【完結】フリーレン達のエロ&下ネタ冒険譚を無許可で書いた結果   作:シャリ

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最終話:ハッピーエンド

 オーシュの新居は、大きな交易都市の中心部にそびえる立派な三階建ての邸宅だった。石造りの外壁に大きな窓、庭には花壇まである。

 彼が描いた『勇者外伝:秘められし冒険譚シリーズ』の売上が爆発的に伸びたおかげで、こんな豪邸を手に入れられたのだ。

 

「売上すげぇわ! ガハハハッ!」

 

 オーシュはリビングの豪華なソファにドカッと座り、テーブルの上に積まれた金貨を眺めながら高笑いした。

 

「やっぱ勇者ブームに乗っかったのが正解だったな~。エロと下ネタで釣って、アクセントに真面目なバトルシーンをちょいと入れときゃバッチリだ! この調子で新刊をもっと出して」

 

 

ドンドン!

 

 

 突然、玄関の扉が力強く叩かれた。

 

「んん~? 出版関係者か? 今日来る予定はなかったような」

 

 オーシュは軽い足取りで玄関に向かい、扉の取っ手に手をかける。

 

「はいはーい、どなたさん」

 

 扉を開けた瞬間、強烈な圧がオーシュを襲う。

 

 そこには勇者ヒンメル、魔法使いフリーレン、戦士アイゼン、僧侶ハイターの四人。

 伝説の勇者一行が、揃いも揃って仁王立ちしていた。

 

 ヒンメルの青い瞳は鋭く、フリーレンは冷ややかな視線を投げ、アイゼンは無言で圧力をかけ、ハイターは不気味な微笑みを浮かべている。

 

「……うむ」

 

 オーシュは一瞬で状況を悟り、そっと扉を閉めようとした。

 

 

 ガッ!

 

 

 ヒンメルが素早く扉を掴み、ニッコリと笑う。しかし目が全く笑っていない。

 

「はぁい……オーシュうぅぅぅ」

 

 凄みのある声の響き。オーシュの背中に冷や汗が流れる。

 

「オワタ」

 

 

 

 

 

 室内で正座するオーシュの顔は腫れ上がっており(前が見えねェ)、全身ボロボロになっていた。

 ハイターが治せる範囲でとはいえ、四人から折檻された証である。

 

「ふぁい…マジ、ふひまへぇんでした……」

 

 憂さ晴らしは終えて、真面目に今後のために勇者一行とオーシュの間で取り決めを行った。

 

 

 一つ、『勇者外伝:秘められし冒険譚シリーズ』の内容はフィクションである、と新聞を通して発表する。

 

 二つ、『勇者外伝:秘められし冒険譚シリーズ』の漫画は刊行停止。

(既に出た分の漫画の回収は現実的ではないため、やむを得ず捨て置く。次のことに集中してもらう)

 

 三つ、今後は勇者一行から実際の旅について聞き、それを『真の冒険譚』シリーズとして刊行すること。

(オーシュが描く漫画の表現力は勇者一行も評価している。有名作者として影響力があるオーシュの新作によるイメージの回復と、それを流行らせて評判をまともな方向に修正する目論見)

 

 

 

 取り決めが終わり、ハイターがオーシュの腫れ上がった顔や身体の傷を女神の魔法で丁寧に癒していく。

 ハイターは怒気が抜けた穏やかな表情で、自分たち二人だけが聞こえるように小声で話しかける。

 

「先ほどは怒りをぶつけましたが……実は感謝もしていますよ」

「ほほう、その心は?」

「魔王討伐の旅を終えてからというもの、四人で集まる理由も機会もありませんでした。あぁ、いえ……正確には遠い未来の素敵な約束はありましたが、その前には無かったんです。一人の時間も良いですが、たまに寂しい気持ちもありました。なので、今後はあなたが作品を描くための取材で、たまに集まることになったのは嬉しい話です。まぁ、個人的な感想ですけどね」

 

 

 淡い光がオーシュの身体を包み、徐々に傷が消えていく様子を少し離れた場所で、ヒンメルとフリーレンが眺めていた。アイゼンはすでに部屋の隅で佇み、話が一段落して満足しているようだった。

 

