リアル人狼ゲーム   作:七瀬ぴの

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改良版です!
ちなみに
人狼 4(人)
狂人 1
サイコキラー 1
妖狐 1
占い師 2
霊媒師 2
騎士 1
市民 残りの人
って感じでいます。並び順に特に意味はないです。


第二話 死の連鎖

――夜が、来た。

 館全体が息を潜めたように静まり返っている。

 壁掛けの時計が、規則的に時を刻む音だけが響いていた。

 チッ、チッ、チッ。

 オレはベッドの上で天井を見つめていた。

 シャンデリアの光は落とされ、今は小さなランプの明かりだけが室内を照らしている。

 ピアノの鍵盤が月明かりを受けて淡く光っていた。

 昼間の温かな空気が嘘みたいに冷たい。

 「……眠れるわけ、ないか。」

 オレは軽くため息をついた。

 “リアル人狼ゲーム”――そう名乗った声の言葉が、何度も頭を回る。

 咲希の顔が浮かんだ。えむの笑顔、寧々の無表情、類の冷静な目。

 みんな、今どんな顔でこの夜を迎えてるんだろう。

 その時、館のどこかで――床が軋んだ音がした。

 ギ……ッ。

 息が止まる。

 誰かの足音。

 ゆっくり、ゆっくりと廊下を歩くような、湿った足音。

 (……人狼が、動いてるのか?)

 オレはベッドから身を起こし、扉の方を見た。

 心臓の鼓動がうるさい。

 ドクン、ドクンと響いて、自分の呼吸さえ聞こえなくなる。

 けれど、足音は……オレの部屋の前を、通り過ぎていった。

 遠ざかっていく。

 音が小さくなり、やがて完全に消えた。

 オレは小さく息を吐いた。

 「……誰も、襲われなければいいけどな。」

 そう呟きながら、ランプの光を落とす。

 暗闇の中で、まぶたがゆっくりと重くなっていった。

 

 

 

 

人狼視点

「今夜は...誰を殺すのか??」

 温かみがなく冷たい低音が部屋中に響き渡る。

「・・・」

 返ってきたのは沈黙。そりゃあ当然か...。(一人称)だってこんなことはしたくない。

「誰も殺さない方法ってあるのかな?今日...(一人称)たちが誰も殺さなければ...。」

 か細い声がスマホ越しに聞こえる。そう(一人称)たち人狼は毎晩スマホで通話するのだ。そこで誰が誰を殺すか決める。最悪だろう?

「そうだね...。そうすれば全員生き残れるかもしれない...」

 冷静な声だ。少しためらいがちに  は答えた。

「じゃあ...。」

 ほんの少しの希望を見出したのか声のトーンが上がる。

「だが...その可能性は極めて低い。彼女のことだ。もし(一人称)が今夜誰も殺さなければ(一人称)たちが殺されるかもしれない...いやそれ以上にこの場にいる全員を殺すかもしれない...。」

 ほう。なかなかの洞察力ではないか  。意外だねぇ。

「行動には十分に注意しろってことだよね...。」

 自分たちが死と対面していることが再び伝わってくる。みんなの声が絶望の色に染まる。

「それをふまえて...だ。誰を...」

 (一人称)はそこまで言って言いかけた言葉をぐっと飲んだ。これ以上言ってしまうと...。

「じゃあ  はどうですか?」

   。どうしてかはよくわからないがよっぽどの恨みでもあるのだろうか?

そんなはずはないか...。ただ自分の仲間を殺したくなかっただけなのだろう。

「  。  。」

 その名に絶望する人が一人。

「   。あ、そっか。ごめんね...。」

   が少し申し訳なさそうに言う。

「・・・  が死んじゃうのは嫌だ!嫌だけど...。全員が死んじゃうほうがもっといやだ!だから  を...」

 決意したかのように思い切って言った言葉が途切れ途切れになる。仲間が死ぬなんて嫌だろうな...。(一人称)だってもし  や  を襲撃しようと言われたら...。

 ずっと独りだった(一人称)を助けてくれた誰よりも大好きな仲間たち。

 殺せるわけ...ないよね。

「じゃあ(一人称)が殺してくるね...。」

 早くも  の死を悲しむ  にそっと声をかけた。

「待ってください。  。(一人称)が殺してきますっ!」

「!?!?」

 君は...友達の死を楽しんでるのかい?

