【完結】フリーレン達のエロ&下ネタ冒険譚を無許可で書いた結果   作:シャリ

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1話:聖典の解読

 勇者ヒンメル一行が魔王を討ち、王都に凱旋してから一年後。

 

 どの国や村でも空前の「勇者一行ブーム」が続いていた。

 吟遊詩人たちは勇者の冒険を題材にした歌を街角で高らかに歌い上げ、小説家たちは筆を飛ばして想像力豊かな物語を紡ぎ出す。酒場の壁には勇者の似姿が描かれ、人々はその名を口にするだけで幸福そうに笑う。

 

 勇者ヒンメル、魔法使いフリーレン、戦士アイゼン、僧侶ハイター。

 彼らの伝説は、日常の会話に溶け込み、人々を熱狂の渦に巻き込んでいた。

 

 

 そんな熱気の渦中に、オーシュという名の若者がいた。見た目は黒髪黒目で素朴な服装をしている。

 

 彼は街外れの古びた下宿屋の一室で、静かに暮らしていた。机の上には、羊皮紙の束が散らばり、そこに並ぶのは妙に整った黒い線を描く羽ペン。

 オーシュはそのペンを指先でくるりと回しながら、独り言を漏らす。

 

「転生特典の『漫画を描く魔法』って使いどころがこれまで無かったんだよなぁ」

 

 オーシュはかつて別の世界で死んでしまい、前世の記憶と特別な魔法を何故か一つだけ覚えている転生者。

 特別な存在と言えるのに、彼の生活は地味そのもの。富を築くでもなく、ただ日々の糧を得るために小さな仕事をこなすだけ。

 

 その理由として、この世界には「漫画」という文化が存在しない。絵物語といえば、宗教画や古代の叙事詩を記した絵巻物がせいぜい。

 

 面白い内容が思いつかないまま、試しに適当な漫画を描いて知人に見せたことがあるが、コマ割りや流れを理解される前に怪訝な顔で突き返されてしまった。

 前世の好きな作品をそのまま模倣することもちょっと考えたが、世界が違うとはいえ丸パクリは道義的に許せなかったし、オリジナルを冒涜するようで気が引けた。

 

「でも、ブームに便乗した漫画を描けばみんなに受けるはず!」

 

 街の本屋を覗けば、表紙に「勇者ヒンメルの真実の愛」だの「ヒンメル、女神の息子で確定!?」だの「フリーレン、古代人説」だのと色々な怪しい煽り文句が並ぶ。

 

 吟遊詩人もウケ狙いで勇者一行の冒険を勝手に脚色や捏造し、国を巻き込んだ大闘争や、存在しない仲間とのドラマをでっち上げて歌う。

 他には、勇者パーティーに隠された「五人目」が作者自身だと主張する自称体験記や、優しい魔族と心を通わせる詩のような捏造作品も氾濫していた。

 

 驚くべきことに、当の勇者たちはこうした創作に対して、作者に殴り込みをかけるような真似をしていなかった。

 それどころか、ヒンメル本人が「人々が楽しんでいるならいいよ。それに、旅の中でこういうこともあったかもしれない」と寛容な発言をしたという噂まで流れていた。

 

 

 オーシュは思った。

 

 ──もはや勇者一行は実在の人物だけど自由に描かれる織田信長(フリー素材)みたいなもの。じゃあ、俺も勇者パーティーをネタに使って好き勝手に描いていいんじゃないか?

 

「つまりは勇者たちの二次創作だな! 前世の二次創作でわかりやすくウケてたのはエロ同人誌やネタ画像だよな~」

 

 彼は羽ペンをしっかりと握りしめた。

 

「俺も『葬送のフリーレン』はよく知らんけど、SNSで流れてきたエロ画像とネタ画像は知ってたし。勇者効果で漫画でも行けるだろ、多分」

 

 因みに原作知識を殆ど持ち合わせていなかったことが、目立つ生き方ができなかった要因の一つだったりする。

 

 

 

 ──そうして、新しいシリーズ本が誕生する。

 

『勇者外伝:秘められし冒険譚シリーズ』

 

