ARMORED CORE 6 緑の魔女はルビコンに羽ばたく   作:強化人間E4-514

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密航の文字数に迫っている気がします。
前回を前後編に分けたのなんだったんですかね?
毎回621がボロボロになってる……


第5話 DESTROY THE ARTILLERY

 ルビコンへの密航から3日後。

 

 621とウォルターは機体の修理を終えて万全となった《LOADER 4》のコックピットに籠り、ハッチを開いたまま制御ユニットを接続してチェックをしていた。

 

 621は目を閉じて集中し、自身の脳からACへとつながる感覚を確かめる。

 

「よし、接続は完了だ。

 両肩のモジュールを動かしてみろ、621」

 

 ウォルターの支持に従い、脳で直接思考してACの背部部倉のマウントユニットを動かす。

 

 ギュイ、ギギッ、と音を立て、何も懸架されていないユニットの基部が武装使用時の動的パターンをなぞる。

 

「……少し右肩の立ち上がりが遅いか」

 

 端末で各部位の反応スピードをチェックするウォルターは、他に比べて一段低いバーを指す。

 

 機体の反応速度は強化人間にとってはどれだけ機体が自分の身体のように思い通りに動くかを示す数値であり、これが高ければ高いほど、それは生身の感覚に近いことを意味していた。

 

 621の駆る《LOADER 4》は探査用機体であり、設計も新しいとは言えないため、改善にはやはりパーツの換装が必須と言えるだろう。

 

「反応速度の改善が見込めるパーツか……

 一先ず今は内部部品を交換して対応する。

 新しいパーツは、幾つか俺がリストアップしておこう。

 他に気になるところはあるか」

 

 端末のチェックモードを閉じ、現在ルビコンで流通しているパーツ群のリストを表示した。

 

「ん~……」

 

 621はウォルターの問に少し唸った。

 

「正直コイツ、ちょっと足が遅いとおもうよごすずん。

 アサルトブーストで飛ぶのは速いけど、クイックブーストとかで避けるのは物足りないかも」

 

「ふむ……お前は高機動系を好むか、621。

 クイックブーストを上げるならシュナイダーかアーキバスのAC……《NACHTREIHER》あたりが使えるかもしれん」

 

 ウォルターが提案した《NACHTREIHER》と《ALULA/21E》の組み合わせは、実際に多くの軽量機乗りが採用するパターンだ。

 

 〝ナハトステップ〟と呼ばれる独特な機動制御は使い勝手が良く、《ALULA/21E》の高いクイックブースト性能も相まって回避主体の軽量近接型アセンブルとしては最高峰。

 

 長い移動距離に加えて微調整の効く小回りの良さは同じ軽量二脚の《FIRMEZA》と比較してもかなりのものだが、あちらが立てばこちらが立たないは世の常。

 

《NACHTREIHER》は積載量の上限に難があり、例えば大型のグレネードランチャーやミサイルポッドはそれだけで録なライフルも持てないほど積載容量を占めてしまう。

 

 それらの代替となるパーツ選びこそが、個々人のアセンブルセンスの見せどころであるのだが……

 

 ウォルターはシワのよった眉間を指でほぐし、2,3回ほど瞬きをした。

 

 歳をとるとは厄介だな、と思う。

 

「……なかなか容易にはいかんな。

 休憩にするか、621。

 ビルバオが紅茶を淹れている」

 

 621の頭を撫で、《LOADER 4》の電源を落とす。

 紅く発光していた各部位のカメラが消灯し、621のうなじに刺さっていた接続用ケーブルが抜けてシートの内側へと巻き取られていった。

 

「ふぃ~……」

 

 先にコックピットから出ていたウォルターの手を掴んで登り、乗降時補助用の足場を使ってガレージのキャットウォークへ。

 

 ルビコン入り前に補助具を入れた621の足は正常に動作しているようだ。

 

「……足は不自由ないか、621」

 

「ん~? 

 問題ないよォごすずん!」

 

 そう言ってウォルターから頭2つ離れた小さな身体でぴょんぴょんと跳ねてみせる621。

 

 しばらく一緒に暮らしていると、もし自分に子供がいたらこんな感じなのだろう、と思うことが増えてきた。

 

 もっとも、ウォルターの歳なら孫がいてもおかしくないのだが。

 

 なんだか微笑ましい気持ちになる。

 ウォルターのシワの目立つ手が621のふわりとした灰色に淡い緑のメッシュが入った髪を優しくなでると、その表面から微かにウィッグの動く感覚が感じられた。

 

「うぁ~?」

 

 気の抜けた声を上げながらウォルターを見つめる621。

 

 自分一人でも背負い込めない業を子供の621にまで背負わせるのは気が引ける。

 

 しかし、もし621が自分の意思で道を選び、自分の意志を継いでくれるとしたら……

 もし621に友人ができて、選びとった道で自分と袂を分かったら……

 

 そのどちらも喜ばしいと思う。

 ウォルターは621をもう一度優しく撫で、杖をついて幼い猟犬と共に自室へと歩んで行った。

 

 その背中には、優しげな気配が漂っていた。

 

