コードギアスを一期でハッピーエンドにしてみた   作:三ツ石 冷夏

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第二章 再会の契約

古びたアパートの一室に、灯りがひとつ。

ブリタニア軍の監視を避けるため、シャーリーは郊外の隠れ家を借りていた。

ルルーシュはその狭い部屋の片隅で、ようやく深く息をついた。

数日ぶりに手にした温かいスープの湯気が、ようやく現実を思い出させてくれる。

 

(……この温もりを、俺は何度失いかけたんだ)

 

シャーリーは静かに彼の前に座った。

瞳の奥にはまだ不安があったが、その手つきはどこか穏やかだった。

 

「ねぇ、ルルーシュ。あなた、これからどうするの」

 

「どうするも何も……もう居場所なんてない。黒の騎士団も壊滅した。C.C.とも連絡が取れない」

 

「それでも、あなたは“ゼロ”でしょ。誰もいなくても、動ける人じゃない」

 

その声は震えていたが、確かな信頼があった。

ルルーシュは返事の代わりにカップを置き、薄く笑った。

 

「俺がゼロでいる限り、誰かが傷つく。もう、そんな力はいらない。……ナナリーを取り戻すまでは」

 

彼の言葉に、シャーリーは小さく頷いた。

沈黙が訪れる。

窓の外では、雨が細く降り始めていた。

 

(ああ、雨の音……懐かしい。学園の頃、放課後に聞いた雨と同じ音だ)

 

シャーリーはその雨音に耳を澄ませながら、呟くように言った。

「ねぇ……ルルーシュは、“普通の幸せ”が欲しいって思ったことある?」

 

「普通の……?」

 

彼は少し考え、視線を床に落とす。

「そんなもの、俺には似合わない。世界を憎んで、壊そうとした人間だ」

 

「そういうの、理由にしちゃダメだよ」

 

シャーリーの声が少しだけ強くなった。

「だって、私が欲しいのは“ゼロ”じゃなくて、“ルルーシュ”なんだから」

 

その一言に、胸の奥が軋んだ。

何よりも重い言葉だった。

彼女はゼロの正体を知ったうえで、それでも“ルルーシュ”を見てくれている。

 

(こんな俺を、まだ見てくれるのか)

 

その時、ドアが軽く軋んだ。

ルルーシュが反射的に立ち上がる。

外から微かな気配――見覚えのある気配。

 

「……C.C.か」

 

扉が静かに開くと、緑の髪が雨に濡れて光っていた。

少女は無表情のまま室内を見回し、ルルーシュに視線を止める。

 

「久しいな、ルルーシュ。随分と“人間らしい顔”をしているじゃないか」

 

「C.C.……どこにいた」

 

「お前の作った瓦礫の下だ。まったく、手間をかけさせる」

 

皮肉混じりの声に、ルルーシュは思わず笑った。

「生きていたか。それだけで充分だ」

 

C.C.は濡れたコートを脱ぎ、部屋の隅に掛けた。

シャーリーを一瞥し、軽く首を傾げる。

「……ほう。隠れ家を貸してくれるとは、ずいぶん優しい娘だな」

 

「えっと……あなたが、C.C.さん?」

 

「そうだ。ルルーシュの“契約者”だ」

 

その言葉に、シャーリーは少し驚いたように目を瞬かせた。

ルルーシュが慌てて口を開く。

 

「C.C.、変な誤解を与えるな」

 

「事実を言ったまでだ。契約とは、運命を分け合うことだろう?」

 

C.C.の声は淡々としていたが、どこかに微かな寂しさが滲んでいた。

雨音が強くなり、部屋の灯が揺れる。

 

「……ルルーシュ。ギアスの制御法がわかった」

 

その言葉に、ルルーシュは顔を上げる。

「制御法……?」

 

「ギアスを“閉じる”儀式がある。だが、そのためには『人の心』を媒介にしなければならない。お前ひとりでは不可能だ」

 

「人の心……?」

 

C.C.は静かに視線をシャーリーに向けた。

「彼女だ。お前の“原点”を思い出させる存在」

 

シャーリーは驚きながらも、逃げなかった。

その瞳の奥に宿る決意を見て、ルルーシュは息を呑む。

 

「……シャーリー、お前は……」

 

「やるよ。ルルーシュが“力”よりも“心”を選べるなら、私、手伝う」

 

その真っ直ぐな声に、C.C.は小さく笑みを浮かべた。

「決まりだな。今夜から、“人に戻る契約”を始めよう」

 

雨がさらに激しくなり、窓を叩く音が響く。

ルルーシュはその音を聞きながら、胸の奥で何かが解けていくのを感じた。

 

(あの日、憎しみで始まった俺の戦いは、ここで終わるのかもしれない)

 

C.C.が静かに言う。

「ルルーシュ。『ギアス』は“孤独の力”だ。だが、愛を知ればその力は眠る。

 ――さぁ、お前はどちらを選ぶ」

 

ルルーシュは、シャーリーの手を取った。

その瞳はもう迷っていなかった。

 

「……俺は、愛を選ぶ」

 

C.C.の瞳に一瞬、光が宿る。

まるで何かが終わり、そして始まるような、静かな光だった。

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