ラプチャーは残らずぶっ潰す!   作:マカミ

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「タクティカルな動きを期待する」
 
 


CHAPTER.01-1 加速

   

「シフティー。マリアンに……いったい何があったの?」

 

 地上とアーク───地下の超巨大都市を行き来するためのエレベーターまでたどり着いた不破一行。エレベーターに乗り込むが、マリアンの一件があり、エレベーター内は静まり返っていたため、アニスの呟きは鮮明に聞こえた。

 

『……マリアンに埋め込まれた侵食コードはナビゲーションだったと思われます。ブラックスミスのところへニケたちを案内する役割、ということです。───エサとして捧げるために』

 

 ぎりと握り拳に力が入る。マリアンから引き継いだサブマシンガン───ファースト・アフェクションのグリップが軋む音がした。

 

「でも、ほぼ最後まで正常だったのよ?」

 

『それは多分、不破指揮官がいたからです!』

 

「俺か?」

 

 不意に名を呼ばれて驚く不破。

 

『ニケの最優先事項は指揮官を守り、命令に従うことですから。多分、指揮官に出会ってからずっとすごく混乱していたんでしょうね。優先順位がごちゃごちゃになってしまいましたから』

 

「……………………………………………………」

 

『ブラックスミスと遭遇したポイントでは、それすら忘れてしまうほど侵食が進んでいた』

 

 目が怪しく赤く染まり、壊れたように言葉を繰り返すマリアンの姿を思い出す。

 

「……いつから」

 

『はい?』

 

「侵食が始まったのは、いつから?」

 

『それは、作戦中に……あ』

 

「輸送機を撃墜させたということは、搭乗する時にすでに侵食状態だったと見るのが妥当。そして輸送機はアークから来た」

 

『! アークの防護壁が破れたのでしょうか?』

 

「いいえ。防護壁は堅固よ。侵食くらい簡単に排除できる」

 

「……ラピ。何を言いたいの?」

 

「……さあね」

 

 ごうん。エレベーターが大きく動いた次の瞬間。強化ガラスの向こうには煌々と光り輝く建造物がそびえており、色とりどりのその様子は不破がいた世界とこの世界は違うのだということを再認識させているようだ。

 

(これが、アークか)

 

 不破は蔑むようにアークを見下ろしていた。

 

 

   /   

 

 

『───報告は以上です!』

 

「ブラックスミスに勝っただと?」

 

「適当に派遣した新米指揮官がか? それもたったの1日、ニケ3体で」

 

『はい。その通りです。1体は交戦中に破壊されてしまいましたが……』

 

「冗談が上手くなったな。シフティーくん」

 

『交戦データを転送しましょうか?』

 

「いや、いい。その必要はない。ただ……その指揮官に、一度会ってみたい」

 

「15時以降は予定が空くと思う。呼んでくれるか?」

 

『はい。そのように伝えておきます!』

 

「よろしく頼む」

 

『他にご用命はございませんか?』

 

「……ああ、作戦に参加したニケも、一緒に来るように伝えてくれ。───武装した状態でな」

 

 

   /

 

 

「……司令部からの呼び出し?」

 

「ラピとアニスも一緒に来いだってよ」

 

 アークに下りてリペアセンター所属のニケの診療を受けた直後、不破が所有していた携帯端末に連絡があった。副指令官ということは上から数えたほうが早い地位の人物だろう。

 

「ふうん……。これって、あれかしら」

 

「あれって?」

 

「1分隊にも満たない戦力で~ブラックスミスを倒すだなんて〜すごいな〜。これからも~中央政府の忠実な犬として~頑張ってくれたまえ〜、ってやつよね?」

 

 若干いらっとする言い回しだが、それはないだろう。実際、自分がA.I.M.S.で暴走ヒューマギアの大軍を単独で鎮圧した際は説教と始末書、反省文はあれど褒賞はなかった。

 

「……確かに、異例の戦果ではあるけど」

 

 ラピは顎に手を添えて考えるそぶりを見せる。

 

「今すぐ行きましょう。早く行って、ちゃちゃっと終わらせましょう」

 

