ARMORED CORE 6 緑の魔女はルビコンに羽ばたく 作:強化人間E4-514
これにて密航終わりです。
ゲームの仕様ガン無視もいい所な戦闘がありますが、今作は通してこの調子で行くのでギャグかなんかだと思ってお楽しみください(仕様から逃げるな)
「いィ~よいしょっ!!」
マーカーが示した最後の地点、ACの残骸にたむろしていたMTとヘリの部隊の最後の一体を、《LOADER 4》はブレードで切り捨てた。
「ふぃ~、これで全部かな。
ごす、ライセンス抜くね」
「解析はこちらでやろう。
順調だな、621」
おびただしい弾痕とクレーターの中心で手足が千切れ、コアに大口径弾の風穴を開けて機能停止しているACにハッキングコードを流し、ライセンスを抜く。
「……Rb37、独立傭兵モンキー・ゴード。
ランク圏外か……」
探知した最後の地点にあったのは、目当てのものではないライセンスだった。
621はふと、なぜ彼が撃墜されたのか気になり、ACの残骸を見下ろした。
そして納得した。
「あぁ、そりゃやられるわ」
モンキー・ゴードの構成は、AC本体だけならそこまで悪くないものだった。
シュナイダー製の軽量パーツ《NACHTREIHER》を頭部とコアに採用して機動力を確保しつつ、同社の中量腕部パーツでも傑作と名高い《VP-46S》で射撃適性と近接適性を十全にし、それらをこれまた同社の傑作中量2脚《VP-422》が支えている。
どのパーツも多くの独立傭兵が採用している評判のいいものばかりであり、特に腕の《VP-46S》に関してはアーキバスが誇る精鋭部隊〝ヴェスパー〟のトップも愛用しているとの噂だ。
総じてバランスの取れた構成であり、武装の選択と搭乗者の腕次第では一騎当千の活躍も不可能では無い。
不可能では無いのだが……
「……レーザーライフル1本とは、思い切ったな」
モンキー・ゴードはあろうことか、レーザーライフルの《VP-66LR》しか持っていなかった。
可能性として他の誰かに武装を持ち去られたのかもしれないが、それにしては強引に剥がした跡や破損した背部武装の懸架アームなどが見られず、ライセンス情報を参照してそれは事実と確定した。
たとえACの武装がどんなに強力だったとしても、周辺を丸ごと吹き飛ばすような性能でもない限りそれ単独で戦闘を生き残ることは並のパイロットでは限りなく不可能に近い。
ごく稀に武器一本で戦って生き残る者もいるが、そんなパイロットはよほどの幸運な愚か者か本当に頭がおかしい者だけだろう。
621ならやりかねないが。
「一先ずデータは回収しておくが……使えるライセンスではないな。
どうしたものか……」
ウォルターは手を組み、顔を埋めて思考を巡らせる。
「日を変えるか……?
いや、しかし……仕事を始めるなら早い方がいい……」
ウォルターの悩みはふたつだ。
ひとつ、621のライセンスを手に入れられなければ、ルビコンの傭兵支援システムを利用できない。
ルビコンで活動するAC乗りはほぼ例外なく、傭兵支援システム《ALL MIND》を利用している。
ルビコン内でのACパーツの流通を担っているこのシステムが使えないということは、そのまま一切の補給を受けられないことと同義であった。
《LOADER 4》の機体は現地勢力から直接調達したものなのでまだ工面のしようはあるが、所詮は非戦闘用機体に安いライフルと安いミサイルに少し奮発したブレードを持たせているのみの木偶の坊である。
これから実績を積み上げていく上で、各勢力の精鋭や腕の立つ独立傭兵、AC以外の高性能機と衝突する可能性を加味すれば、機体の強化と最適化は必須となるだろう。
そして2つめの悩み。
アリーナに登録されていない傭兵は、不特定多数に向けた依頼の優先受注ができない。
ランカーではない独立傭兵は企業でのばら撒き依頼でもない限り自分から売り込んでいかねばならず、当然企業は名前も知らない傭兵を警戒する。
順調なスタートの為には、アリーナの登録は必須条件と言えるだろう。
「はぁ……」
思考をめぐらせる度にため息が出ると、歳をとったと嫌でも自覚する。
ウォルターはもはやぬるいを通り越して冷たくなったコーヒーを飲み干し、頭の中を洗い流すことにした。
