STARWARS バクトゥールの地にて   作:バケツ頭 小説もどき家

11 / 13
血塗られた式典#3

『ロイヤル・プリンス』は豪華な内装と料理で有名な高級ホテルだ。ゼント・シティで一番大きい建物というわけではなかったが、そのデザインは洗練されていて、黒く輝くその姿は見る者を魅了した。政治家から成金、ホロドラマ俳優まで、このホテルを利用する客の種類は幅広い。客達はいっときの贅沢の為だけに莫大なクレジットを消費し、スリルと興奮を満たす為にカジノに大金を費やすのだ。

 

「こんな近くまで来たのは初めてだ」

 

 ジャルミクは宝石のように輝くホテルの外観を運転席から眺めた。

 

「お前さんは、本当にあそこで開かれている式典に呼ばれてるのか?」

 

「ええ、そう。遅刻で名簿から名前が削除されてなければだけど」

 

 ファマはそう笑った後、ジャルミクに抱きついた。

 

「今日は送ってくれてありがとう。助かったわ」

 

 少女の様な笑みに透き通った瞳。ジャルミクはファマの心のこもった感謝に笑顔で応えた。 

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「ああ」

 

 ファマは軍服が入ったバックを手に取り、トラクターから降りた。そして運転席の方に周り、ジャルミクを見上げる。

 

「本当にありがとうね。帰りは大丈夫だと思うから心配しないで」

 

「分かった。もし、門前払いを食らったりして迎えが必要になったら、さっき教えたコムリンクの番号にコールしてくれ。しばらくはこの街にいるから」

 

「ええ、分かった」とクスクスと笑うファマ。「そんな事が起こらないよう祈ってて」

 

「分かった」

 

 ファマは軽やかな足取りでホテルの方向へ向かっていった。

 

 小さくなっていく彼女の後ろ姿を、ジャルミクはしばらく目で追っていた。

 

「おい、ここは制限エリアだ。さっさと引き返せ」

 

 侵入者に気がつき、寄ってくるライオットトルーパー。

 

「すぐ出ます!」

 

「急げ、トカゲ野郎」

 

「はいはい、分かってるって……彼女は優しかったが、やっぱりこれが普通の扱いか……」

 

 ぼそりと呟くと、トルーパーが不快そうにヘルメットを傾けた。

 

「何か言ったか」

 

「いや、何でもない」

 

「さっさと出ていけ。ここはお前みたいなのが長居する場所じゃない」

 

「言われなくても分かってるよ」

 

 ジャルミクはため息をつき、エンジンをかける。トラクターは一瞬ぐずついた後、重々しい振動と共に動き出した。

 

 トラクターはゆっくりと、しかし確実にその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 ファマはエントランスを駆け抜けた。ホテルの従業員は殆ど全て式典のパーティーに駆り出されてるようで、彼女を呼び止める者はいなかった。

 

「……完全に遅刻ね」

 

 投影機にホログラムで浮かび上がる時刻。エレベーターに乗り込んだファマは呼吸を整える。

 

 階層レベル25。ファマは扉が開くと、エレベーターから降りた。

 

 今彼女がいる場所は西棟。式典は東棟の大ホールで行われている。

 

 東棟への接続通路の入り口は直ぐに分かった。トルーパーの一団が検問を敷いていたからだ。肩章を装備した指揮官クラスが二人に兵卒が四人。完全武装のストームトルーパーだ。

 

 

 

「……迷ってきたのか?」

 

 ジャケットにブーツ。若い女性がこちらに近づいてくるのを見て、トルーパーの軍曹は呟いた。

 

「ここから先は立ち入り禁止だ」

 

 軍曹が手を前に翳すと、女性は止まった。

 

「式典関係者しかこの先は入れない」

 

「私は関係者」女性は笑った。「招待されてるの」

 

 軍曹は伍長と顔を見合わせる。

 

「……身分証を」

 

 女性は「待って」とジャケットのポケットを弄り「あった!」とデータシリンダーを軍曹に差し出した。

 

 トルーパーは軍曹から手渡されたシリンダーを端末にセットする。その間、軍曹はじっと注意深く女性を見つめていた。

 

「こんなところの警備なんてツイてないわね。私なら退屈で投げ出してる」

 

「軍曹、彼女はファマ少尉。式典の参加者です。通していいかと」

 

 端末のスキャン結果を確認したトルーパーがそう告げた。

 

 軍曹の視線がファマから外される。

 

「確かか?」

 

「はい」

 

 軍曹のヘルメットから、ため息か呼吸か分からぬ音が漏れる。

 

「あー……失礼しました。ファマ少尉。会場はこの先です」

 

「ありがとう」

 

 ファマは軽く頷くと、受け取ったデータシリンダーをポケットにしまい、そのまま検問の間をすり抜けた。

 

 背後でブーツの音が整然と鳴る。

 

「あの小娘が少尉とはな」

「ああ、また客の娘とかが迷い込んできたと思ったぜ」

 

 トルーパー達はファマの後ろ姿を見送った後、任務に戻るのであった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。