「ここがイタリアか」
「承太郎はイタリアに来たのは初めてだったな。イタリアはいいところだぞ」
1992年11月、アメリカから飛行機でイタリアのローマの空港に到着した空条承太郎は興味深い様子で周囲を見回していた。
「メシは美味いし綺麗な女の子も多い。オススメの観光スポットを知ってるからそこに寄るのもいいかもな。イタリアには何度も遊びに来た事があるからガイドは任せてくれ」
「ポルナレフ。私達は、いや俺達は観光に来たわけじゃないんだぞ」
「わかってるさ。でもせっかくイタリアに来たんだし少しくらい観光してもいいと思うぞ?それに徐倫ちゃんへのお土産を買ってもいいじゃないか。ほら行こうぜ」
「はぁ、やれやれだ」
承太郎はいつも通りリラックスした様子のポルナレフを見て苦笑しつつも、大人しくガイドされる事にしたのであった。
「いたぞ。奴だ、空条承太郎だ。DIO様を殺した我々の怨敵が本当に来やがった。ポルナレフも一緒のようだ」
「やはり奴等の目的は「矢」か?」
「ああ、間違いないだろう。組織のボスが「矢」を使ってスタンド使いを量産しているのはスピードワゴン財団も把握しているはずだ。財団が「矢」を確保しようと精鋭を派遣するのは当然だな」
「しかしまさか空条承太郎を送ってくるとは……我々で勝てるのか?」
「恐れるな、戦う前から怖気づいてどうする。これは千載一遇のチャンスだ、我々の手であの仇敵を討ち取るぞ」
「……ふむ、予想通りだな。敵意を感じる。こちらがイタリアに到着したのは向こうも把握しているようだ。それに敵意だけでなく強い殺意も感じる」
「承太郎も気付いたか。この監視者は恐らく以前から我々の事を知っている人間……DIOの残党だろうな。少なくない数の残党共がイタリアに来ているというのは本当だったのか」
ローマを散策していた承太郎達は自分達が監視されている事に気付いていた。
「やれやれ、「矢」の確保だけでなくDIOの残党達の対処もあるとは。日本の杜王町とは違ってヘビーなイタリア旅行になりそうだ」
「悪いな承太郎、俺の我儘に付き合わせてしまって」
「謝る必要はない。「矢」を使ってスタンド使いを量産している奴を野放しにするわけにはいかないからな。早急に「矢」を確保する必要がある」
承太郎はそう言って周囲を見回す。ローマの路地裏では虚ろな目をして座り込む人間が複数おり、そして彼等が注射器を持っているのを確認した承太郎は苦い顔をする。
「スピードワゴン財団の調査通りだ。「矢」を所持する男が設立したギャング組織……パッショーネが急速に勢力を拡大すると同時に、イタリア中に麻薬がバラ撒かれていて薬物中毒者が急増しているというのは本当だったか」
「ああ、少し裏路地を歩いただけでこんなに薬中を見かけるとは。以前イタリアを訪れた時はこうも荒れてなかった」
「スタンド使いを量産して他のギャングとの抗争を制して支配地域を広げ、麻薬をバラ撒いて資金調達か。やれやれ、ギャング組織のボスは碌でもない人間のようだ」
十代前半と思われる痩せた少年が虚空を眺めているのを見た承太郎は一刻も早く「矢」を確保しなければと改めて決意し、ポルナレフも同意する。
「そうだな、できればギャングのボスをブチのめした上で「矢」を手に入れよう。奴等は隠れているようだが手がかりがあるのは幸いだ。ジョースターさんには感謝しないとな」
「ジジイも真面目な時は役に立つ……不倫して隠し子を作ってなければ素直に褒めていたんだが」
承太郎が溜息をつきつつ取り出した写真にはおどおどした様子の少年と、非常に大柄で肥満体の巨漢の姿が写っていた。
「この写真に写っている人間達を探せばいいわけだ」
