アイシールド2/1   作:寛喜堂秀介

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33 東京大会王城戦

 

 

 10月23日。決戦会場「デス・アリーナ」

 ナイター中継の入る決勝戦は、夜からの開始だ。

 それに先駆け、夕刻には3位決定戦──西部ワイルドガンマンズVS盤戸スパイダーズの一戦が行われた。

 

 盤戸スパイダーズの連続オンサイドキック戦術──【スパイダーズ(ウェブ)】に翻弄された西部は、関東最強のリードブロッカー、赤羽が自在に駆使する【走路誘導(ランフォース)】により甲斐谷陸の(ラン)が、さらには台風による強風でロングパスまでもが封じられ、絶体絶命に陥る。

 

 だが中盤を超えて、西部はその底力を見せつける。

【スパイダーズ(ウェブ)】に適応し、鉄馬と陸のコンビネーション(ラン)でオンサイドキックのボールを確実に確保する。

 さらには風の流れを読み切ったキッドは、エースレシーバー・鉄馬を軸にショットガン体勢を再構築。攻撃最強の西部が機能し始める。

 

 追いつき、追い抜いて、ラストプレー。

 最強のリードブロッカー赤羽と、最強のレシーバー鉄馬の勝負を分ける一騎打ち。

 赤羽の重心崩しの超速タックルに、鉄馬は体勢を崩しながらも鋼の意志でこれに堪え、速度で勝る赤羽の追撃にも屈せず、最後には赤羽を引きずるようにしてゴールラインを踏み越えた。

 

【西部33‐23盤戸】。

 関東大会への最後の切符は、西部ワイルドガンマンズが勝ち取った。

 

 悔しがる者、俯く者。

 安堵する者、見上げる者。

 それぞれの物語の、はるか高みを行くように。

 

 東京大会決勝──超人たちの宴が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

『さぁ、東京大会ファイナル! 鉄壁の王者・王城ホワイトナイツVS最凶の悪魔軍団・泥門デビルバッツ! 両者すでに関東大会行きを决めておりますが──本日この試合で、真の東京王者が決まります!』

 

 

 入場口で控えながら、アイルはアリーナに響くアナウンスを聞く。

 前回は西部に破れ、盤戸との3位決定戦で辛くも関東大会への切符を掴んだ。

 だが、今回は違う。東京最強の西部を下し、最強の挑戦者(チャレンジャー)として、堂々と王者・王城に挑むのだ。

 

 正真正銘、アイルにとって未知の領域。

 そう思うと、ほのかな怖さと……より以上のワクワクに、身震いが起こる。

 

 

「ケケケ、(ファッキン)ドリル。柄にもなく緊張してやがるか?」

 

 

 と、ヒル魔が声をかけてくる。

 

 

「武者震いですよ。あの王城、あの進さんが相手ですから……力も入ります」

 

「そうだな。テメーに上等くれやがった(ファッキン)野郎には、目にもの見せてやらねーとな」

 

「そんな物騒な」

 

 

 銃を掴んで嗤うヒル魔に苦笑していると、他の人間も話に加わってくる。

 

 

「そうね、うちの義娘(むすめ)に手を出したんだから、きっちり殺らないと……!」

 

「まもりさん!?」

 

「そうだね。僕が……思い知らせるから……たぶん。がんばって。必死にやれば、なんとか……」

 

「セナ!? 途中でヘタれるなら無理しないで!?」

 

 

 ヒル魔、まもり、セナだけじゃなく、三兄弟や山岡、佐竹まで殺る気満々で、アイルとしては困惑しかない。

 いや、桜庭から報告を受けた王城の庄司監督が、溝六を介して詫びを入れてきたりと、王城側でも大げさな対応をされてるのだが。

 

 

「みんなあんまり気にしないでね? 進さんにケジメが必要なら……わたしが、試合でつけるから」

 

 

 闘志の込もるアイルの言葉に、みなの表情が和らいで。

 王城ホワイトナイツの選手入場が終わり、いよいよ泥門の出番となる。

 