 ヒンメルはふとフリーレンの横顔を見つめ、軽く息を吐いた。

 

「フリーレン、ちょっと話があるんだ」

 

 声は普段より低く、どこか真剣さを帯びている。

 フリーレンは小さく首を傾げ、彼を見返す。

 

「なに? またオーシュの漫画のこと?」

「いや、違う。……もっと大事な話だよ」

 

 彼はそう言って、フリーレンの手をそっと引き、部屋の隅にある小さなバルコニーへと連れ出す。

 他三人の視線が二人を追うが、誰も口を挟まなかった。

 

 

 バルコニーに立つと、ヒンメルは深呼吸をしてフリーレンに向き直った。

 

「もっと、どこか落ち着いた場所がいいかもしれないと思ったけど……いや、こういうのは後回しにするとまた言えなくなるかもしれない。それに」

 

 彼は少し照れたように笑い、髪をかき上げる。

 

「いつかオーシュにこの場面も描いてもらうかもしれないから……今、ここで言うよ。ずっと言えなかったことを」

 

 フリーレンは眉をひそめ、言葉の意味を測りかねるように目で続きを促す。

 

「まず……僕はずっと逃げていた。僕の寿命はフリーレンに比べればあまりにも短い。僕の気持ちを受け止めてもらえたとしても、いつか悲しませる未来が来ることを気に病んでいた。でも、オーシュの漫画を読んで……馬鹿みたいだけどフリーレンが女性として他の男と一緒にいる場面とか、君にとって初めての『男』が僕じゃない誰かになっているって想像したら、胸が張り裂けそうだった。漫画みたいなことが本当に起きていたらと考えてしまって、夜も眠れなかった時もあった」

 

「ヒンメルさん、寝取られモノ好きの才能あるよ」

 

 ヒンメルは残像が生じる速さで怪我が治ったばかりのオーシュに腹パンし、元の位置に戻る。

 オーシュが「ぬぐおおおぁ!」と呻いて倒れたが、他の三人はスルーした。

 

 

 

「僕は心の痛みで気づいたんだ」

 

 ヒンメルはフリーレンの目をまっすぐ見つめ、声を少し強めた。

 

「寿命の差なんて、卑怯な逃げの言い訳でしかなかった。ただ、僕に勇気が足りていなかっただけなんだ。愛を伝える勇気が」

 

 言葉を切り、深く息を吸い込む。長年の想いを乗せて、ゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「僕はフリーレンを愛している。ずっと前から好きだった。初めて出会った日、花畑を出す魔法を見せてもらった時に僕の心はもう奪われていた」

 

 

 

 告白の言葉がバルコニーに漂う静かな夜風に溶け込み、フリーレンの耳に柔らかく響く。

 胸の奥に……普段は静かな湖面のような心に、さざ波が広がるような感覚があった。無意識に手を胸に当て、生じた熱を確かに感じ取る。

 

「ヒンメル」

 

 彼女の頬が、ほのかに赤く染まる。

 

「私も漫画を読んで……変な気持ちになった。ヒンメルが女の人と愛し合っていた場面を読むと胸の内側がチクチクと刺されたみたいに感じた。ヒンメルのそういう男の人としての部分を、他の誰かが先に知るのは……初めて嫌だと思った」

 

「フリーレンさんも寝取られモノ好きの才能あるよ」

 

 フリーレンは片手だけオーシュに向けて、加減した破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)を直撃させる。

 オーシュが「あばばばぁ!」と痺れて倒れたが、他の三人はスルーした。

 

 

 

「旅の中でヒンメルのそういう部分、私は見たことがない。知ろうともしていなかった。一緒に旅をして、知らない部分なんてないと勘違いをしていたことに、漫画を読んで初めて気づいたよ」

 

 フリーレンがヒンメルに向ける表情はいつもとは違う、愛おしさが垣間見える女性の顔になる。

 

「私はヒンメルが好き。もっと語り合って、もっと触れ合って、ヒンメルのことをもっと深くまで知りたい。それから私の……女の人としての部分もヒンメルに知って欲しい」

 

 エルフ耳まで赤くしながらの告白に、ヒンメルは一瞬目を見開き、驚きを見せる。

 フリーレンが初めて見せた女性の色香に衝撃を受けるも、どうにか踏ん張って呼吸を整える。エロ漫画を読んで得た耐性で、ギリギリ持ち堪えていた。

 

