……守れなかったんですね。お二人は」

 

 何気ないマリアンのその言葉にアニスの表情が強張った。

 

「それは違うわ。私たちは指揮官様を守る。何があっても。この命に代えてもね。でもね、自分から死のうとする人を守るのは無理よ」

 

「…………………………」

 

 マリアンは黙ってしまった。失言だったと省みているのだろう。

 

 前任の指揮官は気が違ってしまったのか、死に急いでしまったのかを判断する材料はないがおそらくはその両方だろう。場数を踏んでいない人間には到底耐えられるはずもない。

 

「まあ、そういうわけね」

 

「失礼ですが、もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

 

 気まずい空気をものともせず、ラピが不破に声をかけた。

 

「不破だ。不破諫」

 

「アニス」

 

「うん、検索してみるね。どれどれ……うん?」

 

「どうしたの?」

 

「……この指揮官様、完全な新人みたいよ。」

 

「は?」「そうなのか?」

 

「昨日、士官学校を卒業したんだって」

 

「……とりあえず近くの市街地まで移動しましょう。ここは危険です」

 

 またもや気まずい空気になったがこの場所に留まっていると銃声を聞きつけたラプチャーがやってくるおそれがあるため、四人はランデブーポイントを後にした。

 

 

 / 

 

 

「って、そうなのかって何なのよ! 自分のことでしょ、指揮官様!」

 

「あー。言ってなかったが、墜落の後遺症で記憶喪失なんだわ」

 

「記憶喪失って何!? そんな状態で指揮してたの!?」

 

「心配すんな。足手まといにはならねえ」

 

 

 /  

 

 

 市街地に到着した不破一行。しかし荒れ果てていて人の気配など微塵もない。ゴーストタウンのようだ。

 

「本当に以前の記憶を思い出せないのですか?」

 

「ああ」

 

「……作戦中に死亡した指揮官の代わりに来た新人の指揮官……しかも記憶喪失だなんて。不安だわ」

 

「あん?」「はい?」

 

 聞き捨てならないと反応する不破。なぜかマリアンも。

 

「いいえ、何でもありません。とにかく、あなたは今から本分隊の指揮官になります。現在進めている作戦の引継ぎが必要ですが、よろしいでしょうか?」

 

「……問題ねえ」

 

 いけ好かないやつだ、と不破は感じた。

 

 とにかく作戦について聞かなければ何も始まらない。ラピの説明を待つ。

 

「作戦について簡単に説明します。四十六時間前、この区域を捜索していたニケ一分隊との通信が遮断されました。通信履歴が何も残っておらず、捜索が必要との判断から私たちが投入されましたが……指揮官が死亡するという事故がありました」

 

「問題は、その指揮官様だけが作戦区域の座標を知ってたってこと。指揮官様、座標について何か聞いてない? というか思い出せない?」

 

「……悪い。思い出せない」

 

 というか知らない。目が覚めてから次々と起こる問題にだんだんと辟易してきた不破。

 

 記憶喪失という設定は我ながらいいアイデアだと思うが、無知も過ぎると罪だ。

 

「そうだよね。だと思った、うん」

 

「私が知っています」

 

「うんうん。そうだよね、うん。……うん?」

 

「本当か? マリアン」

 

 謙虚そうに小さく挙手をするマリアンに尋ねる。

 

「はい。作戦前に入力されました。私が先頭に立ちますから、ついてきてください」

 

「あっ……OK」

 

 短機関銃を構えて警戒しながら目的地へと歩き出した。

 

 が、一度立ち止まり後ろを振り向かずに話しかける。

 

「それから、ラピでしたっけ?」

 

「……?」

 

「自分の指揮官も守れなかったくせに、難癖付けないでください。この方も私たちと同じく、命をかけて人類のために戦われるのです。ですので、また今度このようなことを口にした時は、私も黙ってはいません」

 

「おお、なにこれ。もうギクシャクしてる?」

 

「煽るなバカ」

 

「……そうね。私の失言だった。謝る」

 

「謝るのなら私にではなく、指揮官へお願いします。」

 