 

『続いては泥門デビルバッツの入場です!! 先頭を切って走るは光速のランニングバック・アイシールド21!!』

 

「──行ってきます!」

 

 

 アナウンスとともに、吹き出すドライアイスの雲を突っ切って、セナがアリーナに飛び出す。

 続いて栗田、モン太、夏彦の名が呼ばれて……続いて呼ばれたのは、アイルの名だ。

 

 

『悪魔軍団の縁の下を支える最強可憐な悪魔美少女(デビルサキュバス)──天王洲アイル姫!!』

 

「姫呼びは必須なんだ……?」

 

 

 誰が紹介を考えたのか、むずむずしながらもアリーナに出て手を挙げると、客席から割れんばかりの歓声が降ってきた。

 なんかチアの鈴音が誰よりも張り切って手を振ってるので、振り返すと、彼女はガッシャガッシャとローラースケートで足踏みして喜びを表現した。

 

 そこから、ヒル魔、小結、十文字、黒木、戸叶、ムサシ、雪光、地味石丸、助っ人軍団……最後にロスとまもり、トレーナーの溝六が紹介されて、面子がそろった。

 

 

「ケケケ、ここで負けても関東大会に上がれる……なんて考えてる(ファッキン)玉無しはいねえよなあ!?」

 

 

 円陣を組み、主将のヒル魔が叫ぶと、みな吠えるようにして応じる。

 アイルとまもりに玉はないし、なんなら生粋の玉なき者であるまもりが一番殺意が高いのはともかく。

 

 

「泥門の攻撃力は関東最硬・王城ディフェンスをぶち破れるってとこ見せてやれ! 俺らは敵を倒しに来たんじゃねえ──殺しに来たんだ!」

 

『ぶっ・殺・ろす! YEAH(イエ──)!!』

 

 

 悪魔たちの咆哮が、夜空に響き渡った。

 

 試合開始の笛とともに、キックオフ。

 王城キッカーが高々と蹴り上げたボールは、3位決定戦から続く強風に流され、石丸の前方へ。

 

 これを、ヒル魔の読みでキックとともに動いていたセナがキャッチに向かう。

 だが、風に遊ばれた不規則な軌道のボールを抑えきれず、お手玉してしまう。

 

 その隙に、王城ディフェンス陣が走り来る。

 完璧な連携のもと、統制の取れた突撃は、さながら重騎兵による突撃(チャージ)

 セナですら、一切の(ラン)ルートを見つけられない堅固な連携に──泥門の悪魔軍団が、獲物を求めてぶつかっていく。

 

 個の力では、王城が上だ。

 1年生選手でも、中学から数えて3年半。

 二本刀のショーグン──庄司監督に、信念を込めて指導された精鋭たちだ。総練習量で上回るのは、ヒル魔と栗田くらいのものだろう。

 

 だが。

 悪魔軍団の両手には、急造ながら致死性の毒が仕込まれている。

 

 

 ──【悪魔の毒(デビルバットポイズン)】!

 

 

「こ、こいつ──急に強く!?」

 

「これは盤戸の……!?」

 

 

 上手く相手と状況が噛み合った十文字が、相手ディフェンスを押し崩す。

 その綻びを縫って。いち早く敵を薙ぎ払ったアイルが、セナに迫る王城最強のラインマン・大田原に横合いから突き込む。

 

 

 大田原誠──40ヤード走5秒0、ベンチプレス140kg。

 VS天王洲アイル──40ヤード4秒86、ベンチプレス90kg!

