「フッフッフゥ〜〜〜ンッ」
「吉美ちゃん、今日はいつもより機嫌がいいけどどうしたんだど?」
夏休みが終わり二学期が始まった。夏の暑さも和らぎ秋が近付いてくるなかで、学校の授業が終わって下校する吉美が上機嫌な様子を浮かべているのを重ちーが不思議そうに見ていた。
「あのね、お父さんへの誕生日プレゼントを買うお金が貯まったからこれから買いに行こうと思ってるの」
「おぉ~、そうなんだ。オラもついて行っていい?」
「うん、いいよ。じゃあ一緒に行こうか」
「わかったど!」
相変わらず仲が良い様子の二人はプレゼントを買おうと杜王町の中心部に寄り道する事にした。
「あ、またあの二人が一緒に帰ってる」
「ほんと仲が良いわねぇ〜、あれでカップルじゃないって信じられないわね」
「なんだかあの二人って夏休みが終わってから距離が近くないかしら?」
「あれ、知らないの?夏休みの時に女の子が危ない目に遭ったけど男の子が助けてピンチを救ったんだって。お爺ちゃんが立派な子だって褒めてたよ」
「え、そうなの?へぇ、あの男の子見かけによらずやるわねぇ~」
吉美達が仲良く行動するのを見ていた上級生の女子達は微笑ましく見守りつつ、二人が今後どうなるかを好き勝手に予想するのであった。
「あの子達今後どうなるのかしらね?」
「カップルになったら面白いけどね〜、個性的で見てて飽きないわ」
「美女と野獣って感じよね」
「ちょっと、それは言いすぎよぉ〜〜〜ッ。男の子が可哀想だわ」
「あ、確かにそうね。じゃあ凸凹カップルかしら」
「それで吉美ちゃんはお父さんへのプレゼントに何を買うつもりなの?」
「ウフフ、あそこの服屋さんでネクタイを買うんだ」
杜王町の中心部に寄り道した吉美達は紳士服の店に向かっていた。
「お父さんってお洒落に気を使ってて色んなカッコいい服を持ってるでしょ?だからプレゼントに服を買うつもりなの」
「確かにあの人はお洒落でカッコいい人だど!でも吉美ちゃん大丈夫?こういうお店って売ってる物の値段も高いと思うんだけど……」
吉美の父親である吉良吉影がお洒落に気を使っているのを知る重ちーは同意しつつも、プレゼントを買うお金はあるのか不安になる。紳士服店という大人向けの店で売っている物を自分達のような小学生の子供が買えるのか心配したのだ。
「心配しないで。今回の為に去年からお年玉やお小遣いを貯めてきたから大丈夫よ」
「いくら持ってきたんだど?」
「ええと、一万五千円くらいあるはずだわ」
「えっ!?」
吉美の言葉を聞いて重ちーが驚愕の声をあげる。小学二年生からすれば一万五千円というのはとんでもない大金であった。
「そ、そんなにお金が必要なの?」
「んー、大人の服ってスゴく高いみたい。しかもブランド物になると十万円以上するのもあるんだって」
「じゅ、十万円ッ!?……お、大人ってスゴいんだなァ」
大人の服がとんでもなくお金がかかる事を知った重ちーはただただ感嘆の声をあげる。そして紳士服店に到着した二人は店に入るのであった。
「じゃあお店に入りましょうか」
「う、うん」
「いらっしゃいませ……おや、お嬢さんじゃないか。ここに来たという事はとうとうお金が貯まったのかな?」
「はい!あのネクタイを買います」
「おおっ、これが紳士服のお店かぁ。店の雰囲気も大人だし、主人もダンディでカッコいいど」
紳士服店に入店した二人を店の主人が出迎える。主人は吉美とは既に何度か会っていたようで吉美がプレゼントを買う為に来店したのを察していた。
「ああ、あのネクタイならお嬢さんの為に取り置きしておいたよ。じゃあ奥から取ってくるから二人ともちょっと待っててくれないかな?」
「はーい」
「わかったど」
主人がネクタイを取るために奥に引っ込むと、二人は待つ間に店内を見回す事にした。
「はえぇ〜〜〜ッ、どの値札も見ても高いど。この小さなピンみたいなものでも二千円以上するなんて」
「それはネクタイピンよ。ネクタイをシャツに留める為のピンね。お父さんが使ってるブランド物もあるわ」
「い、一万二千円ッ!?……こんなちっちゃくても一万円以上するなんてブランド物ってスゲェど」
「ハハハ、ファッションの為なら男女問わず幾らでもお金をかけられる人が多いのさ。坊やも大人になればわかるよ。いや、早ければ中学生頃からお洒落に目覚めるかな?」
ブランド物の値段の高さに驚愕する重ちーを見て、奥から戻ってきた店の主人は苦笑する。
「はい、こちらが品物だよ。お会計は一万円で……よし、確かに。じゃあプレゼント用にラッピングしておくね」
「お願いします!」
「へぇ~、これがプレゼントのネクタイかぁ……………ん、んんっ?」
吉美が買おうとしているネクタイを見て重ちーは思わず困惑する。
「えへへ、かわいいネクタイでしょ?黒猫の模様がチャーミングよね。ウチで飼っているクロミによく似てて一目惚れしたの」
「お、おう」
(確かにかわいいかもしれないけど、あの人に似合うのかな?)