 ──────────────────────

 

「ルビコン解放戦線が設置した、砲台の破壊か……」

 

 紅茶の注がれたティーカップを、対面で座るウォルターと621の前に置きながらビルバオは答えた。

 

 ゆらゆらと白い湯気を立たせる琥珀色の液体はほんのりと甘い香りがする。

 閉塞的なルビコンの環境ではあまり見られない、華やかで気品のある香りだ。

 

 たとえオイルと鉄の匂いが満ちたガレージでも、紅茶があれば少しは気持ちも華やぐといって聞かず駄々をこねたビルバオの要望に応え、シュナイダーの友人に頼み込んで密輸してもらったのは正解だった。

 

 621の方はというと、初めて見たらしい紅茶の鮮やかな色彩に夢中なようだ。

 シンプルな琥珀色ではあるが、その水面には何とも言えない奥深さがあるということをウォルターは知っている。

 

 感情とともに感性も失われることの多い第4世代型だが、621はその限りでは無いようだ。

 

 カップの底に沈殿した茶葉の粉をスプーンでかき混ぜ、ウォルターはソーサーとカップを持ち上げて一口啜った。

 

 木星圏で育てられた安物の茶葉ではあるが、紅茶の味わいとは値段のみでは語れないものだとわかる。

 

 カップから口を離し、テーブルに置いて携帯端末に持ち替え、《ALL MIND》の依頼受注フォームを開いた。

 

 ビルバオはその画面をのぞき込む。

 

「ベイラム系列企業、大豊(ダーフォン)からの依頼ですね。

 621さんにも私にも、別地点ではありますが同様の依頼が送られてきています。

 おそらくは《ALL MIND》に登録されている傭兵全体に送信している、ばら撒き依頼でしょう。

 ……あっ、お砂糖は2個でよかったですか?」

 

「いや、俺は無しでいい。

 621の分に回してやってくれ。

 ……他に来ている依頼は?」

 

「わかりました」

 

 ビルバオはウォルターのソーサーに置いていた2つの角砂糖を621のほうへと移した。

 

「621さん、熱いので気をつけてくださいね。

 甘いのがお好みでしたら、その白くて四角いのを入れて、スプーンで混ぜてください」

 

「ん、あ、え、この四角いの? 

 わかった……?」

 

 どうやら621はよく分かっていないようだ。

 先程恐る恐るカップに口をつけて飲んだ時は渋い顔をしていたものだから、ウォルターとビルバオは吹き出しそうになってしまった。

 

 頭上に幾つものハテナを浮かべている621を見てふふっ、と声を零す。

 ウォルターは貸してみろ、と621のソーサーとカップを取った。

 

「2つ入れる。良いか?」

 

 621はコクコク、と頷く。

 ウォルターは角砂糖を2つ、ゆらゆらと揺れる紅茶の水面に落とした。

 直ぐに解れていく砂糖を茶の中で回すように混ぜ、621の前に返す。

 

「何も無しで飲むのは慣れてからでいい。

 ……これで少し飲みやすくなるはずだ。

 少しずつ大人になっていけ、621」

 

「わ、わかった……

 ありがとう……?」

 

 先程の茶の苦味を警戒して、恐る恐る啜った621の口の中に広がった味は先程のような不愉快なものではなく、むしろ多幸感をもたらす穏やかなものだった。

 

 目を見開き、同じ姿をしているのに全く味わいの異なる液体に驚愕している。

 

「ふっ……

 そうだ、621。

 色々なことを覚えろ。それが仕事にも繋がる。

 知識を得ることを楽しめ」

 

 何を親のつもりなのか、自分でも思う。

 しかし、ウォルターはそれでも、かつて自分がしてほしいと願っていた〝親〟を演じてみたい気持ちに従った。

 

 理由はよくわからないが、こうすることで、少しでも子供を使い潰す罪悪感から逃れたかったのかもしれない。

 

 あまり好きではない記憶に息苦しさを覚える。

 いつも目を細めて笑顔を浮かべていた穏やかな教授と、日に日に狂気に染まりつつあった父。

 

 退屈していた自分のために、父と教授が作っていたACを模した玩具(おもちゃ)を作ってくれた、赤い髪の眼鏡をかけた研究者の女性。

 

 そして、ACのパイロットスーツに身を包み、たまにウォルターに悪戯をしかけてはけらけらと笑っていた、顔立ちの整った白髪の強化人間。

 

 楽しいこともあったが、今やその殆どは失われたか、ウォルターの業の一部となって彼に重くのしかかっている。

 

「……ウォルター、さん?」

 

「はっ……すまない、ビルバオ。

 ……仕事の話だったな」

 

 ビルバオの声で我に返ったウォルターは端末に依頼概要を表示させる。

 

「ルビコン解放戦線の移設型砲台の破壊。

 場所は汚染市街で、目標の全破壊が達成条件か……

 もうひとつは、グリッド135に集結している大豊のMT部隊の殲滅……

 ビルバオ、《ALL MIND》の研修は受けたか?」

 