「申し訳ありませんでした」

 

 非はこちらにあると即座に頭を下げるラピ。頭が固いというか融通が利かないというか、どことなく誰かに似ているせいか懐かしい気持ちにさせた。

 

「気にするな。輸送機が撃墜されて、しかも新人で、おまけに記憶喪失ときた。俺がおまえの立場だったら同じことを言ってたかもしれない」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「ええ、怒らないの? あはは、今回の指揮官様はちょっと変わってるわね」

 

「おまえに対してはそろそろ怒るぞ?」

 

 

 /  

 

 

 座標へ向かってしばらくすると、異変が起きた。

 

「……あ」

 

 マリアンが唐突に崩れ落ちてしまった。幸いにも片手を着いて地面に倒れ込むことはなかったが、本人も驚いていた。

 

「どうしたの? 具合悪そうよ」

 

 肩を支えて立ち上がらせるアニス。服に付いたほこりを払ってあげている。

 

「なんだか体調が……」

 

 墜落の影響か。無事だと思われていたマリアンだったがやせ我慢をしていたのか? 足首の捻挫のこともあり、彼女の身を案じる不破。

 

「メンテナンスを手伝うわ。上着を脱いでもらえる?」

 

「え? こ、ここでですか?」

 

「何? 問題があるの?」

 

「だって、指揮官もいるし⋯⋯」

 

 ちらりとこちらを伺うマリアン。

 

 異性に見られるのは嫌だろう。ラピとアニスがいてくれて助かった。セクハラになってしまうところだった。

 

「あはは、な〜んだ。指揮官様がニケを女として見るとでも? 心配ご無用。私たちは血も涙もない、ただの戦闘兵器だから。女として見るわけないよね! そうだよね、指揮官様?」

 

「⋯⋯学校の教科書にはそう書かれているかもしれないが、俺はおまえらのことを人間として見ている。だから自分たちのことを兵器だなんて言うな」

 

 ヒューマギアは人間に限りなく近い存在であり、ニケは元は人間である。そんな彼女たちが自らを戦闘兵器だと蔑んでいるのは黙ってはいられない。たとえそう作られたのだとしても。

 

「そう、なんだ。あはは、変なの⋯⋯」

 

 アニスは頬をぽりぽりと掻きながら照れたように笑った。

 

 その様子は普通の女の子に見えた。ラプチャーが存在しなかったら銃なんて持つこともなかっただろう。

 

「あっ、もう大丈夫です。不慣れな環境で、ちょっと誤作動を起こしたようです」

 

 問題ありません、とマリアンが両の手を合わせてアピールしているが、ラピはそんな彼女の両肩にぽんと手を乗せる。

 

「脱いで」

 

「ば!?」

 

「もう、いちいち反応しないでよ!」

 

 勢いよく転身する不破。せめてどこか遮蔽物でやってくれ、と独りごちる。

 

「だ、大丈夫ですって」

 

「誤作動が起きた際、メンテナンスは選択事項ではない。必須事項よ。脱いで」

 

「分かり、ました」

 

 正論でまくし立てられ渋々といった様子で従うマリアン。

 

「ささ、指揮官様はそのままあっち向いててね」

 

「⋯⋯おう」

 

 女三人寄ればなんとやら。不破は大きなため息を吐いた。

 

 

 /

 

 

 しばらくすると。

 

「異常なし」

 

「だから、言ったじゃないですか!」

 

 むっと怒り顔のマリアン。抗議の視線を向けられているラピは気にも止めず受け流している。

 

「もう、移動を続けましょう!」

 

 ずんずんとマリアンが先頭を歩く。

 

「あ。見えてるよ」

 

「きゃっ!」

 

 勢いよくスカートを押さえるマリアン。しかし布は捲れてなんていなかった。

 

「ジョ〜ク、ジョ〜ク」

 

「……………………………………………………」

 

「気持ちは分かるが、マリアン。武器を下ろせ」

 

 姦しいではなく喧しい。不破は大きなため息を吐いた。

 




 
 
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