 

 

「おおっ!?」

 

 

 腕力差はあれど横からのタックルだ。

 王城最強のパワーファイターといえど、これには堪えきれない。

 だが素早く持ち直した大田原を抑えるのは、アイルにとって至難の業。

 無理やりながらも、かつての進と同じだ。【悪魔の毒(デビルバットポイズン)】で何度崩しても、すぐさまリカバリしてくる。

 

 だが。その一瞬で十分。

 アイルの背後に迫る敵を、石丸が抑え、空いた走路(ルート)を、セナはモン太を(ブロッカー)にして駆け抜ける。

 

 その先に待つは──進清十郎。

 

 

「俺が壁になる! ぶっ飛ばされるから気を付けろよ!」

 

「モン太……うん!」

 

 

 音速の騎士が、突撃槍を構え突進する。

【スピア・タックル】の一撃を、喰らいながら。

 

 

「キャッチ……MAX!!」

 

 

 モン太は、体と槍の間にかろうじて手を割り込ませた。

 手のひらの盾が衝撃を弱めて、モン太はかろうじて踏みとどまる。

 その刹那、セナは最高速へシフトする。常時光速、40ヤード4秒2。

 

 モン太の稼いだ0.2秒が、致命的な差を生んだ。

 ライン際で守っていた敵ディフェンスを、減速なしの光速で抜いて──あとは無人のフィールドが開けるのみだ。

 

 光速のアイシールドに、進が追いすがる。

 両者の距離は2m。だが、セナは引き離せない。進は追いつけない。

 

 ボールを抱えての(ラン)だ。全速よりはわずかに遅い。

 それでも4秒2台の亜光速。その領域に、進清十郎は足を踏み入れている。

 

 だが、届かない。

 

 

『タッチダウーン! なんとなんとアイシールド21、王城の「被タッチダウン0伝説」を、キックオフリターン・タッチダウンで破ってしまったー!!』

 

 

 悪魔の軍団全員に助けられて。

 小早川瀬那は王城不破の門を再びぶち破った。

 

 

 

 

 

 

「モン太!」

 

「やってやったぜアイシールド!」

 

 

 全員集まって。

 喜び合うセナとモン太に、ヒル魔をはじめ、仲間たちが手荒い祝福を浴びせる。

 

 

「ケケケ、うちの(ファッキン)ドリルに上等くれやがった落とし前、これでひとまずつけたってことにしてやるぜ」

 

「はぁ? ぜんぜん足りねえよ。ボコボコにぶち負かしてやる」

 

「勘違いすんな。地力は王城のが上だ。テメーが進に目移りしてる暇なんぞ1mm秒もねえんだよ……勝つためにゃ進清十郎は、アイシールド21がタイマンで勝つっきゃねー」

 

 

 十文字が突っかかるが、ヒル魔が制する。

 その言葉に、セナは力強くうなずいた。

 

 

「──それから、(ファッキン)猿。テメー手は無事か?」

 

「え、いや……行けるッス!」

 

(ファッキン)馬鹿野郎! 進の【スピア・タックル】手で受けて無事なわきゃねーだろ! つーか二度とやんな! 下手すりゃ脱臼で一発アウトだスカタン! ウチの戦略ぶっ潰す気か!!」

 

 

 幸い、モン太の手は痺れて握力が無くなっている程度。

 しばらく休ませれば回復するだろうが……

 

 

「一度ひっこめるから(ファッキン)アル中に診てもらって5分で治せ。その間、代わりに山岡と(ファッキン)ハゲを入れる。奴はエイリアンズ戦出てねえからナイターは初めてだ。慣れさせときてえ」

 

「待ってください! いや、治すッスけど、次のワンプレー、王城の攻撃だけつき合わせてください! マッチアップ相手の桜庭先輩を、肌で感じときたいんで……!」

 

 

 モン太は、ヒル魔の目をまっすぐ見て嘆願する。

 ヒル魔は、真剣な表情で視線を返して……上空を指差す。

 

 

「……この風だ。向こうもパスはキツい……が、あっちもまずは風の感触確かめんだろ。ワンプレーだけだ。見てこい(ファッキン)猿。舐めたプレーしやがったらぶっ飛ばすぞ!」

 

「はいっス!!」

 

 

【泥門7‐0王城】で、泥門のキックオフ。

 

