「吉良吉影、1966年1月30日に杜王町で生まれる。現在の年齢は26歳。身長は175センチで体重は65キロ。血液型はA型。1988年にD学院文学部を卒業後カメユーデパートに入社し、カメユーチェーンの会社員となった。前科はなく、かつて大学で出会った女性と結婚していたが相手は死亡し現在は残された娘と二人で暮らしている」
「……………」
「誰とでもトラブルなく接するが特に親しい友人はおらず、妻が死亡した後は再婚はせずに一人で娘を育てている。カメユーチェーンでの仕事振りは優秀だが、仕事よりも家庭を優先する子煩悩な父親だと周囲から評価されているようで、近所の住民の証言でもとても仲の良い親子だと評判だ」
「………おい」
「吉良吉影は両親が年をとってからの子供で、父親は数年前に癌で病死、母親もその後亡くなっている。両親の死因に不審な点はない。当時を知る人達からは両親の子煩悩が息子にも遺伝したと言われているようだな」
「おいちょっと待て、何故いきなり私のプロフィールをベラベラと話しているんだ。自宅を訪問してきたのはいいが意味がわからんぞ」
「すまない、彼に悪気はないのだ。承太郎はちょっとズレてる所があるんだ」
虹村兄弟への制裁を行った翌日、自宅を訪問してきた二人組の内の片方である空条承太郎は、吉良邸の客間にて吉良吉影のプロフィールを本人の前で読み上げていた。何とも言えない表情を浮かべる吉良に対しポルナレフは苦笑しつつ相方のフォローをしていた。
「話を続けよう。スピードワゴン財団が貴方を調べた結果不審な点は何もない。特徴のない情報ばかりで平凡な会社員としか言いようがなかった。だが貴方はスタンド使いで、父親も幽霊として現世に残っている」
「色々と言いたい事はあるが、何故私の事を調べているんだ?スピードワゴン財団とは接点なんか何もないはずだぞ」
「企業秘密だ……と言いたいが納得できないだろうから少しだけ教えよう。クソジジイがスタンドで調査していたら貴方の存在が写真に写っていたからだ」
「は?」
承太郎が見せた写真に自分の姿が写っているのを見た吉影は困惑しつつも考え込んでいた。
(スタンドで調査したら写っていた?まるで意味がわからんぞ?いや、それよりも気になる事がある。スタンドで調査していたと言っていたが、もしや私の
「念写で調査とか滅茶苦茶だな。だが超能力、スタンド能力ならそれくらいできてもおかしくはないのか……プライバシーの侵害はやめてほしいのだが」
「すまない、それについては謝罪しよう。不快になるのも当然だ」
「フン、まあ君達も理由があって色々と調べているのだろうけどな。それで?君達は何が聞きたくて私の家まで来たんだ?」
「そうだな、本題に入るとしよう。貴方は「矢」を持っているのか?」
(やはりそうきたか)
承太郎が真剣な表情で「矢」について尋ねてきたのを見て吉影は予想通りだと内心で溜息をつくのであった。
「何故私が「矢」を持っていると?」
「昨日貴方はあの兄弟を尋常じゃない殺意を持って始末しようとしていた。貴方があれ程の怒りを見せたのは娘が危険な目に遭ったのもあるが、素質がなければ死ぬ「矢」の危険性を知っていたからだ」
「……」
「それに貴方の素行を調べるのと並行して父親についても調べていた。父親の吉良吉廣にはおかしな点は何もなかったが、一つだけ気になる事が判明した。存命中に一度エジプトに旅行していたが、当時のエジプトには両手が右腕の特徴的な占い師の老婆がいて、父親は占い師の老婆と出会っていた可能性があるとわかった……そして老婆はある男から「矢」を買い取って所持していた」
「……私の親父が占い師の婆さんから「矢」を譲ってもらったと?」
「ああ、可能性は十分にあると私達は考えている」
承太郎の推測を聞いていた吉影は沈黙していたが、やがて盛大に溜息をつくと「矢」の事について話す事にした。
「ハァ~~~ッ……ああ、そうだよ。私の親父はエジプトで「矢」を手に入れた。そして親父と私は「矢」によって超能力者、いや君達の言うスタンド使いになったんだ」
「やはりそうだったか」
「まあ占い師の婆さんが「矢」を譲った理由は私も知らないがね。親父はわかるのか?」
「い、いや、さっぱりわからん。あの婆さんは「この矢はお前達の手に渡るのが運命だ」と言っておったがのぉ」
「運命、運命ねぇ。そんなあやふやな物で危険物を渡されても困るんだが」
父親の言葉を聞いた吉影は再度溜息をついた。
「ところで「矢」の事を聞いてどうするつもりだ?」
「できれば回収して封印したい。もちろんタダとは言わない。スピードワゴン財団で買い取ろう」
「ふぅん、そうか。わかったよ、じゃあ「矢」は君達に渡す事にしよう」
「えっ?」
「なんだねその反応は」
吉影はあっさりと「矢」を引き渡す事を決め、それを見ていたポルナレフは思わずあっけにとられていた。