 送られた言葉を噛み締めるように目を閉じた。

 

 やがて、ゆっくりと目を開け、フリーレンの手をそっと握る。

 その手は温かく、力強い。

 

「僕は約束する。あと数十年しか一緒にいられなくても、実際の年数で収まらない数百、数千年分の愛を捧げる。だから、僕と結婚して欲しい」

「……うん、いいよ。私も愛を知って、愛し合う相手はヒンメルがいい。結婚しよう」

 

 

 黙って告白とプロポーズの様子を見守っていたハイターとアイゼンが安堵する。

 

「ようやく言えましたね」

「聞けてよかったな」

 

 二人とは違い、黙っていなかったオーシュが続けて口を開く。

 

「いいこと思いついた。二人の結婚式で『あいつら俺のエロ漫画で踏ん切りついたんだぜー!』って言ったら参列者にウケそうじゃね?」

 

 

 ヒンメルとフリーレンは無言で視線をぶつけ合い、頷き合う。

 

 

 関係が変わった男女二人の初めての共同作業は──

 

 ふざけた発言をするバカ野郎を一旦、黙らせることである。

 

 

 

「ぬわーーっっ!!」

 

 

「自業自得だな」

「治すのは、しばらく痛みが残る程度にした方がいいかもしれませんね」

 

END

 

 

 

 

【余談1】

 

「僕たちの誤解が思ったより解けない……!」

 

 取り決め通り、漫画の内容はフィクションだと新聞を通して発表はされた。

 発表前と比べれば風評被害も減りはしたが、

『秘められた真実だったのが広がりすぎて困るから情報を否定し始めたんだな……』

 のような見方をする者も多く、予想してた程の効力が無かった。

 

 ついでに言うと、ある意味で元凶とも言える教会陣営からの『射精解読は僧侶ハイター考案』という記録は正式なものとして残ったままである。

 

 一度生まれた印象は、そう簡単には消えない。

 

 

 

【余談2】

 

「そういえばさ、フリーレンさん達はいつ頃アウラを倒して仲間にする予定なんだ?」

「何の話……?」

 

 この問いかけからの会話の流れがキッカケで、先の未来でフリーレンはアウラに対して自害ではなく仲間にする命令を出した。

 そうして、オーシュが前世で見たネタ絵のようにアウラがご飯を用意したりミミックにハマるフリーレンに呆れる羽目になるが、まだ先の話である。

 

『アウラ、たまねぎ抜きで夜ご飯を用意しろ』

『好き嫌いはそろそろ克服するべきじゃない……』




【後書き】
オーシュ(オリ主)が
『フリーレン達のエロ&下ネタ冒険譚を無許可で書いた結果』
風評被害が起きて、それが広がりすぎてまだ残っていますが、
ヒンメルとフリーレンが結婚&真の冒険譚を描くインタビューのため等により四人で集まる機会ができる流れに至ったのでハッピーエンドです。


後日談として、オーシュ宅にソリテールが来ます。
オーシュとソリテールの二人がメインです。
オリ主作品なのにオーシュ自体の出番は少なかったし、ヒロインもいなかったので…。
下ネタよりもエロに寄った内容になるので、あくまでもオマケです。


まぁとにかく、この作品の本編を最後まで読んでもらえて何よりです。
『葬送のフリーレン』の二次小説は初めてでしたが、書いていて楽しかったですね。
エタ(更新停止)らず無事に完結できたのも読者のおかげですねー。
評価を入れてくれた方、感想を書いてくれた方、お気に入り登録をしてくれた方、ここすきをしてくれた方、誤字報告で助けてくれた方、アンケートに答えてくれた方等、ありがとうございました。モチベになってました。
メチャクチャ嬉しかったです!
(具体的に言うと、連載中の作者ってマジで何度も作品情報ページやUAページや評価コメントページやここすき表示ページや感想ページ等を見てニヤける。きっと他の作者さんも自作でやってる)


気が向いたら作者の他作品もよろしくお願いします。
この作品より前に投稿した10作品は全て完結済みです。





(風評被害を広める魔法とも言える)

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