こっちを選べばぶち殺される!あっちを選べば一生ツラたん!   作:ラクらる

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もーーえーろー
もーえーろー


き ゃ ん ぷ ふ ぁ い や ー で す ( 断 言 )

 彼女と接触できてから約一週間。

 あれ以降も深夜帯にご飯と寝床の整備をしてあげている。

 もちろん彼女は俺に絆されることなく、常に俺を警戒している。

 ただ、敵意は比較的薄れたように感じる。

 勝ったな。

 

 これで敵意が薄れたわけだし、ようやく彼女をここから連れ出す準備ができたというわけだ。

 ここで一週間前に無理やりつれ出していた場合、彼女にあらぬ誤解をされて覚醒でもされたら困ってしまう。

 

 彼女の精神は不安定だからな。いつ覚醒するかわからない。

 あれだ、バルカンの火薬庫的な。

 しっかりとした下準備を行わなきゃ、予期しないところで大爆発しちまう。

 それだけは避けたいからな。

 

 さて、今晩だ。

 今晩は集落でも滅多にないお祭りの日だ。

 男も女もみんなが祭りを楽しむ。

 まあ料理を作ったりするのは、基本的に女の俺たちだから、飯にありつけるのは中盤以降だ。

 

 そして、俺は孤児だから基本終盤まで配膳やらなんやらをしなきゃならねぇ。

 まあ俺としちゃ都合のいいことだがな。

 

 さて、祭りはもう佳境に入っている。

 全員で焚き火を囲んで、大人も子供もアルコール度数の高い酒を飲む。

 勘違いしてはいけないのが、基本的に子供は日常的な飲酒は禁止だ。

 だが、どうやら今日は無礼講ってことらしい。

 

 無礼講の意味違うくね? って思うが、集落の長がそう言ってたから気にしてはいけない。

 さて、みんなが酒を飲んでいる中、俺は酒を飲まずに酒を運んだりしている。

 

(飲めるはずねぇよなぁ。飲んだら死ぬもん、その酒)

 

 そう。

 俺は悩んだ。

 集落の人間を殺すか、殺さないかをだ。

 殺さない選択肢をもちろん選びたかった。

 

 だが、殺さなければ、すぐに追っ手がかかるだろうし、俺の生存率はグッと下がってしまう。

 それに……このまま生きていても碌な死に方しないしな。

 

 ただ、非力な俺がこの集落全員を殺せるとは思っていない。

 三十人ほどの集落だ。

 狩人もいるこの集落で、闇討ちはあまりに時間がかかりすぎる。

 ガチステルス行動しなきゃ、気づかれるからだ。

 

 だから、俺はこの祭りの時に提供される酒に薬を盛った。

 使うのは猛獣対策に貯蓄されている神経麻痺毒。

 それを俺なりにアレンジして、一種の麻酔薬を作った。

 

 効き始めるのが遅いのがデメリットだが、それでも効果はバッチしだ。

 特に子供なんかはすでに夢の中に旅立っている。

 順調だ。

 

 一時間もすると、あれほど騒がしかった会場は寝息が支配していた。

 

「おやすみ……」

 

 ザク。

 一人一人、首筋を的確に突き刺して、確実に殺していく。

 気分は最悪だ。

 確かにこの集落の人間はクズばかりだったが、それでも俺はここで暮らしていたしな。

 このおじさんはよく俺に対して雑用を……このガキは俺に石を投げて……こっちのおばさんは俺に対するネガキャンしてたな。

 

(……あれ、すっごく今更だが、俺って集落内でだいぶ虐められてたくね?)