「───あ? 武装してこいだとよ」

 

 メッセージの最後に記された一文に眉をひそめる不和一行。

 

「……………………………………………………」

 

「んんー。これは嫌な予感がするわね」

 

 悪い想像ほど当たるものだ。

 

 

   / 

 

 

 ラピに案内してもらい、中央政府司令部にやってきた不破一行。副司令官室の扉は自動ドアではなく、不破もなじみのある手動ドアだ。こんこんこん。3回ノックして入室する。

 

「ほぉ……君たちか」

 

 正面のデスクには自分たちを呼び出したとされる人物がいた。立ち振る舞いが洗練されていて思慮深そうな顔立ちだ。天津垓のようなうさん臭さがまるでない。

 

「ようこそ。中央政府司令部の副司令官、アンダーソンだ。まあ、好きに呼んで構わない」

 

 だが、その眼差しはこちらを見定めているようだ。一挙手一投足を見られているように感じる。

 

「君たちをここに呼んだ理由なんだが……1つテストをしたくてね。まあ、難しくないから気楽に臨んでくれ」

 

「テスト?」

 

「今の状態のまま、シミュレーションルームに行ってもらう。そこで詳細を聞くように。以上だ」

 

「え……その話をしたくてここに呼んだの?」

 

 思わずといった形でアニスが言葉をこぼす。アニスが言っていなければ自分がそれだけか、とこぼしていただろう。

 

「アニス」

 

「何よ? 気になることは聞かなきゃ」

 

「君たちに直接会ってみたかった。───それだけだが?」

 

「……………………………………………………」

 

 嘘偽りのない言葉。アニスはあんぐりと口を開けたまま固まってしまった。

 

「では、また───」

 

 

「質問がある」

 

 

 会話が打ち切られる寸前、不破が待ったをかけた。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 アンダーソンは腕時計を確認した。

 

「一つくらいなら答えられそうだ。質問したまえ」

 

「マリアンの侵食はアークで始まったようだが、何か知っているんじゃないのか?」

 

「「!?」」

 

「えー……指揮官様、その話をここで……!?」

 

「マリアン? ……ふむ。一緒に作戦に出たニケか、破壊されたという。残念ながらその質問には答えられないな。我々も事情を調べているところだが、ひとつだけ確実に言えるのは───」

 

 不破の目を見つめる。二人の視線が交差した。

 

「アークの防護壁は最高だ。絶対に破ることはできない」

 

 そう言い切った。誇張ではないのだろう。

 

「さて、私は次の会議があるので退席してくれるかな?」

 

「了解」

 

「……ああ、君」

 

 踵を返してドアへ向かった不破を呼び止めるアンダーソン。

 

「もしも、誰かが何らかの意思を持ってニケに侵食を埋め込んだとして、それが君が手も足も出せないほどに巨大なものだったとしたら、君はどうするかな?」

 

 アーク内にマリアンを侵食させた存在がいるのなら───

 

「落とし前をつけてもらう」

 

「落とし前? 落とし前と言ったか?」

 

 アンダーソンは聞き間違いかと思い、不破に聞き直した。

 

 不破は沈黙を以って答えた。

 

「ははは。君はただの指揮官ではないか。何をどうしようと? 聞くだけ聞いてみよう。どうやって落とし前をつけて」

 

 アンダーソンが不意に腕時計を見やった。

 

「……ふむ。時間か」

 

 名残惜しいように呟く。それが本心なのかどうか不破は判断できなかった。

 

「では、皆行ってよろしい。また会おう」

 

 今度こそ部屋から退出する不破一行。

 

 ガチャと音を立てて今度こそドアが閉まった。

 

 

   /   

 

 

「本日、諸君の戦闘力テストを行う。イングリッドだ。戦闘力テストはシミュレーションルームで行う」

 

 再度ラピに案内されてやってきたのは広大な部屋。そこには凛とした佇まいの女性がひとり。 

 

「あの、指揮官様。いったいこれ、何なの?」

 

「作戦から復帰した途端、戦闘力テスト……異例のことです。普通は投入前に行われますが……」

 

「しかもあの人、エリシオンのCEOよ。ここで何してるの?」

 

