「おはようございます」
「おう、おはよう」
「おはようございます吉良さん!」
娘の入学式から2ヶ月が経過した。娘が学校に登校するのを確認した吉良吉影はいつものように会社に出勤して同僚達に挨拶した後仕事の準備を行っていた。
「今日は午後から営業の為に外回りだな。そろそろ本格的に夏が始まるし熱中症には注意しないと」
「よう吉良、お前も外回りか。お互い頑張ろうぜ」
「そうだな」
本日の予定を確認した吉良は同僚と会話する。
「そういえば聞いたか?ウチと付き合いがある食品会社の若い娘さんが行方不明になったって話」
「ああ、テレビのニュースで見たよ。警察も捜索しているが未だに見つかってないとか」
「何処に行ったんだろうなあ?杜王町で見つからないとなると何処か遠くへ駆け落ちでもしたのかね?」
「さあな、私にもわからないよ」
(……まあ
同僚の話に相槌を打ちつつ吉良は新しく手に入れた
「始業時間だ、そろそろ雑談を止めないと上司に叱られるぞ」
「おっと、おっと!そうだったな。課長ったら真面目で厳しいからな~朝から叱られるのはごめんだぜ」
そして雑談を終えた吉良はいつもと変わらない平凡な会社員としての一日を始めるのであった。
「よし、お昼の時間だな」
午前の業務を終えたお昼休みを迎えた吉良は、午後からの外回りの前に昼食を取る事にした。
「今日はお昼はどうしようか。ここは無難にサンジェルマンのサンドイッチにしようか」
「あのぉ吉良さん、よろしかったらあたし達と一緒にお昼を食べませんか?」
「いや、誘ってくれるのは嬉しいけど遠慮するよ。午後から営業で外回りだから手早く食べようと思っているんだ。すまないね」
女性社員達から誘われた吉良は即座に断り、昼食のサンドイッチを買う為に外出するのであった。
「あーあ、また断られちゃった」
「吉良さんってガードが堅いわよねぇ」
「やめとけ!やめとけ!あいつは付き合いが悪いんだ」
残念がる女性社員達を吉良の同僚が笑って慰める。
「吉良吉影、25歳、元既婚者で妻は亡くなり娘と二人暮らし。仕事は真面目でそつなくこなすが、娘さんの事を第一に考え仕事よりも家庭を最優先に考える男だ。会社員としては出世できないだろうな。まっ、あいつ出世には興味なさそうだし問題ないか」
「いいですよね、家庭の事を第一に考える男の人って。家事も一通りこなせるんだろうな~」
「ああ、あいつ結構身だしなみに気を付けてるし器用だから家事も得意だろうな。父親としては本当に立派だと思うぜ」
吉良は周囲から子煩悩な男だと評価されていた。会社員としては平凡だが、会社で出世するよりも家庭を優先する父親の鑑として高評価を受けていたのだ。
「吉良さんって再婚とか考えてないのかしら?少しくらいチャンスはないのかな?」
「おい、おい、マジで狙ってるのか?やめとけやめとけ!あいつ再婚とか一切考えてないぞ。娘を第一に考える親バカだからな」
「そんなぁ……」
自分達が付け入る隙は無いと断言され女性社員達は悲しそうな表情を浮かべる。そして彼女達は諦めて自分達だけで昼食を食べる事にしたのであった。
「でもあいつが親バカになる気持ちはわかるよ。娘さんは本当に可愛かったからなぁ」
「私も吉美ちゃんに会いましたよ。以前吉良さんが会社に連れて来た時に会ったんですけど、吉美ちゃんったらすごく大人しくて可愛い子でした」
「そうだなぁ、本当に大人しくていい子だったよ。俺の2歳になる息子とは大違いだぜ。俺の子も同じくらい可愛いけど五月蠅いし目を離すとすぐ何処かへ行こうとするし、気に入らないと泣き出すから困ったもんだよ」
「アハハ、苦労してるんですね。子育てって大変なんだなぁ」
「何処かで噂されているような気がする。まあいいか……ああ、すまないね。そんな怒らないでくれ。女の子達に昼食を誘われたからってすねないでほしいな。すぐ断っただろう?」
