「上手だったわお兄さん」
「カッコイイギター捌きだったど!」
「おう、サンキューな!お前らも俺の演奏聞いてくれてありがとよ!」
ジョセフ達が東方家を訪問した二日後、杜王町の公園では音石明がいつものようにギターを演奏していて吉美達が歓声を上げていた。矢を射った犯人が警察に補導された事を知った吉美は安心して外出しており、何時もの日課である音石の公園ライブに来ていたのだ。
「ホッホゥ、音石君前よりギターの腕が上がっておるのぉ~。音石君には才能があるようじゃ……ワシも若い頃に音楽にハマっていたが、ワシの場合は全然上達しなかったのぉ」
「ああ、そうだったねぇ。重さんのトランペットは下手くそで聞くに堪えなかったよねぇ~」
「ううむ、当時はトランペット奏者になるのが夢で本気で努力していたんじゃがのぉ~、才能というのは残酷じゃわい」
「でも重さんは諦めずにマネージャーになって音楽業界に残って頑張ってたじゃないか。立派だと思うよアタシは」
音石のギター捌きを見たファンの老人達は昔話に花を咲かせつつ楽し気に雑談をする。若者が健やかに成長してくのを見るのは老人達にとっても楽しみとなっていた。そして暫くの間雑談を続けていた老人達はとある話題に触れる事にした。
「あ、そうそう知っているかい?二日前に朋子ちゃんの恋人さんが東方家を訪問してたって話」
「おぉ、その件か。吉田さんから聞いたわい。朋子ちゃんが喜色満面で抱き着いていたとか。恋人は白づくめの服を着た2メートル近い大男と聞いたぞい」
「違うわよぉ~~~ッ!そちらは付き添いの人らしいね。恋人はアタシらと同じくらいの歳の大きな外人の老紳士みたいだよ」
「なんと、朋子ちゃんったら年上が好みじゃったんか。意外じゃなぁ~ッ」
老人達は東方家を訪れた来訪者の事についてどんな人物なのか色々と推測をする。町の人気者である東方良平の娘である朋子の事は老人達もよく知っており、彼女が惚れた恋人はきっとスゴイ男なのだろうと考えていた。
「あの朋子ちゃんが惚れた男なら悪い奴じゃないだろうさ!つまらない男だったら朋子ちゃんが気に入るわけがないからね!」
「吉田さんの話だと乗っていた車は外国の高級車みたいじゃな。それもかなりグレードの高い車種だとか……きっと金持ちなんじゃろうなぁ~」
「うむ、何はともあれ仗助君の父親が見つかってよかったわい。恋人さんは朋子ちゃんと一緒に住むのかのぅ?」
「難しいようだねぇ、その恋人さん恐らく既婚者みたいだよ。奥さんらしきご婦人が一緒にいたみたい」
好き勝手に喋る老人達を見た音石は少し困惑しつつも、どうして老人達がその事を知っているのか気になっていた。
「爺さん達よく知ってるな」
「ホッホ、この平和な杜王町で派手に目立つ事件があればすぐ噂になるのは当然だわい」
「覚えときなさい音石君と吉美ちゃん達。人の口には戸が立てられないんだよ」
「はぇ~、なるほどなぁ」
老人達のネットワークに感心しつつ音石はギター演奏を再開するのであった。
「それでね、仗助さんのお父さんが見つかったみたい。お爺さん達が楽しそうに噂してたの。仗助さんのお父さんは外国の大きな老紳士で、お付きの人は2メートル近い白づくめの大きな男の人らしいよ。もしかして家を訪問してきたあの人の事かな?……あれ?難しい顔をしてるけどどうしたの?」
「あっ、ああ、何でもない、何でもないよ吉美。お父さんはちょっと疲れているみたいだ。今日はいつもより早く眠るようにするよ」
「……………なんという事だッ」
吉美から話を聞いた吉良吉影は自室にて頭を抱えていた。いずれ
「白づくめの大男なんて空条承太郎以外にいるわけがないッ!最悪だ、朋子さんを
「よ、吉影……」
思わぬ障害がある事がわかり頭を抱える吉影を父親の吉廣が心配そうに見ていたが、やがて意を決して話し掛けた。
「……吉影、今回ばかりは儂も心を鬼にして言わねばならん。東方朋子の事は諦めるんじゃ。お前が彼女の事をとても気に入ったのはわかるが、彼女を手に入れるにはあまりにもリスクが大き過ぎる!それは儂に言われずとも吉影だって理解しているはずじゃッ!」