 そう問いたかったけど...きっと  の最期を見届けたい。  に今までの感謝を伝えたい。

 あまりの声のトーンの高さに驚いたけどきっと...

そういう純粋な気持ちだろう...。

「じゃあ  。頑張れ...。しっかりと  の最期を見届けてこい...。」

 今にも消え入りそうな震えた声で  はそう言った。強気な口調には相応しくない声だった。

 

 

 

???視点

薄暗い部屋。ランプの光がかすかに揺れる。

 私は布団に丸まったまま、息を潜める。

 手が震え、指先が冷たくなる。

「……いや、いやぁ……」

 小さく呟きながら、毛布をぎゅっと抱き締める。

 目を閉じても、恐怖は消えない。

 耳を澄ませば、廊下から微かに足音が聞こえる。

 ――ゆっくり、確かに、誰かが近づいてくる。

 布団の隙間から、白い壁と床の色を確認する。

 手が汗で湿り、握った毛布がずしりと重く感じる。

 息が浅くなり、心臓が耳の奥で鳴る。

 ――ドアが、わずかに軋む。

 私の体が硬直する。

 「や、やめて……っ!」

 声は震え、涙が頬を伝った。

 闇の中に、赤い光が一瞬ちらりと揺れる。

 ――目が合った、と思った瞬間、恐怖が全身を貫いた。

 

その瞬間、扉の向こうで“ノック音”がした。

 ――コン、コン。

 心臓が止まる。

 誰も、来るはずがない。

 「……だ、誰?」

 答えはない。

 再び、“コン、コン、コン”――。

 少しずつ速く、強くなる。

 「やめて……! やめてよっ!」

 叫びと同時に、扉の鍵が音を立てて外れた。

 ――ガチャ。

 闇の中から、何かが“覗いた”。

 光の届かないその奥で、笑うような声が、確かに聞こえた。

 「……見つけた。」

 その瞬間、部屋が闇に飲まれた

 

 冷たい空気が部屋に流れ込む。

 私は布団をさらに頭まで引き上げ、必死に身を隠す。

「いや……いやぁ……やめて……」

 低く、濁った息遣いが近づく。

 何かが壁に触れる。

 布団を持つ手に力が入らない。

 爪を立てても、逃げられない。

 ――そして、鋭い痛み。

 背中に何かが刺さるような感触。

 熱い衝撃が走り、体が前に倒れそうになる。

 布団の下で、手が震え、床に手をつく。

 「ひっ……あぁ……」

 声が途切れ、喉が痛む。

 冷たい刃が、胸を貫いたような――。

 私は必死に逃げようと体を起こすが、力が入らない。

 視界が赤く滲み、足元がぐらりと揺れる。

 息が詰まり、頭がくらくらとする。

 ――何も見えない。

 ただ、手のひらに広がる熱と、背中に残る冷たさだけが現実を告げる。

 涙が頬を伝い、布団に赤い点を落とす。

 「だ……だれ……」

 声がかすれ、響きが消える。

 足音は部屋を出ていった。

 重く、確実に、静かに。

 私は床に横たわり、体を抱えたまま天井を見上げる。

 ――冷たい光の下、次第に意識が薄れていく。

 最後に、微かに心の中で呟く。

「ごめんね……みんな……私はアイドル失格よ......」

 その声は誰にも届かず、ただ部屋に残り、空気に溶けて消えた。

 

 