「少年はともかく、巨漢についてはナポリにいると推測できている。ではナポリに行くとしよう」
「確かお前のスタープラチナで分析したんだっけか。調査員顔負けの分析能力とはスゴいもんだぜ」
「別に大した事じゃない。スタープラチナなら写真の暗がりに写っていた小さなハエだって識別できるからな」
「いや本当にスゴいなスタープラチナ……お前探偵でも食っていけるんじゃないか?」
「フッ、俺は海洋生物学者の方が性に合っているさ」
ジョセフのハーミットパープルによる念写で、パッショーネの幹部であるポルポの居場所を推測していた承太郎達はさっそくナポリに向かうのであった。
「えっ、スピードワゴン財団のエージェント達がイタリアに来ているんですか?」
「ああ、アンタも気をつけた方がいいぜドッピオさん」
一方その頃、パッショーネの親衛隊から報告を聞いた連絡係のヴィネガー・ドッピオが困惑していた。
「空条承太郎、ですか。最近加入してきた貴方みたいな新参の人達がスゴく警戒してますけど、そんなにヤバイ奴なんですかね?」
「おう、そうだよ。あの野郎は本当にヤバイし強いんだ。なにせあのDIO様が負けたくらいだからな」
ドッピオの疑問に新参者である親衛隊の一人は真剣な表情で答える。
「俺以外の残党はDIO様の敵討ちだと気合いを入れているが、勝つのは厳しいだろうよ」
「今の組織でも勝てないと?」
「ん~~〜ッ……まあ無理だな!俺達元残党は所詮負け犬だし、パッショーネのスタンド使いは「矢」によって目覚めたばかりの素人が多い。いくら強力なスタンド能力があっても経験不足の
「えぇ……?」
明るい顔で断言した親衛隊員にドッピオは唖然とする。
「あ、これは俺の勝手な憶測だからボスや仲間達には言わないでくれよ」
「いや言いませんよ。でもだとすれば組織はどうすればいいと思います?」
「できるなら「矢」を渡してお帰りいただいたらいいんじゃないか?組織が麻薬を売り捌いているのは奴等もいい顔してないだろうが、スピードワゴン財団だってイタリア国内の問題に口出しするつもりはないだろうし、奴等が求める「矢」さえ渡せば大人しく帰ってくれるだろうさ」
「いやいやそんなの無理ですよぉ〜〜ッ。スタンド使いを量産できる「矢」のお陰で組織は急拡大できたんですよ?そんな貴重な「矢」を手放すなんて……それにたった二人にビビって譲歩したとなれば組織の面子丸潰れですって」
「まあそうだよなぁ」
構成員の言葉を聞いたドッピオは笑って否定する。スタンド使いを量産できる「矢」はパッショーネにとって必要不可欠であり、いくら敵が精鋭とはいえ手放す事などありえないからだ。
「じゃあやるしかないかぁ。元残党達が玉砕して空条承太郎達を少しでも消耗させてくれる事を願いたいぜ」
「勝てるとは一欠片も思ってないんですね……前から思ってましたけど貴方って他の人達と違って空条承太郎にそこまで敵意とか持ってませんよね?敵討ちに乗り気じゃなさそうですし」
ドッピオはふと疑問に思って親衛隊員に尋ねる。他の残党達と違い目の前の男はDIOの死をそこまで惜しんでいないように見えたのだ。
「んー、まあ、DIO様については昔は尊敬してたけど負けて死んだ敗北者だと思ってるし、今はボスに忠誠を誓っているけどDIO様より強い空条承太郎とはできれば戦いたくないんだよな。これ他の奴等には内緒だぞ」
「ハハハ、わかりましたよ。でもボスから指令がでたら戦うしかありませんよ?」
「それはわかってるぜ。俺は親衛隊なんだから指令があれば空条承太郎に特攻してやるさ」
「いやそこは必ず勝つって言ってくださいよぉ」
真顔で情けない事を言う親衛隊員にドッピオは苦笑するのであった。
