コードギアスを一期でハッピーエンドにしてみた   作:三ツ石 冷夏

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ナナリーの独白:光の庭で

 兄さまが笑うと、風まで優しくなる。

 それが、わたしがこの世界で一番好きな瞬間。

 

 昔はね、兄さまが笑うたびに、心のどこかが痛かったの。

 それは、あの笑顔の裏にある『痛み』が、わたしにも見えていたから。

 誰かを守るために、誰かを傷つけていた兄さまの背中を、ずっと見ていた。

 

 でも今は違う。

 今、兄さまは……本当に、誰も傷つけずに笑っている。

 

(ようやく……本当の意味で“世界”を救ったんだね、兄さま)

 

 庭に咲いた小さな花を撫でる。

 この花は、兄さまがシャーリーさんと一緒に植えたもの。

 まだ蕾だけど、あと少しで咲きそう。

 少し不器用な兄さまが、手を泥だらけにして植えていた姿を思い出すと、自然と笑みがこぼれる。

 

「兄さま、手が汚れちゃいましたよ」

 そう言ったわたしに、兄さまは照れたように笑った。

 その笑顔が、あまりにも普通で、あまりにも人間らしくて――涙が出そうになった。

 

(この人は、ずっと『世界』と戦ってきた。

 神にも、運命にも、そして自分自身にも。

 なのに、今の兄さまは『人』として、ここに立っている)

 

 遠くでシャーリーさんの声がする。

 兄さまと話している声が、風にのって聞こえてくる。

 穏やかで、どこか照れくさそうで……ああ、兄さまはもう“ゼロ”じゃない。

 彼はもう、『ただのルルーシュ』なんだ。

 

 わたしは、そのことが嬉しくてたまらない。

 

(ずっと願ってたの。兄さまが“幸せ”であってほしいって)

(わたしを守るためじゃなく、自分自身のために生きてほしいって)

 

 ユーフェミアさんとも和解できて、世界は少しずつ形を変えていく。

 ブリタニアと日本の間に立つ壁も、もうかつてのように冷たくはない。

 戦いの果てに残ったのは、『復讐』じゃなく、『未来』だった。

 

 兄さまはもう剣を握らない。

 その代わり、花を植え、笑い合い、時々紅茶を淹れる。

 わたしにとって、その姿こそが『王の証』だと思う。

 

(兄さま。あなたはきっと、もう“罪”を背負わなくていい)

(だって、あなたが築いたこの平和は――たしかに、本物だから)

 

 夕日が沈み始める。

 オレンジ色の光が、兄さまとシャーリーさんの肩を優しく包みこむ。

 わたしはその光景を見つめながら、小さく呟いた。

 

「おめでとう、兄さま。ようやく、あなたは“世界”を取り戻したね」

 

 その声は風に溶けて、二人のもとへと届いた。

 シャーリーさんがこちらを振り向いて手を振る。

 兄さまも、それに気づいて笑った。

 

 あの笑顔を見られるなら、もう何もいらない。

 

(ありがとう、兄さま。あなたの“革命”の果てに、こんな穏やかな時間があるなんて――)

 

 ナナリーはそっと目を閉じ、心の中で祈った。

 この光が、永遠に続きますようにと。

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