セクハラ辞めたらパーティーメンバー全員病んだ。なんで?   作:陽波ゆうい

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第10話 1番気合いが入っているのは?

 依頼元の村に着いた俺たちは、村の人たちからゴブリンの巣穴の場所を教えてもらい、森の奥へと足を踏み入れていた。

 

 そして――その時は、突然やってきた。

 

「ギャアオォ!!」

「ギャァアアッ!!」

 

 奇声とともに、ゴブリンたちが棍棒を振りかざしながら、こちらに突っ込んできた。

 

「はっはっ! こりゃまた歓迎が手荒いなぁ! よぉし、お前ら全員、アタシの自慢の武器の引き立て役になってもらうぞッ!」

 

 ジーナさんがにやりと笑い、背負っていた大斧を試しにブンッと一振り。

 

 うん、それだけで強いって分かるよな。

 

 ちなみにパーティーメンバー全員の武器は、すべてジーナさんが一から作ったものである。

 

「わたしの魔法で綺麗さっぱりこの世からいなくなってもらうんだから」

 

 続いて、セフィアさんが少し固い笑みを浮かべながら杖を構えた。

  

 綺麗さっぱりって……セフィアさん、もしかしてゴブリンが嫌いなのかな?

 

 あまりゴブリンを見ようとしていないし。

 まあ、あの見た目を好む人なんて滅多にいないけどな。

 

「よし! 俺もやるぞ!」

「はい。やりましょう」

 

 俺とマルテさんも剣を構え、戦闘態勢に入った。

 

 そして俺たちは、一斉にこちらに来たゴブリンたちを迎え討つ。

 

「おらぁッ! 人様に散々迷惑かけたんだから、あの世でちゃんと反省しやがれよッ!」

 

 ジーナさんが豪快に大斧を振り回す。

 

 ゴブリンたちが次々と宙を舞っていき……最後はぐしゃりと地面に強く叩きつけられて動かなくなった。

 

「《ウインドカッター》《ファイアブラスト》!」

 

 セフィアさんは2種類の魔法を駆使していた。

 

 風の刃がゴブリンたちの身体を細かく刻み、遅れて地面から噴き上がった炎柱が全てを焼き尽くす。

 

 2人とも、ゴブリン相手にオーバーキルすぎないかと思うが……まあ、油断しないに越したことはないよな。

 

 それに、油断をすると「くっ、殺せ!!」みたいな同人誌展開になっちゃうかもしれないし。

 

 ……母親ばかり集まるこのパーティーでその展開は結構ヤバい。

 下手したら寝取り以上に脳を焼かれそうだから絶対に阻止したい。

 

「――」

 

 マルテさんは集中しているのか、終始無言である。

 

 けれど、無駄のない動きで剣を振るい、ゴブリンを次々と仕留めていく。

 

 声を出さずとも、誰よりも着実にゴブリンたちを減らしていく姿はむしろ、見惚れてしまうよな。

 

 おっと、俺だって見てばかりではない。

  

「ハァ!!」

 

 魔力を剣に流し込み、威力を増した一撃でゴブリンたちを斬り伏せていく。

 

 さらに【無限の魔力】の効果で魔力が増えるたびに身体能力も上がっていく。

 

 各々がゴブリンの数をどんどん減らしており、順調ではあるが……。

 

「ふーむ……変だなぁ」

「これは……」

 

 戦う手は止めずに。ジーナさんが首を傾げて、セフィアさんが辺りを見渡す。

 

 確かに、俺も違和感があった。

 

 ゴブリンは冒険者であれば誰にでも倒せる。

 だけど、別にゴブリンに知能がないわけではない。

  

 ゴブリンというのは、単体では大したことないが……数が多く集団となると厄介だ。

 さらに、スタンピードと呼ばれるゴブリンたちの大量襲撃が発生すれば、集落が1つ滅ぶと恐れられている。

 

 数こそ強みであることは、ゴブリン側も理解していること。

  

 だからこそ、考えなしに突っ込んでくるほど馬鹿じゃない。

 

 でも、今のゴブリンたちは連携など全く取れていない。

 勢いそのままに、突っ込むように向かってきているだけ。

 

 どちらかというと……我先にと逃げるように、こちらに飛び出してきている。

 

 じゃあ……何から逃げているのか?

 

「グガアアアアアアア!!」

「っ!?」

 

 その時、重低音の呻き声が響いた。

 

 木々がワサワサと揺れ、ドサドサと重たい足音が近づいてくる。

 

「……なるほどなぁ。お前らのボスは不機嫌なのか。そりゃ、怖くて逃げちまうよなぁー」

「ゴブリンの大量発生だけじゃないとは思っていたけど……まさか、こんなところで会うとはねー。まあ、わたしとしては見たくもなかったけど」

 

 そう呟くジーナさんとセフィアさんの視線の先に……ソイツは姿を現した。

 

「グガアアアアアアアァァァァ!!!」

 

 俺たちを視界に入れるなり、雄叫びを上げた威圧感のある魔物。

 その見た目も、また恐ろしい。

 

 人を丸呑みできそうなぐらい大きい口に、チラチラと見える鋭い牙。ヒクヒクと蠢く大きな鼻に、ギロリと鋭い目つき。

 

 何よりも、体格が大きい。

 その分、力も強い。

 

 丸太のように太く肥大化したその腕で殴られたら、一撃で致命傷だ。

 

「……ゴブリンキング、ですか」

 

 マルテさんが呟いたその名前こそが、この魔物の正体。

 

 ゴブリンキング。

 文字通り、ゴブリンたちの王である。

 

 故に、コイツが怒っていたから子分であるゴブリンたちが一目散に逃げていたのだろう。

 

「コイツはアタシがやるッ。ゴブリンだけじゃ歯ごたえがないからなぁ!」

「待ってください! わたしの一撃必殺魔法で今すぐに……」

「はぁ? それだとアタシの武器の性能が試せねぇじゃねーか!」

「ジーナちゃんはいつも一振りで倒しているじゃん! なら、わたしが倒しても変わらないよ! わたしだって、試したい魔法の組み合わせがまだまだあるんだから〜!」

 

 ジーナさんとセフィアさんがどちらが倒すか、なんて言い合っている中。

 

 ――シュッ、と。   

 そんな軽い音がした。

 

「さて、残りのゴブリンも逃さず全て倒して、早く次の依頼に行きましょう」

 

 マルテさんの静かな一言。

 

 視線を戻せば、ゴブリンキングの頭と巨体の間にはスッ、と切れ目が入っていて……。

 

「グァ、ァ……」

 

 一拍置いて、地面に落ちたのは……ゴブリンキングの頭だった。

 

「おい、マルテっ!」

「マーちゃんずるい!」

 

 ジーナさんとセフィアさんから同時に文句ありげな声を掛けられるも。

 マルテさんは涼しい顔で剣に付いた血を払っており。

 

「皆さん、どんどん倒していきましょう。時間を掛けるわけにはいきませんから」

 

 確かに、今回の依頼は魔物の大量発生。

 早く討伐していかないと被害が大きくなる可能性があるし、時間は掛けられないとはいえ……。

 

「そうですよね、ユーガ君?」

「で、ですね……!」

 

 マルテさんに話を振られて、勢いよく頷く。

 

 なんかマルテさん、妙に気合い入ってる?

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