「重ちー君、おはよう」
「おはようだど吉美ちゃん!」
夏祭りが終わって数日が経過していた。吉良吉美は夏休みの自由研究として杜王町の歴史を調べようと決め、祖父の吉廣から色々と話を聞いた後は杜王町を見て回ろうと仲の良い友達である重ちーこと矢安宮重清と一緒に行動する事にしたのだ。
「その自転車カッコいいわね」
「ニシシ、パパが誕生日のプレゼントで買ってくれたんだど」
「へぇそうなんだ。私もこの自転車お父さんに買ってもらったの」
「かわいいデザインだど。吉美ちゃんに似合ってるど!」
「ウフフ、ありがとう重ちー君……じゃあ行きましょ?」
「うん!」
吉美と重ちーは仲良く会話しながら出発する。小学二年生になっても二人は同じクラスで一緒に行動する事が多く、周囲からつきあっているのではと噂されていたが二人は特に気にする事なくマイペースに過ごしていた。
「うーん、吉美ちゃんはこの珍獣の何が気に入ったんじゃろうなぁ?まあいい、珍獣の事は置いといて吉美ちゃんを見守る事にするかの。最近は野犬や危険なイタズラが多いし儂がしっかり見張っておかんとな!」
吉美の祖父である吉廣は孫娘の変わった嗜好に首をかしげつつ、大事な孫娘を見守ろうと後ろからついて行く事にしたのであった。
「まずは私が住んでいる地域ね。お父さんから聞いたけどここは昔お侍さんの避暑地で歴史のある場所なんだって」
「へぇ~〜〜ッ、確かに時代劇で出てきそうな屋敷が多いど。吉美ちゃんのお家も立派だし……あれ、じゃあ吉美ちゃんもお侍さんの子孫なの?」
「ええ、そうみたい。でもひいおじいちゃんの時に没落しちゃったんだって」
「駅の周辺は混んでるわね〜」
「夏休みだから外から来るお客さんも多いど」
「アルバムにあった昔の写真では駅周辺には田畑ばかりだったのに、今ではお店もたくさんあって楽しい場所よね。帰りにちょっと寄ってみましょうか」
「おおっ、それはいいと思うど!」
「重ちー君の住んでる地域って真新しい家が多いわね」
「パパとママはオラが生まれる前にここに引っ越したと言ってたど。大規模開発される前に来たから安く引っ越せたとか言ってたっけ」
「そうなんだ。後で話を聞いてみようかしら」
「吉美ちゃんならパパとママも大歓迎だど!」
「おーい君達!」
「あ、おまわりさん」
自転車に乗って杜王町を散策していた吉美達が公園で一息ついていると、巡回していた警察官に話しかけられた。
「見たところ二人で行動しているようだが、一体何をしているのかな?」
「夏休みの自由研究だど!」
「杜王町の歴史を調べようと思って町を散策してるんです」
「ほぉ~、自由研究か!まだ小さいのにしっかりしとるなァ〜〜。てっきりデートかと思ったよ」
自由研究の為に調査していると聞いて警察官……東方良平は真面目だなと感心していた。
「いえ、デートじゃないです。重ちー君とはそういう関係じゃなくて」
「え、吉美ちゃんオラの事が嫌いなのォ!?」
「え?そんな事ないわよ?嫌いな人と一緒に遊んだり自由研究をするわけないじゃない」
「よ、吉美ちゃん……!」
「ハッハッハ、仲が良いようで羨ましいな!」
何を言ってるんだと不思議そうな顔を浮かべる吉美と、嫌いではないと言われてホッとする重ちーを見た良平は仲が良い二人だと微笑ましく見ていた。
「でも最近物騒な事件が多いから君達も気をつけなさい。野犬騒ぎは一段落したが、危険なイタズラ行為も多いし遅くならない内に帰るんだぞ?」
「はーい」
「わかったど!」
「うん、いい返事だ!子供は元気なのが一番だよ」
良平から忠告された二人は元気よく返事をする。そんな二人を見た良平は満足気に頷くと巡回を再開するのであった。
「おまわりさんもああ言ってたし今日は早めに帰りましょうか」
「うん、オラもそれがいいと思……!吉美ちゃん危ないッッ!」
「えっ?キャッ!?」
何かに気付いた重ちーは慌てて吉美を抱えて転がる。その直後に先程まで吉美がいた場所に矢が突き刺さっていた。
「吉美ちゃん大丈夫!?」
「え、ええ……ありがとう重ちー君」
「よ、よかったぁ」
「コラアァァ〜〜〜ッッ!!」
吉美に怪我がない事に重ちーは安心する。そしてすぐ近くにいた良平が騒ぎを聞いて怒りの形相で駆けつけてきた。
「何を考えているんだ!こんな小さな子供達を狙うなんて卑劣な奴め!おい君達、大丈夫か!怪我はないかッ!?」
良平は吉美達に駆け寄って怪我がないかと問いかける。そして二人が無事なのがわかった良平は安堵しつつ矢を回収しようとしたが、その時矢が独りでに動き出し飛び去って行くのを見て驚愕する。
「な、なんだ?矢に糸でも結んでいたのか?追いかけたいが子供達の傍にいてやらないと……本部に連絡をいれておこう。これ以上被害者が出る前に何としても捕まえなければ」
子供達の事を心配した良平は犯人を追いかけるのを諦めて吉美達の傍にいる事にしたのであった。
「こん、の、クソガキがァ、み〜〜た〜〜ぞォ〜〜〜ッ!!」
「チッ!迂闊だった、まさか警察官がすぐ傍にいたなんて。警察なんか怖くないが目立つ真似はしたくなかったんだが」
「……………」