 キッカーはもちろんムサシ。

 分厚い風のカーテンを突き破り、天高く蹴り上げたボールは、風に流されながら落ちてくる。

 王城の陣最奥で流されるボールをなんとか確保したランニングバック眉村(まゆむら)が20ヤードのリターンを決めて。いよいよ王城の攻撃だ。

 

 陣形はパスプレー。

 長身の投手(クォーターバック)、高見が高い位置から放ったパスは、風に流されながらもモン太の指先すら届かない高さで、桜庭の手に収まった。

 

 

 ──【エベレストパス】。

 

 

 高見と桜庭。平均身長190cm越えの超高層パス。

 その高さを網膜に焼き付け、モン太は山岡と交代した。

 

 その後王城の選択は(ラン)プレー。

 だが、ただの(ラン)ではない。日本最強のラインバッカー、進清十郎をランニングバックに据えた最強の布陣。

 

 

「……【巨大弓(バリスタ)】」

 

「だろうな。連中序盤からカマして来やがった。【巨大弓(バリスタ)】についちゃ当たりはついてたが……まずは体で学びやがれ。リードブロッカーの進が両サイドから来んなら(ファッキン)チビ、中央突破なら(ファッキン)ドリル。テメーに任せた」

 

 

 だが、ヒル魔の予想に反して。

 王城の選択は、なんと進自身の(ラン)

 それも鉄壁のディフェンスラインとともに押し込む中央突破のパワーランだ。

 

 栗田と十文字の間を、進が日本最強の超パワー&突進力でぶち抜く──が、そこはアイルの真正面。

 ボール奪取(ストリッピング)のリスクがあるアイルの守備範囲だからこそ、進自身がボールを運ぶ選択をしたのだろう。だが……

 

 

 ──【光速の思考速度(パーセプション)】!

 

 

 アイルが、思考を最高速──光速の世界へシフトする。

 (ライン)を抜いた直後。中央密集地帯では、進が再びトップスピードに入るための距離が足りない。

 

 だから──見るのだ。

 進清十郎を分析し尽くしたロスは言った。

【スピア・タックル】を得意とする進は、ボールを持った場合でも(ハンド)テクニックを多用するだろう。アイルならば、ボール奪取(ストリッピング)を狙えると。

 

 

 ──【悪魔の噛食(デビルバットバイト)】!

 

 

 進が繰り出す剛腕を正面から受けながら、アイルは脇の下にしまい込まれたボールに手を伸ばす。

 

 指がかかり、そこからねじり抜こうとして──できない。

 進は、ボールを掴んだアイルを引きずりながら前進し、素早くカバーに入った黒木のタックルで、ようやく足が止まった。

 

 

『10ヤード前進(ゲイン)! 王城連続攻撃権(ファーストダウン)獲得!』

 

 

 笑えるほどのパワー差だ。

 だが、アイルは口の端を吊り上げる。

 そうでなくては最強の好敵手、進清十郎じゃない。

 

 続く王城の攻撃は、進の外側からの(ラン)

 山岡を、黒木を吹き飛ばして、進はセナと対決する。

 

 

「おおおおおおっ!!」

 

 

 セナは、進の伸ばした手をいなして懐に入り込み、光速で肩からぶつかるようにして進に組み付く。

 

 が、体重65kgのアイルを引きずる進のパワーだ。

 体重ようやく50kgに達した程度のセナでは、止めきれない。

 上から潰されて、進は追いついてきたヒル魔を薙ぎ払ってタッチダウンを决めた。

 

 

「セナ、大丈夫?」

 

「平気だよ……次は勝つ」

 

 

 アイルが声を掛けると、セナは強い意志を込めて言い切った。

 

 

「知ってるよ。最後には勝つって」

 

「うん。アイルならそう言ってくれるって知ってた」

 

 

 【悪魔の毒(デビルバットポイズン)】の心理的な毒の影響もあり、大きくリターンを獲得して、泥門の攻撃は中央から。

 

