STARWARS バクトゥールの地にて 作:バケツ頭 小説もどき家
『ロイヤル・プリンス』は豪華な内装と料理で有名な高級ホテルだ。ゼント・シティで一番大きい建物というわけではなかったが、そのデザインは洗練されていて、黒く輝くその姿は見る者を魅了した。政治家から成金、ホロドラマ俳優まで、このホテルを利用する客の種類は幅広い。客達はいっときの贅沢の為だけに莫大なクレジットを消費し、スリルと興奮を満たす為にカジノに大金を費やすのだ。
「こんな近くまで来たのは初めてだ」
ジャルミクは宝石のように輝くホテルの外観を運転席から眺めた。
「お前さんは、本当にあそこで開かれている式典に呼ばれてるのか?」
「ええ、そう。遅刻で名簿から名前が削除されてなければだけど」
ファマはそう笑った後、ジャルミクに抱きついた。
「今日は送ってくれてありがとう。助かったわ」
少女の様な笑みに透き通った瞳。ジャルミクはファマの心のこもった感謝に笑顔で応えた。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ」
ファマは軍服が入ったバックを手に取り、トラクターから降りた。そして運転席の方に周り、ジャルミクを見上げる。
「本当にありがとうね。帰りは大丈夫だと思うから心配しないで」
「分かった。もし、門前払いを食らったりして迎えが必要になったら、さっき教えたコムリンクの番号にコールしてくれ。しばらくはこの街にいるから」
「ええ、分かった」とクスクスと笑うファマ。「そんな事が起こらないよう祈ってて」
「分かった」
ファマは軽やかな足取りでホテルの方向へ向かっていった。
小さくなっていく彼女の後ろ姿を、ジャルミクはしばらく目で追っていた。
「おい、ここは制限エリアだ。さっさと引き返せ」
侵入者に気がつき、寄ってくるライオットトルーパー。
「すぐ出ます!」
「急げ、トカゲ野郎」
「はいはい、分かってるって……彼女は優しかったが、やっぱりこれが普通の扱いか……」
ぼそりと呟くと、トルーパーが不快そうにヘルメットを傾けた。
「何か言ったか」
「いや、何でもない」
「さっさと出ていけ。ここはお前みたいなのが長居する場所じゃない」
「言われなくても分かってるよ」
ジャルミクはため息をつき、エンジンをかける。トラクターは一瞬ぐずついた後、重々しい振動と共に動き出した。
トラクターはゆっくりと、しかし確実にその場を離れていった。
◇
ファマはエントランスを駆け抜けた。ホテルの従業員は殆ど全て式典のパーティーに駆り出されてるようで、彼女を呼び止める者はいなかった。
「……完全に遅刻ね」
投影機にホログラムで浮かび上がる時刻。エレベーターに乗り込んだファマは呼吸を整える。
階層レベル25。ファマは扉が開くと、エレベーターから降りた。
今彼女がいる場所は西棟。式典は東棟の大ホールで行われている。
東棟への接続通路の入り口は直ぐに分かった。トルーパーの一団が検問を敷いていたからだ。肩章を装備した指揮官クラスが二人に兵卒が四人。完全武装のストームトルーパーだ。
「……迷ってきたのか?」
ジャケットにブーツ。若い女性がこちらに近づいてくるのを見て、トルーパーの軍曹は呟いた。
「ここから先は立ち入り禁止だ」
軍曹が手を前に翳すと、女性は止まった。
「式典関係者しかこの先は入れない」
「私は関係者」女性は笑った。「招待されてるの」
軍曹は伍長と顔を見合わせる。
「……身分証を」
女性は「待って」とジャケットのポケットを弄り「あった!」とデータシリンダーを軍曹に差し出した。
トルーパーは軍曹から手渡されたシリンダーを端末にセットする。その間、軍曹はじっと注意深く女性を見つめていた。
「こんなところの警備なんてツイてないわね。私なら退屈で投げ出してる」
「軍曹、彼女はファマ少尉。式典の参加者です。通していいかと」
端末のスキャン結果を確認したトルーパーがそう告げた。
軍曹の視線がファマから外される。
「確かか?」
「はい」
軍曹のヘルメットから、ため息か呼吸か分からぬ音が漏れる。
「あー……失礼しました。ファマ少尉。会場はこの先です」
「ありがとう」
ファマは軽く頷くと、受け取ったデータシリンダーをポケットにしまい、そのまま検問の間をすり抜けた。
背後でブーツの音が整然と鳴る。
「あの小娘が少尉とはな」
「ああ、また客の娘とかが迷い込んできたと思ったぜ」
トルーパー達はファマの後ろ姿を見送った後、任務に戻るのであった。