本体が喉を通りすぎて尚微かに残る苦味を意識の傍に追い出し、《LOADER 4》を通じて広域スキャンを行った。
ウォルターの目前のモニターは付近一帯の残骸反応を次々に示し出すが、そのほとんどがMTやヘリのものだった。
すべて621が蹴散らしたものである。
やはり日を改めたほうが得策か、とウォルターが呟きかけた瞬間。
《LOADER 4》から少し離れた場所に位置する高台にACの残骸反応を検出した。
「おぉ」
「よし」
621とウォルターが同時に声を上げる。
両者の心境は似通ったものだろう。
ウォルターは残骸反応をマーキングし、《LOADER 4》のマップ上に表示した。
「もうひとつ反応を検出した。
確かめる価値はあるだろう」
「りょ~かい! ごすずん!」
威勢のいい返事と同時にアサルトブーストを起動し、《LOADER 4》は高台へと飛んでいった。
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グリッド086から飛び立ったAC《GREEN WITCH》は、還流型ジェネレーター特有の青い噴射炎とジェットストリームの帯をなびかせ、ルビコンの灼けた空を翔ける。
かつて地球のレイヤード、地下世界の息苦しさが常だったビルバオにとって、この開けた空は、たとえこのルビコンの、灰をかぶり、コーラルに汚染されたものであっても爽やかに感じられた。
「……これが……本物の空……!」
気分が高揚する。
嫌っていたはずの汚染された世界の空なのに、心が多幸感に満ちていく。
「私は……ついに本物に触れられたのね……」
地球を食いつぶした人類が逃げ込み、すべての責任を後世とAIに押し付けた地下世界〝レイヤード〟
企業が争い、有限の地下とその環境を汚していく有様を、この世に生を受けたその時から好しとしなかったのがビルバオという女性だった。
無力な子供の時代を勉強に費やしながら、世界に自分はどう貢献できるかを考え、文献でしか知らない緑に思いを馳せた。
〝大自然〟────自分が生まれた頃にはとうに人類から離れたそれにたどり着くことなく、かつての彼女は戦いの最中に志半ばで果てた。
だが、今はこのルビコンで、強化人間としてもう一度スタートを切る事が出来た。
その感動と実感が渦巻く心は溢れ出し、涙となって空を飛ぶ《GREEN WITCH》のコックピットの床を濡らす。
「……いいえ、まだ私は、これからなすべきことがある。
涙はその時に流せばいいわ」
灰と緑のパイロットスーツに包まれた腕で目元を拭う。
短時間の割には多く涙を流していたようだ。
少し赤く腫れた目でモニターを流れる眼前の景色を見据えた。
操縦桿を力強く握り直し、ペダルを踏み込む。
うなじの接続ユニットを経由して、彼女が望む行動を《GREEN WITCH》は完璧に叶えてくれる。
シュナイダーの開発職員が《LAMMERGEIER》一式と共にウォルターに提供した試作型パルスミサイル《PFAU/66D》を右肩のハンガーから取り、制御システムを立ち上げて戦闘モードに移行する。
「敵影感知。
封鎖機構の浮遊機雷ね……!」
惑星封鎖機構の監視用兵器《WATCHER》が3機。
おそらく管理下にあるグリッドの防衛を目的としているのだろう。
レーザーガンを装備している警備上なのがその証左だ。
「一気に突破します!」
《GREEN WITCH》はカメラに整流板を貼り付けただけの簡素な頭部を前に向けて浮遊機雷をロック。
ビルバオが操縦桿のトリガーを引くと同時に、パルス技術による緑の尾を引いて3発のミサイルがそれぞれの浮遊機雷に向かって射出された。
アサルトブーストによるスピードと射出によって弾速が後押しされたミサイルは浮遊機雷のレーダーが探知するよりも速く衝突し、激しく爆発する。
爆炎の中を抜け出す《GREEN WITCH》。
肉抜きされたコアの隙間から煙が通り抜け、肩の小さな翼が炎を斬っていった。
変形して3枚の大きな翼になった脚部が空力を味方につけ、ビルバオを目的の場所へと運ぶ。
「頼りにしているわ……《GREEN WITCH》。
このルビコンで、私のなすべきこと……
それを、叶えるために」
太陽の光を反射した緑の装甲が、まるで快晴の夏の草原のように美しく、煌めいていた。