 ここで山岡に代わって、雪光学が登場する。

 ということは、当然初手から雪光へのパスプレーだ。

 

 

「このワンプレーで(ファッキン)猿を戻す。ケケケ、だが連中に(ファッキン)ハゲを印象付けっぞ。ナイターの特性を使ってな」

 

 

 ベンチに居る赤毛のロスとハンドサインを交わし、ヒル魔は不敵に笑う。

 泥門の、王城戦用に重ねた連携で、敵コーナーバックと一対一になった雪光は、ひたすらに决められたルートを走る。

 筋力的にも走力的にも、雪光はレシーバーとして不足ない能力を備えている。ルートを1mmもズレない走行に、パスが、ピタリ合わさって。

 

 次の瞬間、ボールを追うコーナーバックの視界を、強烈なスポットライトの光が焼いた。

 

 

『パス成功! 12ヤード前進(ゲイン)! 泥門連続攻撃権(ファーストダウン)獲得!』

 

「ケケケ、見たか! これぞ(ファッキン)ハゲ最強の必殺技──【太陽拳(たいようけん)】だ!」

 

「ハゲーん!?」

 

 

 謎の風評被害に雪光が仰天してるが、王城側の動揺も大きい。

 一部で「あれウチの(いただき)*1でも出来るんじゃね?」などと囁かれているが、とんだ風評被害である。

 

 

「あれ狙ってできるんですか……?」

 

「ケケケ、んな暇なこと何度もすっかよ。一回こっきりのびっくり技だ。だが連中の意識にいまのプレーを焼き付けた。十二分の成果だぜ」

 

 

 アイルが尋ねると、ヒル魔は笑って答える。

 王城の畏敬を受けつつ、雪光は復活したモン太と交代した。

 

 そこから連続してセナの(ラン)

 一度目は進の、貯めに貯めた脚力を爆裂させる、セナと相似形の光速タックル──【ランスチャージ】に阻まれた。

 

 この技を、アイルは知らない。が、推測はできる。

 王城は、西部と直接対決していない。それゆえ甲斐谷陸と未対決の進は、本来の必殺技【トライデントタックル】の要たる【ロデオドライブ】をまだ見出していないのだ。

 

 だからこそ、進はセナと相似形の、力づくの超加速を【スピア・タックル】に取り入れた。それが騎馬槍(ランス)による光速の一撃──【ランスチャージ】なのだ

 

 だが、セナも負けていない。

 二度目は進の【騎馬槍突撃(ランスチャージ)】を【デビルスタンガン】で捌いて、わずかなりとも前進を勝ち取る。

 

 王城鉄壁の布陣の中では、前進も至難の業。

 だが。最後はアイルをリードブロッカーにして、パスを受けた夏彦が残り僅かな距離を走りきり、見事タッチダウンを决めた。

 

 

「ケケケ、(ファッキン)チビが進とタイマン張れるなら、(ファッキン)ドリルを好きに動かせる。攻撃力は100億倍だ!」

 

 

 セナの進化で王城の守備に食い込む攻撃力を得た泥門。

 進清十郎の参加で、泥門の守備を突破する攻撃力を得た王城。

 勝率は──完全なる五分と五分。

 

 セナと進の壮絶な地上戦。

 モン太と桜庭による、強風の中での熾烈な空中戦。

 そして【悪魔の毒(デビルバットポイズン)】の幻惑をもってようやく互角のライン戦を展開しながら、前半戦が終了する。

 

【泥門14‐14王城】。

 泥門は強風の中、TFP(トライフォーポイント)のキックをすべて成功させ、王城は初手のキック失敗後、【巨大弓(バリスタ)】による2点狙いの中央突破を成功させている。

 

 そして後半。

 直撃はしていないものの、台風は最接近。

 荒れ狂う風の中、両者一歩も譲らぬ猛烈な地上戦を展開する。

 

 泥門の作戦は【爆破(ブラスト)】。

 東京最強の(ライン)栗田率いる(ライン)組とアイルによる、セナの中央突破。

 王城の作戦は【巨大弓(バリスタ)】。

 大田原率いる関東最高峰の(ライン)陣による、進の中央突破。

 