「えぇ。

 トレーニングの完了報酬も既にガレージに届いています。

 おかげでACの挙動にも慣れました。

 レイヤードのACとは全く違うのですね……」

 

 密航の翌日、621とビルバオの2人に傭兵支援システム《ALL MIND》からトレーニングプログラムの案内が届いていた。

 

 どうやら《ALL MIND》は長らく安否不明だった傭兵や新参の傭兵には、操縦技術習得のためのVR訓練を提供しているらしい。

 その上、各項目とトレーニング内容を良い成績で完了した者には支援としてベイラムやアーキバスの製品に加えて独自開発した武装やACの機体の一部を提供するという。

 

 ただでさえ安くはないAC用パーツの中でも高価かつ、性能は折り紙つきのものばかりで至れり尽くせりもいいところである。

 

 なにか裏があるのではと勘繰ってしまうが、今は利用できるものは全て利用した方が得策な状況。

 

 ウォルターは少し考えてから、紅茶をちびちびと飲みながら2人の様子を見ていた621に端末を渡した。

 

「621、ビルバオ、仕事だ。

 どちらに行くかは、お前たちが決めろ」

 

「ん~……」

 

 ビルバオがそっとテーブルのふちに置かれた621のティーカップを内側へと移動させつつ、621の隣で端末を見る。

 

「621さん、私はどちらでも。

 貴方のお好きな方を選んでくださいね」

 

 621は端末に表示された依頼の情報と睨み合い、少しして────

 

 

「砲台の方に行く!」

 

 と元気よく叫んだ。

 立ち上がった拍子に足がぶつかり、テーブルが揺れて慌てる621。

 その様子にビルバオがふふっ、と笑いをこぼす。

 

 端末を取り、ウォルターは依頼を受注する旨をベイラムに送信した。

 

 少し待って、30分後にブリーフィングを行うとの連絡が入る。

 

「621、30分後にブリーフィングが行われる。

 今のうちに機体のチェックをしておけ」

 

 ウォルターはまだ少し残っていたティーカップに口をつけて紅茶を飲み干す。

 

「お前のオペレーターは俺が担当する。

 仕事の時間だ」

 

 

 ──────────────────────

 

 30分後。

 機体のチェックを終え、黒と赤のパイロットスーツに身を包んでACと接続した621は、網膜投影によって映し出される通信形式のブリーフィング画面を見つめていた。

 

《LOADER 4》のタイマーが鳴り、同時にベイラムの傭兵登用窓口の担当者と通信が繋がる。

 

 続いて、ウォルターとの通信回線が開いた。

 

 表示を見るに、他の地点で砲台破壊を担当する独立傭兵たちもブリーフィングに参加しているようだ。

 

「621、仕事だ。

 ルビコン進駐を行った星外企業勢力のひとつ、

 ベイラムグループから公示が出ている」

 

 幾重にも重なった手綱を黒い腕が握りしめるウォルターのエンブレムが薄く点滅する。

 

「ブリーフィングが始まる。

 集中して聞け」

 

 ウォルターのエンブレムが左端へ捌けるのと入れ替わるようにして、オートマチック拳銃を簡略化して赤く塗りつぶしたような意匠に、旧世紀の防弾ヘルメットのようなものを被ったヤドカリの絵が重ねられたエンブレムが表示された。

 

 〝G6 レッド〟

 ベイラムの独立傭兵登用窓口を担当する人物のエンブレムが点滅を始めると同時に、威勢のいい若い男の声が通信に乗った。

 

 

『独立傭兵の諸君! ベイラム同盟企業、大豊による依頼を公示する! 

 

 ルビコン解放戦線が汚染市街にBAWS製の移設型砲台を配備した。

 

 場所自体に価値はないが、コーラル調査領域を拡大するには押さえる必要がある。

 

 野心ある諸君! 解放戦線の砲台を全て破壊せよ! 

 我々はMT撃破に対しても追加報酬を用意した。

 可能な限り敵方の戦力を削いでもらおう。

 これは諸君らにとって手堅く実績を作る好機だ! 奮闘を期待する!』

 

 レッドの端的だが要点は押さえられた説明が終わる。

 作戦報酬と追加報酬を記載した票が表示されたままで画面は止まり、必要事項を確認した独立傭兵たちが順にブリーフィングを退席していく。

 

 一通り確認した621とウォルターが退席のボタンを押そうとしたその時だった。

 

『独立傭兵レイヴン! 