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「うぉ~~~危ねッ!」
「はぁ……」
高台の下に備え付けられていた垂直カタパルトで跳躍し、アサルトブーストでACの反応があったクレーターへと飛び出した《LOADER 4》は、危うくACの横に墜落していたヘリの残骸へ激突するところだった。
前方不注意も甚だしい。
「危機一髪!」
「……621、ACからライセンスを抜き取れ」
「あいよ~ごすずん。
……あれ、コイツ……」
《LOADER 4》は爆撃されたようなクレーター、その中心で激しく損傷して倒れているACを見た。
その機体は頭部以外は《LOADER 4》と同じく、RaDというルビコンの土着の組織が製造している、通称《ORBITER》と呼ばれるパーツで構成されていた。
探査用の性能となっているため戦闘には向かず、活用するには頭部を他企業のものと交換するなどして対応するのが定石とされている。
しかし、そのACの頭部は621も、ウォルターですらも知らないものだった。
「何だ……? この頭は……」
隻眼と呼ぶのがふさわしい、左側に集中して配置されたカメラやアンテナ類と、対照的なまでに堅牢な装甲で覆われた右目。
睨みつけているようにも見えるその攻撃的な顔は、言葉にするには難しい複雑な〝圧力〟を放っていた。
そう、たとえば、圧倒的な強さを有していながらも表舞台に出ることは無い、影の暗躍者のような……
ウォルターが見るものを萎縮させるような造形の頭部形状に圧倒されていると、621から報告が入った。
「ごす、ライセンス抜けた」
621の声ではっ、と我に返ったウォルターは、ライセンスを急いで解析する。
「Rb23、識別名は……」
ウォルターがライセンスの識別名を言いかけたのを遮り、まるでその名を口にした物を処刑しに来たかのように、〝それ〟は雪の積もった山の影から現れた。
ウォルターと621の息を飲む声が《LOADER 4》のコックピットに反響する。
「武装ヘリ……!」
一対の巨大なプロペラはバラバラと音を立てて回り、ACすらも飲み込んでしまいそうなほどの巨躯を空へと持ち上げる。
無骨な装甲材のグレーに染まったボディ、そのコックピットが収まるユニットは《LOADER 4》を明確な殺意を持って睨みつけていた。
『ACだと……?
貴様、生きていたのか!?』
武装ヘリのパイロットがオープン回線で叫ぶ。
「いや知らん」
621はライフルとミサイルの状態を確認しつつ返す。
ヘリのパイロットは苛立ったようにグレネードを放つ。
「ッ!」
クイックブーストで飛び退いた《LOADER 4》の足跡をグレネードが燃やし、火の粉を振り撒いて盛炎がうねる。
『シラを切るか貴様……!
忌々しい害鳥め! 今度こそ駆除してやる!』
パイロットの怒りに満ちた絶叫に、621は笑いながら返す。
「やってみろよルビコニアンデスバカコプター!」
『私を土着の猿共と同じにするな!』
「ギャハハハハ!!!!!」
2人の極めて低俗な罵倒の応酬と共に勝負の幕が上がった。
《LOADER 4》はブーストを起動して地面を滑るように機動する。
それに追従し、逃げ道を塞ぐようにヘリのガトリングとグレネードによる斉射で遮蔽物ごと破壊しようと目論む武装ヘリ。
爆炎の中を駆け巡り、後退と横移動のクイックブーストを織り交ぜながらライフルとミサイルを垂れ流す《LOADER 4》を追いかける。
今日に至るまで数多のパイロットによって練り上げられてきたAC
これではAPの劣る《LOADER 4》に勝利が訪れることは無いだろう。
今ここにある事実として、《LOADER 4》は追い詰められつつあった。
リペアキットを使用して9080の万全といえた《LOADER 4》のAPは今や4720まで低下し、コアや肩の装甲板は各所に穴が空いている。
対して武装ヘリのAPは《LOADER 4》の補助システムが解析した数値ですら、8割以上を残している。
「コイツ……ッ! 豆鉄砲と爆弾ばっかで近づけない……! 」
『害鳥が……既存パーツの寄せ集めに過ぎないACで、このヘリに勝てるものか!』
「飛んでるってとこではお前も害鳥だろ!
