クールを気取って距離を縮めてくる後輩女子の策略が、妹を通じて俺に筒抜けな件について   作:古野ジョン

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第47話 体育祭本番

 練習の日から一週間ほどが経ち、今日はいよいよ体育祭本番。陸上トラックを取り囲むように、各クラスごとのブルーシートが敷かれている。そんなグラウンドのど真ん中で、俺は今――地面を強く蹴っていた!

 

「はっ!!」

 

 高く高く飛び上がり、上から吊り下げられたあんパンを視界にとらえた。そのまま飛んだ勢いでパンを歯で挟み、留め具を引きちぎるように顎の力を使う。他の走者が苦戦している中、俺が一番最初にパンを獲得することに成功した。

 

「頑張れっ、おにいーっ!!」

 

 前の方から柚希の声が聞こえた。俺はパンを咥えたまま、全速力で走る。ただひたすら、前だけを見て走り続ける。そして、俺は一着でゴールテープを切った。ぱちぱちと拍手が巻き起こり、近くで待っていた柚希が出迎えてくれる。

 

「やったねっ、おにいーっ!」

「ふがふが!」

「えっ、何?」

 

 パンを咥えたままだとうまく話せないな。なんて思ったので、手で半分くらいに分割したところ――口に咥えていない方のかけらを、柚希が強奪してきた。

 

「隙ありっ!」

「あっ、取るなよっ!」

「ふふふ、最後に食べるまでがパン食い競争なんだからっ! 油断したねっ!」

「偉そうなこと言ってんじゃねえ……ん?」

「ん、どうしたの?」

 

 いつものように柚希と騒いでいるだけなのに、妙に視線を感じて、思わず周囲をきょろきょろと見回した。なんだろう。特に他学年の生徒から見られているような……。

 

「おにい、大丈夫?」

「……いや、大丈夫。って、あんパンは?」

「食べちゃったよ? じゃあ私っ、これからクラス対抗リレーだからっ!」

「ちょっ、柚希!?」

「じゃあねっ、おにい!」

 

 柚希はそんな台詞を残して、ダッシュで去って行ってしまった。あーあ、結局取られてしまった。まあ別に、柚希だったらいいんだけどさ。

 

 などと考えながら、自分のクラスのブルーシートに向かって歩きだした俺であった。

 

***

 

「ねえ、そこのきみっ!」

「はい?」

 

 戻る途中、三年のクラスが集まるエリアを通りかかったところで、背後から声を掛けられた。振り返ってみると――そこにいたのは、三年生と思しき男女数名の生徒たち。その中の一人、ギャルっぽい女子生徒がさらに口を開く。

 

「きみが雫石詩音って子ー?」

「はい、そうですけど……」

「やっぱりー! ねー、話した通りっしょっ!? あははっ!」

「……?」

 

 ギャルは周囲の三年生たちとゲラゲラ笑い合っていた。急に話しかけられて笑われる、というのはあまり気分の良いものではない。

 

「あの、なんなんですか?」

「いやー何って、春ちゃんと付き合ってるのがどんな子なのか気になるじゃん!」

「えっ!?」

「付き合ってんでしょー!? あの春ちゃんと!」

 

 じっと俺の方を見てくるギャル。春ちゃん、というのは言うまでもなくあの春先輩を指しているのだろう。変な噂になっている、とは聞いていたものの尾ひれがつきすぎだろう。

 

「ち、違いますよ。付き合ってもないですしそこまで仲良くは」

「そういうのいいから! で、どうやって落としたん?」

「へっ?」

「春ちゃんみたいな子っ、簡単に男と付き合うわけないじゃん! もしかして……エロい手でも使った!?」

「ほっ、本当に付き合ってないんですって!」

「嘘つくなって! でっ、何したんっ?」

 

 だめだ、まったくこちらの話を取り合ってくれない。もうすっかり俺が春先輩に対して色仕掛けしたことになってる。……いや、逆だろ!?

 

 なんて思いつつも、反論する手立ても考えつかず、俺はただただ言葉に詰まるばかりだった。困り果てて、ただただ立ち尽くしていたのだけど――その時、横から助け舟を出してくれる人間がいた。

 

「あれー、詩音くん?」

 

 そこに立っていたのは――まさしく噂の張本人。体操着姿でもオーラをガンガンに放つ、春先輩であった。

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