「しかしこれで2回目か、人間に向けて「矢」を射って外したのは……偶々外したのかもしれないが弓矢の練習をするべきかもしれないな」
「…………あ、兄貴ィ」
「ん?ああ、昼はお手柄だったぞ億泰。「矢」をお前のスタンドで回収してくれて助かったぜ。警察に回収されたら取り返すのがめんどくせーからな。お前も偶には気が利くな」
「な、なぁ兄貴、もうやめた方がいいんじゃないかな?」
「ああん?」
夕方となり、とある家では兄弟が昼間の件で話し合っていた。恐る恐る提案した弟に対して兄はギロリと睨んで黙らせる。
「ビビってんじゃねーぞ億泰!まだ俺達の正体はバレてないから安心しろ。それに親父を楽にする為にはこれしかないってお前も理解しているはずだ!なんならもう一度最初から説明してやろうか?」
「で、でもよぉ〜〜〜ッ、最近警察官の見回りも多くなったし、隠れてスタンド使いを増やすのって難しいよ。そ、それに、この前野良犬を「矢」でぶっ刺したら大変な事になってたじゃないか」
「ああ、あれか。チッ!確かにあれは誤算だったな。人に刺すつもりがイヌッコロに刺さるなんて」
弟である億泰の指摘に兄……虹村形兆は難しい顔を浮かべる。彼としても野良犬の件は誤算であり苦い失敗であった。
「まさかあの野犬があそこまで暴れるなんてよ。もう既に駆除されたが、あれだけ暴れたら他のスタンド使い達に注目されたかもしれない……野良犬を駆除したのはスタンド使いかもな」
「じゃ、じゃあ尚更今は大人しくした方がいいんじゃ」
「落ち着け!もう俺達は後戻りできないんだ。親父を殺せるスタンド使いを生み出すまで諦める事はしないぜ……だがお前の言う通りだな」
心配する億泰を落ち着かせつつ形兆は暫くの間潜伏する必要がある事を理解していた。
「仕方ない、一年程大人しくしておくか。暫く何も起きなければ警察や外部の連中だって警戒を解くはずだ」
「いいや、君達が今後の事を考える必要はないよ。今日私が君達を始末するからね」
「ッ!?誰だッ!」
バジャリ、とカメラのシャッター音と共に聞こえてきた男の声に形兆は自分のスタンドを展開して警戒態勢を取る。そこにはカメラを持った男が冷たい目で形兆達を眺めていたのであった。
「私の名前は吉良吉影。年齢26歳、自宅は杜王町北東部の別荘地帯にあり、仕事はカメユーチェーンで会社員として働いている……君達が今日の昼に「矢」の標的としていた娘の父親だよ」
「こ〜〜〜ろ〜〜〜す〜〜〜……」
「幸いな事に娘に「矢」は当たらず怪我はなかった。しかし君達のせいで娘は少し怖がっているんだ。まあ危ない目に遭ったら怖がるのは当然だ」
「こ〜〜〜ろ〜〜〜す〜〜〜……」
「最初は私も穏便に事を収めようと思った。君達の存在を警察に教えてお灸をすえてもらおうと考えたよ。娘は無事だし、いくら腹が立つとはいえ法治国家で私刑は許されないからね」
「こ〜〜〜ろ〜〜〜す〜〜〜……」
「だが刺された人間に超能力を与える「矢」となれば話は別だ。君達がどうしてあれを所持しているのかはどうでもいい。問題は素質がなければ死ぬとわかっている「矢」を私の娘に使おうとした事。そして先程から話を盗み聞きしたところ「矢」を使って超能力者を増やそうとしている事が問題なんだ」
「こ〜〜〜ろ〜〜〜す〜〜〜!」
「君達は私の平穏を乱す敵だ。敵ならばたとえ子供でも私は容赦しない……ここで始末する」
「こおおおろおおおすうううぅッ!!」
<人物紹介>
●
→スタンドガチャをさせられそうになったが重ちーの活躍で無事だった。重ちーの事は大事な友人だと考えている。
ちょっと怖かったので家でクロミを抱きしめている。重ちーが自分を庇ってくれた事に感謝しつつ、ちょっとカッコよかったなと思ったとか。
●重ちー(矢安宮重清)
→原作でも見せた黄金の精神を発揮し吉美を助けた。やればできる子なのだ。
吉影や吉廣は重ちーの事をほんの少しだけ評価したようだ。
●東方 良平
→杜王町の平和を護るおまわりさんの鑑で、犯人を追うより子供達の安全を優先した人間の鑑である。ジョセフは良平に土下座して殴られるべきだと思われる。
●虹村兄弟
→「矢」を使って父親を殺してくれるスタンド使いを生み出そうと色々頑張っていたが怒れる殺人鬼に襲撃されてしまう。自業自得ではあるが運が悪かった。
二人ともまだ子供なのでスタンドは未熟であり、吉良達には決して勝てないだろう。
●吉良 吉廣
→溺愛する孫娘が危険な目に遭ったのでブチギレている。まあ孫娘がスタンドガチャで死ぬかもしれなかったとわかればブチギレてもおかしくはないだろう。
●吉良 吉影
→かわいい愛娘が危うく死ぬかもしれなかったと静かに怒っており、犯人を始末する為に急行した。吉廣が盛大にブチギレているのである程度冷静になった。
虹村兄弟が「矢」を使っている理由についてどうでもいいが、「矢」を使われたら自分の平穏な生活に影響がでると考え始末する事を決意した。
謎の二人組が吉影を尾行していたが吉影達は気付いていない模様。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。