占い師視点

「  が占い師なんだね...。ま、いっか。じゃあ今夜は誰を占う?」

 やっぱりまだ慣れない機械音で(一人称)に問いかける。

「だ...誰を占おうかな?」

 私は考える。どうせなら同じグループの人がいいし...。今のところ怪しいって人はいないから...適当に...。いやそれじゃダメか...。適当はよくない。もっと考えないと...。大事な役割を持っているのに...。

って私...何考えてるんだろう?いつも通りの力を発揮できないというか...。

握る拳には力が全く入らない。緊張で足が不規則にぴくぴくと震える。

「じゃ...じゃあ  で...。」

「  。わかった。  は白だよ...。」

 白...。その言葉を聞いた瞬間、言葉に言い表せないような安堵に包み込まれた。

「よ...よかったぁ。」

 安心したあまりベッドに倒れ込む。

 だけどさっきの感情のないはずの機械音には少し不気味な笑みが混ざっていたようだった。

 

 

「もう一人の占い師は  か...。じゃあ  ...。」

 なんか嫌な音。正直耳障りだ。あまり聞きたくない。私は彼女の言葉をさえぎる。

「  。職業は?」

 会話をしたくない...。極度の緊張により今は自分を落ち着かせるのが精一杯だ。

「白。あんまり会話をしたくなさそうだからもう帰るね...。」

 少しだけ寂しそうな声をしてそう言った。

   。白か。一番  が顔に出にくそうだから選んでみたけど...よかった...。

ふぅ〜っと息をはきだして(一人称)はいつもと違って綺麗に片付いた部屋の綺麗なイスに座った。

 

 

 

 

 目が覚めると、ホールは朝の光に包まれていた。

 天井の光源は柔らかく、白い光がゆっくりと床を撫でている。

 昼と違って、空気はひんやりとしていて、静かだ。

みんなの顔は強ばっていて、昨日の柔らかな光の残り香もどこか冷たく感じる。

「……桃井愛莉、いない」

 オレが小さく呟くと、周囲の空気が一瞬で凍りついた。

 咲希が駆け寄り、赤い瞳を大きく見開いてオレを見上げる。

「え……お兄ちゃん、本当にいないの?」

 声は明るさを保とうとしているけれど、やっぱり無理だ。この状況に置かれているからだろうか...。

 絵名さんもすぐに周囲を見渡し、軽く震える声で呟いた。

「……まさか、愛莉が……」

 絵名は顔を伏せ、手で口元を押さえて必死に涙をこらえている。

 オレはその横に立ち、胸が締めつけられるような感覚を覚えた。

「誰か……確認して……」

 志歩が静かに言う。

 オレは自分の部屋と同じように、恐る恐る桃井愛莉の部屋へ案内されるようにして入った。

 ドアを押し開けた瞬間、鼻を刺すような匂いが襲った。

 ツーンとした、鉄のような、鮮烈な血の匂い。

 それは昨日の温かい昼食の香りとは真逆で、部屋全体を支配していた。

 布団の上には、微動だにしない桃井愛莉。

 眠っているわけではない――その静けさは、あまりにも冷たく、硬く、生命を失った証だった。

 頬を伝う涙の温もりと、鼻を突く冷たい血の匂いが、胸をぎゅっと締めつける。

 まるでこの世界の空気そのものが凍りついたかのようだった。

 手を伸ばすと、指先に感じる温度の低さ。

 柔らかくて暖かいはずの体は、すでに冷え切り、命の熱は消えていた。

 花里は布団の端に膝をつき、そっと手を伸ばす。

「愛莉ちゃん……ごめんね……」

 小さな声が震え、涙が頬を伝う。

 咲希も駆け寄り、布団をそっと握る。

「うそ……だよね、愛莉先輩……起きてよ……」

 小さな手は震えていて、でも必死に明るさを保とうとしている。

 絵名さんは泣き崩れ、顔を布団に押し付ける。

「なんで……なんで……大切な友達なのに……」

 雫は少し離れて立ち、腕を組んだまま低く呟く。

「……愛莉ちゃん、風邪ひいちゃうわよ。こんなところで寝ちゃったら……ね」

 信じたくない現実を拒むように、少しだけ強い口調で言う。

 類は壁際に立ち、静かに視線を落とす。

「……誰も責められない……でも、現実は、現実だ」

 遥は微かに視線を巡らせ、静かに言った。

「……これからも、愛莉に夢を託されたと思って…生きていかなくちゃ…」

 オレは拳を握りしめ、胸の奥に冷たい痛みを感じながらも、深呼吸をする。

(……何があっても、守らなきゃ……)