「わかっている、わかっているさ!」
「あの百戦錬磨の連中を相手にして勝つのは非常に難しいじゃろう。仮に勝ったとしても派手に動けば平穏な日常生活はもう無理だ。吉影の求める植物のような穏やかな暮らしは維持できなくなる!」
「ぬっ、ぐうぅっ」
「お前の生き甲斐である
「ッ!……………ハアアァ~~~ッ。うん、わかった、そうするよ……朋子さんは諦めるよ」
吉廣の説得の言葉を聞いた吉影は不承不承ながら東方朋子を
「おおっ、そうか!落ち着いてくれてよかったわい」
「今年は
説得を聞き入れた吉影を見て吉廣は安堵する。そして吉影は不要となった計画書をキラークイーンで爆破し未練を断ち切る事にしたのであった。
「ハァ、世の中ままならないものだね」
「ふむ、念写に彼の姿が写らなくなっておる。「矢」を確保できたからかのぅ?」
「その可能性が高いだろうな。あの男はまだ何か隠しているようだが優先度は低い。「矢」は確保しクソジジイの件も一段落したから私は妻と徐倫が待つ家に一度帰る事にする」
「それがいいじゃろう。儂も徐倫ちゃんに会いたいのじゃがなァ~」
「寝言は寝て言えクソジジイ……二ヶ月程休息したら「矢」の捜索を再開する。ポルナレフと一緒にイタリアに向かう予定だ」
「いやもっと休んでいいと思うぞ?もっと徐倫ちゃんの傍にいるべきじゃろ」
「ポルナレフもそう言っていたが、イタリアにいる「矢」の持ち主はスタンド使いを量産しているようだ。ポルナレフ一人では危険だから私もついて行く」
「ふーむ、確かにそれは放置できんな。よし!儂も手伝うぞ承太郎!といってもエジプトに行った時より身体はかなり鈍っておるから念写でサポートする事しかできんがのぅ」
「それで十分だ、感謝するぜジジイ」
<番外編:その後の虹村兄弟>
「おかえり兄貴!警察では大丈夫だったのか?」
「ああ、問題ないさ。長々と説教されたが自業自得だしな」
警察署での事情聴取から解放され家に帰宅した形兆を弟の億泰が出迎える。吉良吉影達の襲撃から九死に一生を得た虹村兄弟は「矢」を承太郎達に引き渡した後、最近杜王町を騒がせていた悪戯の犯人は自分だと警察に自首していたのだ。
「もう少しで事情聴取も終わるだろうな。億泰、引っ越しの準備は進んでいるか?」
「おう!とりあえず家にある物は段ボールにぶち込んでおいたよッ!」
「……あのなぁ、丁寧に入れないと物が壊れるだろうが。後で俺が入れ直しておくぜ」
「あっ」
頑張っているがどこか抜けている弟に形兆は苦笑する。不死身の怪物となった父親を解放する事ができた形兆は随分と落ち着いた様子を見せていた。
「でもいいのかよ兄貴?杜王町から引っ越すだなんて」
「仕方ないだろうが。あの連中に目を付けられた以上杜王町にいれば命の保証はないんだぞ?あの時は幸運にもスピードワゴン財団のエージェントに助けられたが、あんな幸運が何度もあるとは思わない方がいい」
「あ、あの人達まだ怒ってるかなぁ?」
「そりゃあ怒っているだろうさ。娘が死ぬかもしれなかったんだ。俺達の顔なんて見たくもないだろうし、仮に俺達がまた同じような事をすれば今度こそ奴等に始末されるだろうな。家に出たゴキブリを潰すように徹底的に駆除されるだろうぜ」
「ひ、ひえぇっ」
形兆の予想を聞いて億泰は震え上がる。吉良吉影達からどす黒い殺意を向けられた事は億泰のトラウマになっていた。そんな億泰を見た形兆は苦笑して落ち着かせる事にした。
「落ち着け、奴等は杜王町で平穏に暮らす事に固執しているようだし、俺達が杜王町から出て行けば奴等も見逃してくれるだろうさ。よし、引っ越し準備も一段落したし明日親父の墓参りに行くとするか」
「あ、そうだね兄貴。引っ越す前に墓参りしておかなきゃ」
「安らかに眠れ親父。塵一つ残らず消滅したからこの墓には何も入っていないが、ケジメとして建ててやったからあの世で感謝しろよ」
「親父は天国に行けたかなぁ?」