バ~カバ~カ!!! ヴァ~~~~~~~カ!!」
『負け犬の遠吠えは見苦しいな!
そろそろ……死んでもらう!』
621の苦しげな声と子供じみた罵り、それを嘲笑うかのようにオープン回線で喧しく叫んでいるヘリのパイロット。
621の集中を切らすまいと黙っていたウォルターは通信を開き、端的なアドバイスを乗せる。
「恐れるな、621。
圧力は躱していけ」
「ごす……!?
圧力……圧力は躱す……! わかった!」
『死ね! 害鳥!』
建造物の傍に追い詰められた《LOADER 4》に、グレネードが放たれた。
クイックブーストで避けるにはあまりにも近すぎる距離。
《LOADER 4》のカメラが弾丸をとらえるよりも速く、それは着弾する。
ドゴォッと爆音と共にACの全高をゆうに超える、建造物を巻き込んだ爆発が《LOADER 4》を呑み込んだ。
「621ッ!」
黒々とした煙幕が上がる様を、戦域ギリギリまで上昇したヘリは高笑いをして眺めていた。
『フ……ッ! フハハハ……!
ようやく死んだか害鳥め……!
〝ブランチ〟だかなんだか知らないが……我々の封鎖を壊した貴様には、似合の末路だ……!』
グレネードランチャーの武装状態を解除し、ガトリング砲を格納し始めた武装ヘリ。
高ぶった精神を落ち着かせようと深呼吸をする封鎖機構のパイロットの耳に、警告音が飛び込んだ。
『なにッ!?』
システムが示した方向は煙の中。
真っ黒な煙の中から飛び出したのは─────
巨大な建造物の残骸だった。
『はァ!?』
予想外の事態に反応が遅れ、残骸の尖った部分が轟音と共に装甲板に突き刺さり、対弾や対爆に最適化された制御システムは〝建造物の残骸〟というイレギュラーによって一斉にスタッガーを起こして停止する。
プロペラでホバリングしているだけの的に成り果てたヘリの正面から敵影。
全身各所からスパークを起こし、装甲板は黒く焦げ、コックピットでは1000を切ってAP危険域の警告音がけたたましく鳴り響く《LOADER 4》が、煙をまとって飛び出した。
「ギャハハハハ!!!!!!!」
621の知性を感じられない笑い声と共に《LOADER 4》は武装ヘリのコックピット正面に取り付く。
『離れろ!』
「ごすが恐れるなって言ってたからさァ~~~!!