「い、いや、私達としても素直に引き渡してくれて助かるが、そんなあっさりと渡されるとは思わなかったのでな」
「私としてもあの厄介な「矢」を持て余していたからな。今は鍵付きの金庫で厳重に封印しているが、婆さんはもう死んでいるらしくて返す事もできないし、誰かに売却しようにも伝手がない。スピードワゴン財団が管理するというならそちらに引き渡すさ」
「スタンド使いを増やすつもりはないのだな?」
「当たり前だろう。私が望むのはただ一つ、この杜王町で家族と一緒に平穏な生活を送る事だ。植物のように静かで穏やかな生活に超能力者なんて不要だろう?なんなら今すぐ引き渡そうか?」
「ああ、では「矢」を引き取ろう。後で財団の方から謝礼を渡すよう伝えておく」
「そうか、別に金には困ってないのだが貰えるものは貰っておこう」
吉影は承太郎達を連れて「矢」を封印している金庫に向かうのであった。
「わあ、夏祭りの時に見た大きな男の人達だわ。お父さんのお客様なの?」
「まあ、うん、この人達はスピードワゴン財団のエージェントで怪しい人達ではないよ。私はこの客人達とお話があるから、吉美はクロミと一緒に暫くの間は自分の部屋で待っててくれないかな?」
「うん、わかったわ」
「ニャン」
廊下で娘と顔を合わせた吉影は愛娘が承太郎達と関わらないように部屋で待機させる事にした。
「かわいい娘さんだ。将来は美人さんになるだろうな。アンタがあの子を可愛がるのもよくわかるぜ……娘さんはスタンド使いじゃないのか?」
「はぁ?自分の子供に死ぬかもしれない博打をさせるわけないだろう?あの子が絶対に触らないように「矢」は鍵付きの金庫に封印してあるよ」
「賢明な判断だ。財団の調査によればスタンド使いから生まれた子供は素質がある者が多いが絶対ではない。「矢」の試練に耐えられず死ぬ可能性は零ではないからな」
娘に絶対に触らせないという吉影の言葉に承太郎は頷く。承太郎としても娘の徐倫にスタンド使いの素質があったとしても「矢」を使わせるつもりは絶対になかったからだ。
「私も娘がいるがスタンド能力とは無縁の生涯を送ってもらいたいと思っている」
「ほぉ、そうなのか。私より若いのにもう娘がいるのか。まあ大学生で子供を作った私が言う資格はないけど随分と早いな……君の娘は何歳なんだ?」
「今年生まれたばかりだ」
「は?」
承太郎に娘がいると聞いた吉影は興味本位で娘の年齢を尋ねたが、今年生まれたばかりの赤ん坊だと聞いて思わず困惑する。
「おいおい、生まれたばかりの赤ん坊をほったらかして何をやってるんだ?娘の傍にいてあげるべきだろうに。スピードワゴン財団には育児休暇とかないのか?」
「あー、その、承太郎は被害者と言うか。承太郎も不本意なんだ」
「私だって、俺だって本当は徐倫の傍にいてあげたい。だがクソジジイの尻拭いの為に杜王町に滞在する事になったんだ……………クソジジイめ」
「……何だかわからないが君も色々と大変なようだね」
非常に不本意そうな承太郎の顔を見て、吉影はこの男も苦労しているんだなとほんの少しだけ同情するのであった。
「随分と厳重な金庫だな」
「前は箪笥に仕舞ってあったんだが、ある時「矢」が独りでに動き出した事があってね。幸い娘には刺さらなかったが代わりにクロミがスタンドに目覚めたんだ。それ以降は念のために頑丈な金庫に封印する事にしたのさ」
「娘さんの隣にいた黒猫の事か。ただの黒猫とは思えない知性と品格があったが、やはり私の予想通りあの黒猫はスタンド使いだったのか」
「娘には懐いているし、私の言う事にも従うから家に住む事を許しているんだ……よし開いたぞ。ほら、これが君達が欲しがっていた「矢」だ」
「なるほど、本物のようだな」
金庫から「矢」を取り出した吉影は躊躇する事なく承太郎達へ引き渡した。承太郎達も確認し「矢」が本物である事を確信して持ってきた鞄に仕舞う事にした。
「素直に渡してくれて感謝する。これで2本目の「矢」を回収する事ができた」
「私としても厄介払いできてよかったよ。それと疑問なんだが君達は「矢」は全部で何本あるのかわかっているのか?」
「財団が調査した結果「矢」は6本ほど存在が確認されている」
「世界でたった6本しかないだと?なんでそんな貴重品が杜王町に2本もあるんだ……親父、本当にタダでもらったのか?」
「そ、そうじゃ。あの婆さんは金は要らないと渡してきたんじゃ」
「やれやれ、あの婆さんが何の目的で貴方達に「矢」を渡したのかはわからないが、とりあえずこちらで確保できたからよしとしよう」
「矢」の希少性を知った吉影は占い師の老婆が何を考えて父親に譲ったのか理解できなかった。承太郎達もそれ以上の追及はせず「矢」を確保できた事を素直に喜ぶ事にした。
「目的が達成されたのなら帰ってくれないかね。できれば今後私達には関わらないでほしいな。スタンド使いや「矢」とかいうオカルトなんぞ私の平穏な生活には不要だからね。君もさっさと家に帰って娘の傍にいてあげるべきだよ」
