吉良親子は静かに暮らしている   作:すも

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息抜きを兼ねて投稿しました。更新は不定期です。


露伴少年は生まれ故郷を訪れる

「ふぅん、ここが杜王町か。そこそこ繫栄しているじゃないか。まっ、東京に比べれば悲しいくらい貧相だけど」

 

1993年、杜王町にサマーシーズンが到来し観光客が大勢来訪する季節になっていた。杜王町駅に降りて周囲を見回した少年……岸辺露伴は田舎町にしては繫栄しているなと少し感心していた。

 

「僕の生まれ故郷らしいが記憶は殆どないな。両親が里帰りするのに無理矢理同行してみたが何をしようかな……しかし何故二人とも僕を連れて行くのを渋ったんだろう?」

 

両親が帰郷するのに同行してみたが特にやりたい事もない露伴はこれから何をしようかと考え込む。

 

「どうも何か事情があるようだが気になるな。お前が知るのはまだ早いと二人は言っていたが……フン!そう言われると余計気になるじゃないか。よし、調べてみるか。漫画のいいネタになるかもしれないしな」

 

露伴としては杜王町に帰郷する気はなかったのだが、両親が自分に何か隠しているのを察していた露伴は内心ムカついており、来ないでいいと言われて天邪鬼となり強引に同行していたのだ。そして露伴は漫画の練習と並行して、ネタ集めを兼ねた取材調査を行う事を決意するのであった。

 

 

 

「というわけで過去に杜王町で起きた出来事について何か心当たりはあるかな?」

「……色々と言いたい事はあるけど何で俺に聞くんだよ」

「公園で呑気にギター演奏してる暇そうな奴を見つけたから一応聞いてみる事にしたんだよ」

「うっせーなボケ!」

 

杜王町の公園を訪れた露伴はギター演奏をしている少年……音石明を見つけて聞き込みを行う事にした。色々と失礼な露伴に音石はイラつきつつも律義に応じていた。

 

「残念だが過去の事件とかよく知らねーよ。他をあたってくれ」

「ふーん、そうかい。まあ期待してなかったし他の人に聞くとするよ」

「失礼な奴だなオイ……そういうのってよぉ、図書館とかで調べたらいいんじゃねーの?」

「君に言われなくてもわかっているさ。でも地元の人間なら何か知ってると思ったんだがな」

 

難しい顔をする露伴を見て音石は溜息をつきつつ提案する事にした。

 

「ハァ、じゃあ俺のファンであるジジババ達に聞いたらどうだ?ジジババ達は色々と物知りだし過去話とか話してくれると思うぞ?それとこの後俺はライブするからよかったらお前も聞いてくれよな!」

「へぇ~~~ッ、君なんかにファンがいたなんて驚きだ。少しだけ見直したよ」

「本当に失礼な奴だなオメー!」

 

素直に感心している露伴を見て、音石は目の前の少年を殴りたい衝動を抑えて公園ライブの準備をするのであった。

 

 

 

「おぉ、まったく期待してなかったが上手いじゃないか。意外とやるなぁ、これならギタリストとしてやっていけるとは思うよ。成功できるかは別としてね」

「……オメーが褒めてるのはわかるが言い方がスゲームカつく」

 

音石のギター演奏を聞き終えた露伴は軽く拍手しつつ音石の腕前を褒めていた。

 

「でもレパートリーがちょっと、いやちょっとどころではなく古くないか?それじゃ万人受けは難しいぞ」

「いや俺も本当は最先端のロックな曲が好きだけど、ジジババ達のリクエストがことごとく古い曲ばかりでさぁ……まあギターの練習になるから別にいいけど」

「ふぅん、見た目によらず老人達に優しいんだな。意外だよ。ギタリストなんて道歩く老人を八つ当たりで蹴飛ばしてもロックだと嘯いてそうなのに」

「お前ギタリストを何だと思ってるんだ?それはロックじゃねーよ、ただの暴行罪だ!……そういやジジババ達に聞きたい事があるんだろ?おいアンタ達、この失礼な奴が何か聞きたいらしいぜ!」

 

露伴のギタリストへの偏見を訂正しつつ音石は周囲にいるファンの老人達を見回した。

 