「無理じゃないか?俺が言う資格はないが、あのろくでなしが天国に行けるわけねーだろ」
「そ、そうかぁ」
翌日、杜王町の墓地に建てられた父親の墓の前で虹村兄弟は雑談していた。吉影のキラークイーンによって完全に消滅した父親を悼むために兄弟は墓を建てていたのだ。
「親父を解放してくれたあの人達には感謝しないと」
「その必要はない。奴等だって別に感謝されたくないだろうよ……俺にはわかるぜ、あの連中は俺と同じようなろくでなしの悪党だとな」
「あ、兄貴?」
形兆の言葉に億泰は困惑するが、形兆は真剣な表情を浮かべて言葉を続ける。
「連中は俺達を始末する事に躊躇しなかった。あれは俺達が全面的に悪いのはわかっているが、奴等が人を殺す事に抵抗がまったくなかったのはお前も覚えているだろ?」
「う、うん」
「……奴等は既に人を殺した事があるんだろうよ。それも一人じゃない、俺の見たところかなりこなれている様子だったから複数人を殺しているだろうな」
「ええっ!?」
「落ち着け、俺の予想ではこちらから関わらない限り連中は何もしてこないさ。そして俺達が杜王町から出て行けば向こうも手は出してこないはずだ。それにスピードワゴン財団に保護された俺達を始末するのはリスクが大きいからな」
億泰を落ち着かせた形兆は吉良吉影達の事よりも心配している事があった。
「奴等の事はもういいだろう。それよりも心配な事がある……これから会う予定の保護観察官がまともだといいんだがな」
「ああ、スピードワゴン財団から派遣される事になった人だっけ。俺達の財産とかも管理してくれるらしいけど」
「チッ、色々と管理されるのはムカつくが俺達はまだ未成年だしなぁ。諦めるしかないか」
形兆達はスピードワゴン財団に保護される事になっていた。たとえ怪物となっていても書類上は父親として存在していた虹村父であったが、完全に消滅し死亡したと判断された事で形兆達の保護者がいなくなった為財団が虹村兄弟を保護したのだ。
「わざわざアメリカから来てくれるなんてスゴイよな。なぁ兄貴、東京じゃなくてアメリカに引っ越せばよかったんじゃねーの?アメリカの生活も悪くないと思うけどなァ~~~ッ」
「外国に引っ越すのはお前が思っているよりもずっと大変なんだよ。というかお前は英語話せないだろーが!」
「あっ」
自分と違って能天気で頭が悪い弟を見て形兆は思わず頭を抱えてしまうのであった。
<人物紹介>
●音石 明
→自分に矢を射かけてきた犯人が捕まった事に安心しつつギター演奏を頑張っている。老人達のネットワークはスゴイなぁと感心していた。
●老人達
→ジョセフ達が東方家を訪問していたのを知って恋人はどんな男なのだろうかと好き勝手に話していた。まあ外国の高級車に乗った大柄な外国の老紳士が家を訪ねてきたとか非常に目立つので噂になってもおかしくはないだろう。
町の人気者である東方良平の事はよく知っており老人達は良平君と呼んでいる。そして娘の朋子の事も当然よく知っていた。朋子が選んだ恋人ならきっとスゴイ男なんだろうと老人達は考えている。まあ実際ジョセフはスゴイ奴である。
●吉良 吉影
→娘から聞いた情報で東方朋子の恋人がクソジジイことジョセフである事を推測し、ジョセフの関係者である空条承太郎の脅威を考えた結果、東方朋子を
●吉良 吉廣
→息子が冷静になってくれたのでホッとする。
●虹村兄弟
→「矢」を承太郎達に引き渡した後は悪質な悪戯の犯人として警察に自首した。お灸をすえられたが自業自得だと形兆は甘んじて受け入れていた。保護者だった父親がいなくなり財団に保護される。もう杜王町に執着する理由もないので東京に引っ越す事にしたようだ。ケジメとして父親の墓を建てた。時々杜王町に帰って墓参りするだろう。
頭の悪い弟に頭を抱える事が多いが、形兆は新しい人生を歩む事ができてハッピーハッピーである。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。