ARMORED CORE 6 緑の魔女はルビコンに羽ばたく 作:強化人間E4-514
次回の更新も頑張りますので少しお待ちを……
ハンドラー・ウォルターの朝は早い。
起床と同時に時刻を確認。午前5時。
621の身体は定期的な調整と検査を必要とし、その周期は丁度1週間である。
今日はその日だった。
ルビコンの陽はまだ昇らない。
少し伸びをしてベッドから出るとまずは歯を磨き、次に顔を洗って服を着替え、支度を済ませる。
グリッドの各所に取り付けられたカメラの映像を見て異常がないことを確認し、ふぅ、と寝起きで動いた体を少し休ませてから、〝友人〟から定期的に送られてくる代替コーヒーを啜って脳を叩き起こす。
相変わらずひどい味ではあるが、眠気覚ましには丁度いい。
彼ももう60を過ぎ本格的な老化に備えねばならない頃合であり、使命を全うするためにも、健康維持は欠かせない要素だった。
ふと時計を見ると、時刻は5時半を過ぎている。
2人を起こす前に、簡単な食事の準備くらいはしてやらねば。
ウォルターはレーションの在庫を覗く。
ようやく歩けるようになったハークラーは今日からウォルター達とともに食事を摂ることを621が
引き取った直後に比べても、最近の621は様々なことを学びその脳内を日々進化させている。
いつか〝普通の人生〟が彼女に戻ってくる未来を想像し、思わずウォルターの口角が上がる。
その隣にビルバオがいてくれるならば、さらに心強い。
「621とビルバオは……激務が続いたな。
ルビコンに来たばかりと言うのに……身体だけでなく心労もあるだろう。
少しいいものを出してやるか」
食事とは身体の健康に直結すると同時に、心の健康にもまた繋がっていると、かつて父とともに懇意にしていた教授に教わった。
今は既に亡き人だが、その教えと道徳観はウォルターの心の中で確かに生きている。
自分もあの先生のような、誰かに大切なことを教えられる存在になりたいと何度願い、努力を積み重ねたことか。
今の自分は、そうなれているだろうか。
「……俺は、貴方のようになれているだろうか、先生」
ウォルターはまだ少し夜を纏っているルビコンの空の下、ひとり呟いた。
─────────────────────
621を医療室の検査システムに放り込んでビルバオに仔細を伝え、世話を頼んだ後。
ウォルターはかつて待合室だったらしい空間のベンチに腰を下ろし、朝から少し動きすぎている身体を休ませた。
やはり、このところ体力が目に見えて落ち始めている。
オペレーションが主のウォルターですら老体に響く程度には疲弊しており、実際の戦場で命のやり取りをしている2人のストレスは想像もできない。
発散のための何かを導入しようかと考えたが、そこはやはり2人に聞いてからではないとただの押しつけになってしまう。
戻ったら聞いてみるか、とウォルターは呟き、ふと辺りを見渡した。
ここを管理し始めてすぐ総入れ替えを行った無人システムによって清潔に保たれた医療施設は、旧世代型強化人間に必ずといっていいほど発生する〝免疫能力の著しい低下〟という問題の対処のため、定期検査と調整までもがこの場で完結して行えるようになっている。
とはいうものの、やはり人間に関する行為は人間が主体とならねばならない。
作業的な分野は機械が処理するものの、それ以外の分野では人の手が必要だった。
こういう時、ビルバオは頼りになる。
レイヤードにいた頃、趣味で医学書を嗜んでいたという彼女は強化人間の管理マニュアルを一目で理解してみせた。
強化人間を多く見てきたウォルターですら10年以上かけて勉強し、解釈の訂正を重ねてメソッドを確立していったのだが、彼女の物覚えの速さは頭1つ抜けていた。