 おたがいパスプレーを交えながら、じりじりと進む消耗戦。

 後半も残り半分。得点は【泥門20‐28王城】で攻撃権は泥門。

 後半は王城の攻撃からスタートしたため、先攻されてはいても、勝負は互角だ。

 

 地獄の地上戦の結果、双方満身創痍だ。

 汗にまみれ、血で汚れ、芝生と土が張り付く。

 悪魔のスタミナを持つ泥門メンバーでさえ、みな肩で息をしている。

 

 

「悪かねえ展開だが、あの腹黒メガネのことだ。王城の攻撃で終わるようにゲームを組んでやがるだろうが……ケケケ、そうはいかねえ。泥門の真骨頂、見せてやろうぜ!」

 

 

 泥門は、ここで再びレシーバーに雪光を投入。

 夏彦がズレてタイトエンド、アイルはベンチに下がった石丸の代わりにランニングバックの位置へ。

【太陽拳】のイメージが残っている王城は、雪光への警戒を解けない……だからこそ、ド本命へのマークが薄くなる。

 

 

「キャッチMAX!!」

 

 

 アイル、次いで雪光へのフェイクを入れての、風を切り裂く【デビルレーザーバレット】。

 桜庭にも届かないギリギリのコースを通すスパルタパスを、モン太は見事に掴み取って──見事、タッチダウンを决めた。

 

 その後、キックも決めて、点差は【泥門27‐28王城】。泥門は1点差に詰め寄る。

 

 

「よし!」

 

「喜ぶのはまだだ(ファッキン)野郎ども。畳み掛けんぞ……ケケケ、泥門流でな!」

 

 

 そして、泥門のキックオフで始める王城の攻撃。

 キッカーとして出てきたのは……真っ青な顔をした「偽ムサシ」こと、室サトシ。

 

 

『おおっとここで泥門、キックオフにムサシ君ではなく、偽物──失礼、室サトシ君を出してきたーっ!! これはどんな意図があるのか!?』

 

 

 キックオフだから、当然トリックプレーの余地はない。

 ただ敵陣に蹴り込むだけ。そう思っていたのだが……室サトシが巨体を揺らして蹴り上げた球は、まともな回転すらせず、大きく左にそれて飛んでいく。

 

 風に流されるとはいえ、これはサイドラインを割るミスキック。

 誰もがそう確信したが……上空でサイドラインを越えたボールは、風に乗ってとんでもない角度でフィールドに戻り始めた。

 

 

「フックをかけたキック──バナナキックの類か!?」

 

「アメフトのボールでこんなに曲がるのかよ!? 見たことねえぞ!!」

 

「こんなの泥門にだって取れるやつは……」

 

「そうだ、バナナと言えば──!」

 

 

 王城選手の視線が、一斉にモン太へ向く。

 

 

「ムッキャー! キャッチMAX!!」

 

 

 モン太が、ボールを追って一直線に駆ける。

 迷いのないその走りに、王城陣営も即座に反応した。

 

 その裏で、悪魔が嗤う。

 

 

「ケケケ、ばーか。(ファッキン)猿の超反応で、こんなバカ球取れるわきゃねえだろ。こんなモン取れるのは──ヤツしか居ねえ!」

 

 

 飛球に対する反応が鋭すぎて見当違いの方向にダイブするモン太それに釣られる王城。

 その影で。ボールの回転と風速から着弾点を完全予測したロスがサインを送り、その地点にドンピシャのタイミングで雪光が走り込む。

 

 ベンチからのリアルタイム指示。

 雪光とヒル魔のホットラインを、戦況を俯瞰するロスが補強する連携プレー。【速選(オプション)ルート(プラス)】だ。

 

 

『なんとなんと泥門、風で大きく流されたキックオフボールをリカバー! 攻撃権をもぎ取りましたーっ!!』

 