「え?家で弁当でも作って持ってくればいいんじゃないかって?いや確かにそうだけど、弁当を用意する手間を考えたら面倒なのさ。それに杜王町はお店が色々とあって食べる場所には困らないからね、その時の気分で昼食を決めるのも楽しいものだよ」
「じゃあ予定通りサンジェルマンのサンドイッチを買うとしよう。あそこのサンドイッチは人気商品だから早く買わないと売り切れてしまうし急がないと」
「最後の一個を買えてよかったね。このカツサンドは二人で一緒に食べようか……私の作った弁当を食べてみたい?うーーーん、家事については一通りこなせると自信があるし、料理の腕も人並み以上はあると自負しているが、君に食べさせるのは少し恥ずかしいな」
「申し訳ないが諦めてくれないかな?うん、よしよし。聞き分けのいい子だね。君とは名残惜しいけどこのカツサンドを食べたらお別れしようか。ああでも、最後にトイレで拭いてくれると嬉しいな」
「ふうぅ~~~ッ、幸せな気分だなぁ。君のお陰で午後からの外回りを頑張れるよ。ありがとう、じゃあさようなら……キラークイーン」
「ただいま戻りました」
「おう、お疲れさん」
「10件営業して3件の契約を獲得したのか。結構いい成果じゃないか」
「フフ、誠心誠意こめて説得したら契約してくれたよ」
営業の成績を見た同僚の褒め言葉を聞いて吉良は機嫌をよくする。
(会社に残り続ける為にも最低限の結果は出しておかないとな。娘の育児という口実のお陰で私生活を優先できるが、それが許されるのは仕事で結果を出しているからだし)
カメユーチェーンは育児に寛容な会社であるが、自分の我儘が許されているのは仕事で結果を出しているからだと吉良は理解していた。そんな吉良に対して同僚は飲み会への誘いをする。
「そうだ、一応聞いておくがこれから俺達は飲みに行くけど吉良はどうする?」
「おいおい、わかってて聞いてるのか?もちろん断るさ、娘が待っているし定時になったら帰宅するよ」
「だよな、だよな!本当に父親の鑑だよお前さんは」
きっぱりと断った吉良に対して同僚は苦笑しつつも父親の鑑だと褒めるのであった。
「では失礼します」
「ああ、お疲れさん」
定時となった吉良は速やかに帰宅の準備をして車に乗り自宅へと向かう。
「今日の夕飯はどうしようか。吉美の成長の為にも栄養バランスを考えて料理する必要があるし。親父に任せるのは……やめた方がいいか。親父は味付けが濃いからな」
車を運転しつつ夕食の事を考える吉良は傍から見れば父親として合格であった……度し難い
「しかし私がこうして育児を頑張れるとはな。自分で言うのも何だが以前の私なら自分の時間を優先していただろうに」
ふと吉良は自分の変化を自覚し随分変わったものだと苦笑する。かつての自分なら私生活を優先し娘を放置していたかもしれないと思ったのだ。
「自分より他人を優先するなんて若い頃の私なら考えられないな。これが父親になったという事なのかな?……馬鹿な事を考えてないで運転に集中するか。そろそろ家が見えてくるはずだ」
吉良は思考を切り替え安全運転を心がける事にした。
「お父さんおかえりなさい!」
「おお、おかえり吉影」
「ああ、ただいま二人とも」
帰宅した吉良は愛娘の吉美と父親の吉廣に出迎えられていた。
「吉美は大丈夫だったかい?最近行方不明になる人が多くて不安なんだよ」
「うん、だいじょうぶ!おじいちゃんがいつもいっしょにいてくれるもん!」
「そうか、それはよかった。親父も吉美を守ってくれてありがとう」
「礼はいいぞ吉影、儂も吉美ちゃんに悪い虫がつかないよう見守るつもりじゃ!」
「いや気が早いよ親父……待たせて悪かったね。これから夕食を作るからいい子で待っててくれないかな?」