昔から勉強が好きなのです、といって朗らかに笑っていたが、そうならハイテンションで思想を押し付けるのは怖いからやめろと注意した時は素直に学んでやめて欲しい。
大変面倒くさい頭の作りをしているが本人の性分は極めて穏やかであり、子供との付き合いも上手かった。
齢13とは言うが、僅か7歳という幼さでMTに乗り、10歳になる頃にはその手に握る操縦桿をACに変えていたらしい621の知識や精神は実質的には幼子とほぼ変わりない。
その上ガラの悪い者の多い傭兵や企業の軍の中に身を置いていたとなれば、精神形成の歪みは容易に想像がついた。
戦闘中の乱暴な物言いも恐らくはそれが原因である。
そんな621が普通の人生に戻った時の無用なトラブルを避けるため、教育は必要不可欠であろうというのがウォルターの出した結論だった。
そのためにも、これから接していく人選は考えなければならない。
ならないのだが。
「レッドガンのメシで唯一これだけは美味ェんだよな。
……ってなんで俺を睨むんだアンタは」
隣に座ってベイラム製品のショートブレッド型レーションをかじる、レッドガン支給品のツナギのようなパイロットスーツを着た男、G7ハークラーをウォルターは横目にキッ、と睨んだ。
この男、すでに621に余計なことをアホほど教えている。
ひとつは戦場で相対した敵を効率的に苛立たせて判断力を削る方法。
そしてひとつめを行ってきた相手へのカウンター。
更にはバレない盗み食いの仕方など枚挙に遑がない。
何をしてくれやがるのだろうか。
ウォルターは杖を握る手に力が入り、筋が立つのを隠しつつ低めに脅すように呟いた。
「……ここでレーションを食うな。
清掃の手間が増える」
医療施設でボロボロ落ちるメシを食うなど言語道断である。
ハークラーは今更気づいたような顔をしたあと、途中まで破いて持ち手にしていた包装を直して残りを包み、ポケットにしまった。
「すまんな」
ミシガンに清掃代を要求しても良いんだぞ、という言葉を呑み込むには苦労したとウォルターは後に語る。
ハークラーは少しの沈黙の後、ウォルターに向かって語りかけた。
「なぁ、アンタ、何しに来たんだ?」
「……どういう質問だ。
俺はコーラルを目当てに来ている。お前たちベイラムやアーキバスと同じだ」
「誤魔化すかよ。
アンタ、割と話を隠すタイプだな」
ハークラーの声音は飄々としつつも、どこかウォルターを探ろうという魂胆が見え隠れしていた。
たとえ普段の素行は褒められたものではなくとも、彼はレッドガンの隊員である。
もし仮にウォルターがレッドガンにとっての障害となるならば、排除しておきたいというのが道理だろう。
「アンタは猟犬共を抱え、企業や金持ちの依頼を受けて大金を稼いできた。
さすがに星一個丸ごと買いあげるって芸当は無理だろうが、それでも企業の経済圏の端で豪邸を立てて余生を贅沢に過ごすくらいの金は持ってるはずだ」
「ふん……」
ハークラーの疑問は的確だった。
事実、ルビコンに来る以前のウォルターは各地の戦場へ猟犬達を派遣し、活躍させて多額の報酬を得ていた。
《LOADER 4》の武装類と、なによりACを複数所持し、グリッドを丸ごと買い上げて整備しているのがその証左であった。
特にベイラムの経済圏では不穏分子の摘発に協力した件もあり、名前はそれなりに知れ渡っている。
しかし、ウォルターは本当の思惑を誰にも話さない。
それは621やビルバオも例外ではなかった。
ハークラーは目をそらすウォルターを詰めるように続ける。
「……なぜ、そんなアンタがコーラルを目指す?
