STARWARS バクトゥールの地にて   作:バケツ頭 小説もどき家

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「過去は消せぬ。和らぐ事はできても心の葛藤は続く」


プロローグ
#1 過去


 山々に囲まれた大草原のど真ん中にゼント・シティはあった。この自然の中に佇む無機質の塊はタヴィム唯一の宇宙港都市であり、物流の拠点である。衛星全土から集められた鉱石や穀物が宇宙港に集積され、銀河へと輸出されていく。輸入品が各居住地へと出荷されていく。かつてはかなりの産出量を誇ったノヴァ・クリスタルだが今では殆どが枯渇し、輸出品の大半はムジャフルーツやその他の農作物が主だ。タヴィムの大半の若者にとって帝国アカデミーへの入学は衛星(それから親の家業)から抜け出す第一歩であった。帝国軍に入る事が叶えばチャンスを掴めるし、ストームトルーパー兵団への入隊や上位アカデミーへの転学を勝ち取れば、家族に満足なクレジットを仕送りできる。

 

 シティーを巡回する帝国軍の治安部隊は畏怖と憧れの的であった。毎年帝国の日がやってくると、ストームトルーパー一個連隊と支援部隊が街の中を行進し、バクトゥール宙域で行なわれる星系政府軍・在バクトゥール帝国宇宙軍の軍事演習の様子がホロニュースで報じられる。

 

 そして行進の最後尾にはタヴィム帝国アカデミー生らが続く。彼らは親や友人達に拍手を送られながら、訓練の成果を世間に示すのである。

 

 ストームトルーパーが憧れの対象であるのに比べて、帝国軍スカウトトルーパーはさほど若者達に人気がなかった。なぜなら、彼等はどこにでも見かける存在だからだ。田舎道をランドスピーダーや農業用トラクターで走っていると、必ず彼らを見かける。そして大抵の場合、それは“望ましい”出会いではない。少しのスピード違反、些細な違反であってもスカウトトルーパーは見逃さない。銀河を守る帝国軍のエリートと認識されているストームトルーパーとは違い、スカウトトルーパーは多くの田舎民にとってケチな違反を取り締まる警察そのものかその上位部隊といった存在に過ぎなかった。

 

 

 人間の移民の子孫達にとってスカウトトルーパーが厄介な存在なら、原住種族達にとってはそれ以上の存在だった。違反を追及され、罰金を科せられる事はあっても人間達は星から追放されることはないが、彼らは違う。ガイバグにとっては一つの軽犯罪、言いがかりに近いような違反であっても命取りになりうる。下手をすればケッセル行きだ。

 

 ジャルミクはモニターで後ろの様子を見ながら速度を緩める。スピーダーバイクに跨ったスカウトトルーパーの二人組が、ジャルミクが操るトラクターの後方に張り付いていたからだ。ついてこないようにと祈りながら、分かれ道を右折する。

 

 スカウトトルーパーは顔を見合わせると、右に曲がった。

 

 間違いない。目をつけられている。

 

 ジャルミクは観念し、トラクターを停止させた。

 

 ジャルミクが運転をやめると、スカウトトルーパー達は案の定トラクターの後方で停止し、一人が降りてきた。

 

 ダッシュボードから身分情報が入った端末を取り出し、助手席の息子からブラスターのおもちゃを取り上げる。

 

「パパー〜」

 

 パッチリとした瞳に柔らかい鱗。まだ脱皮もしていない幼い息子はE-11ブラスターライフルの玩具を取り上げられると、抗議の声をあげた。

 

「今は我慢しろ、ザルゲル。あとで返すから」

 

 頭を撫でていると、窓がノックされた。

 

 窓越しに立つスカウトトルーパー。ジャルミクは急いで窓を開け、愛想の良い笑顔を浮かべた。

 

 積荷を調べると言い出すのか?

 それともスピード違反をでっち上げられるのか?