「……奴の言葉は話半分に聞くとしても、財団のエージェントは決して油断できない強敵なのは間違いないようだな。私も無駄な争いはしたくはないが、奴等が「矢」を求めているというのなら叩き潰すしかあるまい」
「相手がいくら強くても地の利はこちらにある。復讐に燃える負け犬共を使い消耗させ、疲弊したところを叩けばいいだろう。チッ、まだイタリアを完全に掌握したわけではないしこちらも消耗は避けたいが仕方ないか」
「まあいい、誰であろうとこの帝王の邪魔をするなら容赦はしない。二度と向かってくる事がないよう確実に始末してやる。奴等も「矢」が何処にあるかは把握していないはずだ」
「は?奴等は一直線にナポリに向かっているだと?ナポリには「矢」の管理を任せたポルポがいるがどういう事だ?まさか「矢」の居場所を知っているというのかッ!?……落ち着け、これは試練だ。この試練を必ず乗り越えてみせるぞ」
<人物紹介>
●空条承太郎
→娘の徐倫と親子水入らずの時間を過ごした後、「矢」の捜索の為にイタリアに向かった。妻も事情は把握しており、家族仲は問題ない。ちなみにジョセフの隠し子騒動については妻も承太郎に同情していた。
杜王町の時のように穏便にはいかない事を察しており、徐倫と過ごす間にスタープラチナの特訓もして昔の勘をある程度取り戻していた。具体的には四部承太郎よりも強いし、時間だって五秒程止められるようになった。
●ポルナレフ
→承太郎と一緒にイタリアに来た。万全な状態のポルナレフに勝てる者など殆どいないし、しかも承太郎も一緒なので手が付けられなくなった。原作以上の被害を受ける事が確定したパッショーネは泣いていい。
●DIOの残党達
→DIOが敗北した後途方に暮れていたところをパッショーネに拾われた。多分原作でも似たような境遇の人がいただろうがポルナレフに倒されたと思われる。
承太郎への復讐に燃えているがあっさり返り討ちにされるだろう。承太郎とポルナレフのコンビに勝てるわけないのだ。
●ポルポ
→組織のボスから「矢」を任されたパッショーネの幹部。ジョセフの念写とスタープラチナの分析能力で居場所を把握された。これはポルポが悪いわけでなく念写とスタープラチナがチートなせいである。相手が悪かった。
●親衛隊員
→元DIOの配下だったが現在はパッショーネに忠誠を誓っている生まれながらのスタンド使い。オリキャラ。承太郎達の強さを知っているので出来れば戦いたくないが、ボスからの指示があるなら戦うくらいの忠誠心はある。
DIOの事は昔尊敬していたが、承太郎に敗北したので尊敬するのをやめた。悪の救世主なのに負けてんじゃねーよと呆れていたようだ。
●ヴィネガー・ドッピオ
→親衛隊員の言葉を聞いて苦笑していた。組織の連絡係として頑張っているが、ジョセフの念写に写っていたので承太郎達から怪しまれている。仮に遭遇してしまったらディアボロに切り替わる前に無力化されてしまうだろう。
●???
→一体何処のパッショーネのボスなんだ……承太郎達が一直線にナポリに向かうのを知って動揺する。キング・クリムゾンは無敵のスタンドだし仮に承太郎達と戦う事になっても大丈夫だ、問題ない。
●パッショーネ
→イタリア急速に勢力を拡大している新興のギャング組織。「矢」でスタンド使いを量産し、麻薬をバラ撒いて資金調達しているが周囲のギャング達からは蛇蝎のごとく嫌われている。
ちなみに今は1992年なので五部に出てきたネームドキャラは殆どいない。リゾットやブチャラティがギリギリ在籍しているくらいである。チョコラータ?まだいないよ?
ネタバレですがパッショーネは大きな被害を受けます。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。