吉良親子は静かに暮らしている   作:すも

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息抜きを兼ねて投稿しました。更新は不定期です。


吉良吉影は前向きに自粛する

「どうした吉良、なんか物憂げな顔しているが」

「なんでもない。クリスマスのプランを考えていたが、計画が白紙になってちょっと残念に思っているだけさ」

「おいおい、今からクリスマスの予定だなんて気が早くないか?」

 

吉良吉影が東方朋子を諦めた翌日、いつも通り出勤した吉影は同僚と会話していた。朋子の事は非常に残念だと思いつつも仕事に私情を持ち込むつもりはない吉影は気分を切り替える事にする。

 

「しかし夏は暑いよなぁ。節約の為に家から弁当を持ってくる事も考えたが、この暑さじゃ傷んで腹を壊すかもしれないからやめてよかったな」

「おや、弁当を持参する気だったのか?私と同じでいつも外食しているのに」

「いやさぁ、嫁が息子の将来の為に貯金すると宣言して節約に励んでいるんだけど、俺の月の小遣いまで減らされてさぁ、毎日外食してたらあまり手元に残らなくなりそうなんだよなァ~~~ッ」

「それは大変だな」

 

財布を妻に握られて嘆いている同僚を見た吉影はほんの少しだけ同情する。吉影は両親の遺産や「矢」を財団に売却した事で得た金があるので金銭的にとても余裕があり、生活費を削るなんて事とは無縁の生活を送っていた。

 

「そういや吉良は弁当を持ってくるのとか考えた事ないのか?」

「いいや、ないね。昼は外で食べるのが好きなんだ。杜王町は色んな飲食店があるから飽きないからね」

「ふーん、そうか、そうか。お前は家事とか一通りこなせそうだがなぁ」

「まあ料理の腕は人並以上はあると自負しているが、朝早く起きて弁当の用意をするのは面倒なんだ。週末は自分で昼食を作るけど、平日の昼間くらいは楽をしたいのさ」

「なるほどなぁ」

 

同僚の言葉を聞いた吉影は弁当を持参するつもりはないと断言する。弁当を用意するのが面倒なのはあるし、何より自分の睡眠時間を削ってまで用意する必要性を感じなかったのだ。

 

「そろそろ始業時間だ。雑談はここまでにしておこう」

「よぉし、今日も一日頑張りますかね」

 

そして始業時間が迫っているのに気付いた吉影と同僚は気持ちを切り替え仕事に集中する事にしたのであった。

 

 

 

 

「うん、やはりサンジェルマンのサンドイッチは安定して美味しいな」

 

午前の仕事が終わり昼休憩となった。吉影はいつも通り外で昼食を食べており、お気に入りの店であるサンジェルマンのサンドイッチを食べて舌鼓を打っていた。

 

「焼きたてのパンと揚げたてのカツの組み合わせは最高だね。そしてこの平穏で美しい町である杜王町……完璧だよ。最近はトラブルばかりだったが、こうやってノンビリとサンドイッチを食べる余裕ができてよかった」

 

先日のトラブルを無事解決した吉影は杜王町での平穏な生活を存分に満喫していた。吉良吉影は殺人鬼ではあったが杜王町への愛は本物であり、この世界で一番素晴らしい町だと確信していたのだ。

 

「まあ暫くの間は()()を自粛する必要があるけど、今年は絶不調だから我慢できるし問題ない……でも待てよ、来年はどうだろうか?」

 

吉影は来年以降の()()について考える。

 

「東方仗助君の父親が定期的に杜王町に来るかもしれない。そしてあの空条承太郎もだ。奴は私の事を怪しんでいたし、私が何をしているか探ってくる可能性がある。「矢」の捜索を続けると言っていたが、向こうは念写能力を持っている以上迂闊な行動はできないか。くそっ、なんて厄介な奴等だ」

 

厄介な連中に見つかってしまったものだと吉影は苦い顔をしていた。そして吉良は自分が()()を我慢できるのか心配するのであった。

 

「私だって今の平穏な日常が一番だと考えてるし、この素晴らしい生活を守る為なら()()を中断する事に今は文句はない……だがもし来年が絶好調だったら?私は我慢できるのか?」

 

 

 

 

「えっ、料理をやりたいと?」

「うん、私料理の練習を始めたいの」

 

会社から帰宅し夕飯を作ろうとした吉影は愛娘の吉美が料理を手伝いたいと提案した事に少し困惑していた。

 

