お隣さんはちょっと◯い   作:400円

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執筆中の「ポケットモンスターSpecial Frontier」とは何の関係もありません!!
それとギルガルドが使いづらいので輝石ニダンギルで残りのS2遊びます。マッチしたらよろしくお願いします。


ユウリちゃん
お隣さんはチャンピオン


 

 ガラル地方。

 そこでは年に一度の祭典としてジムチャレンジなるものが行われる。

 高みを目指すトレーナー達が一斉にスタートし、限られたシュートシティのトーナメントの切符を手に入れる為にガラル地方を奔走する一大コンテンツ。

 昨年のローズ会長の暴走ともいえるブラックナイト事件もあったことから、今年は流石にないのではと不安に駆られていた地方民の不安を踏み潰す様に何事もなく今年もジムチャレンジは行われた。

 

 しかし、ブラックナイトの事もありダイマックスは禁止というジムチャレンジの目玉ともいえる要素は封印された状態で。

 ダイマックスのないジムチャレンジはライスのないカレーのようなものだと地方民達は当初嘆いていたが……その嘆きを裏切る形で俺は現れた。

 

「おおっとぉ!?噂のニダンギル使い、またも相手ポケモンをノックダーウン!!」

「っそ、トレーナー"も"戦うだぁ……?そんなの聞いたことねえし、アリなのかよ!」

 

 歓声に包まれるドームの中心。そこで悔しそうにポケモンをボールに戻すトレーナーが忌々しそうに俺を見る。

 俺の両手には赤く染まった二振りの剣が。この剣がニダンギルというポケモンではなく、ただの剣なら俺は問答無用でジュンサーさんのお世話になっていただろう。

 

「俺も同感だ」

「同感って……行動と言動があってねえだろうが!」

「同感だけど……俺には、コレしかないから」

「はぁ?」

「来いよ。後一匹。俺達が速攻で崩してやる」

 

 ニダンギルを構えなおし、臨戦態勢を取る。

 挑発に乗ったトレーナーが最後のポケモンを繰り出し、俺に気遣いをすることなく技の指示を送ったのを見て俺も前へと駆け出した。

 

 

 ──―

 

 

「っはぁあ……何とか勝てたぁ……!」

 

 所変わってワイルドエリア。

 ガラル地方に多く存在するアピールポイントの一つで、人の手がほぼつけられていない大自然のテーマパークともいえる場所で俺は伸び伸びと身体を伸ばし、先の勝利に安堵の息を漏らしていた。

 というのも今回のジムチャレンジ。ダイマックスを禁止にしたかわりに新たなルールを設けたらしく、それが「ランク制」というものだった。

 とある会社がそう遠くない未来、カロスの大都市で行うテストケースということで始まった今年のロワイヤル形式のジムチャレンジはある程度のトレーナーを倒した者同士で戦い、その戦いで勝ったトレーナーがジムリーダーに挑めるというもの。

 一風変わった形式に観客は大喜びな事もあって、このジムチャレンジが終わり次第その会社は早速この形式のバトルシステムの深掘りを行っていくことだろう。

 

「兄ちゃーん!」

「お兄さーん!」

「んぉ……ホップ君に、ユウリちゃん!」

 

 身体を伸ばしていた俺を見つけた顔見知りの子供達が嬉々として駆け寄ってくる。

 地元のお隣さんであるホップ君とユウリちゃん。どちらもブラックナイト事件の功労者であり、ホップ君はポケモン博士として頭角を現し始めたソニアの助手、ユウリちゃんに至っては最年少の現チャンピオンとしてガラルの頂点に君臨する最強のトレーナーだ。

 

「二人ともどうしてここに?」

「おう!実は珍しいポケモンの情報があってさ、偶々暇してたユウリも手伝うって流れだぞ!」

「……暇なの?」

「はいっ!大人のやりとりはダンデさんがやってくれていますし、まだ私の出番じゃないので!」

「なーるほど……ダンデも大変だなぁ」

 

 前チャンピオンで現バトルタワーの当主でもあるダンデ。無敗のチャンピオンが負けたと聞いた時はとうとうキバナさんに負けたのかと驚いたが、相手がユウリちゃんだと分かると妙に納得してしまった自分がいる。

 なんというか、彼女は強すぎる(・・・・)のだ。無敗記録を打ち立てていたダンデの様に、いや、それ以上にこの地方で対抗できる人は誰もいないんじゃないか?と錯覚するほど。

 

「そーだ!せっかくだし兄ちゃんも手伝ってくれよ!な、ユウリもそれでいいだろ?」

「うん!」

「えっ、いや俺は……「ダメ、ですか?」……わ、わかったよ……」

 

