コードギアスを一期でハッピーエンドにしてみた   作:三ツ石 冷夏

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ユーフェミアの独白:白き約束

 新しい特区の朝は、いつも静かに始まる。

 窓の外で響く子どもたちの声。

 ブリタニアの兵士も、日本の警備隊も、もう互いに銃を向けていない。

 

 ――信じられないことね。

 ユーフェミアは、胸に手を当てて微笑んだ。

 この光景を夢見て、何度夜を越えてきたのだろう。

 

(戦わないで、誰かを守ることはできないのか)

(あの時、わたしが選んだ理想は間違いじゃなかった)

 

 彼女は机の上に置かれた報告書に目を通す。

 再建中の学園、復興支援、食糧政策――それらの中に、一つの手紙が挟まっていた。

 

 ルルーシュの筆跡。

 

『特区の初期案、素晴らしい内容だ。だが、民の信頼は時間でしか築けない。焦らずにいけ。

 それと、ナナリーが花を咲かせたら報告する。

 あの庭の花は、君が最初に語った“平和の色”に似ている。』

 

 ユーフェミアは、そっと唇を震わせた。

「……本当に、優しいのね。あなたは」

 

(わたしを撃たなかった。あの日、あなたは――)

 

 あの夜の記憶が蘇る。

 引き金が引かれる寸前、ルルーシュの指先が震え、銃口が下を向いた。

 彼の瞳に映っていたのは、『涙』だった。

 

 それがすべてを変えた。

 その一瞬の迷いが、世界を救ったのだ。

 

 彼はその後、全ての責任を背負い、自らを悪として描いた。

 だが、ユーフェミアは知っている。

 ルルーシュが望んだのは支配ではなく、『赦しの形』だったと。

 

(あの人は、罪を犯しても、いつも人を信じていた。

 どれほど世界に拒まれても、愛を手放さなかった)

 

 ユーフェミアは机から立ち上がり、窓の外を見た。

 遠くの空に浮かぶ雲が、薄い金色に染まっていく。

 その下に、彼がいる。

 シャーリーと、ナナリーと共に暮らす小さな家。

 

「ルルーシュ……あなたはもう“王”である必要なんてないの」

「あなたが笑ってくれるだけで、この世界はもう救われているのだから」

 

 彼の不器用な手で植えられた花の報告を思い出す。

 『平和の色』――彼がそう呼んだ薄桃色の花。

 ユーフェミアは自分の胸に小さく手を当てて、呟いた。

 

(その色は、わたしの“願い”の色よ)

(血ではなく、涙でもなく、優しさの記憶として残ってほしい)

 

 彼女は静かに微笑むと、窓を開けた。

 柔らかな風が頬を撫で、髪を揺らす。

 遠くの空気の匂いが、どこか懐かしい。

 

「いつか、また会いましょう。戦場ではなく――光の中で」

 

 その言葉を風に乗せ、ユーフェミアは空を見上げた。

 雲の向こうに広がる青。

 それは、彼がかつて夢見た『自由の色』だった。

 

(ねえ、ルルーシュ。

 あなたが選んだ“革命”の果てに、この世界がある。

 だから、もう悲しまないで。あなたの罪は、もう赦されたの)

 

 その思いが届いたかのように、風が強く吹き抜けた。

 カーテンが舞い上がり、光が部屋いっぱいに広がる。

 ユーフェミアは目を閉じ、静かに息を吐いた。

 

(この世界は、まだ壊れていない。

 あなたが残した“愛”が、ちゃんと生きているから)

 

 彼女の唇に、穏やかな微笑みが浮かんだ。

 

 ――そして、遠くの庭で。

 同じ風が、ルルーシュたちのもとにも届いていた。

 花弁が舞い、ナナリーが手を伸ばす。

 その隣で、ルルーシュが空を見上げる。

 

 どこかで誰かが、確かに笑っている。

 その笑顔があれば、この世界はまだ救われている。

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