 貴様には、もうひとつ伝達事項がある!』

 

「およ」

 

 レッドと621とウォルターだけが残ったブリーフィングのルームに鍵をかけたレッドは、先程とは打って変わって穏やかな口調で話し始めた。

 

『……独立傭兵レイヴン。

 先輩を助けてくれたこと、礼を言う』

 

 彼の言う先輩とは、先日の密航で助けを求めてきた緑のACのパイロット、G7ハークラーのことだった。

 

 現在彼はグリッド090に運び込んだ治療コンテナに収容され、怪我を治しながら休息している。

 ルビコンに進駐して間もなく撃墜され心穏やかではないだろうに、何故か普通に見知らぬグリッドでも寝られるあたり相当神経が図太い。

 

 定期的にレーションを渡しに来る621と親睦を深めているようで、悪い男ではないのだが……。

 

 身元を引取りに行くには仕事が立て込んでいるらしく、互いの都合を見てから詳細を決めるとレッドガンの総長〝G1 ミシガン〟と話したのが二日前。

 

 話によればどうやら彼、G6 レッドはミシガンから直接礼を伝えてこいと言われていたようだ。

 

『ハークラー先輩は、総長と同じくらいに俺が尊敬する人だ。

 先輩が推薦してくれたお陰で、俺は今こうして、レッドガンの一員として戦うことが出来ている。

 ……心から感謝する、レイヴン。

 またミシガン総長にお前は甘いと叱責されるだろうが、せめてこの仕事の無事を、祈らせてくれ』

 

 G6 レッドは気持の良い男だ、とウォルターは思った。

 戦乱が続き、荒れ果てた世界にはこんな男こそが必要なのかもしれない。

 

 レッドはふ、と息をつくと、ふたたび威勢のいい声を上げた。

 

『独立傭兵レイヴン! 健闘を祈る!』

 

 若干のノイズとともにルームが削除され、《LOADER 4》のアイドリング状態にあるジェネレーターの駆動音だけが微かにガレージに小さく響く。

 

 オペレーター用の機器の前に座るウォルターがガレージの制御パネルを操作すると、《LOADER 4》が佇むガレージの周囲から緩やかな丸みを帯びた4つの装甲板が、周囲の作業用アームや機体固定用のハンガーを円筒状の輸送用形態となって包み、輸送用ヘリに固定された。

 

《LOADER 4》のアイドリング状態を解除して戦闘出力に変更し、メカニズムとサイバネティックスに生を受けた獣の駆動音の唸りを上げる。

 

 赤い回転灯が回り、ACの固定懸架用アームが輸送用ヘリの進行方向に《LOADER 4》を向き直らせる。

 

「621、行ってこい。

 仕事の時間だ」

 

 ウォルターの短い言葉に続くビルバオ。

 

「頑張ってくださいね~」

 

 親代わりとも言えるふたりの見送りにピースサインを返し、621は輸送ヘリで汚染市街へと運ばれていった。

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 汚染市街。

 密航の際にライセンスを漁っていたこの場所が早くも懐かしく感じる。

 621の《LOADER 4》は崖上に投下され、岩肌の谷とそこに建造された建物の間をヘリが哨戒する地点をモニター越しにとらえていた。

 

 ベイラムが提案したルートはこうだ。

 

 守りの少ない谷のルートから侵攻し、時計回りを目標を破壊して、グリッド135の方面へと抜けていく。

 

 目標が順に増えていく、単純だがよく練られた侵攻ルートだとウォルターは感心していた。

 

 数の少ないところから確実に潰していけば、たとえ途中で撃墜されたとしてもそこそこの傭兵を投入すれば目的は完遂できる。

 

 一山いくら程度の独立傭兵に任せるならばこの保証の仕方は賢明と言える。

 ベイラムの作戦参謀はなかなかのやり手らしい。

 

 さらに、今回の相手であるルビコン解放戦線の主力はMTであり、左肩に増設した手持ち武装ハンガーにベイラム製マシンガン《LUDLOW》を懸架し、状況に応じてブレードと切り替えられるようにアセンブルを変更した621の肩慣らしには悪くない。

 

 ウォルターは通信回線を開き、621に指示を出す。

 

「ミッション開始だ。

 ルビコン解放戦線の移設型砲台を全て破壊しろ」

 

「アイアイサー!!」

 

「どこで覚えた621」

 

 621の元気な返事と同時に《LOADER 4》のアサルトブーストが起動し、谷の間を高速で駆け抜ける。

 

『あっ! あれはッ!?』

 

『ACだと!?』

 

 ルビコン解放戦線のヘリが機体下部のガトリング砲のスピンアップを始めるが、621はそれよりも速くマルチロックを完了したミサイルを放つ。

 

《LOADER 4》の右肩から放たれた箱型4連装ミサイル《BML-G1/P20MLT-04》の弾頭がヘリに衝突し、それらを激しく爆発させた。

 

 谷を抜けて着地すると同時にブースト移動を起動し、薄く水の張った地面を滑るように起動しながら右手のライフルを構える。

 

『企業の傭兵が来たぞ!』

 

『もう情報が流れたのか!? 耳聡い奴め……! 