「どうして急に料理をしてみたいと思ったんだい?」

「だってお父さん毎日仕事が終わって疲れてるのに夕飯の用意をしてくれるでしょ?私が代わりに作ってあげられないかなって思ったの」

「ああ、なんだ、私を心配してくれたのか。吉美はいい子だね」

 

自分を心配してくれる事を嬉しく思いつつも、吉影は小学二年生の娘にはまだ早いと窘める。

 

「気持ちはとても嬉しいけど、一人で料理するのは吉美にはまだ早いかなぁ。料理には火を使うし危ないからね。まずは私の手伝いから始めてみようか」

「うん、わかった。私頑張る!」

 

最初は調理の手伝いから始めるべきだと吉影は提案し、吉美も納得して手伝う事にする。緊張しつつも真剣な表情で手伝う愛娘を吉影は微笑ましく見ていた。

 

(おやおや、初めてだからってスゴく緊張しているな。まあ吉美は聡い子だしすぐに上達するだろうね……しかしつい最近まで後ろをついてきていた子が料理を手伝うようになるなんて。子供の成長は早いなあ)

 

愛娘が成長しているのを嬉しく思いつつ吉影は考え込む。

 

(よし、()()は暫く自粛して吉美の成長を見守る事にしよう。かわいい愛娘が成長していくのを見るのはとても幸せな気分になるからね。()()の代わりになるだろうさ)

 

そして吉影は()()を当分の間自粛する事を決めた。スピードワゴン財団や承太郎達に露見するリスクを考えた結果、自分の平穏な生活を守る為に我慢する事にしたのだ。これが吉影一人であったら我慢できなかっただろうが、()()の代用として大事な愛娘の成長を見守る事を優先したのだ。

 

(薬中やギャンブル依存症の患者じゃあるまいし()()を優先して今の平穏な日常をなくすなんて愚かな真似はしないさ。そうだ、今の吉美の頑張っている姿を写真に撮っておこうか。ええと、カメラは何処にあったかな)

 

「うおおおォンッ!吉美ちゃんが料理の手伝いをしておるッ!まだ小さいのになんて立派なんじゃあぁ〜〜〜ッ!儂にはわかる!いずれ亡き妻のような素晴らしい淑女になると確信したぞ!天国の母さんもきっと吉美ちゃんの成長を見て喜んでいるはずじゃッ!」

 

(あ、親父が持ってたのか。しかし相変わらず大袈裟だなあ。いくら孫娘の成長が嬉しいからって号泣しながら写真を撮らなくてもいいだろうに)

 

孫娘の成長に感涙しつつ写真を撮る吉廣を見て、相変わらず吉美を溺愛しているなあと吉影は苦笑するのであった。

 

「私とした事が後ろ向きになっていたようだ。悲観的な考えはやめて、いつも通り前向きに生きていこうか」

 

 

 

 

 

<人物紹介>

●吉良 吉影

→承太郎達の存在を脅威と判断し色々と考えた結果、暫くは()()をやめようと前向きに自粛する事にした。父親になった事で原作よりも多少我慢強くなっているのだ。

 

 でも承太郎達が脅威ではないと判断したら安心して()()を再開しようとするだろう。だって吉良吉影だもの。

 

 

 

●吉良の同僚

→嫁が節約に目覚めたせいで小遣いを減らされた事を嘆いていた。でも息子の為ならと最終的に納得した父親の鑑である。

 

 夫婦仲は良好であり持参する弁当は嫁が用意してくれる事になった模様。

 

 

 

●サンジェルマン

→焼きたてのパンと揚げたてのカツで美味しいサンドイッチを作るパン屋の鑑。そりゃあ吉良吉影も気に入るわけである。

 

 最近の期間限定商品はフィッシュ&チップスで、上質な油で揚げているのでベタつかず本場のフィッシュ&チップスより遥かに美味しいと評判であった。吉良も一度食べてみたが美味しくて満足していた。

 

 

 

●吉良 吉美

→仕事帰りで疲れているだろう父親を心配し、代わりに自分で料理しようと考えたいい子である。まずは父親の調理の手伝いから始めたが、吉影の娘なのですぐに上達するだろう。

 

 父親の誕生日プレゼントの為に去年からお小遣いを貯めているようだ。

 

 

 

●吉良 吉廣

→溺愛する孫娘の成長を見て感動し号泣した。いつも号泣している気がするが気のせいである。その後は孫娘の成長を写真に残そうと熱心にカメラで撮っていた。

 

 孫娘が吉影へのプレゼントの為に貯金している事は知っており微笑ましく見守っている。




趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。
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