ARMORED CORE 6 緑の魔女はルビコンに羽ばたく 作:強化人間E4-514
同サイトのAC3の小説に感化されてなんか作ろうとしたやつです。
ビルバオの声が昔から好みなので、色々自己満足で作りたくなったのでやりました。
後悔はしていない
────某日、吹雪の中、そびえ立つ灰色の建物の前に、短く刈った黒髪に白髪の混じる初老の男がいた。
彼が立っているのは、ある特殊な
彼は手に持った携帯へ電子音とともに届いた知らせを読み、祈るように目を閉じた。
『ハンドラーに報告。
任務完了、お世話になりました』
短い文だが、彼の心を抉るにはその簡素な言葉ですら過ぎるほどだ。
眉間に皺を寄せて、爪が手のひらに突き刺さりそうなほどの力で拳を握りしめる。
脳裏をよぎる
頬に617、と刻まれた快活な男。
左腕に619、と刻まれた温和な男。
灰色の目隠しに620、と刻まれた無口な少女。
皆、彼を「ハンドラー」と呼び慕っていた。
彼らは立派に仕事をしてくれたのだろう。
任務完了の4文字がそれを十分すぎるほどに物語っている。
猟犬達の顔がよぎる度に零れそうになる涙を堪え、老人はゆっくりと瞼を上げる。
彼───ハンドラー・ウォルターは眼前を覆い尽くす巨大な鉄の扉を睨みつけ、1つ覚悟を決めた。
ここで迎える猟犬が最後だと。
数え切れないほどの犠牲の山の上で、自身が使い潰してきた彼らに報いるために、すべてを清算するのだと。
彼は扉の横のデバイスに手をかざし、扉が金属のこすれる不快な音を立てて開き切るのも待たず、中へと進んでいった。
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「……また来たのか」
息も白くなるような極寒の室内で老人を迎えたのは、体躯を丸ごと包んで一回りもふた回りも大きく見せてしまうような、厚い防寒服に身をまとい、手元の端末を操作する年老いた男だった。
「よくもまぁ、飽きないことだ」
老人は白い髭に埋もれた口を小さく動かし、呟く。
ウォルターはここの常連だった。
不定期的にここのACパーツを買いに来ては、消耗品のように使い潰して再度訪れる。
「617達は、その後どうだ?
ハンドラー・ウォルター……」
つい半年前に売ったパーツのことを尋ねる。
世代は古いが性能のいいパーツを見抜く力はかなりのものだ、と彼はウォルターの審美眼を高く評価していた。
ウォルターは彼を睨みつけ、頷いた。
「……まぁいい。
在庫処分の手間が省ける 」
老人は再び手元の端末に視線を移す。
2ヶ月前にウォルターから注文されたパーツの点検をしているところだった。
ウォルターは老人の背後を覗き込む。
大量の手術用アームとパーツに宿る物質を甦らせる発振器に囲まれたそれは、何重にも巻かれた透明なフィルムの中で死んだように動かない。
「……身動きひとつしないのか」
ウォルターは尋ねる。
通常では、筋肉の完全な硬直を防ぐために、定期的に電流を流して筋肉を動かすシステムが強化人間の脳には埋め込まれている。
そのため、未起動状態でも強化人間は時折身震いを起こす。
しかし今目の前に横たわるそれは、音ひとつ立てる気配もない。
「機能以外は死んでいる。
筋肉も硬直していて、復旧には時間がかるだろうな」
「……起動にはどれほどかかる?」
「動かすだけなら数時間で終わる。
だが……お前の求めている動きをするためには、短くて1ヶ月……最悪、起動すらしないかもしれない」
老人はそのパーツに近寄り、フィルムの奥に潜む目を覗き込む。
「こいつは……借金のカタに売り飛ばされた子供だ。
旧世代型強化人間、C4-621。
人殺しの才能に恵まれてはいたが、親と人を見る目には恵まれなかったらしい。
同業のAC乗りに騙し討ちされ、臓器も何もかも剥ぎ取られた脳と皮と骨だけの残りカスのような状態で俺の元にきた。
哀れなガキだが殺しには慣れている、きっとお前の仕事にも」
「御託はいい、起動しろ」
ウォルターは老人の言葉を強引に遮る。
老人ははぁ、と溜息をつくと、端末を操作してウォルターに渡した。
「安くしておこう、ハンドラー・ウォルター。
それと……」
老人の手が慣れた手つきで、もうひとつのパーツの詳細を開いた。
「……何のつもりだ?」
「オマケみたいなものだ。
ここを政府軍に嗅ぎつけられてな……俺のような木っ端の闇医者にとっては死刑宣告にも等しい。
数日もすれば俺は刑務所にブチ込まれ、ここも全て処分される。
爺さんの代から続けてきた闇医者だが……俺の代が年貢の納め時というわけだ」
ウォルターは壁中に敷き詰められた、六角形のシリンダーの蓋を眺める。
以前はその一つ一つに強化人間が未起動のまま収められていたはずだが、今日はただひとつを残して全てが空になっていた。
「なんとか今日までに、621とこのオマケを除いた分は売りさばくことが出来た。
こちらはタダにしておく。
……アンティークだ、大事に扱え」
ウォルターは顔をしかめる。
生きていた人間の身体をいじくり回してAC部品に変え、二束三文で売りとばすような闇医者がアンティークを大事に扱え、とはよく言えたものだ。
……いや、自分も同じか。
「……もう1人のほうは、何世代型だ?