言っちゃあ悪いが、それなりに人生過ごしたアンタを、コーラルに駆り立てるものはなんだ?」
「……悪いが、それは教えられない。
お前だけではない……今はまだ621にも、ビルバオにもだ」
「……そうか」
ハークラーはふ、と息をつくと、宙を見上げるように呟いた。
「……そんな態度で、あの子達と一緒にいられるのかよ」
ハークラーの言葉から目を逸らしたくなるウォルターだが、ここで逃げるのは違うという気持ちも彼の中には同時に存在している。
今のウォルターは、この2つの壁を突破する判断を持ち合わせていなかった。
─────────────────────
数時間後。
心身ともに万全の621は《LOADER 4》のコックピットに座って接続していた。
前回の砲台破壊依頼を無事完遂し、想定外の増援だったACまでも撃破してみせた活躍を認めたベイラムが、独立傭兵レイヴンへ是非にと名指しの依頼を発注してきたのだ。
今はそのブリーフィングの予定時刻を待ちつつ、修理した《LOADER 4》のチェックをしている。
621が頭の中で左肩武装ハンガーのマシンガンと、左腕のパルスブレードを持ち帰る動作をイメージすると、脳から接続ユニットを介して彼女と繋がる《LOADER 4》はその動きを精密にトレースした。
「おぉ~動かしやす~い!!!」
「内部の部品をいくつか新品に交換した。
反応速度も上がっているだろう」
具体的には以前損傷した部位を総入れ替えしただけなのだが、それでもほぼ中古品のような状態だった以前に比べれば、その性能はよりカタログスペックに近いものとなる。
元々機敏に動き、かつ多少のことなら壊れない頑丈さも同時に求められる探査機体だ。
しっかりチューンしてやれば、ある程度は戦える。
さらに頼りになるようになった愛機をガシガシと動かしながらはしゃぐ621の声を通信で聞きつつ、ベイラムから送られてきた資料を確認する。
「……今回の仕事は、お前の働きが運んできた仕事だ。
自分の力を誇れ、621」
シンプルな依頼ではあるものの、621の成果によって勝ち取った仕事であるという事実は変わりない。
もう少しでブリーフィングが始まると伝え、ウォルターと621はベイラムが指定した遠隔ブリーフィングのルームにアクセスした。
網膜投影によって621の視界に映像が映し出される。
ウォルターのエンブレムに続き、以前と同じくレッドガンのG6 レッドのエンブレム。
そして、最後にこの依頼を発注したベイラム・インダストリーのロゴが表示された。
レッドのエンブレムが画面中央に戻り、点滅すると同時に威勢のいい若い男の声がコックピットに響いた。
『独立傭兵レイヴン! これはベイラム同盟企業、大豊による依頼だ。
我が方はこのたび、ルビコン解放戦線に対して、武力制裁を加えることを決定した。
目標は、連中の補給物資を搭載した輸送ヘリ数機。
これを撃破する!
ゲリラ部隊による抵抗が予想されるが……
所詮はBAWS社の量産MT、その寄せ集めに過ぎん。
独立傭兵レイヴン! 前回の働きで貴様は一定の実力を示した!
用いるに足る傭兵であることを、再び示してみせろ!』
レッドは上司から渡された作戦概要を伝えるとウォルター宛にメッセージを送り、ブリーフィングルームを退席した。
主の居なくなったルームはそのまま閉じられ、ノイズとともにネットワークから切断させるのを確認した621はコックピットで伸びをし、シートに深く座り直す。
仕事の時間だ。
回転灯がガレージを赤く彩る。
「行ってこい、621。
この調子で実績を積み上げていけ」
ヘリが円筒状の輸送形態へと姿を変えたガレージを機体下部に固定し、作戦領域へと運んでいった。
─────────────────────
汚染市街の高台。
かつて621が惑星封鎖機構のヘリを屠り、〝レイヴン〟の名を得た場所。
ルビコン解放戦線にとって要所となるここは、彼らの輸送拠点にもなっていた。
天を突くようなビル群に加え多数の建造物、さらに地下にも多少の都市構造が広がる汚染市街は物資を隠しやすいのだろう、とウォルターは推測している。
《LOADER 4》はそこから少し離れた崖上に投下され、向こう側で輸送の準備をしているヘリの部隊とその護衛MTを見下ろしていた。
今回の《LOADER 4》は修理のついでに武装を変更していた。
左肩に懸架していた《LUDLOW》を外し、スタッガーの追撃用に大豊製バズーカの《XUAN-GE》を装備している。
先の戦いでモンキー・ゴードが活用していたグレネード戦術を、621自身が自分のクセと傾向に合わせてアレンジを加えた構成だ。
曰く、「手持ちの方が使いやすい」とのこと。
「ミッション開始だ
ルビコン解放戦線の輸送ヘリを破壊しろ」
「りょ~かいごすずん!