可愛らしいデザインをしたネクタイを見た重ちーは疑問を覚えるが、最終的に空気を読んで肯定する事にした。
「……………うん!中々いいと思うど!あの人もきっと喜ぶと思うど!」
「そうでしょ!えへへ」
「それでいいよ坊や。喜ぶレディに水を差すような真似はよくないからね」
空気を読んだ重ちーと無邪気に喜ぶ吉美を見た店の主人は二人の事を微笑ましく見ているのであった。
「そういえばプレゼントは今日渡すの?」
「ううん、お父さんの誕生日は来年1月だからまだ渡すつもりはないわ。それまでは大事に取っておくつもりよ」
「……というわけで今日吉美ちゃんは吉影のプレゼントを買っておったんじゃ!」
「態々小遣いを貯めて買ってくれたのか。そこまでしなくてもよかったのに」
夜になり吉美が就寝した頃、吉廣から娘の様子を聞いた吉影は愛娘の気持ちを嬉しく思いつつも苦笑していた。
「一万円だなんて小学二年生には大金だろうに。親父も止めてやったらよかったんじゃないか?」
「た、確かにそうなんじゃがのぉ。とても楽しそうに準備をしとったから止められなかったんじゃ」
「ふぅん、自分のお小遣いなら自分の為に使うべきだと思うけど、そこまで私へのプレゼントを買うのが楽しみだったのか」
自分が娘に慕われているのを実感した吉影は暖かい気持ちになる。
「そうか、プレゼントのネクタイは楽しみにしておくよ。デザインはどんな感じなんだ?」
「うーーーん、まあ、その、吉影が普段選ばないタイプのデザインじゃな」
「ああ、個性的な柄なのか。まあ娘からのプレゼントだし大事に使うとするさ」
個性的なデザインだと察した吉影は苦笑しつつも娘からの誕生日プレゼントを待つ事にしたのであった。
「おはよう吉良。へぇ、そのネクタイは新しいやつだな。もしかして娘さんからのプレゼントか?」
「おや、よくわかったな。お察しの通り娘からの誕生日プレゼントさ」
「お前がいつもつけてるネクタイとは随分趣向が違ってたからな。でも誕生日プレゼントだなんてよかったな!親孝行な娘さんを持って幸せだよなぁ」
「フフッ、そうだな。吉美は自慢の娘だよ……まあ午後の営業で外出する時はいつものネクタイに変えるつもりだけどね。このネクタイは決して悪くはないけど、私の今着ている服装とは微妙に合ってないからね」
「あー……確かに少しチグハグな感じだ。お得意先への訪問なら変えた方が無難かあ」
<人物紹介>
●吉良 吉美
→ハンサムでお洒落な父親が大好きな娘。お年玉やお小遣いを貯めて父親へのプレゼントを買った。黒猫の模様がチャーミングなネクタイを一目見て気に入りプレゼントにしようと頑張っていたのだ。そして父親の喜ぶ顔が見れて満足した模様。
ちなみに上機嫌になると父親のような口癖になる。
●重ちー(矢安宮重清)
→吉美の買い物について行き、大人が使うブランド物って高いんだなあと驚いていた。パパの誕生日プレゼント用に小物を買ってプレゼントしたら感動されたので買ってよかったと満足する。
吉美が買ったネクタイは吉影に合わないのではないかと思ったが空気を読んで肯定した。
●紳士服の店と主人
→杜王町中心部にある紳士服店。数多くのブランド物を取り扱っており東方良平や吉良吉影も時折来店しているようだ。店の主人はダンディな紳士だと周囲から評判である。
●プレゼントのネクタイ
→黒猫の模様が書かれたかわいい系のネクタイ。有名ブランドの一品だが売れ残っており、本来三万円のところを一万円にまで値下げされていた。有名ブランド物なので品質はとてもよい。吉影からの評価は悪くない模様。
●吉良 吉影
→娘からの誕生日プレゼントをもらって喜んでいた。自分がいつも選んでいる物とは趣向が違うが大事に使う事にしたのであった。
かわいい系のネクタイなんて日常生活で使えるのかと思うかもしれないが、ジョジョの世界ではネコミミドクロ柄のネクタイをしていても平凡な会社員扱いされるので大丈夫だ、問題ない。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。