 上目遣いで雨に濡れたガーディの様に見つめるユウリちゃんに速攻折れてしまい、内心少し面倒になりながらも珍しいポケモンとやらの調査の手伝いを始める事に。

 

「じゃ、オレは此方調べるから、二人は向こうを頼むぞ!」

「分かった!行きましょう、お兄さん!」

「ひ、引っ張らなくても分かってるって!」

 

 少しだけ強引に引っ張るユウリちゃんに連れられるようにワイルドエリアの森林地帯へと足を運ぶ。

 鬱蒼と生い茂る森を掻き分けながら進んでいくと、ユウリちゃんが「少しだけ休みましょう」とお誂え向きに用意された草原の広場に腰を落ち着ける。

 

「ふぅ……意外と体力使うんだね」

「バトルに比べたらまだ楽ですよ?」

「はは、違いない」

 

 力なく笑うとほんの少し、ユウリちゃんに違和感を抱く。

 近い。とても近いのである。そんなに狭くもないし、なんなら余裕でポケモンも出せる広さなのにユウリちゃんは身体を密着させ、あざとく肩に頭を寄せている。

 

「……あの、ユウリちゃん?ちょっと近くないか?」

「ダメですか?」

「いやダメってわけじゃないけど……」

「……そういえば、お兄さんって今ジムチャレンジしているんですよね?」

「そうだけど……ゆ、ユウリちゃん……?」

 

 雰囲気の変わりように戸惑いを見せていると、ユウリちゃんは隣ではなく、俺の伸ばした足に跨る形で正面に座ると、色っぽい笑みを浮かべながら俺を見つめる。

 その歳に見合わない婀娜っぽさに歳の差が気にできなくなるほど胸がドキドキと鼓動をあげているのがわかる。

 それを見透かしたかのようにユウリちゃんはそっと俺の胸に寄りかかり、その心臓の鼓動を聴いて嬉しそうにより一層の笑みを浮かべた。

 

「……嬉しいです。私でも、そういう風に見てくれているんですね」

「そっ、そうじゃない……これは、突然だったから……」

「ふふ……あたふたするお兄さん、可愛い……♪」

 

 そう言ってすす……っと胸元を指で撫でる姿は何時かの時にスタジアムで見た凛々しいユウリちゃんではなく、目の前の(おとこ)を堕とす為だけに自身のアドバンテージを最大限に活かす"女"だった。

 

「普段はバトルも強くて、とってもカッコいいのに……こうやって私に言い寄られただけでドキドキしてくれるんだもん……私、期待しちゃいますよ……?」

「……か、カッコいいって……それに、俺は君ほどバトルも強くはないし……」

「……ウソつき。お兄さんのコト……調べたんです」

 

 ユウリちゃんのスマホロトムが独りでに俺の視界へと割り込み、表示された画面を視界に入れてくる。

 そこに記された内容を見て、俺は別の意味で胸が跳ね上がった。

 

 

 ──ニダンギル使いのトレーナー、戦場を舞う!

 

 今年度のジムチャレンジ期待の星!

 色違いのニダンギルを手にポケモンと一心同体で戦うトレーナー!文字通りのノーガードで戦場を舞う姿はまさに剣の王!昨年無敗のダンデを下した新チャンピオンユウリの喉元にも届き得るその実力に、今後も目が離せません!!

 

 

「……コレ、お兄さんですよね?」

「……そう、だけど。でも、戦ってるのはニダンギルだ。俺は身体を貸してるだけで……」

「……違いますよ?戦ってるのはお兄さんも、です。カッコいいなぁ……あっ、ほら。この宙返りしながら放つ聖なる剣とか、ニダンギルの帯を腕に巻きつけることで短い射程を補う戦い方とか……すごく、カッコいいです」

 

 戦い方を本人の前で言わないでほしい。とても恥ずかしいから。

 映像の中で戦う俺をとろんとした目で眺めるユウリちゃん。洗脳すら疑いそうなその目つきにもしかしてニダンギルが何かしてるのかと思ったが、ボールの中のニダンギルは「何それ知らん……怖」とユウリちゃんの豹変ぶりにむしろ恐怖を感じていた。

 

「おーい、ユウリー?どこにいったんだー?」

「……もう。ホップももうちょっと空気を読んでほしいなぁ。じゃあ、お兄さん。また会いましょうね?」

 

 ホップ君に呼ばれて少しだけ不機嫌になりながら名残惜しそうに俺から離れると、さっきまで見せていた婀娜っぽさは何処へやら。「今行くよー!」と元気に満ちた返事でホップ君の元へと駆けていったユウリちゃん。

 去っていった後にすとん、と腰を抜かし、その場に座り込むとニダンギルが心配そうにボールから出てくる。

 