ギャハハハハハハ!」
ウォルターの指示と同時に621はもはや恒例となった品性の欠片もない笑い声を上げながらMTの群れへ突撃していく。
ウォルターはもう慣れていたが、暇を持て余した結果、勝手に621の戦いを見物することにしたらしいハークラーは頭を抱えていた。
「……なんなんだこれ」
「慣れろ」
「無理だろ」
「俺はもう慣れた」
「すげぇなアンタ」
ハークラーとウォルターの短い応酬の間に621は最初のヘリへと取り付いた。
621の襲撃に気づいた解放戦線のパイロットたちが叫ぶ。
『敵襲! 企業の傭兵だ!』
『迎撃しろ! 補給物資に近寄らせ……ッ!
もう破壊されただと……ッ!? 貴様……!』
輸送ヘリは《LOADER 4》が空中で放ったバズーカによって粉砕され、積載していた荷物の中に可燃物が混じっていたのか激しく燃え上がっていた。
『企業の狗め!
死ね! 独立傭兵!』
怒りで我を忘れたMTがショットガンを放つも、その短い射程では右へ左へと機体を揺らして回避する《LOADER 4》には散弾の一つとして当てることは出来ない。
「当たんね~!!! ギャハハ!」
赤いモノアイの軌跡を描き、MTのFCSが見落とす速度で飛び回る《LOADER 4》。
ならばこれならどうだとばかりに、挟撃を目論む2機のMTが前方と後方から同時にブーストで仕掛ける。
しかし、ACの上昇推力の前には無力。
《LOADER 4》は宙へと上がり、減速が間に合わず勢い余って正面から衝突したMTに直上からバズーカを直撃させた。
『ぐわッ!』
『畜生……!』
悲痛な断末魔と同時に鳴り響く爆発の轟音も、621にとっては2体同時撃破を祝福するクラッカーでしかない。
「次行こ次ィ~!
ギャハハハハハハハ!」
アサルトブーストで地表スレスレを高速移動しながら、次の輸送ヘリに向かう。
知性の欠片もない笑い声と口調に反して、621の戦いは対MT戦術のマニュアルに沿った理想的なやり方だとハークラーは感心した。
それはそれとしていちいち笑うのは何なんだと聞きたくなったが、おそらくウォルターには無視されるのでやめた。
『死守しろ!』
『ストライダーの同志を……これ以上待たせるわけにはいかん!』
621の接近に気づいた自動砲台がミサイルを発射するが、ジェネレーターを《AG-E-013 YABA》へと新調した《LOADER 4》のアサルトブーストはそれらを置き去りにして、防衛ラインを組む装甲車両を蹴り飛ばした。
「目標どっこかな~~?