 内容は基本的に下品そのもの。

 魔族とセックスバトルしたり、勇者たちが関所を通るために貴族たちの性玩具にしばらくなったり、ヒンメルとフリーレンが純愛を育む一方で一時的に寝取られたり、戦闘中に服を脱いで相手の隙をついたり、感度3000倍魔法が出てきたりなど過激なシーンが多い。

 

 だが、絵のクオリティは抜群だった。魔法で描かれた線は美しく、動きがあり、何よりキャラクターの表情が生き生きとしていた。真面目なバトル描写も少し挟み、読者を飽きさせない工夫が施されていた。

 

 漫画を初めて見る者たちは、形式とコマ割りに最初こそ眉をひそめたが、勇者という人気コンテンツに惹かれて読み進めるうちに、その魅力に引き込まれていく。

 直球のエロや下ネタは、これまでの作品にはない新鮮な刺激として口コミで広がり、ついには様々な街の書店で大きく売り出される人気シリーズとなった。

 

 人気シリーズになってしまった。

 

 

 

 

 

 勇者ヒンメル一行が魔王を討ち、王都に凱旋してから二年後。

 

 聖都から離れた森の奥深く。

 かつて勇者一行が野営地として使った空き地に、勇者パーティーの一人である僧侶ハイターが住む小屋があった。

 

 ハイターは椅子に腰かけ、酒瓶を傾ける。

 

 窓の外では鳥のさえずりが響き、木漏れ日が優しく差し込む。静かで、穏やかで、何も起こらない日々。

 平穏こそが、何よりの幸福だった。

 

「一人きりで飲む酒にも慣れましたね」

 

 仲間と離れた寂しさを誤魔化すように呟き、ハイターは苦笑した。

 

 ──仲間たちの姿を思い出しながら、また一口。

 

 

 

 その日は、酒が切れていた。仕方なくハイターは街まで降りることにした。

 

 久しぶりの街中は、晴れた空の下で賑わっていた。

 

 しかし、どうにも様子がおかしい。

 すれ違う人々が、私を見るたびに何かを囁き、目を逸らして距離を取る。前に街を歩いた時は、勇者パーティーの一員として声をかけられることが多くて少し大変だったというのに。

 

 とはいえ街の人に影響を及ぼしてそうな魔族や魔法の気配は無い。そういう日もあると自分に言い聞かせ、酒屋でワインを数本買い、新聞を一部手に取る。

 

 

 

────────────────

『僧侶ハイター考案、聖典の射精解読を教会が正式に認める!』

 

 関係者曰く「聖典のページに射精するという解読方法に忌避する者がいるとハイター様は懸念し、秘匿されていたのでしょう。だからこそ言わせてもらいます。女神様の御言葉を記した聖典の解読は、人類が受け持つ大事な使命です。再現が確認された射精解読は女神様に対する愛と信仰心がもたらした結果であり、女神様が認めた行為です。教会はハイター様と射精解読を認め、功績として正式に記録と発表をさせていただきます」

────────────────

 

 

 新聞紙の端が指先で震える。

 

「……どっ、どういうことですか!」

 

 ハイターは記事を読み進め、事態を把握した。

 

 『勇者外伝:秘められし冒険譚』という人気シリーズの本があり、その内の一冊で射精による解読方法について言及した自分がいる。

 教会は本気で検証し、本当に新しく女神の魔法が発見されたらしい。しかも二つも。

 

「とにかく、本を確認する必要がありますね」

 

 本屋で問題の本を購入し、帰宅してページを開ける。

 

『この冒険譚は、内容故にこれまで表に出てこなかった秘匿されし物語である』

 

 

  ◇ ◇ ◇

 

 

 崩れた塔の前に、四人の影が立っていた。ヒンメル、フリーレン、アイゼン、そしてハイター。

 彼らの視線の先には、黒衣をまとった大魔族が立っている。人の形をしてはいるが、その目には感情がなく光がない。

 

 ヒンメルが静かに剣を構えた。青い瞳が、魔族の喉元をまっすぐ射抜く。

 アイゼンが大地を踏みしめ、戦斧を構える。

 背後ではフリーレンが殺意を込めた目で見ながら杖に魔力を集める。

 

