セクハラ辞めたらパーティーメンバー全員病んだ。なんで? 作:陽波ゆうい
冒険者ギルドに到着すると、いつものように掲示板の前へと足を運んだ。
どの依頼を受けるか、みんなで話し合う。
「それにしても、魔王が倒されても魔物がいるのは変わらないよね〜」
「魔王とか魔族と魔物はまた別物だからな。でも、魔王が倒されたことで魔物の凶暴化がなくなるのはデカいよなぁ」
セフィアさんとジーナさんの会話に頷きつつ、俺も会話に加わろうと口を開きかけた時だった。
「おい、あれ……」
「ああ、だな……」
俺たちのパーティーが、まるで見せ物のように周囲から大量の視線を集めていることに意識がいく。
まあ、慣れたものではある。
俺以外のパーティーメンバーは全員、目を引く美人ばかりで、自然と周りの視線が集まるのはいつものことだ。
だけど、今日は――いつも以上に騒がしい。
「あれが今話題の勇者パーティーの母親たちか!」
「ていうか、全員若すぎだろ! 本当に子持ちなのかよ。しかも3人ともめちゃくちゃ美人!」
「自分の子供が勇者だなんて、さぞかし鼻が高いだろうな〜。俺だったら一生酒の場のネタにするぜっ」
「もう冒険者なんてしなくても、一生遊んで暮らせるよなー」
そう、今回は美人というだけではなく、勇者パーティーの母親として大注目されていた。
世間は、勇者パーティーが魔王を討伐した話題で持ちきりだ。
その勇者の母親たちがここにいるとなれば、話題にならないわけがない。
「勇者パーティーのリーダーにして、現騎士団長の息子を持つマルテさん……物腰柔らかくて、誰にでも敬語だし、まさに理想の女性だよなぁ!」
「俺は麗しき聖女様の母親である、セフィアちゃん派だなぁー。清楚で気さくでお茶目なところもあって可愛い! そこにいるだけで癒されるわ〜」
「ばかっ、お前ら分かってないなー。やっぱ、ジーナの姉御だろ! 鍛冶師としても超一流で、しかも面倒見もいい姉御肌……惚れるしかねえ!」
そんな声も聞こえてくる。
冒険ギルドと併設している酒場の方にいる男たち3人が熱く語っている様子だ。
そんな男たちの視線が……俺に向けられた。
「んで、アイツらと一緒にいるあの男……」
「あー、アイツねぇ……」
「ああ、アイツは……」
「「「一体、何者なんだよ!!!」」」
俺は俺で、目立っていた。
だけど、ちょっと意味が違う。
普通こういうのって、無名の新人がとんでもない功績をあげた時に言われるものじゃないの?
俺は【無限の魔力】というチート能力を持っているし、そういうムーブができるのではとちょっとワクワクしていたけど……。
まさか、ただパーティーに入っているだけで目立つとか思わなかった。
でもまあ……目立つか。
このパーティーって、俺以外全員、母親だもんな。
母親しかいない中に、ぽつんと男が1人……かなり異様な光景だよな。
「てか、よくあんな美人揃いの母親パーティーに入れたよなぁー」
「どういう経緯だったのか、マジで気になるわ……。逆玉狙いとかじゃないよな?」
「おい、そういうこと言うのやめろって! アイツ、普通に強いからな。変なこと言うとぶっ飛ばされるだろうがっ」
別にそんな簡単にぶっ飛ばさないけど。
てか、俺、まだ誰もぶっ飛ばしたことないのに。
「おい、ユーガ聞いているのか?」
ジーナさんから声を掛けられ、そちらを向く。
って……今はどの依頼を受けるか話し合っている時だったな。
「ったく……ユーガお前、全然話聞いてなかっただろ? マルテ、お前もだぞ?」
ジーナさんが次にマルテさんの方を見る。
マルテさんもだったのか。
いつもは、どの依頼を受けるか冷静なアドバイスをするのにな。
「さっきからアタシとセフィアしか喋ってねーじゃねぇか。アタシら4人でパーティー組んでるんだから、ちゃんと話に参加してもらわないと困るぞ」
「え、ええ……。ごめんなさい」
「俺もごめんなさい!」
マルテさんに続き、俺も謝る。
それから話し合って決めた依頼は、3つほど。
どれも魔物の大量発生系だった。
「切れ味試すんだったら、数が多い方が良いだろう?」
「そうそう。数が多い方が魔法をたくさん打てるもん〜♪」
今日のジーナさんとセフィアさんはとにかく、いっぱい戦いたいみたいだな。
俺も頑張らないとな!!
依頼の紙を取り、それを窓口にいる受付嬢さんに提出すれば、依頼を受けられる。
その手続きが終わり、俺たちは冒険者ギルドを出た。
「最初はゴブリンの大量発生か。よぉし、アタシ渾身の武器の出番だな」
「わたしの分も残しておいてね、ジーナちゃん〜? 試したい魔法がたくさんあるからっ」
ウキウキした様子のジーナさんとセフィアさんの後ろを着いていきつつ……俺は、隣のマルテさんにこそっと声を掛けた。
「マルテさん。今日、もしかして体調悪いですか? もしそうなら無理しないで休んでもいいですからね」
思い返せば、冒険ギルドに向かうところからマルテさんはどこか元気がない。
口数も少なかったし、笑顔も薄い。
もしかしたら、昨日遅くまで起きていてその影響が今になって出ている。身体とか疲れてるのかもしれないよな。
「ユーガ君は優しいですね……。ありがとうございます。でも、体調の方は大丈夫ですから」
マルテさんは微笑んでそう言うが……やっぱりどこか、いつものマルテさんじゃない気がした。
とはいえ、本人がそう言っている限りは強引に理由を聞くわけにもいかないかな。
誰だって、言いにくいことの1つや2つあるし。
俺とか、どこ生まれでどこの町出身とか生い立ち的なことを聞かれたら困るし。
さすがに転生者って言えないしなー。
「そうですか。でも、俺にできることがあったらなんでも言ってくださいね!」
それだけは伝えておきたかった。
今すぐじゃなくても、その時がきたら力になりたいからな。
「なんでも……ですか」
ふと、マルテさんは何かを考えるように俯き……ゆっくりと口を開いた。
「ユーガ君」
「はい」
おっと、何か話すのかな?
「依頼が全部終わったら、その後……
2人っきり……。
やっぱり今日のマルテさんには何かあるようだ。
それも2人っきりにということは、セフィアさんやジーナさんには話しづらいことなのかな?
何はともあれ、俺は笑顔で大きく頷いた。
「もちろんいいですよ。じゃあ早く依頼を終わらせないとですね! その分、時間が取れますから」
「そうですね。……ふふっ」
マルテさんがふわりと笑う。
おお、今のはいつも通りっぽい。
少しは元気が出たみたいで良かった良かった。