 

「エンジン停まっちゃった?」

 

 ジャルミクは身構えつつ、口を開いた。

 

「……え?」

 

「エンジンよ。凄い音を立ててたから、さっきから様子をみていたの」

 

「いや、なんともありません」ジャルミクは安堵と日頃の整備不良に対する自分への呆れがこもった溜息を吐いた。「停まったのは、あなた達に停められるかなと思ったからです。エンジンの故障じゃない」

 

「本当?」

 

「ええ。まぁ、古いのと調子悪いのは確かですが」

 

 ジャルミクは受け答えしながら、助手席の方をちらりと見た。助手席の窓からはもう一人のトルーパーが映り込んでいた。腰のホルスターに納められたライフルに手を添え、じっと車内を見つめている。目の前の女トルーパーとは違って、彼には明らかな警戒心があった。

 

「……まだ故障するほどではないですよ」

 

「そう、ならいいけど……」

 

 女トルーパーは反対側のトルーパーと目を合わせた。

 そしてヘルメットの耳部分に手を当てる。恐らくコムでやりとりしているのだろう。彼女は車内を見つめ、ライフルの玩具を指さした。

 

「そのライフルは何?」

 

「え? ああ、コレですか」

 

 ジャルミクは玩具銃を手にとってトルーパーを驚かすという馬鹿な真似はしなかった。「玩具ですよ、息子のね」と、彼は息子の頭を撫でて愛想よく笑ってみせた。

 

「よこしてくれる?」

 

 ジャルミクは頷き、ライフルに手を伸ばした。

 

「ゆっくりとだ」もう一人のトルーパーが口を開いた。低い声だ。「妙な真似はするな」

 

「わかってますよ」ジャルミクはそう応えると、銃身を掴み、女トルーパーの方にライフルを差し出した。「ほら、ただの玩具ですよ」

 

 ジャルミクはできるだけ穏やかな声で言った。

 

「分かってるわ。確認の為よ」

 

 彼女の声はやわらかかった。ライフルのセレクターや、プラズマセルのカートリッジを触り、それらが動かない事が分かると女トルーパーは仲間にライフルを向けてトリガーを引いた。

 

 「ピュン」という安っぽい電子音。

 

 身を構える仲間に、女トルーパーはクスクスと笑った。

 

「ただのオモチャよ」

 

「……ですね」トルーパーは言った。

 

 短いやりとりの中で、ジャルミクは女トルーパーがもう一人のトルーパーの上官であることを悟った。

 

 女トルーパーは玩具のブラスターをジャルミクに返した。

 

「ごめんなさいね。最近、物騒だから」

 

「お気になさらず」

 

 

 

 その後も特に問題はなかった。女トルーパーは身分証のスキャンを終えると「お金が貯まったらエンジン見てもらったほうがいい」とアドバイスし、ザルゲルに手を振って去っていった。

 

 もう一人のトルーパーは最後までヘルメットをこちらに向けていた。彼の姿勢は微動だにせず、まるで標的を観察する狙撃兵のようだった。

 

 

 ジャルミクは再びトラクターを動かし、西へ向かった。草原地帯を抜けると、巨大な木々が生い茂る森の中へと入った。森の中の道は狭く、岩や草だらけであったが、リパルサーで難なく乗り越えていく。しばらくして倒木の下をくぐると、小さな集落が見えてきた。

 

 デヴァン。森の開けた場所に築かれたこの町はジャルミクの住まいである。木製の家々に、ムジャフルーツの畑。クローン戦争期の避難所が居住地として利用され続けることは珍しくなく、デヴァンもその内の一つであった。

 

 町の外周の巨木の上に建てられた見張り台、倒木の一部を並べたバリケード、砲塔が欠けたAATやバラバラになったバトルドロイド。崩れかけ、自然に還りつつある建造物や残骸が戦争の激しさを今でも伝えている。

 

 ジャルミクは当時を戦い抜いた戦士であった。あの戦争は忘れられない記憶だ。戦争で周りの人間達からの信頼を勝ち取ったが、同じ血の同族からは“裏切り者”と呼ばれるようになった。後悔はしてないが、もうジャルミクは故郷の星に帰れない。永遠に。

 

 

「おかえりなさい」

「ただいま」

 

 何の変哲もない民家。ジャルミクが自宅のドアを開けると、彼の妻アルジャが出迎えた。優しい表情に穏やかな瞳。その表情の変化は人間には殆ど認識できないが、その顔はジャルミクに安らぎをもたらしてくれる。

 故郷に帰られないのはジャルミクだけではない。彼女もあの戦争で決断し、その結果、友と家族を失ったのだ。

 