「ああそうだった。すみません、自分は岸辺露伴といいます。この杜王町で過去にあった事件について調べていまして、何か心当たりはありますでしょうか?」

「ふむ、君は観光客かね?折角の夏休みなのに公園で取材とは変わっているのぉ~」

「ねえちょっと、坊や岸辺って名乗ってたわね。もしかして昔杜王町に住んでいた岸辺さんの息子さんなのかい?」

「ええ、杜王町は僕の生まれ故郷らしくて。まあ10年程前に東京へ引っ越したから当時の記憶は殆どないですけど」

「10年前?10年前に東京に引っ越し……………あっ、あぁ~~~ッ!そうかそうか、岸辺さんの露伴君かぁ!思い出したわい、大きくなったのぉ~~~ッ」

 

(おぉ、老人達は僕の事を知っているのか。これは期待できそうだぞ!いい漫画のネタになるかもしれない!)

 

露伴が10年前に引っ越した岸辺家の子供だとわかった老人達は懐かしそうな顔をする。そして露伴は当時を知る老人達から話を聞いてみようと少し興奮した様子を見せていた。

 

 

 

「そのですね、当時の話を聞きたいんですよ。両親に聞いても口を噤みますし、僕を杜王町に連れて行くのを嫌がりましてね。貴方達から色々と話を聞きたいのです」

「ああ、それは」

「ちょっと吉田さん!あの事件の事なら言わない方がいいんじゃないかねぇ」

「えっ、あっ」

 

口を開こうとした老人を他の老人が制止する。指摘された老人はハッとした表情を浮かべて沈黙し、他の老人達もばつが悪そうにしていた。

 

「……ちょっと、なんで黙るんですか?それに僕の事を気の毒そうに見るなんて。理由を教えてくださいよ」

「その、坊やは覚えてないのかい?」

「何のことですか?黙って饅頭と茶を差し出しても僕は誤魔化せませんよ」

 

老人達が言いづらそうな様子を見た露伴は少しイラつきつつも教えてほしいとせがむ。

 

「いやその、ううむ」

「あれは、ちょっとのぉ」

「忘れているなら、忘れたままの方がいいと思うがねぇ。少なくとも大人になってから教えた方が……坊やの両親が黙っているなら私達から言うのはやめた方がいいかもねぇ」

「ふざけないでくれ!僕は今知りたいんだッ!」

 

口を閉じる老人達に露伴は苛立ちを覚える。そしてその様子を見ていた音石は助け船を出す事にした。

 

「なあ爺さん達、教えてやってもいいんじゃねーの?黙ったままだとコイツ絶対に納得しそうにないぞ。下手すれば家までついて来るんじゃないか?」

「そうだ!僕は子ども扱いされて教えてもらえないのが一番嫌いなんだ!教えてくれるまでここから一歩も動かないし家までついていくぞッ!僕はとことん調べる性格なんだ!」

「えぇ、マジかよお前……爺さん達の反応を見るにろくでもない事件だったようだけど、この図々しい奴なら余裕で耐えられると思うぜ」

「う、うーーーーーむ?」

 

音石の言葉を聞いた老人達は露伴に教えていいのか悩む。

 

「でも重ちー君や吉美ちゃんもおるしのぅ、小さい子に聞かせるわけには」

「あー、じゃあ俺がコイツらを連れて行くよ。おいファン一号と二号!俺はこれからオーソンにアイスを買いに行くがファンサービスとして特別に奢ってやるから一緒に行こうぜ」

「わーい、ありがとだど!」

「ありがとうお兄さん」

 

空気を読んだ音石は吉美と重ちーの二人を連れて離れる事にしたのであった。

 

 

 

 

 

「ふぅん、アイツ意外と気が利くな……もう子供達もいませんし今度こそ話してもらいますよ」

「はぁ、しょうがないのぉ。かなりショッキングな事件じゃが覚悟して聞くんじゃぞ?」

「はぁ?貴方達は僕がそんな柔な人間に見えるんですか?」

「い、いや、会ったばかりじゃが露伴君が図太い精神をしたタフな子だというのはよくわかるぞい」

 

 

 

 

 

「……ここが杉本家の墓か」

 

老人達から当時の話……杉本一家惨殺事件の話を聞いた露伴は墓地を訪れていた。杉本家の墓の前まで来た露伴は墓碑を調べて1983年の8月13日に亡くなった杉本家の人達を確認していた。

 