 迎撃するぞ!』

 

 パイロットの叫びと同時に、待ち構えていたように小口径弾をばらまいてくるMT。

 

「豆鉄砲なんか効かね~!!」

 

《LOADER 4》のライフルがMTのコックピットを撃ち抜き、膝を着いて崩れ落ちながら爆散する横をすり抜けていく。

 

「ギャハハハ!!」

 

 621はけらけらと笑いながら侵攻を続ける。

 

「順調だな、621。

 あれが目標の砲台だ

 正面は装甲で守られている。背後に回れ」

 

 橋をくぐり、グレネードで砲撃をしてきたMTを撃ち抜いて撃破した《LOADER 4》が見据えた建造物。

 その上に横並びで配置された2つの砲台の上に〝TGT〟と赤い文字が表示される。

 

 すべてのACが標準搭載している、破壊目標を自動で検出してマーキングする機能だ。

 

「うぉ~!!」

 

《LOADER 4》のブースターが火の粉を散らしてアサルトブーストで砲台の上を目指す。

 直上からミサイルとライフルで破壊を目論む。

 この手の任務では定石とされている戦い方だ。

 

 MTに乗ったルビコン解放戦線の兵士と砲台の砲手が声を上げる。

 

『戦闘配備につけ! 迎撃するぞ!』

 

『相手は単騎だ! 臆することはない!』

 

 マシンガンを装備した2体のMTと、仰角をめいっぱい上げた砲台が《LOADER 4》のコアを狙って射撃を始めるが、性能の低いFCSで制御された銃弾は《LOADER 4》の肩口と股下を虚しくすり抜ける。

 

「当たるかヴァ~~~~~カ!! 

 ギャハハハハハハ!!」

 

 所詮はまばらな迎撃と割り切り、マルチロックのミサイルに、左手のブレードから持ち替えたマシンガン《LUDLOW》と右手に握るライフル《TURNER》の一斉射撃で砲台を破壊し、怖気付いて交代する2体のMTの間に降り立った。

 

『コイツ……ッ!』

 

『ヒィイっ!』

 

「弾代は節約しなきゃなァ~~!」

 

 素早くマシンガンをパルスブレードに持ち替えて左のMTを斬り捨て、クイックブーストで反転して右のMTにも斬撃を喰らわせる。

 

 断末魔を上げて爆発するMTを背に621は笑いながら、廃ビル群の摩天楼へとアサルトブースト突っ込んでいく。

 

 真下からの攻撃は右手のライフルで、正面からのグレネード砲撃は急停止からのクイックブーストで回避しつつ、体半分をビルに隠しながら右肩ミサイルで確実に撃破。

 

 開けた場所に出ると同時に複数のMTからロックオンを向けられるが、その警告音すら今の621には歓迎のファンファーレのように感じられた。

 

「いいぞ、621。

 順調に片付いてきている。

 余力があれば追加報酬も狙っていけ」

 

「りょ~かいごすずん!! 

 ギャハハハ!!」

 

 TGTの赤い文字が5つマークされる。

 エネルギーに余力を残していた《LOADER 4》のブースターが最大出力で機体を空へと押し上げ、内燃型ジェネレーター特有の獣のようなブースト音とともに砲台の上を取った。

 

《LOADER 4》をレーダーで補足したMT部隊の指揮官とその部下たちが吠える。

 

『敵襲! 砲台を狙われているぞ! 

 迎撃しろ!』

 

『企業の狗め……! 棺桶にブチ込んでやらァ!』

 

「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!! ギャハハハハハハ!!」

 

 真上をなぞるように飛行しつつ、マシンガンとライフルの弾幕の雨を降らせ、マルチロックで放ったミサイルは砲台の斜め上から降り注ぐ。

 

『なんだ!? このACは……ぐわッ!?』

 

『よ、よせ! やめろッ! うわぁッ!』

 

《LOADER 4》の苛烈な攻撃によって次々と撃墜されるMT部隊。

 部下たちの悲鳴に戦慄するMT部隊の指揮官だったが、その事実から目をそらすように頭を振り、半ば自棄気味に叫ぶ。

 

『し、諸君! 恐れるな! 我々はコーラルの戦……ッ!』

 

 しかし、彼が言い切るよりも先に、《LOADER 4》が指揮官機の前に降り立った。

 

「追加報酬ゥ~ッ!」

 

『ぐわっ!?』

 

 MTの分厚い正面装甲の隙間、カメラの可動部に《LOADER 4》は左手のマシンガンの銃口をねじ込んで引き金を引いた。

 

 残像が残るほどの連射速度で撃ち込まれた弾丸はコックピットごとパイロットを即座に肉片も残らない血しぶきに変え、内部で跳ね回った弾丸はしばらくジェネレーターやFCSを貫いて回り、肩口や排気口から飛び出すことに決めたようだ。

 

「ギャハハハ!!」

 

《LOADER 4》のトドメのキックで遠く蹴り飛ばされた指揮官機はビルに背中を強く打ち付け、地面に落ちると同時に爆発した。

 

 辺り一面地獄絵図と呼ぶに相応しい光景。

 

 621は依頼の通常報酬と追加報酬の合計額を簡単な足し算で算出して満面の笑みを浮かべつつ、アサルトブーストで最後の目標地点へと飛び立った。

 

 広域スキャンで戦況を見ていたウォルターは頭を抱え、隣でぬるくなったコーヒーの替えを持ってきたビルバオは621の笑い声を聞きながら《LOADER 4》のカメラ映像を見て、朗らかな笑みを浮かべる。

 

「621さん、楽しそうですね~

 実弾を使っているのはちょっと許せませんが……」

 