 

 ここで攻撃の先手を取り返した泥門は、王城の動揺に乗じて猛攻を仕掛ける。

 パス、(ラン)、中央突破を織り交ぜて、押して押してタッチダウンをもぎ取る。

 

【泥門33‐28王城】。

 得点的にも心理的にも劣勢に立たされた王城は、ここで奥の手を解禁する。

巨大弓(バリスタ)】を背にした、進と桜庭の、パス後のコンビネーション(ラン)──【射手座(サジタリウス)】の破壊力は、それぞれの勝負では拮抗していたセナ、モン太を蹴散らし、タッチダウンにこぎつけた。

 

【泥門33‐36王城】で、残り時間もわずか。

 そうすると、当然こちらも伝家の宝刀を抜かざるを得ない。

 アイルとセナのコンビネーション(ラン)、【デビルフォーミュラ・ワン】だ。

 

 

「絶対決める!」

 

 

 雪光、夏彦を(ブロッカー)としながらの(ラン)

 タイトエンドに移った夏彦は、持ち前の柔らかいブロックで中央側(インサイド)の敵相手に粘り、雪光が【悪魔の毒(デビルバットポイズン)】で逆サイドからの盾役を果たす。

 

 こじ開けられた穴へと突き進み、敵を撫で斬るアイルの陰から滑り出して──セナがギアを光速に入れる。

 

 王城でこれに反応できるのは、進清十郎ただ一人。

 だが、両者には決定的な差がある。それは、光速での経験値。

 セナと進、直接の対決は──進の【騎馬槍突撃(ランスチャージ)】を【デビルスタンガン】で捌き、ねじり抜く最中すら光速の【デビルライトハリケーン】で抜き去ったセナに軍配が上がった。

 

 が、抜き去った瞬間。

 進がセナを掴み取ろうと手を目一杯伸ばす。

 

 だが。

 

 

「──知ってた!」

 

 

 間一髪。追いついたアイルが、進の動きを指先の力で止める。

 いかなベンチプレス140kgのパワーといえど、進の体重は71kg。アイルが持ち上げられる程度でしかない。それが紙一重の勝因。

 

 進の手は空を切り、セナはゴールラインを駆け抜ける。

 その瞬間、時計はちょうど残り時間0秒を刻み、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

 

『決まりましたー!! 壮絶な戦いの結果、泥門デビルバッツ、【泥門39‐36王城】で東京王者・王城ホワイトナイツを下しましたーっ!! 』

 

「──おおおおおおおっ!!」

 

 

 スタジアムを揺るがす大歓声の中。

 セナがヘルメットを脱ぎ捨て、勝利の雄叫びを上げる。

 

 

『──と、情報が入ってきました! たった今素顔を晒したアイシールド21の正体は──泥門高校1年2組、小早川瀬那君です!』

 

 

 アナウンスに、観衆は最初戸惑い、波打つように歓声が。最後に万雷の拍手が降り注ぐ。

 

 そんなセナのもとへ、進清十郎が歩み寄る。

 

 

「完敗だった。次はこちらが挑戦者として挑ませてもらう」

 

「あはははは。王者って柄じゃないですけど……はい。関東大会でまた戦いましょう──絶対に!」

 

 

 ちなみに。

 歓声と拍手はセナコール、泥門コールへと変わり、やがて熱狂的なアイルコールに変わった。

 あきらかに前日の放送が影響しているが、とにかく熱狂がすごすぎて、結局アイルはその場でイメチェンする羽目になった。

 

 都合よく、と言うべきだろうか。

 前日の放送を見ていた助っ人の山岡(ドルおた)が、気を利かせて?アイドル衣装を持ってきていたため、これに着替えて、フィールドに戻る。

 

 この日山岡は名もなき英雄になった。

 

 

 

 

 

*1
頂ヒカル。王城のタイトエンド。スキンヘッド。




アイシールド2/1にお付き合いいただき、ありがとうございます!
次回、チャット回です。
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