あれか!」
《LOADER 4》がスキャンを実行し、ふたつの建造物のうち、崖沿いに隠れた輸送ヘリをマークする。
すぐに破壊しても良いが、せっかくならと周辺のMTも蹴散らすことにしたらしい。
621は盾持ちのMTが繰り出すまばらなマシンガンの射撃を回り込むように回避し、背後をとった。
『なッ!?』
解放戦線の兵士が反応するよりも早く、バズーカとパルスブレードを持ち替えた《LOADER 4》の左腕が振りかぶる。
「おりゃ!」
パルスの刀身がMT肩から袈裟斬りにし、下半身を残して爆散していくのを尻目に《LOADER 4》はふたたびバズーカに持ち替え輸送ヘリを撃ち抜いた。
装甲を貫き、内部で爆発したバズーカの弾頭がヘリを操縦者ごと再起不能にする。
『クソ……っ! 企業め……!』
憎々しげに呟く解放戦線の兵士。
「目標の破壊を確認した。
次へ向かえ」
ウォルターの指示に元気な返事を返しつつ、高台の横の段になった崖からミサイルを撃ち下ろしていたMT達を補足した《LOADER 4》は彼らに素早くライフルを叩き込む。
『来たぞ! 応戦しろ!』
順に爆発していく彼らの間をアサルトブーストですり抜け、高台に上がった《LOADER 4》を迎えたのはまたもやMT部隊の制圧射撃だった。
「やべ~!
ギャハハハ!」
同時に複数方向から少しずつ狙いをずらした射撃を避けきることは難しい。
数箇所に被弾するが所詮はMTの豆鉄砲、機体の動きの影響を与えるほどではない。
621のバズーカが2体まとめてMTを爆散させると、怖気付いたように数体のMTが後退を選び始めた。
『相手がACでは分が悪い……!』
覇気をなくした男の兵士の悲痛な声がオープン回線で《LOADER 4》のコックピットに届く。
戦意を失った兵士は的同然。
621はそのMTに狙いを定め、リロードを終えたライフルを叩き込もうと引き金を引いた。
MTのパイロットが思わず操縦桿から手を離し、現実から逃れようと両腕を交差させて視界を塞いだ瞬間。
《LOADER 4》のライフルの弾をその身を呈して防ぎ、仲間のMTを庇いながら、四脚の巨大な機体が姿を現した。
高性能機であることを示す緑の光を放つカメラアイが《LOADER 4》を睨む。
四脚型MTを駆る指揮官と思しき女性が同志を鼓舞するように叫んだ。
『臆するな!
我々はコーラルと共にある!』
ウォルターは《LOADER 4》のカメラ映像から機体を識別し、AP推定値と各スペックのデータを621へと送信した。
「《TETRAPOD》……BAWSの四脚タイプか。
これまでのMTとは性能が違う、無理に相手をする必要はない」
四脚MT。
重量型ACに勝るとも劣らない機動力を持ちながら、堅牢な装甲と高火力も確保された高性能型MTである。
特に今《LOADER 4》と対峙しているモデルはレーザーブレードを装備した近接高火力型。
まともに攻撃を喰らえばACであっても大破は免れない。
だが、621もその程度で臆する猟犬ではない。
モンキー・ゴードの恐ろしく高機動な戦いの後ではこの程度ノロマな的でしかないとばかりに、《LOADER 4》のブースターが火の粉を散らせて四脚MTへと飛び込んだ。
『来たか!』
正面から挑む《LOADER 4》はバズーカから持ち替えたパルスブレードを起動して斬りかかるが、その太刀筋を読んだように振るわれた四脚MTの蒼いレーザーブレードの刀身と衝突した。
空中での短い鍔迫り合いを離し、クイックブーストで後退すると同時にフルオートでライフルを撃ち込む《LOADER 4》。
その射撃を堅牢な装甲で受け止めながら、9連ロケットをタイミングをずらしながら《LOADER 4》の進行方向上へと置くように発射した。
「うわわっ!」
EN枯渇を起こしていた《LOADER 4》はクイックブーストが間に合わず被弾し、コックピットの激しい揺れで621の軽い身体がシートから浮く。