「はーい!」
元気よく返事する娘を見て笑顔を浮かべる吉良は早速夕食の支度を始める事にしたのであった。
「このお肉おいしい!」
「それはよかった。母親の生姜焼きの味を再現しようと頑張ったが味は悪くないようだ」
「うおおおぉぉん!これだ!この味だっ!亡き妻がよく作ってくれた生姜焼きの味じゃッ!また食べる事ができるなんて夢みたいじゃあぁ~~~ッ!」
「親父五月蠅いぞ、食事中は静かにしてくれ。とりあえず再現は上手くいったようだ。でも幽霊が生姜焼きを食べるってどういう事なんだ?生姜焼きが虚空に消えていくのは怪奇現象にしか見えないぞ……」
「出来ると思えば出来るようになるんじゃ!かつて旅先で出会った占い師の婆さんもそう言っておったぞ!」
「へーすごーい!」
「なんだその理屈は」
「それでね、となりの席になった重ちーくんったらおもしろい子なんだ。お昼の休み時間ではよくいっしょに遊んでいるの」
「話を聞く限り随分と個性的な子だな。親父も知っているのか?」
「ああ、重清君か。ドリアンみたいな髪型をしとるすごく特徴的な子じゃ」
「……本当に個性的な子だなあ。吉美に悪い影響がないといいんだが」
「まあ個性的だが悪い子ではないぞ。親に愛されているようだし素直な子じゃよ。吉美ちゃんも面白い珍獣だと気に入ったようだし大丈夫じゃろ」
「珍獣って、まあ悪い虫と判断されるよりはマシなのか……?」
「ねえお父さん、わたしペット飼いたいな」
「ペット?ペットって犬とかウサギとかを?」
「ううん、ネコさん!ネコさんがいい!」
「猫?猫かあ、気難しい子が多いという話だが吉美に飼えるかな?」
「わたしちゃんとお世話する!」
「うーむ、吉美ちゃんの寂しさを紛らわせるのにいいかもしれんな。吉影、儂も世話するから許してあげてくれんかのう?」
「まあそこまで言うなら……じゃあ今度の休みの時にでもペットショップに行こうか」
「わあい!お父さんありがとう!」
「……スゥ……スゥ……」
「寝顔もかわいいものだね」
夕食を食べ終わった吉良一家はその後風呂に入って体の疲れを取り、暖かいミルクを飲んでストレッチを行い就寝する事にした。娘の吉美がすぐに寝入ったのを確認した吉良は娘の寝顔を見て微笑ましく思いつつ自分も眠る用意をする。
「……不思議な感覚だな、こうやって娘の寝顔を見てると元気が湧いてくる。明日も頑張ろうという気持ちになるんだ」
「そうじゃろうそうじゃろう!儂も幼い頃の吉影の寝顔を見て心が暖かくなったものじゃ!吉影の為ならなんだって出来ると思ったもんじゃよ」
「ああ、その気持ちが少しわかる気がするよ。そろそろ自分も寝るとするか。おやすみ親父」
「おやすみ吉影」
そうして吉良は今日も平穏な一日を過ごす事が出来たと満足しつつ就寝するのであった……悍ましい
「おとうさん!ネコちゃんになにか刺さっちゃったあ!」
「よ、吉影!「矢」が、「矢」が動いて猫に刺さったんじゃ!儂や吉美ちゃんは何もしとらんのに箪笥から勝手に出てきて猫に刺さったんじゃッ!?」
「ニャア」
「……こいつ、私のキラークイーンを見ているな。厄介事になる前に始末しておくか?」
しかしそんな平穏な日常もペットショップで買った猫に「矢」が刺さった事で一波乱が起きるのであった。
<人物紹介>
●吉良吉影
→ジョジョ4部のラスボス。家庭と娘を優先する父親の鑑だと周囲から評価されている。今で言うならイクメンである。殺人欲求?誰にだって欠点の一つや二つはあるものだから……欲求が満たされていれば非の打ち所がない父親の鑑なのだ。
原作では
猫が「矢」によって異能を手に入れた事に困惑しつつ、自分や家族に危害を加えるなら容赦はしないと臨戦態勢になった。
●吉良の同僚