「ウォッチャーさんが来てるわ」

 

 抱擁を終えると、アルジャが言った。

 

「そうか」短くジャルミクは言った。「いつから?」

 

「あなたが出てからすぐよ。……しばらく帰ってこないって言ったんだけど、あなたが帰るまで待ってるって聞かなくて」

 

「あの人は頑固だからな」と、ジャルミクは表情を緩ませた。人間種で言うところの“かすかな笑み”だ。「アルジャ、迷惑かけて悪いな」

 

「いいのよ」

 

 ザルゲルをアルジャに任せると、ジャルミクは居間に向かった。

 

 バンサの革の絨毯にソファー。冬を越すための暖房機。壁に掛けれた魚の模型。ジャルミク宅の居間は質素ながらもゆったりとしていて、優しい暖色のランプに照らされていた。

 

 ソファーに座りながら投影機に浮かび上がったホログラムを見つめる老いた男。「ウォッチャーさん」ジャルミクが声を掛けると、男は後ろを振り返り、琥珀色の瞳をジャルミクに向けた。

 

「ああ、ジャルミク。遅かったじゃないか」

 

 ウォッチャーは半分程になった酒のボトルを掲げた。ナブー産のワインだ。

 

「すまんが、いただいてるよ。飲んでから言うのはアレだが、開けて良かったかな?」

 

「ええ、いいですよ。いつ開けるか決めかねていたところですから」ジャルミクは棚からグラスを取り出し、ソファーの前のテーブルに置いた。「して、ナブー危機時に詰められたワインの味は?」

 

「悪くない」ウォッチャーはボトルに口をつけた。「少し甘すぎる気もするが」と、ボトルをグラスに傾けた。

 

「どうも」

 

 ジャルミクのグラスに注がれたワインは菓子の食べカスが浮いていた。アルジャが出した焼き菓子か何かだろう。テーブルの脇に置かれた空の皿がそれを裏付けている。

 

「それでウォッチャーさん、前言ってた仕事の件は?」ジャルミクはワインを啜る。「いつから勤務を?」

 

「ああ、あれか……駄目だった」

 

「駄目?」ジャルミクはグラスを置いた。「……どうして? 星系政府軍から内定を貰っていたはずでしょう?」

 

「のはずだったんだかな……急に心変わりしたそうだ。どうやら培養器育ちの老いぼれを教官として雇うつもりはないらしい」

 

「そんな……」

 

「まぁ、いいさ。薄々そんな気がしていたから。それに星系政府軍が帝国軍に吸収されちまったら、どのみち俺はお払い箱になってただろうしな。俺の人生はいつもこうだ。土壇場でうまくいかない」

 

 ウォッチャーは静かに言い、投影機のホログラムを見つめた。

 白い装甲服を着込んだトルーパーと、各々の装備に身を固めた民兵達。そして彼らの前に立ち、控えめな笑みを浮かべているローブ姿の女性ジェダイ。

 ウォッチャーとジャルミクの姿もそこにはあった。

 

「この頃が懐かしい……」

 

 

 

 

 西方に広がる森林地帯の端に、帝国軍基地はあった。

 この灰色の壁に囲まれた小さな前哨ポストは第433偵察中隊の分遣隊が詰めている。AT-STのクルーに整備員、スキャナーや通信機を扱う地上軍、宇宙軍の人員を含めても数十人程度しかいない。

 

 防壁は整備されているとは言い難く、いたるところにツタが伸びている。通信アレイは何とか近隣のアウトポストと通信できるだけの電波強度を維持しているが、木々に遮られているおかげで効率が悪い。反乱軍の秘密拠点としては最適な環境でも、前哨基地を築く場所としては最悪だ。これも上層部が現地を確認せずにホロマップだけを見て基地の設営を指示したせいである。

 

 シャトルがやってくるのは一週間に一度。物資の補給や人員の交代はその時に行なわれる。通信士官やクルーのローテーションは数カ月に一回ときっちりだが、第433偵察中隊の人員は基本的に据え置きだ。お陰で、中隊のスカウトトルーパーは目を瞑っていてもスピーダーバイクを操れるくらい(もちろん比喩である)周辺の地形に慣れていて、ストームトルーパーは変わり映えしない駐屯地内の勤務に辟易している。