 桃井愛莉の命がもう戻らないことを、心のどこかで受け入れざるを得なかった。

 しばらくの沈黙の後、ホールに静かな囁きが広がる。

 それは悲しみ、動揺、そして恐怖の混ざった声だった。

 

昼の光がホールにゆっくりと注ぎ込み、白く柔らかな影を床に落としていた。だがオレの胸は、愛莉の部屋で嗅いだあのツーンと鼻を突く血の匂いでいっぱいだった。

「……信じられない」

オレは拳を握りしめ、指の骨が軋むのを感じながら立ち尽くす。愛莉の姿が、まだ目に焼き付いて離れない。ベッドの上で横たわる彼女の体、血の色に染まった白いシーツ、微かに開いた瞳。全身の力が抜けて、足元の床が波打つように感じられた。

ホールに集まった全員の表情は、言葉にならない恐怖と悲しみに覆われていた。誰もが唇を噛み締め、目を逸らさずにはいられない。絵名は顔を覆い嗚咽し、雫は拳を握ったまま体を震わせる。

「愛莉……」

オレの声はほとんど出なかった。絵名の涙は止まらず、彼女の目には絶望と喪失の色が濃く滲んでいた。

咲希は、胸の奥に深い衝撃を抱えながらも、わずかに肩を震わせて必死に耐えている。みのりがそっと呟く。

「……これ以上、誰も失いたくないよね」

遥も静かに頷き、言葉を添えた。

オレはその場に立ち尽くすしかなかった。鼻腔を突く血の匂い、視界にちらつく赤い液体、床に広がる暗い影――そのすべてが、胸の奥を抉るように痛む。遠くで金属がかすかに軋む音が聞こえる。志歩の呼吸、えむの小さな震え、誰もが恐怖と悲しみで押し潰されそうになっている。

突然、スクリーンが明滅した。例の冷たい声が響く。

「さあ、議論を始めましょう」

オレたちは言葉を失い、恐る恐る互いを見た。愛莉の死は、全員の胸に重くのしかかる。誰もが次に自分が同じ目に遭うのではないかと震えていた。

議論はすぐに始まった。声は震え、言葉は途切れ途切れになる。オレも口を開けることができず、ただ見守るだけだった。

「と、とりあえずえぇっと順番にCOしていかない?」

穂波が声を震わせて言った。

「じゃあまずは占い師だね...。占い師の人...手を挙げてもらってもいいかな?」

 朝比奈さんは優しく微笑む。だけどその顔も少し青っぽくなっていた。

「はいっ!!」

 オレは驚いた。だって占い師は二人のはずなのに今...三人の声が混ざっていたような気がして...。

「えぇっと?どういう状況?なんで占い師が三人いるの?」

 絵名さんが声を震わせてそう言った。

 手を挙げたのは桐谷、宵崎さん、そして暁山だった。

「・・・。この中に人狼陣営が一人いるっていうことだろうね。」

 類は冷静に、手短かに話した。

「そっか...。この三人の中に...。」

 雫がぽつりとつぶやく。友達に人狼が...裏切り者がいるなんて考えたくもないよな...。

「まぁまぁ。みんな落ち着いて。ボクは絵名を占って白ってでたよ!」

 暁山は先程までの沈黙を破るように軽い口調で話した。

「ありがと。瑞希」

 絵名さんが言う。絵名さんはひとまず白ってことでいいのか?