→「やめとけ!やめとけ!」から始まる台詞で有名なモブキャラ。知名度は結構あるのに原作だとほんの少ししか登場しない名無しのモブである。個性的なモブキャラが多いのもジョジョの魅力だと思います。
この世界では妻帯者で子持ち。吉良については男一人で子育てだなんて大変だなぁと同じ男として尊敬しているようだ。
●女性社員達
→吉良を誘ったが断られてしょんぼりする。傍から見れば吉良は顔がよくてイクメンなので騙されるのは仕方ない。
●カメユーチェーン
→社員が育児を優先するのを尊重する企業の鑑。あの我儘な吉良が入社を決めた会社なのでホワイト企業なのは当然である。吉良の事は子供を第一に考えるよき父親だと評価しているが、仕事より家庭を優先する男を出世させるのは消極的。吉良としても平社員の方がいいし中間管理職など冗談ではないので文句はない模様。
●今回の
→吉良吉影に殺された犠牲者の手首。カメユーチェーンと付き合いがある食品会社の若い娘さんだが吉良は別に気にしていない。性格は穏やかで優しく吉良も一目見て気に入って
●サンジェルマン
→原作にも登場したパン屋さん。11時に作られたサンドイッチはホカホカで絶品であり、吉良も気に入ってよく購入している。カツサンドは特に人気ですぐ売り切れる為早めに行かないと買えないようだ。偶に変わり種として味噌カツサンドや鳥カツサンドが限定販売されている。
●
→吉良吉影の一人娘。オリキャラ。学校生活を楽しみつつ無邪気に暮らす可愛い娘である。隣の席の男の子と仲良くなった。
父と祖父がいるが少し寂しさを感じておりペットを欲しがった結果猫を飼う事になり喜ぶ。だが家に連れ帰った猫に「矢」が刺さるという急展開に困惑しているようだ。
●吉良 吉廣
→写真の親父。故人。孫娘が健やかに成長するのを傍で眺める事ができて大満足な様子を見せる。食事をするのはオリジナル設定だが出来ると思う事が肝心だとエンヤ婆も言っていたので大丈夫だ、問題ない。
孫娘が寂しくないようペットを飼う事を後押しした祖父の鑑だが、猫に「矢」が刺さって呆然とする。
●重ちー
→原作キャラの矢安宮重清である。この世界では吉美の同級生でクラスメイトであり、小学校の頃からドリアンのような特徴的な髪型をしている。まだスタンドに目覚めてはいない。
吉美からは面白い子だと高評価であり本人も悪い気分ではない模様。原作では守銭奴だが何だかんだ悪い子ではないので吉廣も悪い虫とはギリギリ判断しなかった。
両親は非常にまともで良識もあり、「息子と仲良くしてくれてありがとうございます」と吉影に挨拶に来た時は「すごく真面な親だな……こんな両親からあんな個性的な子が生まれるとは世の中不思議だなあ」と吉影は不思議に思ったようだ。
●ネコちゃん
→吉美が飼いたいとせがんでお迎えした猫。吉美が猫を欲しがった理由は赤ん坊の頃にネコさん(キラークイーン)に可愛がられた事を薄っすらと覚えていたからである。非常に賢い猫であり吉影も「この猫なら世話も楽そうだ」と高評価であった。
家に来た直後に「矢」に刺されてスタンドガチャをした結果スタンド使いになる。能力については次回にて。
●「矢」
→古代に作られた特殊な矢。不思議なウイルスが付着しており、刺されると殆どの生物はトマトソースになって溶けて死ぬという危険物だが、素質があればスタンド使いになれるすごい道具である。
吉影達はこんな危険物を娘に触らせるつもりはなく鍵付きの箪笥に厳重に保管していたが、何故か勝手に動いて猫に刺さってしまった。勝手に動き出すのは原作でもあったので大丈夫だ、問題ない。
趣味で書いているので更新はおそくなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。