 

 黒いカドゥのペイントが描かれた右肩のアーマー。E-11が納められたホルスター。第433偵察中隊第二小隊のスカウトトルーパー達は日夜、スピーダーバイクで付近を巡回し、監視している。

 

 二つの班──ランス。にストームトルーパー一個分隊。分遣隊の指揮官はファマ。彼女は若きスカウトトルーパーであり、アカデミーを卒業した士官だ。

 

 昇降ランプが降り、ファマは座席から立ち上がり、パットへと進んだ。

 

 シャトルから降りた彼女は黒い制服に身を包んでいて、茶色の髪を規定通りにまとめている。白磁のように透き通った肌と黒い制服が良いコントラストだ。スピーダーバイクに座りながら仲間と喋っていたスカウトトルーパー達が軽い敬礼をしてみせると、彼女も砕けた笑みと共に敬礼を返した。

 

 そのすらりとした体と姿勢は帝国軍士官そのものだが、彼女の表情と仕草は士官にしては柔らかかった。

 

「ほら、やっぱり帰ってきた」

 

 そう笑うのはTD-1142セイン。アウターリム出身の彼は当局とのチェイスで腕を見込まれて、軍に入隊したという経歴の持ち主だ。

 

「言ったろ? 少尉はまだ軍を離れないって」

 

 セインの相棒ガデルは頷きながら肩をすくめた。彼の識別番号はTK-1366。彼の生まれはコアワールドで、セインとは生まれも環境も違うが、気の合う戦友としてうまくやっている。

 

「軍を離れる?」ファマは笑った。「どうして私が軍を離れるって思ったの?」

 

「そりゃ──」

 

「結婚して軍を辞めるって予想してたんですよ」

 

 セインの言葉をリマが遮った。

 MB-3114。彼女はファマと同じく、偵察中隊のなかで数少ない女性の一人であると共に、冷静な狙撃手でもある。ホルスターの代わりにブーツに括り付けられた振動ブレードが特徴的だ。

 

「今回の休暇も結婚式だろうって」E-11sを空に向けてスコープを覗くと、リマは舌打ちした。「……新しいスコープがいる」

 

「残念ながら、結婚も退役もまだよ。それに結婚したって軍は辞めたりしないわ」

 

「どうして? 彼の稼ぎだけじゃ心配?」と、セイン。

 

「確か賞金稼ぎでしたよね?」と、ガデル。

 

「そう、対犯罪者専門のね。さて、この話はおしまい。軍曹はどこ?」

 

「さぁ? 退役したのでは?」ガデルが言った。

 

「うぉぉ、ハハッ!」

 

 笑い合うセインとガデル。「笑えない」ファマは腰に手を当てた。

 

「軍曹なら、医療ルームです」リマが答えた。

 

「え……何処か怪我したの?」ファマは心配そうに眉をひそめた。

 

「ええ、スピーダーバイクから突然落ちたんです。医療班の指示でベッド送りに」

 

「そう……」

 

 

 

 

『行け! 行け! 敵は引いている!』

 

『ブリキ野郎共をスクラップにしてやれ!』

 

 青と赤の光弾が飛び交う戦場。バトルドロイドと分離主義派の戦列はクローン軍の突撃によって押され、上空ではヴェネター級が独立星系連合の艦船に集中砲火を浴びせている。

 

 周りを見渡す一人のクローン。「……一体」

 

『スピード!』

 

 混乱する頭の中に女性の声が入ってきた。クローンは顔を前に向ける。   

 

 ローブを羽織った若い女性。ブロンドの女ジェダイは青いライトセーバーを右手に持ち、クローンを手で招く。

 

『ついてきて! 勝利はもうすぐよ!』

 

「……はい!」クローンは叫んだ。「将軍!」

 

 クローンは仲間と共にブラスターカービンを乱射し、ジェダイに続く。

 

 先頭を進む女ジェダイは敵の光弾をライトセーバーで弾き、クローンが撃ち漏らしたドロイドを斬っていく。

 

 炸裂するEMPグレネード。手を挙げて陣地から出てくる分離主義派民兵。何発も直撃弾を食らって無力化されるAAT。

 