 顔を上げたウォルターがふとビルバオを見ると、若干ではあるがこめかみに青筋が浮いていた。

 

 ビルバオは実弾兵器は環境に悪く、EN兵器は環境を汚さないので良いという謎極まりない価値観を持っている。

 

 ルビコン入りの少し前、ビルバオのACの弾幕不足を補うために大豊製の肩部ガトリング《SHAO-WEI》を購入しようとリストに入れていたことがある。

 

 そのリストを見せた途端に普段の温厚な彼女からは想像すらできないような剣幕に変わり、どこから出したのか、そもそもいつ作ったのかよく分からないスライドショー付きの説教に5時間付き合わされた。

 

 60を過ぎた初老の男が正座させられ、100年以上前のレイヤード出身とはいえ20代中頃の女性に叱責されるというレアケース。

 

「……今はまだ余裕が無い。

 使えるものは使っていくべきだ」

 

 諌めるようにウォルターが言うと、ビルバオは握りしめていた拳を下げ、誤魔化すようにうふふ、と笑った。

 怖い。

 

「あ、621さんはどうやら最後の仕上げにかかるそうですよ」

 

 ビルバオが指したモニターは《LOADER 4》のカメラ映像だった。

 邪魔な《GUARD MECH》を蹴り飛ばして砲台の背後をとり、パルスブレードを構えて突撃の姿勢に入る。

 

「お仕事……終わり~~!!」

 

 チャージングされたパルスの刀身が砲台のジェネレーターに斬りかかろうとしたその時だった。

 

 ドンッ!! 

 

「~~ッ!?」

 

 

 完全な意識の外から飛来した大口径のグレネード弾が《LOADER 4》を直撃し、機体は弾き飛ばされて水しぶきを立たせながら地面を転がった。

 

「621ッ!」

 

「痛ェ~……ッ!?」

 

 EN出力バーの上に表示されたゲージは、赤く点滅している。

 ACSの負荷限界。

 システムが悲鳴をあげ、機体の制御が一時的にダウンした危険な状態を示す警告だった。

 

「スタッガー……ッ!」

 

 揺れる脳を無理やり押さえ込むように頭を振った621の頭上からレーザーブレードの発振音。

 

「やべっ!!」

 

 咄嗟にクイックブーストのペダルを踏み、装甲を地面に擦らせて回避した。

 

 直後に巨大な蒼いレーザーの刀身が《LOADER 4》のいた地点に振り下ろされ、極めて高い熱量のレーザーが水面に触れて激しい水蒸気の爆発が起きた。

 

『てンめェ~~……

 何避けてんだクソ野郎ァ!!』

 

 オープン回線から《LOADER 4》のコックピットに飛び込んできた、怒りに満ちた男の罵声。

 

 水蒸気爆発で宙に上がった水が降り注ぐ中、青いACが姿を現す。

 アーキバス系列で機体を固め、長いレーザーライフルを握り、右肩に軽量グレネードキャノン《SONGBIRDS》を装備した独立傭兵。

 

「……621。

 敵の識別名を伝える。

 識別名─────モンキー・ゴード。

 ……密航で漁った残骸の一つだ。

 生きていたのか……?」

 

「レーザーライフル一本のアホじゃぁ~ん……? 

 覚えてるよ……」

 

《LOADER 4》を起き上がらせながら、621は痛む頭をさする。

 頭部とコアに《NACHTREIHER》、腕と足にアーキバスの中量二脚用パーツを採用した機体構成は、まさにあの時見たモンキー・ゴードのものであった。

 

 モンキー・ゴードのACはレーザーブレード《Vvc-770LB》の取り付けられた左手で《LOADER 4》を指差す。

 

『オレは見てたぜ……逃げ込んだ建物(タテモン)の中でよォ~!? 

 オレのACをゴチャゴチャ漁った挙句ライセンスパクりやがって! 

 おかげで俺は《ALL MIND》の研修を受け直し! 機体の修理で大赤字だクソボケが!! 

 コーポどもの仕事は受けられねぇし仕方なく土着どもの仕事をやってたが、オレから仕事を奪ったテメェをブチ殺せるなら悪かねぇ! 

 死ね!』

 

「AC《CANAVERAL(カナベラル)》、来るぞ!」

 

 ウォルターの声に被さるように怒声を上げてアサルトブーストを起動し、一気に《LOADER 4》に接近する。

 

「やってみろよヴァ~~カ!!!!」

 

 ふたたびレーザーブレードを起動して飛び上がり、上空から斬りかかる《CANAVERAL》にタイミングを合わせて《LOADER 4》がパルスブレードを振るい、切り結ぶ。

 

 レーザーとパルスが拮抗し、鍔迫り合いに発展する。

 

 超至近距離で顔を突き合わせる《LOADER 4》と《CANAVERAL》はお互いのカメラアイを激しく発光させて睨み合った。

 

 同時に出力限界となって刀身が消滅すると同時にライフルを構えて引き金を引く。

 

 レーザーと実体の弾丸がすれ違い、お互いのACの装甲に直撃した。

 

『くたばりやがれ!』

 

《LOADER 4》が地面を蹴って後退しようとした瞬間、右足を狙ったグレネードが、クイックブーストで回避をとる《LOADER 4》の膝先を掠めた。

 

「こいつっ!」

 

 621の声がオープン回線から《CANAVERAL》のコックピットに届くと、モンキー・ゴードはあざけ笑う。

 

『ハッ! 女のガキかよ! 