「……大丈夫、ちょっと吃驚しただけ……「あの戦い方はやめておくか?」だって?冗談いうなよ……今更やめれるわけもないだろ?それに、俺にはあの戦い方しかないんだからさ」

 

 ポケモンバトルのセンスが壊滅的な俺にとって、あの戦い方は革命そのものでもあり、同時に卑怯と罵られても仕方のない手段でもあった。

 手に持ったニダンギル"だけ"を狙うのは困難だ。サイコキネシスのような標的のみに直接攻撃できる手段のあるエスパーポケモンなら話は別だが、タイプ相性的にも差して影響はない。

 言うなれば、人の良心を利用した戦法。強力な技を使えば間違いなく俺も被害を受けるだろうという人の心に訴えかけた卑怯そのものな戦い方。

 現にニュースではああ言っていたものの、何の気なしにエゴサーチした際は案の定「アイツは卑怯」や「いっそのことやってしまえ」と自分の批判であったり、相手側を応援するようなコメントが多数だった。

 

「…………はぁ、今思うと、なーんでジムチャレンジなんかしてんだろうな、俺……」

 

 歳下の二人が立派に頑張ってたから俺も何かしなくてはという何かに駆られたからだろうといえばそこまでだが、ダンデに心を折った俺が今更何をしているんだという話。

 

「……ニダンギル。お前はダイマックスが使えたら俺達がユウリちゃんに挑めると思うか?……「たぶん無理」か……同感だ」

 

 ニダンギルで戦うスタイルが通じているのはあくまでも今シーズンがダイマックスを使わない……否、使えない環境だから。

 昨年の事件の一環として迫力こそ劣るものの止むを得ないと判断した委員会の方針で決まったらしい。

 ダイマックスが利用できる環境だったら、俺達は初戦であっさりと敗退していたに違いない。

 ある意味俺達にお誂え向きの環境でもあるが故にポケモンと一心同体で戦うトレーナーという目玉コンテンツが出来たのだろう。

 

「……前途多難だぁ」

 

 寝転がり、これから先がどうなるのかを考える。

 俺の感情とは裏腹に空は澄み渡っていた。

 

 

 ──―

 

「遅いぞユウリー……あれ、兄ちゃんは?」

「ごめーん!お兄さんなら、ちょっとトレーニングするからって!ホップにもよろしくって」

「そっか!なら仕方ないな!」

 

 適当な理由をつけて若干不機嫌なホップと合流する。

 私もお兄さんとの時間を奪われて不機嫌なのだけど、見ていないホップからすれば知ったこっちゃない事なのでそれを明かすことはしない。

 

「兄ちゃんといえば……なぁなぁ、アレみたか?兄ちゃんのニダンギル動画!カッコよかったよなー!兄貴とはまた違ったカッコよさだぞ!」

 

 嬉々として語るホップに力強く頷く。

 ダンデさんが無敗のカッコよさならば、お兄さんのカッコよさは泥臭いカッコよさだ。

 ポケモンだけが傷つくのではなく、トレーナーも傷つく事でポケモンとの絆を深める戦い方。

 ネットでは「卑怯」だとか、「失格にしろ」とか言われてるけど……私はそうは思わない。

 ネットの人は知らないだけだ。ポケモン達が無敵の存在ではないことを。人はただ争いを代わりにやってもらっているだけだという事を。

 

「ユウリにも届くかもな!」

「そうだね。今からでも手強そうだもん……」

 

 でも、お兄さんの戦いを一番凄い場所で、一番近い場所で見れると思うと今からでも胸が躍る。

 動画越しでは見えづらかったあの凛々しい表情が私に向けられる瞬間を想像すると、顔が熱くなる。

 

「ユウリ?顔真っ赤だけどどーした?」

「えっ?あっ、ううん、なんでも!それより、珍しいポケモンがいたってこの先でしょ?はやくいこう!」

「おおっ、そーだった!はやくしないとまたソニアにどやされる……!」

 

 慌てて駆け出すホップにクスリと笑い、まだお兄さんがいるであろう箇所を少しだけ見やり、あとに付いていく。

 

(……お兄さん、はやくきてくださいね?)

 

 私、待ってますから。

 




人物紹介
・お隣さん
 ユウリのお隣さん。年齢はダンデ達と同じでジムチャレンジを行った過去もあるもののポケモンバトルのセンスが壊滅的だったため、諦めた。口癖は「俺も同感」。
 しかしニダンギルの戦闘センスが抜群だったのもあり、自分の身体を貸す形で共に戦う古のヒスイスタイルを思い付く事でその年のみ特殊裁定となったジムチャレンジに再挑戦。
 その結果「ニダンギル使いの剣士トレーナー」として一躍時の人になることができた。
 女性とまともに話した経験がユウリとソニアくらいしかいないため、言い寄られるとかなり弱い。
 
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