セクハラ辞めたらパーティーメンバー全員病んだ。なんで? 作:陽波ゆうい
夕食の時間になり、パーティーメンバー全員で食卓を囲んでいた。
俺は、メイン料理であるハンバーグから手を伸ばす。
ナイフを入れた瞬間、じゅわっと肉汁が溢れ出す。
表面はしっかり焼かれていて、でも中はふんわりジューシー。デミグラスソースの匂いも合わさり、腹がぐぅと減る。
大口でぱくっと食べれば、もう……最高っ!
「ふふっ。ユーガ君の食べっぷりはいつみてもいいですね。その表情で十分すぎるぐらい分かりますが……ユーガ君? ハンバーグのお味はどうですか?」
「ん! 美味しい! めちゃくちゃ美味しいです、マルテさん!!」
思わず敬語が取れてしまうほど、美味い。
使っているのは魔物肉だけど……全然抵抗感はない!
むしろ、魔物肉の方が好きかも。
前世に食べたジャンキーな感じのハンバーグとは違い、マルテさんの作るハンバーグは洋食レストランとかそういう専門の店で食べる味。
マルテさんの作る料理はどれも美味しいけど、俺は特にハンバーグが好きだ。
「ユーくん、ユーくん♪ お口には何も付いていないけど、拭いてあげるね♪」
「ありがとうこざ……えと、セフィアさん? 何も付いていないなら拭かなくて……むぐぐっ!」
セフィアさんが紙ナプキンで俺の口周りを優しく拭いてくれる。
「はい、綺麗になりました〜♪」
「元々綺麗だったのでは? でも、ありがとうございます!」
まあ拭いてくれたから、お礼は言うけどな。
「マルテ、ハンバーグおかわりだ。おい、ユーガ。たくさん食べないと大きくなれないぞ?」
「もちろんですよ、ジーナさん! 俺もパンとスープとハンバーグおかわりしますから」
会話が途切れることなく、和気あいあいとしたいい雰囲気の夕食時。
みんな優しくて思いやりがあって、仲の良いパーティー……なんだけど。
「今日は久しぶりにお酒飲もうかしら」
「マーちゃん珍しい〜。じゃあ私はワイン〜」
「アタシはキンキンに冷えたビールだな! よぉし! 早速、飲もうぜー!」
えーと……なんでこのパーティーは俺以外全員、
最強の剣使いと呼ばれる若き騎士団長の母親である、マルテさん。
どんな傷も一瞬で癒し、謙虚で朗らかな人柄も人気な若き聖女様の母親である、セフィアさん。
なんでもどこでも作り出せる凄腕の若き錬金術師の母親である、ジーナさん。
そして、その子供たちは今……。
「それにしても、あの子たちが旅に出てもう1年が経つのですね……」
「みんな元気かなぁ〜。怪我してないかな〜。お腹空かせてないといいけど〜」
「まあアイツらなら大丈夫だろ。なんたって、アタシらの子供で勇者として選ばれるぐらい強いしな!」
そう、勇者。
この3人の子供たちは、
つまり、このパーティー。
実質、勇者パーティーとして魔王討伐に出ている我が子を待つ、健気な母親たちの集まりなわけで……。
だから……なんか、申し訳なくなってくるのよ!!
そりゃ、俺だって最初の頃は異世界で無自覚、無双、美少女ハーレムを築きたいと思っていたけどさ!!
けど、気づいたらパーティーメンバー全員、母親だよ! なんでっ!?
『魔王討伐から帰ってきたら、母親全員寝取られてました』みたいなタイトルになるの嫌だよ!!
だから俺は、セクハラをして母親全員に嫌われたい。
そうして、早くこのパーティーから引き離されたいのだ。
……変な気が起こる前に。
「しんみりした空気になってしまいましたね。ユーガ君もお酒飲みますか? 私のでよければ少しだけでも……」
「ユーくんが飲むならほろ酔いサワーからよ〜。わたしの1口飲まない〜?」
「いいや! ここは男らしく強い酒でいこうぜ、ユーガ! アタシのビールを飲め飲めっ!!」
俺の気も知らずに、母親たちがお酒を勧めてくる。
「い、いやぁ……俺は大丈夫です! ご飯いっぱい食べたいので!」
そう返すと、3人は「若いわね〜」と言いながらお酒を飲んでいた。
異世界だと15歳から成人と見なされるので、俺はお酒はもう飲めるのだけど……。
飲んで、酔った勢いで母親全員襲っていました、みたいな展開になりたくないし……!
俺は早くセクハラして嫌われて、このパーティーから追放されたいんだ!!
そんなセクハラ生活が続いたある日のことだった。
勇者パーティーが魔王を討伐したというニュースが街中に知れ渡った。
あらすじの"母親属性"がポイントになってきます。