「図書館で調べた通りだ。杉本鈴美16歳……僕はあの日杉本家に泊っていて、僕一人だけが生き延びたのか」

 

老人達から言われるまで忘れていた露伴は当時の事を思い返そうとするも上手くいかず頭を振る。

 

「クソッ、当時の事を思い出せない。この杉本鈴美って人に可愛がられていたようだが何も思い出せないな……10年以上経っても犯人は捕まっていないか。一体誰が杉本家の人達を殺したんだ?」

 

事件の犯人がどんな人物なのか考えていた露伴はどのような犯人なのか想像してみる事にした。

 

「警察は未だに捜査しているようだが何も手掛かりがなくてお手上げ状態らしい。警察でもわからないなら素人の犯行じゃないな。ならば裏社会のプロ?だが杉本家は何の変哲もない一般家庭で裏社会の繋がりなんてない。金目当ての物取りなら一家皆殺しなんてリスクは犯さないはずだ」

 

色々と想像した露伴であったが、考えてもわからないので溜息をついて思考を中断する事にした。

 

「考えるのはここまでにしておこう。興味深い話だが今構想中の漫画のネタには使えないな。僕の書きたい漫画は少年漫画だし推理物じゃない。いずれ書いてみてもいいかもしれないが、まずは画力や構成の研鑽に専念しよう」

 

当時の事件について思いをはせた露伴は、まずは自分の夢である漫画家デビューを目指して修行する事を決意したのであった。

 

「僕は漫画家になりたいのであって、探偵になるつもりはないからな……でもこの町は、杜王町は中々悪くないな。ゴチャゴチャした東京と違って静かで落ち着いているし、漫画を描くのに集中できそうだ。いずれ漫画家として独り立ちできたら引っ越してもいいかもしれない」

 

 

 

 

 

―過去にこの杜王町で起きた忌まわしい事件、杉本一家惨殺事件から10年が経過しました。警察は捜査を続けていますが進展はなく事件は未だ謎に包まれており……―

 

「あ、私が生まれる前にこんな事件があったんだ。ちょっと怖いな」

「ふーむ、物騒な事件だなぁ。まだ犯人が捕まっていないとは……吉美も気を付けるんだよ」

「うん、わかった。でもお父さんやおじいちゃん、それにクロミがいるから心配してないわ」

「フフ、ありがとう」

 

 

 

 

 

<人物紹介>

●岸辺 露伴

→この時点ではまだデビューしておらず漫画家志望の少年である。性格が悪いのは生まれつきなので大丈夫だ、問題ない。杜王町の事は中々気に入った模様。

 

 両親の帰郷に無理矢理同行し杜王町で調査した結果、原作よりも早く自分のショッキングな過去を知ったが「はえーそんな事があったのか……これは今考えている漫画のネタには使えないなぁ。でも面白そうだしストックしておこう」と考える心のつえぇ奴である。

 

 形兆の「矢」はスピードワゴン財団が回収済みなので「矢」によってスタンド使いに覚醒することはない。だが岸辺露伴なら自力でスタンド使いになってもおかしくないだろう。だって岸辺露伴だもの。

 

 

 

 

●音石 明

→今日も元気に公園でギター演奏している。地道な努力を続けておりファンも少しずつだが順調に増えている。露伴についてはムカつくボケ野郎だとは思いつつも、空気を読んで吉美達を連れて離れたギタリストの鑑である。

 

 

 

●老人達

→10年前に引っ越した岸辺家の事を知っていた。そして杉本一家惨殺事件の事も知っており露伴からせがまれて話す事にした。特に堪えた様子もない露伴を見て図太くてタフな子だなぁと感心したようだ。

 

 

 

●杉本一家

→10年前に吉良吉影に殺された人達。杉本鈴美は成仏せず振り返ってはいけない小道に愛犬と一緒に残っている。

 

 

 

●吉良 吉影

→杉本一家惨殺事件のニュースを見て「怖い事件だなぁ、犯人は捕まってないのか。まあ私なら娘を絶対に守ってみせるがね」と呑気に考えていた。

 

 

 

 

 

 その後就寝前に「あ、そういえば自分が殺したんだった」と思い出していた殺人が趣味のブタ野郎である。大学入学後は学生結婚や娘が誕生するなど怒涛の展開が続いていたのですっかり忘れていたようだ。吉良吉影は前向きに生きている男だからね仕方ないね。




趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。
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