いや。暁山が狂人とか人狼で絵名さんが人狼とかでグルっていう可能性もある。

ただまぁひとまずはでいいだろう。暁山が人狼陣営だと確定したわけではないからな。

「私は雫。白。」

 いつもと違って淡々とした口調でそう話す桐谷からは負のオーラがにじみ出ていた。

「まふゆが白だった...。」

 宵崎さんも桐谷に続けて言う。

「じゃあ絵名さんと日野森さんと朝比奈さんが白ってことですね...。」

 寧々が落ち着いた声で言ったが、でも少し焦っているような声にもオレは思えた。

「じゃあ次に霊媒師の人...。」

「はいは~いっ!」

 えむがまるで恐怖を和らげるように元気な声でそう言った。

「わ、私も...。」

 続いて小豆沢が手を挙げた。

「じゃあここは確定ってことでいいのかな?」

 類が言う。こういう時に本当に頼りになる男だ。冷静に推理できて...オレと違って頭が良くて...。

「次は騎士...」

「ちょっと待ってくださいっ!」

 類が言いかけていたところを慌てて冬弥が塞ぐ。

「騎士の人は...今出てきたら人狼に狙われませんか?」

「...うん。そうだね。騎士にはしばらくCOしないでもらおうか。」

 類は少し間をあけてから難しい顔をしてそう言った。

「盛り上がってきているところ、悪いけどそろそろ議論はおしまいだよ。」

 天井の方から再び声が聞こえた。

「早速投票のほうに移そうか」

 彼女がそう言った時、オレたちの手にはいつの間にかスマホが乗っていた。

「それで投票したい人の名前をクリックしてね。」

 微かな笑いが混じった声でそう言う彼女。オレは改めて自分の中に少しずつ苛立ちが増えるのを感じる。

「でも...一体誰に?誰も怪しくないし...誰も殺されてほしくない。」

 先ほど桃井愛莉を失ったばかりの雫がそう言う。

その言葉を受け、類が静かに口を開く。

「なら……僕たち、一人ずつ自分に票を入れるのはどうだろう」

一瞬の沈黙。全員が互いを見渡し、慎重に考える。投票の恐怖と絶望が、一瞬にして胸を締め付ける。

「それなら...」

 白石が静かにつぶやく。

「じゃあ...みんな、自分自身に投票してください。」

 えむが慣れない敬語でそう言った。

 

 

ホールのスクリーンに投票画面が表示される。

天馬司に投票しますか?

指先が震える。恐怖と緊張で手が止まる。オレは息を整え、震える手で「はい」を押した。画面の明るさが目に痛く、心臓の鼓動が耳まで響く。

長い長い静寂の果てに、スクリーンに赤い文字が浮かぶ。

 

 

日野森志歩が通報されました

 

 

「え……うそ……でしょ……?」

志歩の声は震え、体全体が小刻みに揺れた。周囲の空気が一瞬にして凍る。ホール全体が息を呑む。オレは拳を握りしめ、手のひらが汗で濡れるのを感じた。

「ど、どうして?志歩ちゃんが...?」

 呆然とした様子の穂波が精一杯声を出す。

志歩は、その場に立ち尽くしたまま、目を見開き、事態を理解しようとする。だが理解できるはずもなかった――。

 

 

私が...?私が...?どうしてどうして?

 頭の中が真っ白になり思考が停止する。

 みんなで自分に入れようっていったじゃん...!