 

 なぜだろう。

 今まで胸の中にあった罪悪感が、スーッと消えていくようだ。

 もうスカッとジャパンを超えていると思う。

 

 だが、命を自分のために、大量に殺めているのは事実である。

 せめて苦しまないように、一撃でやってしまおう。

 

「……三十一。……三十二。全員殺した、かな」

 

 殺し終えたら、死体をズルズルと引きずって、中央に集める。

 こうすることで、心なしか血の匂いが強まったりしないだろうか。しないだろうな。

 かれこれ三十分ほどで死体を広場中央に集めることができた。

 死体に油をぶちまけ、ライターを着火し、放り投げる。

 

 豪っ、といった音と共に、炎が一気に死体達を包み込み、暗かった周囲を明るく照らしてくれる。

 俺は着ていたワンピースを脱ぎ捨て、炎の中に放り投げる。

 血の匂いが染み込んでいるためだ。

 

 事前に用意していた水で全身を洗い、最後に灰を塗り込む。

 これで少しでも血の匂いを薄めることができれば、というだけで、何か他に意味があるわけでもない。

 

 狩りの服装に着替えた俺は、荷物をまとめて彼女のいる地下室へ降りる。

 今日は祭りがあったせいで、集落の人間から大した暴力を受けていない彼女は、いつもと比べると比較的元気だった。

 

「こんばんわー……」

「……」

 

 相変わらず無言だ。

 ただ、今日は一際警戒心が強い気がする。

 昨日などは俺がきた時、入り口に近い位置にいたというのに、今日は初日のように部屋の隅に移動して、俺のことをじっと見つめていた。

 やはり、なんとなく感じているのだろうか。

 

「えっと、今、集落の人間を全員殺してきちゃった」

「……」

 

 獣じみた彼女はしっかりと血の匂いを嗅ぎ取っていたのだろう。

 皆殺しにしたというのに、対して驚いた表情をしない。

 あるのは、俺から攻撃されないか。その警戒のみだ。

 

「えっと……俺、じゃないか……私と逃げない?」

「……」

「……」

「……」

 

 辛いな、この沈黙。

 ちなみにこの状況はだいぶまずい。

 具体的にいうと俺の命がだ。

 

 ここで彼女がイエスと言わない場合、それは俺のことを殺す対象として見ていることに他ならない。

 敵意は感じない。

 だが、前世でもそうだったように殺しの原因は敵意だけとは限らない。

 

 彼女に内包するそのナニカがなんなのかわからない時点で、敵意がない=俺は殺されないと安易決めつけてしまうのは良くない。

 

「……あなたは、何」

「私? 私はただの人だよ」

 

 いきなり口を開いたかと思えば、意味深な質問。

 果たしてどう答えるのが正解かわからないが、ここは無難に人間と答えるべきだろう。

 

「……アイツらは、何」

「それは……」

 

 ピンチだ。

 というより詰んだ。

 多分ここでいうアイツらは、集落の人間であるのはわかる。

 ならば人間と答えるべきだろうが、そうなると俺=集落の方程式が成り立ってしまうではないか。

 そんなことすれば、彼女に「……同じなんだ」って言われて後々殺されかねない。

 

 しかし、しかしだ。

 そこまで賢くない俺の脳は、人間以外に該当する言葉を見つけることができない。

 困ってしまった。

 

「(これ以上黙るのは良くねぇよなぁ!? あーもういいや、人間って答えちまえ!!)人間、だよ」

「……ねぇ、辛くないの?」

 

 まるで自分が人間ではないかのような言い方だ。

 まあ治癒能力が異様に高いし、獣のような仕草も多かったから、人間ではないのだろうが。

 

「(なんて答えりゃいいんだよ。とりま相槌でいっか)うん」

「……」

 

 心臓がバクバクと高鳴る。

 というよりも、ここ最近心臓が高鳴りすぎだろ俺。

 絶対何かの病気を引き起こしそうだな。

 

「えっと、どうする?」

「……わかった。ついてく」

「(うーん判断基準がなんなのか全くわからなすぎて恐ぇなぁ!? まあとりま逃げるか)ありがとう。私はララ」

「……アナスタシア」

 

 その日初めて、俺たちは互いの名前を知った。




やってることはえげつないですが、何気にこの集落の人々を救済しています
このまま行くと、集落の人間は拷問九百年コースに処されていましたからね
きっと暖かい(物理)夢の中で、主人公に感謝してくれてるんだろうなぁ()
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