死ね!」
《LOADER 4》が左腕を振り上げる。
その手に握っていた建造物の残骸は鋭利に尖り、ひしゃげた鉄骨とコンクリートの塊がコックピットの装甲に何度も打ちつけられた。
ガンッ、バキッ、ガンッ、バキッ、と嫌な音を立てて、装甲が曲がっていく。
『ふざけるな! 何故だ……!? 残骸ごときにこの武装ヘリの装甲が敗れるなどと……!』
ノイズ混じりの外部カメラから《LOADER 4》の左腕を見た武装ヘリのパイロットがヒュッ、と喉を鳴らす。
パルスブレードが、打ち付けられる度に極めて短い刀身で起動している。
カタログスペックにおける本体の冷却性能を超えない、ギリギリの出力だ。
パルスブレードで装甲を融解させながら残骸をぶつけることで、確実にコックピットを叩き潰すつもりだ、とパイロットは本能で理解した。
「ギャハハハ!!」
『コイツ……! 普通じゃない……!』
「おりゃッ!」
《LOADER 4》が一際強く叩きつけた残骸は装甲を突き破り、パイロットのヘルメットのクリアカバーを少し傷つけるところまで貫通した。
『ヒィイィッ!?』
パイロットはシートベルトを強引に引きちぎり、コックピットの入口まで逃げ出すが、戦闘領域に機体を置く管制システムがそのロックを開けることはなかった。
緊急離脱のボタンを押し忘れているのである。
「ウヒャヒャヒャヒャッ!! ギャハッ! ギャハハハッ!」
意趣返しのように知性も品性も微塵もない高笑をしながら《LOADER 4》はライフルを投げ捨て、穴の空いたヘリの装甲を右手で引き剥がした。
紅く光るモノアイが扉にすがりついて腰を抜かし、床にへたりこんだヘリのパイロットを補足する。
『ヒ、ヒィ……ッ!』
「駆除されンのはお前みたいだなァ~~~っ!!!」
残骸を投げ捨てた《LOADER 4》の左手がパイロットに中指を立ててパルスブレードを起動し───────
「ヴァ~~~~~~~カ!! ギャハハハハハ!!!」
最大出力でチャージされた淡い緑のパルスの刀身がパイロットを灼けた血霧に変え、コックピットを丸ごと斬り裂く。
《LOADER 4》が装甲を蹴り飛ばし、後退のクイックブーストで離脱しながらミサイルを全弾叩きこまれた武装ヘリは全身から炎と連鎖爆発を発生させ、空中で巨大な火球となって跡形もなく爆発四散した。
《LOADER 4》が爆炎を背に膝をついて着地する。
「……ぷはッ……!!
ハァ……ハァ……!」
限界を超えて思考をめぐらせた621の脳はオーバーヒート寸前で、鼻血を垂らしながら息を切らしていた。
本来ならばACが数機がかりでも良くて相討ち、最悪の場合は全滅すら有りうる惑星封鎖機構の大型武装ヘリを、621は単騎で撃破した。
今も尚空から降る燃えた破片が、それを雄弁に物語っている。
ウォルターはふたたび通信を開く。
「惑星封鎖機構、大型武装ヘリの撃破を確認した。
……621、よくやった」
「ふ……ふへへ……いぇーい……」
621が通信用カメラに向かって弱々しく指の曲がったピースサインを向ける。
「……ふっ」
凶暴で残忍な戦いの直後とは思えない、621の子供じみた振る舞いにウォルターは思わず笑みがこぼれた。
「戻ってしっかり休め、621。
今日の仕事は終わりだ。
……手に入れたライセンスの登録名を伝える」
《LOADER 4》のモニターに、ライセンス情報が表示された。
〝登録番号:Rb23、ランク:blank /F 識別名:レイヴン〟
失効まではあと3日。
アリーナの参加権が与えられていることを意味するブランク状態のランク。
621がこれから積み上げる実績と強さの裏付けを刻んでいくには、丁度いいライセンスだった。
ウォルターはライセンスを改ざんして機体情報を《LOADER 4》のデータに書き換え、《ALL MIND》に安否不明状態解除の申請を送る。
「識別名、レイヴン。
これがお前の、ルビコンでの名義だ」
「レイヴン……カッコイイ……名前じゃん……」
〝レイヴン〟
ワタリガラスを意味する言葉。
何処かの星で全てを奪われた少女が、このルビコンを渡り、その翼を灼けた空ではためかせる。
その黎明が今、彼女の小さな背中に訪れていた。
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汚染市街で膝を着いて果てていた緑のAC、そのパイロットであるG7ハークラーは、遠い高台で起きた連鎖爆発の音で目を覚ました。
「ぐっ……」
シートにもたれかかっていた身体を起こし、モニターを覗く。
「あれは……」
爆発の中心にいたのは惑星封鎖機構の武装ヘリ。
数時間前に彼を撃墜した憎き敵だった。
奴を仕留めた者───それが誰か、ハークラーは直感で理解した。
「そうか……ハンドラー・ウォルターの……子飼いか……
フッ……流石は
ざまあみやがれ公僕共、と心の中で呟きながら、朦朧とする意識に無理をせず目を閉じようとした直後。
『そこの緑のACの方~?