 なら丁度いいぜ、物好きに死体が売れるからなァ!!』

 

《LOADER 4》の回避機動を先読みするかのようにレーザーライフルを発射し、挟み込んだところでグレネードを撃ち込んで退路をなくし、レーザーブレードを振るう。

 モンキー・ゴードの戦法は見事だった。

 野蛮な性格に反して頭を使った戦いは、不本意だが感心してしまう。

 

 その証拠に、《LOADER 4》のAPはじわじわと削られていっている。

 砲台の破壊をしていた時は万全だった9080という数値は今や4000を切っていた。

 

 621自身も連続するスタッガーで身体を揺さぶられた影響か、鼻血を垂らしながら息を切らしている。

 

 意識が揺らぐ。

 モンキー・ゴードはその隙を見逃さない。

 

『オラッ!』

 

《CANAVERAL》のブーストキックが《LOADER 4》を蹴り飛ばし、左肩の装甲が砕けた。

 

「あうっ!」

 

 バランスを崩して転倒し、迂闊に吹かしてしまったブーストで勢い余って背中を擦りながら吹き飛ぶ《LOADER 4》。

 アサルトブーストで追いついた《CANAVERAL》がレーザーブレードを起動して突きを繰り出す。

 

「回避しろ! 621!」

 

「はっ……!」

 

 横にクイックブーストで回避しようとした《LOADER 4》のモノアイ上部の丸型センサーがレーザーブレードに切り裂かれ、一部の機能がダウンした。

 

 脳に流れ込んできていた情報が強引に遮断され、首全体に電気をまとった虫が這うような不快感に襲われる。

 

「うぅ~ッ!」

 

 苦悶の声を上げながらペダルを踏み込んで操縦桿を捻り、ビルを蹴飛ばして強引に姿勢を立て直した。

 

「はぁ……ッはぁ……ッ」

 

 強化人間といえど体力に限りがある。

 その限界が訪れてしまった621の肺は悲鳴を上げ、呼吸には血の匂いが混じり、度重なる脳震盪をコーラル管理デバイスで強引に叩き起しながら戦っていた影響で血涙が流れていた。

 

「ぅう……おぇ……っ」

 

 人工臓器が異常反応を起こし、空っぽの胃が激しく収縮して吐き気を催す。

 

 胃液の代わりに血液を吐き出し、《LOADER 4》の床が赤く染まる。

 全身の痛みがひかない。

 視界がぼやける。

 

 621の身体は限界だった。

 たびたび声を漏らしながらも、621の集中を切らすまいと黙っていたウォルターはたまらず通信を接続し、マイクに向かって叫ぶ。

 

「621! 無理をするな! 撤退しろ! 

 ビルバオ、汚染市街に向かって621の援護を……っ!?」

 

 隣にいたビルバオに出撃を頼もうとしたときには、既に彼女はいなかった。

 

 慌てて外部のカメラ映像を見ると、既に《GREEN WITCH》は戦闘モードを立ち上げ、あれほど嫌っていた実弾ライフルとハンドミサイルを握ってオーバードブーストでグリッドから飛び立っていった。

 

「ビルバオが向かった! 

 戦域を離脱するか、持ちこたえろ!」

 

 救援が向かっている旨を621に向かって叫ぶ。

 そうかわかったと返して、撤退してくれるだけでいい。

 

 たかがばら撒き依頼の不履行程度、後でいくらでも取り返しが着く。

 それよりも、ただ621の生存が最優先だった。

 

 しかし、621が返した言葉は、ウォルターが望んだものではなく

 

「いらない! 

 アイツは……絶対私が殺す……!」

 

 621は明確な殺意を持って、嗜虐的な笑い声を上げて歩み寄ってくる《CANAVERAL》を睨む。

 

「621……! 命令だ! 撤退しろ!」

 

 ウォルターの悲鳴を邪魔だ、と言わんばかりに621は通信を切断した。

 

「殺す殺す殺す殺す殺す…………ッ! 

 ブッ殺してやる……!」

 

 怨嗟というにはあまりにも直接的で、殺意と言うには様々な感情が複雑に混ざりすぎた621の声がモンキー・ゴードを苛立たせた。

 

『ガキが……! 

