セクハラ辞めたらパーティーメンバー全員病んだ。なんで? 作:陽波ゆうい
冒険ギルドにも依頼完了の報告を済ませて、俺たちは屋敷に帰ってきた。
魔物の討伐自体はそれほど時間はかからなかったが……移動やら村の人たちの
「腹へった〜〜! ずっと腹の虫が鳴いているぜっ」
「汗も少しかいたねー。さっぱりしたい気分だなぁ〜」
ジーナさんとセフィアさんの言葉に共感して俺は数回頷く。
と……今までどこかに行っていたマルテさんがリビングに戻ってきた。
「ジーナさん、セフィアさん。お風呂を沸かしてきましたのでお先にどうぞ。ゆっくりしてきていいですからね。その間に私は昼食の用意をしますから」
「おおっ! さすがマルテだなー!」
「さっすが、マーちゃん♪ 気が効く〜」
マルテさんの言葉に、2人の顔がぱぁぁと明るくなる。
マルテさん、相変わらず優しいなー。
わざわざお風呂沸かしてくれるなんて。
「ユーガ君には、少しお待たせしてしまいますね」
マルテさんは、俺にも気遣いの一言を掛けてくれる。
マルテさんはいつも優しいよなぁー。
「俺はいつも通り、皆さんが入った後で大丈夫ですから」
間違っても一緒に入るわけにはいかないし。
母親たちと一緒にお風呂に入っただなんて、勇者パーティーの3人が知ったら……それはもう、凄い表情をされそうだ。
そもそも美人、美女たちと一緒に風呂に入る勇気なんて、俺にはない!!
なので、ジーナさんとセフィアさんに「いってらっしゃい〜」と手を振る。
2人はウキウキした様子でドアの方へと足を進めていたが……。
ふと、セフィアさんが足を止めて、こちらを振り返った。
「ん? セフィアさんどうしました?」
何か忘れ物かな?
「えーと……わたしはユーくんも一緒にお風呂に入ってもいいかなってぇ〜」
「……へ?」
おっと? セフィアさんがとんでもないことを言っているぞ?
「ユーくんも今、汗かいてるでしょ? それなら一緒にお風呂に入った方が効率がいいし……。わたしがユーくんの背中を拭いて……いや、背中を流してあげるよ!」
「せ、セフィア!? おまっ……な、なに言ってんだ! ユーガの背中を流すってことは、お互いに裸になっている状況ってことで……は、破廉恥にもほどがあるだろっ!!」
ジーナさんが顔を赤くして慌てた声を上げる。
そうだよな。そういう反応になるよな。
でも、ごめんなさい。実はしていたんです。
セフィアさんには、汗だくになった上半身をタオルで拭かせるというセクハラはしていたんです。
「みんなと違って、わたしはユーくんの裸に慣れてるしー……」
あと、セフィアさん。何かボソッと呟きながらこっちを見ないで……!
「な、ならアタシはっ! アタシは疲れを癒してもらうためにユーガに膝枕でもしてもらおうかなぁー……なんて」
「何それ! ず、ずる……んんっ。そういうの良くないんじゃないかな、ジーナちゃん〜? 膝枕だなんて、ユーくんと触れ合っているのも同然じゃん!」
今度は、セフィアさんが声を上げる。
ごめんなさい。実はしていたんです。
ジーナさんには、膝枕したり、膝枕させたりするセクハラをしていたんです。
「ア、アタシとユーガの仲だしなぁ……。それぐらいは……」
ジーナさんも何かボソッと呟いてる。
あと、チラチラと俺のことを見ないで……!
しかしながら、みんなの前ではなく2人っきりの時にセクハラしといて良かった。
パーティーメンバー全員にセクハラしてたなんて、最後の追放される時以外にバレたら、どうなることやら……。
少なくとも、俺の命が危ない。
想像しただけでも、命の危険をヒシヒシと感じる。
「ジーナさん、セフィアさん。ユーガ君を困らせたらダメですよ」
マルテさんが宥めるように言う。
どちらかといえば、俺が困らせてた側なんだけどな。
そして、マルテさんにもしていた。
思いっきり抱きしめるというセクハラをしていた。
みんな、俺にセクハラされてさぞ辛かっただろう。
けれど、母親だから。大人だからと我慢してきた。
でももう、俺はセクハラは辞めたんだ。
俺が言えることではないが、これからは安心して生活を送ってほしい。
「ま、まあそうだよねっ」
「そ、そうだよなー」
マルテさんの言葉を受けて、あからさまに取り繕った笑みを浮かべるセフィアさんとジーナさん。
ははは、と乾いた笑みを浮かべて……やはり、俺の方に視線を送ってくる。
「2人とも、とりあえずお風呂に行っていただいて……」
今の俺から言えるのはこれぐらいしかない。
そうして、2人はお風呂場に向かっていった。
「行きましたね、2人とも」
マルテさんがぽつりと言う。
その表情がほんのり緩んでいる気もした。
「そうですね。2人はゆっくりお湯に浸かるでしょうから、しばらくは俺とマルテさんしかここにはいませんね」
「そうですよ、ユーガ君。ところで……」
マルテさんが俺のことを正面から見つめる。
まるで……何かを待っているようだ。
となれば……。
「分かっていますよ。マルテさん」
「っ! ゆ、ユーガ君」
「もちろんですよ。俺も昼飯作り手伝います! 2人でやった方が早いですからね!」
俺は腕まくりしてやる気をアピール。
前世じゃ、料理するのが当たり前だったから、包丁使いも調理も味付けもできる。
マルテさんの役に立てる!
「マルテさん何作ります? ジーナさんもセフィアさんも俺もたくさん食べますから、数品作るとしても……って、マルテさん?」
マルテさんに視線を落とせば……その表情にはいつもの柔らかさも、明るさも、笑みもなく。
「もう……我慢できません」
「……え」
ぽつり、と。
それでいて弱々しく、マルテさんが言葉を漏らした。
まさか……限界がきたのか。
俺がセクハラしてきたことが積もりに積もって今、きてしまったのか……。
「マルテさん……。すいません、そうですよね。俺、マルテさんに今まで……」
「ユーガ君……自覚あったんですか?」
「ええ、まあ……」
少し驚いたようにぱっちりと目を開けるマルテさんを見て、俺は視線を横に逸らしたくなる。
そうだよな。無自覚ならまだ許される余地があるとしても……自覚してセクハラをやっているなら余計にタチが悪いよな。
「自覚があるということは、理由もあるってことですよね? では、理由を聞かせてください、ユーガ君」
マルテさんが一歩詰めて俺の顔をじっと上目遣い気味で見つめる。
「ユーガ君は私のことをいつも思いっきり抱きしめていました」
「はい。そうですね」
パーティーを追放されるためという名目で。
マルテさんに嫌われるために俺はセクハラをしてきた。
「どうして……」
次のマルテさんの声は……震えていた。
ああ、俺のせいでそんなに辛い思いを――
「どうして……どうしてなんですか、ユーガ君」
「そ、それはですね……」
俺は今までセクハラをした本当の理由を話そうと重々しい口を開いて……。
「どうして――
その言葉を聞いて俺は……口を閉ざした。
えっと……甘えるとは??