ご無事ですかー?』
「ッ!?」
頭上から穏やかな雰囲気の女性の声とともに、鮮やかな緑の細い四脚型ACが降下してきた。
そのACは彼の機体の正面に降り立ち、救難信号を受信した旨のシグナルを送る。
「あぁ……アンタが……ハンドラー・ウォルターの……?」
『えぇ。
ハンドラー・ウォルターからの依頼で来ました、独立傭兵ビルバオ、と申します。
この子はAC《GREEN WITCH》。
ひとまず、身体の状態を教えていただけますか? 応急処置用の医療コンテナにデータを入力します』
見れば、緑のACの腰には人が1人収まりそうなコンテナが装着されていた。
カタログで見た事がある。
アーキバスADD製が兵士の現場治療用に開発した非戦闘型のAC用パーツだ。
アーキバス製品に対応した腰部のマウントユニットに加え、全身が肉抜きされ、骨格部分や可動シリンダーがむき出しの造形。
アーキバスの系列企業、シュナイダーの機体なことは見てわかった。
敵対企業の治療システムの世話になるのは不本意だが、今は背に腹はかえられない状況。
ハークラーは血まみれの身体を一瞥し、全身の痛みを確認しながら答えた。
「……全身打撲に右足と左腕の骨折……
肋骨も逝っている。
内出血も多そうだ……それに頭も強く打った」
『了解しました。
コンテナに情報を入力……完了。
這うことは出来ますか?』
「あぁ……なんとかな……」
『わかりました。
では……』
《GREEN WITCH》の作業用アームのような手がハークラーのACのコックピットハッチと頭部がごと、コア上部を引き剥がした。
『申し訳ありません、機体の破損は後ほど埋め合わせを……
さぁ、手に乗ってください』
作業用アームのような、三本指の手が差し伸べられる。
ハークラーは機体から這い出てアームの腹に乗り、振動を感じながらコンテナへと運ばれた。
開いた側面から入れるというのだろう。
気持ち大きめの声で《GREEN WITCH》に語りかける。
「助かった……! 恩に着る……!」
『うふふ……
傭兵は助け合い、ですので』
「なんだそりゃ」
短い言葉を交わしてハークラーがコンテナに入り、治療用ベッドに固定されたことを確認したビルバオはゆっくりと機体を上昇させ、ウォルターが指定したグリッド135の直下へと慎重に機体を運んだ。
夕焼けの赤い空が、緑の装甲に反射して煌めいていた。
【本編で説明するのが面倒なところを解説するコーナー】
・ACSとスタッガーについて
基本的な仕様はゲームと同様ですが、今作独自の要素として一部の機体を除いてACSは戦闘用に特化しているため、瓦礫や倒壊する建造物との衝突、地形や建造物に叩きつけられたりなどのダメージには極端に弱いという設定が追加されています。
例外としてRaDのWRECKER(ご友人が乗ってたアレ)などが積んでいるACSは戦闘由来のダメージに弱く、瓦礫や建造物との衝突等に対する耐性が高いといった具合です。
・《GREEN WITCH》のアセンブル(現状)について
LAMMERGEIER一式にVP-20Cを積んでいます。
ブースターは初期機体のままで、アサルトブーストを優先した構成になっています。
武装はパルスミサイルを右肩のハンガーにかけているのみですが、これはビルバオ用にマルチロック機能が追加されています。
次回と次々回くらいまではこれに+α程度になります。
シュナイダーの開発局に属する数人がウォルターの知人であり、その縁あってビルバオの乗機として無償で提供されました。
・621の感情について
621は元からあった感情が強化手術で蓋をされているというよりは、細かい情動に関する感情の経験値がリセットされたような状態です。
テンションが高いのは621の素の感情バランスのほとんどをハイテンションに繋がるような部分が占めているためあんな性格です。
ACや兵器の呼称についてのアンケートです。ACやMTなどの名称は現状常に《》を付けて表記していますが、初登場以降もこの表記を維持するか、《》を外して表記するか、読みやすい方に票を入れてください
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初登場以降も《》をつける
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初登場以降は《》を外して表記する
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《》を外す&カタカナ表記にする