 共和国軍の攻勢は凄まじく、勝利は目前だった。

 

『16! 16だ! 相棒!』

 

 カートリッジを交換しながら隣のクローンが言う。

 

『16体もドロイドをスクラップにしてやったぜ! お前は──』

 

 突然の爆発。電子パルスの音とクローンの悲鳴が重なった。

 

「クソッ! どこ狙ってやがる!?」クローンは叫ぶと、倒れた味方に近寄った。「大丈夫か? ウォッチャー!」

 

『ああ……何ともない』上半身を起こされたクローンは頭を叩いた。『耳がキーンとする……』

 

「ハハッ! 立て、兄弟!」

 

 ゆらゆらと立つ味方を手伝い、戦線に戻るクローン。

 

 二人はジェダイを追いかけ、前を進む。 

 

 

『将軍、ナルシス伯爵が降伏しました。我が軍の勝利です』

 

 女ジェダイは青い将校のホログラムから前へと視線を変える。バトルドロイドと分離主義派の民兵隊は発砲を止め、戦場は静かになった。

 

『そのようね』ジェダイはライトセーバーを停止させ、後ろを振り向いた。『勝利よ!』

 

『バクトゥール万歳!』

『共和国万歳!』

 

 クローン軍とバクトゥール星系防衛軍の歓声が混じる。

 

「勝ったぞ! 共和国の勝利だ!」

 

 カービンを掲げて喜ぶクローン。そんな時、ヘルメットのコムが反応する。

 

『こちら司令部。オーダー66が発令された。直ちに実行せよ』

 

「……了解」

 

『提督? グラードス提督? 聞こえる?』

 

 無防備なジェダイの背中。

 高鳴る心臓。

 

 クローンは周りの仲間と顔を見合わせる。

 頷く味方。

 

『俺たちの勝利だ!』 

 

 オーダーを無視して喜ぶ相棒など気にならなかった。

 

 無情にカービンを構え、ジェダイを狙う。

 

『スピード、悪いんだけど、あなたのコムリンクを──』

 

 自分に向けられた銃口にハッとするジェダイ。『何の真似?』それは戸惑いの笑みだった。何も知らない少女のような。『スピー──』

 

 カービンの連続した射撃音。ジェダイは咄嗟にライトセーバーを起動し、それらを防ぐ。はじき返された光弾は全て明後日の方向に飛んでいった。

 

『よせ! 何やってる!?』

 

 自分に掴みかかる相棒。クローンは彼を振りほどき、射撃を続行する。

 

 一発、二発。

 足と手に光弾を食らったジェダイは体勢を崩し、スピードを見上げる。

 

『……どうして』

 

 カチャ。

 

 クローンはジェダイの頭に向けてカービンを構えた。

 

 

 ──どうして……。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 老クローンは目を開けた。

 

 白い照明、医療機器の機械音。意識が現実へと戻ってきた。 

「また悪夢か……クッ」

 

 ゆっくりと体を起こそうとしたが、鈍い痛みが背中を貫く。肩の古傷が軋む。

 

 その時、医務室のドアが静かに開いた。

 

「軍曹」

 

 柔らかな声が響いた。

 入ってきたのは若い女性士官──ファマだった。いつもの黒い体温調節スーツと白い軽アーマーではなく、軍帽を被り、制服を着ている、

 

「……少尉。もう帰ってきたんですか? 休暇は四日間の予定では」

 

「もう、四日経ったの。今日戻ってきたところよ」ファマは微笑んだ。「寝すぎて時間の感覚が分からなくなったみたいね」

 

「……かもしれません」

 

 老クローンは起き上がろうとした。しかし、体の痛みがそれを拒否する。

 

「安静にしていて。無理しないように」

 

「無理はしてませんよ」老クローンは言った。「じっとしてる方が無理をしてるってもんです」

 

 

 

「いつ復帰できるか医療班から聞きました?」

 

「いいえ、まだよ。だけどベッドから起き上がれるようになったら、どうせあなたは医療班の意見なんて聞かずに復帰するでしょ?」

 

「ええ、もちろん」

 

「だから敢えて聞いてないの。復帰以前に退役を勧められたら気の毒だから」

 

 彼女はくすりと笑う。その笑いは、どこか懐かしい響きがあった。

 

 

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