「趣味で…」

 

「ブリーフィング中は静粛に!」

 

 どことなく刃唯阿を思い出す。生真面目で厳しそうだ。

 

「「…………………………」」

 

「諸君には今から、シミュレーションルームで模擬戦闘をやってもらう。簡単そうに聞こえるかもしれないが、そう甘くはない。アーク技術の結晶と呼ばれるシミュレーションルームは全てが現実の戦闘と同じく再現されている」

 

 ただ広いだけの何の変哲もない空間に見えるが、天井やら壁やらに何か仕掛けがあるのだろう。

 

「戦闘中に発生しうる各種の突発的な状況は勿論。ラプチャーとの戦闘も完璧に再現されている。諸君はこのシミュレーションルームで各種突発事項や戦闘状況をタクティカルに突破し、タクティカルにテストを完了する。以上」

 

「質問があります」

 

「質問は受け付けない」

 

 ばっさりと切られる。

 

「…………………………」

 

 ラピは口をつぐんでしまった。

 

「訓練に先立って、諸君の分隊名を聞こう。分隊名を言え」

 

(あーA.I.M.S.は辞めちまったし、株式会社仮面ライダーバルカンはしっくりこねぇしな……)

 

「ラピ。お前らの部隊名って何だ?」

 

「は? カウンターズですが……」

 

「カウンターズか。じゃあそれで」

 

「じゃあそれで?! それでいいの!?」

 

「確認した。ではカウンターズ諸君。諸君のタクティカルな動きを期待している」

 

 

   /   

 

 

「おい待て。何故お前も武装している」

 

「? 武装してこいって言われたが……」

 

「それはその二人に対してだ。第一、その火器はニケ専用だろう。人間が扱える代物では───」

 

「あの、教官。不破指揮官は異状なく使用できています」

 

「は?」

 

「地上での戦闘において、不和指揮官は自ら前線で戦闘されています。よろしければ交戦データをお見せしますが」

 

「……いや、いい。お前はそういう嘘はつかない。そうか、そうか……」

 

「急に眉間を抑えてどうしたんだ?」

 

「いや、指揮官様のせいだからね!?」

 

 

   / 

 

 

「ああ~疲れた~」

 

 アニスは気の抜けた声でロケットランチャー───リバティーンテールをぶら下げた。

 

「作戦終了の報告は完了しました。しばらく待機しろとのことです」

 

 ラピもアサルトライフル───ミリタリアを下向きに構え、警戒態勢を解いた。

 

「ラピ。これなんだと思う?」

 

「テストでしょ。言葉通りに」

 

 弾倉を取り外し、薬室を点検し、弾丸がないことを確認してから銃を背負った。

 

「彼らから見れば、私たちがあやしい結果を出したのは間違いないから」

 

「うまくやってもやらなくても、何か言われるわ。指揮官様。何か知らない?」

 

「さあな。偉いやつの考えなんか知るか」

 

 ファースト・アフェクションの外観を袖で拭って手入れをする。ショットライザーとは違い、実弾火器のため定期的な手入れが必要だ。不破がしていないだけであって、刃はきちんとメンテナンスをしていたのだがそれは別の話。

 

「悪いことではないと思います。功を奏したのは確かですから」

 

「ふぅん。とりあえず待機するしかないのかしら」

 

 アニスは床におりしいて天井を見上げた。

 

 

   / 

 

 

「結果はどうだ?」

 

「驚く程だ」

 

「最悪だ。実戦だったら一瞬で全滅しただろうな」

 

「ほお。本当に驚くべき結果だな」

 

「差がありすぎる。実戦に強いタイプなのか?」

 

「では、実戦を任せてみようじゃないか」

 

「仕事はいくらでもある。好きに選べ」

 

「では、最高に難しいもので」

 

「それなら───これだな。それはともかく、不破諫……あいつは何者だ?」

 

「……………………………………………………」

 

「ニケ専用火器を平然と使用するだけでなく、オブジェクトとはいえラプチャーを殴って壊していたが」

 

「───さてな。私にも判断しかねる」

 

 

   / 

 

 




 
 
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