ARMORED CORE 6 緑の魔女はルビコンに羽ばたく 作:強化人間E4-514
AC6の話をなぞりはしますがワームあたりから分岐する予定です
強化人間のオマケのほうが目を覚まして数時間後。
ハンドラー・ウォルターは起動プロセスを完了し、覚醒を待つだけの621を専用のポッドに入れて、AC輸送用ヘリ《TH-E-012》の中で自己紹介と今後の説明が行われていた。
ウォルターが所有する《TH-E-012》は特注品であり、前方のキャビン下に個室が増設されている。
部下を各地に送り込み、現地でオペレーションも行う彼やその猟犬が生活するためのスペースだ。
その中の一室、ウォルターや猟犬達がロビーと呼んでいた場所で、ウォルター私物の簡素なシャツを着たアンティークの強化人間は、目の前の木目調のテーブルに出された紅茶をひと口啜り、ふぅ、と息をついた。
「状況は理解しました。
つまりここは、私の活動していた時代から既に100年以上経過していて、私は強化人間として改造されて一度も起こされることなく今に至る……と」
「そうだ」
ウォルターは短く答える。
起動直後は自身の記憶との相違に狼狽えていたが、ある程度の情報を渡してしばらくしたら落ち着いていた。
元々切り替えの速い性質なのだろう。
「ビルバオ、といったか。
……お前のいたレイヤードの歴史は、俺も少し知っている。
三大勢力の戦争とそれに依頼を受けて介入する傭兵……今も昔も変わらない流れだ」
かつてのレイヤードはクレスト、ミラージュ、キサラギの3社が激しく争っていたと後世ではされている。
それにくらべれば企業の数は減ったものの、その分両者の戦力が増大しているため結果的には対して変わらないだろう。
現在、世界はふたつの巨大な経済圏を持つ企業が争っている。
火力と制圧力に物を言わせる軍閥的な傾向の強いベイラム・インダストリーと、テクノロジーと少数精鋭主義の思想を持つアーキバスグループ。
両者は宇宙全体に広がった人類の活動圏を二分して苛烈な経済戦争をもう数十年以上続けており、最早戦争は市政の人々の生活の一部となっていた。
教育機関では積極的にMTの操縦や歩兵訓練が行われ、大学院の推薦として兵器運用科が用意されているほどだ。
正直、今の流れをよく思わないのがウォルターの実感だった。
20代から30代までをベイラムの経済圏で過ごした彼には、かつて懇意にしていた学生がいた。
ハイスクールに通う彼がベイラムのACパイロット兵科に合格したと言って街を出て、1年も立たないうちに骨壷に収められて帰ってきたのを覚えている。
愚かな老人たちの利益追求のために若者の命が潰えていくのは忍びない。
……いや、ある意味では自分も、かつて心の底から軽蔑していた老人と同じなのか。
強化人間とはいえ、若者を消費しているという点では、彼らと自分は同じ存在に映るだろう。
ウォルターは顔を顰め、ぬるくなった紅茶を啜った。
「……やはり俺は悪人だな」
ウォルターの呟きに彼女は首を傾げる。
「悪人……でしょうか?
何年も眠っていた私を起こしてくれましたし、私にはそうは思えません」
「そう……か。
……よし、本題に入ろう。
お前の仕事についてだ」
2人はティーカップを置いて向き直る。
素直で好感の持てる女性、というのがビルバオに対するウォルターの印象だ。
成り行きで引き取った強化人間だが、感情の起伏に乏しい事の多い第四世代型の621には、いい刺激になるかもしれない。
子供一人が戦い抜くには過酷な環境になる。追従する大人は必要だろう。
これから長く喋る口にぬるい紅茶を与えて、彼はこれからについて話し始めた。
「……ISB-2262 ルビコン3という星がある。
俺はその惑星に眠るエネルギー資源〝コーラル〟を目当てに、強化人間のC4-621と、お前を送り込むつもりでいる。
コーラルが手に入れば、621やお前の人生を買い戻せるだけの大金が得られるはずだ。
……資料を送る」
ウォルターは端末を操作して、ビルバオの脳に埋め込まれた電子制御デバイスに情報を送信する。
レイヤード時代の技術で作られた彼女のデバイスだが、通信方式は現代と同じものらしい。
彼女の視界には、ルビコンの環境と現地の傭兵支援システム、流通しているパーツ群の情報が表示されているようだ。
その中でも長く見ていたのが環境に関するデータだった。
彼女は怪訝そうな顔でウィンドウを睨んでいる。
「……どうした? 何か問題か。
現地の植物にアレルギーがあるなら早めに」
ウォルターの言葉をさえぎって彼女は叫んだ。
「メッッッッチャクチャ環境荒れてるじゃないですか!!!! 許さん!!!!!!!!」
両耳を雷が貫いたような大声はウォルターの脳内でキィ──……ンと響く。
「声が大きいな……。
……まぁ、叫ぶ元気があるようで何よりだが……」
老体にはかなりこたえるからやめて欲しい、と伝えると、ビルバオは勢いよく頭を下げた。
「あぁっ、すいません
つい、叫んでしまいました……
いやぁ、うふふ……」
気恥しそうに頭を搔く。
動きも含めて感情が豊かだ、とウォルターは思う。
ここまで感情が分かりやすかったのは617以来だ。
まだ少し残る耳鳴りを頭を振って追い出してから、ウォルターは尋ねる。
「……環境が荒れている、と言ったな。
たしかにルビコンは50年ほど前の災禍で廃星同然となっている。
大地は痩せこけ、植物は数種を除いて自生しない。
星としての機能はほとんど死んでいるようなものだ」
「ふむ……
それは大変ですね…… 」
彼女は少し考え込んだ後、何かを閃いたように顔を跳ね上げた。
「ウォルターさん」
「何だ」
「コーラルでお金稼いでルビコンの環境復興しましょう」
「……は?」
完全に予想外の方向からの答えに素っ頓狂な声を上げるウォルター。
「621さん? と私の人生を買い戻せるというお話ですが、私は別にこの身体でも困ることはありませんし……
あっ、味覚はちょっと治したいですね、紅茶の味がわからないのは嫌です。
621さんの身体はちゃんと治すとして私のぶんはルビコンの環境問題を解決するための資金にするのはどうですか? そうですね、組織名は……オーバーシアーというのはいかがでしょう? 言葉の響きが綺麗で素敵だと思うんです私」
ビルバオは彼の様子も気にせず自分のペースで話し続ける。
とんでもないものを掴まされたかもしれない、とウォルターは今更後悔していた。
今更文句を言いに行こうにも闇医者はもうとっくに政府軍に捕まっているだろうし、無理な話だが。
あとオーバーシアーはやめて欲しい。
「うむ……まぁ考えておこう……」
ビルバオの迫力に押され、気づけば約束を取り付けてしまったウォルターは頭を抱えて呟いた。
「俺は……本当にとんでもないものを掴まされたのかもしれない……」
621が……621が出ねェ……
次は密航やります
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