第1世代か?」
ウォルターが尋ねる。
彼には第1世代の強化人間は避けたい事情がある。
彼の使命を阻もうとする顔なじみの男が第1世代の強化人間であり、その顔が毎度よぎるのは気分の良いものではない。
顔をしかめるウォルターを見た老人はニヤリと笑い、蓋に備えられたバーを掴んでシリンダーを引き出した。
「第1世代じゃない。
……コイツは、コーラルもその管理デバイスを持たない、純粋な機械置換型だ。
人類がまだ地球の
「瀕死の傭兵を使って人体改造か。
……いつの時代も変わらないな 」
「全くだ。
……で、本来なら博物館で展示されてもおかしくないようなシロモノだが、当時から売人をやってた俺の爺さんの代から、今になるまでずっと買い手もつかず保存されていた。
メンテナンスは面倒だが、アーキバスやらベイラムやらで代替可能な部品は手に入るから心配ない。
コーラルの励起をする必要も無いから、コイツのほうが覚醒は早いかもしれんな。
起動するぞ」
「俺はまだ引き取るとは言っていない」
「見捨てられんさ、お前はな」
老人の言葉に、ウォルターは言葉を詰まらせる。
事実そうやって彼が売りつけられた強化人間は
数え切れない。
コイツはそれを理解していて俺に押し付けたのだ、とウォルターは理解した。
数秒迷った後、ウォルターは何かを決心したようにため息をついた。
「……わかった、俺が引き取る」
「話が早くて助かるぞ、ハンドラー・ウォルター。
では、コイツを起こすとしよう」
手元の端末を操作して、老人がアンティークの強化人間を起動する。
シリンダーの中に満ちていた劣化防止ガスと冷気が急激に放出され、内部が一時的に真空状態に陥る。
続いて解凍用の高温の空気を流し込む。
乱暴に起こせば血管を破壊してしまう為、老人は繊細な調整を繰り返す。
そうしてシリンダー内の温度も起動可能な状態にまで上がり、透明な保護カバーが白く曇った。
「……バイタルは正常、あとは本人が起きるのを待つだけだ。
何か聞きたいことは?」
一息ついて老人は端末を近くのモニターの上に置き、ウォルターに目を向ける。
「……聞きたいことは本人から直接聞けば良い。
お前に尋ねることは無い」
「……そうか。
じゃあ次は621の────」
老人が621の起動準備をしようとした瞬間、アンティークはシリンダーの保護カバーが大きな音と共に宙を舞った。
「……は?」
見れば保護カバーが吹き飛んだシリンダーから、すらりと長い足が見えている。
「蹴り飛ばしたのか……?
いや、レイヤード時代の強化人間だ、マッハに近い速度を出すようなACに最適化された身体なら或いは……」
老人がブツブツと考えを声に出して整理している傍ら、そのアンティークはシリンダーからゆっくりと身を起こし────一糸纏わぬ上半身を男二人の目に飛び込ませた。
くすんだような緑の癖のついた長い前髪を掻き分け、幼さの残る若い女性の整った顔が寝ぼけ眼で二人の男をぼんやりと見つめる。
身体の輪郭は美術方面に明るくないウォルターが見ても、完璧な曲線を描いていた。
目立った手術痕はなく、目を凝らせば陶器のような白い肌に薄らとパーティングラインが入っている程度か。
「……女だったのか」
老人が呟く。
「把握していなかったのか!?」
ウォルターが叫ぶ。
「開けたこと無かったし…… 」
老人が目をそらす。
徐々に肌に赤みが戻りつつあるアンティークは二人を交互に見た後、自身が目覚めた周囲をぐるりと見渡し、目を見開いて叫んだ。
「なんか環境に良くない気がしますココ!!!!!!」
「「何が!?!?!?!?」」
老人ふたりの驚愕と疑問が高濃度で混じりあった叫びが、建物の外に漏れるほどの音量で放たれたのだった。
世界観の変更点だけ載せておきます
ACの成り立ちについて:
レイヤードから人類が出て以降はACが必要ない平和な世界だったが、レイヤード以前の人類が残していた宇宙開発施設の遺跡が発見されたことを皮切りに宇宙への探査競走が始まり、新天地を求める企業や学者たちの間で汎用性の高い作業機の需要が高まった事で再開発されてAC6準拠の発展に至る。
一部のパーツにクレスト系やミラージュ系の意匠があるのは過去のACのデータを参考に作り直しているためであり、ベイラム系列はクレストの、アーキバス系列はミラージュ等のデータが多く使われている。
キサラギは早めにぶっ潰れたのでデータがあまり
残っていなかった。
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