僕の名前は広瀬康一、12歳の中学一年生だ。中学生になって数ヶ月が過ぎたが新しい学校生活にもすっかり慣れていた。クラスメイトは皆親切で優しいし、担任の先生は真面目で厳しいけど僕達生徒の事を第一に考えているいい先生だ。中学に入学する前は少し不安を覚えていたけど、今では学校生活を満喫できていると思う。
「ただいま〜」
「おかえり康一」
それに最近は学校以外でも嬉しい出来事があった。まあ世間から見れば大した事ないんだけど……僕の入学祝いとして家で猫を飼う事にしたんだ。
「ニャ-」
「ただいまエリザベス」
帰宅した僕を迎えてくれたこの黒い雌猫はエリザベス。小学六年生の時に近所で見つけた野良猫で、僕の事が気に入ったのか家までついてきた。そこから色々あったけど、今では家族の一員として受け入れられている。
「ニャ、ゴロゴロ……」
「康一によく懐いているわねぇ。私だと少ししか撫でさせてくれないのに」
エリザベスは僕によく甘えてくるけど、他の家族にはちょっと冷たいみたいだ。まあ一応撫でさせてくれるし、犬のポリスと一緒にいる事が多いから家族の事を嫌っているわけじゃないだろうけど。
「エリザベス、僕の事が好きなのは嬉しいけど、母さん達にも構ってあげてほしいな」
「……ニャーオ」
「あらこっちに来たわ。康一の言う事には従うのね。でも言葉がわかるなんて本当に賢い猫だわ〜、人間並に賢いかもね」
僕の言葉を聞いてエリザベスは母さんに近寄ってされるがままになっていた。猫の知能は犬並みで人間でいうと幼児程らしいけど、エリザベスはどう見てもそれ以上に賢い猫だ。
「明日は週末だから家でエリザベスと一緒にゆっくりしようかな。あ、でも文房具の替えを買っておかなきゃ。ええと、ノートと消しゴムとそれから……」
「じゃあ康一、買い物に行くならついでにトイレットペーパーとかも買ってきてくれない?そろそろ予備がなくなりそうなのよね〜」
「……うん、わかった」
母さんから買い物リストを渡された僕は迂闊な事は言うものじゃないと少しだけ後悔していた。
「猫の調査じゃと?」
「ああ、杜王町に生息している猫達の調査を行うつもりだ」
一方その頃、杜王町に来ていた空条承太郎は猫達の調査を行うとジョセフに伝えていた。
「どうしたのじゃ急に。お前は海洋生物学者であって猫の専門家ではないはずじゃが」
「以前町を訪れた時よりも随分と猫が増えているように見えた……俺は調査する必要があると考えている」
「考え過ぎだと思うがのぉ」
杞憂ではないかとジョセフは笑うが承太郎は真剣な表情を崩さず言葉を続ける。
「いや、これは俺の勘だが、放置しておくと不味い事になるかもしれない」
「承太郎がそこまで言うとは。でも一体何を心配しておるんじゃ?」
「……この杜王町に住んでいるスタンド使いの吉良吉影はクロミという猫を飼っている。そしてその黒猫は「矢」によってスタンド使いになっていた」
「ふむ、動物のスタンド使いか。イギーを思い出すのぉ……えっ、いや、まさか?」
「ああ、最悪の場合この杜王町には既に猫のスタンド使いが複数存在しているだろうな」
「オーマイガッ!?」
承太郎の推測を聞いたジョセフは思わず顔を青ざめる。ジョセフからすれば息子である仗助が住む杜王町でスタンド使いが複数存在するなど悪夢でしかなかったからだ。
「スタンド使いの子供は生まれながらに素質を持つ者が多い。そして「矢」を使わなくてもスタンド使いに覚醒した例も確認されている。人間でそうなら猫だって同じ事ができるはずだ」
「あ、あわわ」
「あのクロミという黒猫は吉良吉影とその家族には従っているようだが、それ以外の人間にはどう対応するかは未知数だ。放置する事はできないな」
「ま、不味いぞ承太郎!一刻も早く止めなければッ!」
「わかっている。まずは明日軽く調査してから吉良吉影の家を訪問して確認するつもりだ」
承太郎は溜息をつきつつ吉良吉影に確認する為に訪問する事を決意した。
「むぅ、大丈夫なのか?罠を張っているかもしれんぞ?」
「いや、それはないだろう。この状況は吉良吉影にとっても想定外のはずだ。もしかすれば何も知らない可能性がある」
「どういう事じゃ?」