 大人をイラつかせてんじゃねェッ!!!』

 

 怒りで冷静さを忘れたモンキー・ゴードはペダルを踏み込み、操縦桿を押し倒してブースト。

《CANAVERAL》のブースターが青い炎を噴射して、機体を前へ跳ね飛ばした。

 

『クソアマがァァア!!!』

 

《LOADER 4》への接触まで200m、150m、100m、50m

 ───

 斬撃有効範囲に《LOADER 4》が入ったと同時にチャージングされた刀身がレーザーブレードの基部から展開され、腰を捻って振りかぶり始める《CANAVERAL》のボディ。

 

 カメラアイが《LOADER 4》を一時的に視界から外した瞬間────

 

「死ぬのは……お前ぇッ!!!」

 

《CANAVERAL》の斬撃のギリギリをかすめる形で《LOADER 4》は身を屈ませ、低い姿勢から打ち上げるように居合切りを繰り出した。

 

 レーザーブレードが《LUDLOW》の弾倉を切り裂くと同時に緑のパルスで形成された刀身が《CANAVERAL》のコアの腹へと斬り込む。

 

『ぐぁああっッ!!?!??!?!!』

 

 モンキー・ゴードが悲鳴を上げる。

 だが、対EN塗料で塗装されていた装甲は一筋縄では切り裂けない。

 

「うぅ゛~~~~~~ッ!!!」

 

 リミッターを解除し、強引にジェネレーターを唸らせる。

 コックピットのあちこちがスパークし、警告音が鳴りっぱなしの中で猟犬(C4-621)は吠えた。

 

「ぅゔうぁぁぁぁぁああああアアアアアアッッ!!!」

 

 レーザーブレードの冷却シークエンスに入った《CANAVERAL》の左腕が《LOADER 4》のボディを殴りつける。

 

『やめろォッ! 

 やめ……ッ! 俺がっ! 俺が死んじまうだろうがァァァッッ!!!』

 

 接触回線で届いたモンキー・ゴードの引きつった声に、621は酷く落ち着いた、しかし冷たい声で呟いた。

 

「……だから、こうしてんだよ」

 

 赤熱化し、塗料が剥がれていく。

 パルスの刀身が少しづつ、確実に《CANAVERAL》のコアを切り裂く。

 

『ギャぁぁぁアアアアアアァッッッッッ!!!!!!!!!!』

 

 損傷部から内部へ飛び散ったパルスのエネルギーはコックピットにまで侵入し、内装を焼きながらモンキー・ゴードの肉体を破裂させる。

 

 骨格フレームを溶断し、最後の装甲板が融け始めた。

 

「うぅうゥウウ……! 

 あぁア゙ァっ!!」

 

 獣のような咆哮。

 齢13の少女の姿からは想像すらできないような明確な殺意を帯びた叫びと同時に《LOADER 4》のパルスブレードが振り抜かれ、《CANAVERAL》のコアと脚部は泣き別れとなった。

 

 パルスブレードの刀身が消え、赤熱化して焼け着いた基部が煙を上げる。

 

 バランサーが焼け付き、フラフラとビルにもたれかかった《LOADER 4》は、そのまま窓ガラスを割りながらずり落ちてシステムをダウンさせた。

 

 戦闘に巻き込まれ、砲台は既に破壊出来ていたらしい。

 

 朦朧とする意識の中、621はモニター越しにオーバードブーストで向かってくる《GREEN WITCH》を捉えた。

 

《LOADER 4》の軋む右腕でライフルを構えそうになり、そこで正気を取り戻した621。

 

「ち……がう……

 こっちは……撃たなくて……いいほう……」

 

 ライフルを下げ、ガガァン……と音を立てて《LOADER 4》の右腕がちぎれ落ちた。

 

 到着した《GREEN WITCH》のスキャンで《LOADER 4》を確認したビルバオはACの外部スピーカーを起動する。

 

「ろくにーい……っ

 レイヴン! 聞こえますか! 返事をしてください! 

 レイヴン! レイヴン!!」

 

 もうすぐ途切れそうな意識の中、621は外部スピーカーを起動して応答した。

 

「だい……じょうぶ……

 へへ……勝ったよ……いぇーい……」

 

《GREEN WITCH》に向かって弱々しいピースサインを掲げ、そこで621の意識は途切れた。

 

「レイヴン! レイヴン! 

 ウォルターさん! 《LOADER 4》を回収します! 

 医療コンテナを積載した輸送ヘリを手配してください!」

 

「了解した! 

 621……!」

 

 ライフルを投げ捨てた《GREEN WITCH》は《LOADER 4》のコアの両脇を掴んで持ち上げ、そのままゆっくりと戦域を離脱した。

 

 任務完了。

 不意のイレギュラーに遭遇しながらも生き残った621の顔は、気絶していながらも晴れやかだった。

 

 

 

 




【キャラクター紹介】
・モンキー・ゴード
ルビコン3で活動する独立傭兵。
ルビコン解放戦線のMT部隊を掃討する依頼を受けていたが、運悪く前日に借金取りによって武装のほとんどを質に取られ、不本意ながらレーザーライフル1本で出撃したところを撃墜された。
本人は脱出していたが、後から来た621によってライセンスを抜かれてそのまま有効期限が切れて失効。
新しく取り直したライセンスでチマチマとルビコン解放戦線の仕事を受けていたところで621と対決し、戦死した。

過激な物言いに反して堅実な戦法を好む傾向にあり、最後に嗜虐欲を出さず《LOADER 4》のコアを撃ち抜いておけば621に殺されることはなかったのかもしれない。

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