 三者の攻撃が同時に放たれた。

 雷が魔族に向かって飛び、剣が閃き、斧が振り下ろされる。

 

 だが──全てを受け止めて、魔族は健在だった。

 

「……なに?」

 

 ヒンメルの眉がわずかに動く。

 攻撃が確かに当たったはずなのに、傷一つ付いていない。

 

 魔族は喉を鳴らして笑う。

 

「無駄だ、人間ども。お前たちの力は、我には届かぬ」

 

 誇らしげに続ける。

 

「我は知った。魔法というものは枷をかけた方が強力になるという理を。我が枷は『女神の魔法が弱点になる』だ。恩恵として他の攻撃手段は我が無効化魔法で届かぬ」

 

 フリーレンが杖を構え直す。

 

「女神の……魔法だけ?」

 

 魔族は愉悦に満ちた声で続けた。

 

「人間が扱う“女神の魔法”など知れている。くだらん治癒と加護ばかり。攻撃魔法など存在せぬ」

 

 

 沈黙が落ちた中で、ハイターが前に出る。穏やかな微笑を浮かべながら、聖典を携えた。

 

「……魔族には分からないでしょう」

 

 ハイターの動きは祈るように静かだった。

 

「女神様は時に、人間の祈りに応えてくださるのです」

 

 次の瞬間、ハイターの手から光が放たれた。清浄な光の柱が大魔族の胸を貫き、悲鳴を上げる。

 

「ば……馬鹿な……! そんな女神の魔法、我は知らぬ……!」

 

 身体が光の粒となって崩れ落ちていく。目には、恐怖と理解不能の色が混じっていた。

 

 フリーレンがわずかに目を見開く。

 

「今の、どこで覚えたの?」

 

 ハイターは手を下ろしながら小さく笑った。

 

「旅の途中で女神様の裸体を想像しながらオナニーをしていた時の話です。興奮の勢いに任せ、聖典のとあるページに射精をしました。すると精液がかかったページの文字が光り、一つの呪文が浮かび上がったんです。それが先ほどの呪文でした。私が聖職者として、女神様を想う気持ちと愛情に応えてくれたのでしょう」

 

 

  ◇ ◇ ◇

 

 

「なんですかねコレ……」

 

 ハイターは困惑した。

 

 勿論、漫画という形式にではなく内容にである。

 確認した話以外にも下ネタやセックス等のシーンが多い。魔族に一斉攻撃をしたシーンのような真面目な描写もなくもないが、基本的に低俗な内容である。

 

「絵は惹きこまれるほどに上手いですがね」

 

 ハァと深く息を吐いて……ふと、気づく。

 

「本にある解読方法が事実だと認められたなら……このシリーズの内容も事実だと人々に思われるのでは?」

 

 とんでもない風評被害だ。しかもシリーズの新刊が出る度に、描かれた事実無根の出来事があったと色んな人から思い込まれてしまう。

 

 

 

 実際、ハイターが懸念した通りの流れが起きていた。影響力がある教会陣営の正式発表後から漫画の内容は事実として広がりだしていた。因みに、オーシュのネタと解読方法としての正解は偶然の一致である。オーシュが新聞を読んだ時には「俺の作品が正解を引いてて草」と笑っていた。

 

「作者に会って……対応しないといけないですね!!」

 

 

 

 ──魔王を討伐し、伝説に残る四人が再び集う。

 

 くだらない漫画がきっかけで。




【後書き】
ハーメルン投稿はコレで11作品目です。
フリーレン二次の投稿は初めてなので、実質初投稿です。


今回はハイターが風評被害を受けました。
次回はアイゼンが風評被害を受けます。

オリ主ことオーシュが無視できない影響を及ぼしたことで発生してしまった原作とは違う流れを最後まで見守ってくださいね。


次回以降の更新力と作者の喜びになるので、良ければ
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など、よろしくお願いします!

あなたが一番おかしい奴と思った相手は

  • オーシュ(オリ主)
  • 本気で再現を図った教会陣営
  • 本当にあった話と勘違いした人々
  • 射精で解ける暗号を入れていた女神
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