 私は悪くない。私は悪くない。

 誰かが...。裏切ったんだね?この中の誰かが...。

 憎しみというよりも殺されてしまうという恐怖のほうが圧倒的に打ち勝ち、体が小刻みに震える。

 

次の瞬間、透明な中が筒抜けのガラスが振りかぶってきて私とみんなの場所を分離させる。 私はガラスの中の密閉された場所に閉じ込められた。

 ごぼごぼごぼ

 何の音かと思いあたりを見回すと...。

 何処からか水が湧き出ていた。そして段々と水面が上がっていく。

 まさか...これは...。

 考えたくもない悪夢の想像によって私の頭は完全に働きを失う。

 あっという間に水面は頭のあたりまで増え続ける。

 私は必死に足掻いた。泳げないけど...泳げないけど頑張って上へ上へ体を浮かすんだ。そうしないと私の命は消えてしまう...。

 完全に水が密室全体を包む。

 もうダメだ...。

 私は絶望した。

 この状態だと外には出られない。

 今、この部屋にあるのは水だけ。

 このまま死ぬんだ...。

 ようやく実感した。

 私たちのこのゲームは死と隣り合わせで、私はもう死ぬということを...。

 酸素が無くなる。息を止められなくなる。ゆっくりゆっくりと息をはく。

 私の顔に自分が出した酸素...泡が触れる。

 泡は次第に勢いを増し、そして量を多くする。

 苦しい 苦しい 苦しい

 息が足り...ない...。

「ハァッ」

 思わず息をしてしまった瞬間、肺に多量の水が入る。

「ゲホッゲホッゴホッ」

 頭に想定を大きく上回るような想像もできない痛みが走る。

 痛い痛い痛い痛い痛い

 ってうわっ!!

 泡は段々と上に登って行って遂に私の体力は限界を迎えた。

 視界が...まだ外が見えているけど...体は動かない。

 きっと死ぬ直前なのだろう。

 お姉ちゃんがこちらを向いて、手をガラス板について叩くようにして音を鳴らしている。

「しぃちゃんしぃちゃん!どうか死なないで!」

 幻聴が聞こえた。もしもそんなことを言っていたら嬉しいな...。

 お姉ちゃん....。

 

 また、来世でね...。

 

 

 

オレは何もできず、ただ立ちすくむだけだった。誰もが、ただ見守ることしかできない。咲希は小さく目を伏せ、唇を噛み締め、震えながらも目を逸らさない。

穂波は顔を覆い、嗚咽する。

雫は崩れ落ち、体を抱きしめるようにして膝を抱えたまま泣き続ける。

赤い液体が床に滴り落ち、光を反射して妖しく揺れる。オレは目を背けたくても背けられず、全身に鳥肌が立つ。志歩の細い体が、次第に力を失い、痙攣しながらも最後の抵抗を続ける。

「や……やだ……こんなの……!」

咲希の声が割れる。

「志歩……!」

一歌が叫ぶ。

 そして、雫が必死にガラスを叩く。

オレは手を伸ばすことすらできなかった。全てが、オレの無力さを突きつける。

やがて志歩の体は、完全に動かなくなり、床に落ちる。赤黒い液体が広がり、白い床を真っ赤に染め上げた。オレは思わず目を逸らすが、胸の奥に冷たい何かが広がる。

雫は床にうずくまり、嗚咽しながら手で顔を覆う。

「……愛莉ちゃんもしぃちゃんも……!どうして私の大切な人ばっかり...!」

咲希は唇を噛み、目を潤ませながらも必死に耐える。

オレは、深く息を吸い、拳を握りしめるしかなかった。誰も救えない無力さ、そして目の前の現実の残酷さ。胸の奥で、冷たい恐怖が渦巻く。

 

 

やがて昼が訪れるが、ホールは静かで、誰も箸を持とうとしない。かつての楽しさは失われ、残された料理はただ不吉な香りを漂わせるだけだった。

例の声が響く。

「え~。せっかくだから、食べなよ。せっかくみんなの好きな食べ物を用意したのに……」

誰も箸を取らない。食事は形だけの儀式のように終わる。空気は重く、恐怖と悲しみの陰が全体を覆う。

そして再び夜が訪れる。

オレは窓の外の群青の闇を見つめる。これから、誰が消えるのか。

胸の奥がざわつき、冷たい緊張が走る。

誰も、もう失いたくない。

――その思いだけを胸に刻み、次の幕開けに身を委ねるのだった。




ここまで読んでくれてありがとう!次回もお楽しみに!!
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