「ひぇ~……
ちょっと怖かったなァ今のは……!」
621の口角が僅かに上がり、身体が震える。
武者震いと呼ぶにふさわしいそれは621のコーラルに焼かれた脳をアドレナリンで満たしていく。
「おもしれェ~……
けどあんま長引くのはヤだからなァ~~!!!」
幼い身体にかかる高負荷をものともせず、シートに押し付けられながらアサルトブーストを吹かす621。
全てを放棄して自棄になったと推測したパイロットは、勝ち誇ったように叫ぶ。
『勇敢ないいパイロットだ! だが死ね!』
「お前がなァ~~~!! ギャハハハハハハ!!」
クイックブーストのステップで射撃を躱しながら距離を詰める《LOADER 4》を、上半身を旋回させて追跡する四脚MT。
弾薬を無駄に消費し続ける展開に痺れを切らした四脚は飛び上がってレーザーブレードを振り下ろすが、甘い太刀筋を見切った621は脇をすり抜けるように飛び込み、すれ違いざまに身を捻って脇へとバズーカを撃ち込んだ。
弾頭が爆裂し、四脚MTの厚い装甲板と内装をまとめて砕け散らせる。
《LOADER 4》は地面を削りながら着地し、素早くターンして四脚MTを捉えた。
ACS負荷危険域を示すオレンジの表示を一瞥し、歩み寄る死の気配に四脚のパイロットは息を呑んだ。
『このAC乗り……普通じゃない……!』
「うひひ……効ィてる効ィてるゥ~~!
よし……そこそこ面白かったけど……」
これで終わらせる。
そう決めた621は、パルスブレードのチャージを開始した。
内包するパルスのエネルギーが、緑の光となって発振器から溢れ出す。
じりじりと、まるで侍の勝負のような隙の探り合い。
お互いの放つプレッシャーが削り合い、残る余裕の差。
621の圧勝だった。
ウォルターは621に通信を繋ぐ。
「621、一気に片付けろ」
「おっけおっけ~ごすずん!!
じゃあアイツはそろそろ……死んでもらおっかなァ~~!!!
ギャハハハハハハ!!」
ブースターが火の粉を散らし、ドシュッ! と爆発的な加速力によって弾き飛ばされる《LOADER 4》。
ばら撒かれる四脚MTのマシンガンを右へ左へ回避し、肉薄したところに蹴りを叩き込む。
《LOADER 4》が装甲を蹴り砕き、同時に四脚MTのACSが負荷限界を迎える。
ガリガリと装甲を地面に擦らせながら吹き飛び、建造物に衝突して姿勢を崩した。
『ACS……っ負荷限界だと……!?』
傾いたコックピットで身を起こし、パイロットが見たモニターに映る《LOADER 4》のアサルトブースト。
左腕を大きく振りかぶり、緑の溢れた光が巨大な刀身を形成していく。
『イカれ野郎が……!』
パイロットの呟きと同時に飛び込んできたパルスの刀身がコックピットごと四脚MTを切り裂いた。
轟音を立てる爆発と瓦礫の中を突っ切って《LOADER 4》がバズーカとミサイルを放ち、輸送ヘリを破壊。
横滑りするようにして向きを変え、残る2機の輸送ヘリにそれぞれライフルとリロードを終えたバズーカを叩き込んだ。
任務完了。
輸送物資を全て破壊され、これ以上の戦闘は無意味に物資を食い潰す行為だと考えた解放戦線の兵士達が撤退していく。
「ごすずん! 勝ったよ!
いぇーい!!」
以前よりも損傷も少ない、完全な勝利。
621は通信機に向かってピースサインを掲げ、この日の勝利を喜んだ。
「あぁ……よくやった、621。
帰投しろ」
621が戦った四脚MTですが、壁越えの時のものと同一機種に変更しています。
そっちのほうが書きやすかったので……
ACや兵器の呼称についてのアンケートです。ACやMTなどの名称は現状常に《》を付けて表記していますが、初登場以降もこの表記を維持するか、《》を外して表記するか、読みやすい方に票を入れてください
-
初登場以降も《》をつける
-
初登場以降は《》を外して表記する
-
《》を外す&カタカナ表記にする