「できれば私もそうしたいが、クソジジイの件もあるから杜王町には暫く滞在する事になるだろう」
「さっき言っていた件か。君も災難だな」
(私としては一刻も早く杜王町から出て行ってほしいのだがね。そのクソジジイとやらは本当に迷惑な奴だな)
承太郎達が暫く杜王町に滞在すると聞いて吉影は苦い気持ちになる。
「私達は杜王グランドホテルに滞在している。何か用事があったらこの連絡先に電話してほしい」
「私は君達に用事なんてないけどね。君達に連絡する機会がない事を祈りたいよ」
「そうか、では今日はこれでお暇する事にしよう。「矢」の謝礼については後日財団の方から連絡する……それと一つ聞きたい事がある」
「矢」を確保した承太郎達が帰ると聞いて吉影はホッとするが、最後に承太郎は吉影に質問をする事にした。
「ふむ、なにかね?」
「貴方が自分のスタンド能力を把握した経緯を教えてほしい。触れた物を爆弾に変えて消滅させる能力……非常に強力だが使い道が限られているように思えるのだが」
「ああそれか、私がキラークイーンの能力を把握したのは娘が赤ん坊だった頃に使用済みのオムツを処理していた時だね。キラークイーンの能力はとても便利だよ、指定の曜日に出し忘れたゴミや、古い冷蔵庫のような家電ゴミの処分に大活躍しているのさ」
「ほぉ~~ッ、それは凄く便利だなぁ」
承太郎の質問に対して吉影は言いよどむ事なくすらすらと答える。キラークイーンの活躍を聞いてポルナレフは素直に感心していた。
「なるほど、確かに便利な能力だ……つまらない事を聞いて悪かった。では私達はこれで失礼しよう」
「またな吉良さん」
承太郎達が帰っていくのを見送った吉影は、彼等の姿が完全に見えなくなったのを確認し深々と溜息をついていた。
「……とりあえず誤魔化せたとは思う。あの空条承太郎という男は私の事を少し怪しんでいたようだが「矢」は素直に渡したしこれ以上関わってくることはないだろう」
「う、うーむ。そうじゃといいがのぅ」
「だが問題は一つある。私の
吉影は自分の
「もし彼等にバレたら私は制裁されるだろうし、それに娘にも迷惑がかかる……仕方ない、今は我慢するとしよう。今年は絶不調で助かったな」
「おっ、おおッ!?吉影が吉美ちゃんの為に我慢するとは!立派じゃ吉影!お前は父親の鑑じゃあぁ~~~ッ!!」
「おいおい大袈裟だな。私だってもう大人なんだから我慢くらいできるさ」
吉影の成長に感動して泣きだす父親を見て、吉影は相変わらず親バカだなあと苦笑するのであった。
「承太郎、あの吉良吉影という男は何か隠していると思わないか?」
「私もそう思う。彼には「矢」以外にも隠し事があるのだろう。だが私達は残りの「矢」を捜索する必要があるし、クソジジイの件もあるから優先度は低い。定期的な観察でとどめておくべきだ」
「確かにそうだな。そういえばジョースターさんは既に日本に向けて出発していると聞いたが本当なのか?」
「ああ、今週末にも到着する予定だ。それとクソジジイだけでなくおばあちゃんのスージーQも一緒だ」
「その、大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。おばあちゃんは怒りの頂点でも笑顔を浮かべているし、クソジジイは借りてきた猫のように縮こまって大人しくしているから問題ない。そして東方家への訪問は俺も付いて行く事になっている」
「おおっ、うん……………頑張れよ承太郎」
<人物紹介>
●吉良 吉影
→承太郎達に「矢」を引き渡し帰ってもらった。元々持て余していたので厄介払いできてよかったようだ。
クソジジイことジョセフの念写の事を知り当分の間
そして「矢」が承太郎達に引き渡された事でじゃんけん小僧と噴上裕也と宮本輝之輔と乙雅三はスタンド使いにはならなくなった。少なくとも宮本輝之輔は本にされないし乙雅三はクソハズレスタンドなチープ・トリックで死ぬ事もなくなったのでハッピーハッピーである。
●吉良 吉廣
→息子の成長を見て感涙していた。占い師の婆さんことエンヤ婆から「矢」をもらっていたが息子が要らないと言うなら特に文句はない模様。
●承太郎とポルナレフ
→吉影があっさり「矢」を引き渡してくれたのでホッとする。残りの「矢」については現在調査中で、クソジジイの一件が終わればクソジジイを酷使して調査する予定である。イタリアのギャングが「矢」を持っているかもしれないと推測しているのでいずれ二人で向かう予定。ボスは泣いていい。
週末にクソジジイのお供として東方家に訪問する予定の承太郎は深々と溜息をつき、ポルナレフは承太郎に深く同情するのであった。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。