「「矢」をあっさり渡してきた男がスタンド使いを増やす理由はない。そんな事をすれば財団に警戒されるのは理解しているはずだ。自分の住む町でスタンド使いが続々と増えていくのはあの男も望んでいないだろう」
ジョセフの危惧に対し承太郎は問題ないと答える。吉良吉影は何か隠しているようだが、平穏な生活を送る事に固執しているのは理解していたからだ。平穏を望む男が自分からトラブルとなる原因を作るわけがないと。
「まあ俺の杞憂であってほしいが、残念ながらこういう時の勘はよく当たるものだ……やれやれだな」
「うーむ、儂も一緒に行って手伝うべきかの?」
「無理はするなジジイ。随分と衰えているしはっきり言って足手まといだ」
「なぁにおう!儂だって最近波紋の練習を再開しとるんじゃぞ!どうじゃこの若々しい動きを!儂だってまだまだやれるだろう!」
「歳の割によく動けるのは認めるが、あのエジプトの旅の時より鈍くなっているな。無理しなくていいぞジジイ」
「ぐぬぬ」
承太郎から辛辣な評価を受けたジョセフは歯軋りして悔しがる。
「それよりもジジイは仗助君に会うべきだ。ジジイも楽しみにしていただろ」
「あ、そういえばそうじゃった。仗助君は元気にしとるかのぉ〜〜〜ッ」
「……やれやれ」
だが仗助の話題になると一転してウキウキした表情を浮かべたジョセフを見て承太郎は溜息をついて苦笑するのであった。
「……それでさ、じいちゃんと母さんは俺が一目惚れしたカッチョよくてグレートなブランドの靴を買うのに反対してるんスよ。俺の小遣いで買うんだから別に文句を言われる筋合いはないはずなのになぁ〜」
「ふぅーむ、背伸びしたい気持ちはわかるがブランドの靴を買うのはやめた方がいいと思うがのぉ」
「……………」
「えぇ~〜〜ッ?何でだよぉ、爺さんまで反対するとは思わなかったっスよ」
「いや、儂は小遣いを貯めてブランド物を買う事を否定してるわけじゃないぞ。じゃが今の仗助君は成長期だからすぐ履けなくなってしまうじゃろうな。靴ではなく小物を買ってみたらどうじゃ?背が伸びても小物なら問題なく使えるじゃろう」
「……………おい」
「あ、そうか。そういう事か。道理でじいちゃんが苦笑いして止めたわけだ。なあ爺さん、俺も爺さん並に背が高くなれるかなぁ?」
「うむ!なぁんにも心配せんでいいぞ仗助君!儂の孫の承太郎は儂並にデカくなったし、儂の息子である仗助君も大きく育つじゃろうよ!」
「おぉ~、それはグレートな朗報だぜ!」
「おい二人とも、何故俺についてくるんだ」
呑気な様子で雑談するジョセフと仗助を見て承太郎は苦い顔を浮かべる。一人で調査するはずがジョセフ達が同行するという予想外の展開になっていたのだ。
「いやぁ、承太郎一人だと不安じゃし地元に住んでいる仗助君なら何か役に立つかもしれんから一緒に同行しようと思ってな」
「百歩譲ってジジイはいいが仗助君はダメだ。いくらスタンド使いとはいえまだ子供の彼を同行させるわけには……スタンド使いとの戦闘が起こるかもしれないんだぞ」
承太郎の危惧にジョセフは真面目な表情を浮かべて答える。
「まあ聞け承太郎、確かに仗助君はまだ子供じゃがスタンド使いとして覚醒しておる。いずれ敵スタンド使いに遭遇して戦う事になるかもしれん……そうなる前に心構えなどを教えるべきじゃと儂は考えておる」
「事前に経験を積ませると?言いたい事はわかるがスタンド使い同士の戦いは基本的に命がけなんだぞ」
「なーに、心配はいらん。儂と承太郎がいるなら並大抵の敵など怖くないわい。それに本当に危険な状況になったら儂が命を懸けて仗助君を逃がすつもりじゃからな」
「……仗助君はどうしたい?」
ジョセフの話を聞いた承太郎は最終的に仗助本人の意思を確認する事にした。それに対して仗助は迷いのない目で答えた。
「俺は行くつもりっスよ。この町で何かよくない事が起きているなら放っておけないっスからね」
「やれやれ、強情なのはジジイ譲りのようだな……危なくなったら自分の命を最優先に考えてくれ。いざとなればジジイを囮にして逃げてもいい。ジジイは無駄にしぶといから囮にしても大丈夫だ」
「はい!」
「それはちょっと酷くないかのぉ……」
ヨヨヨ、と泣くふりをするジョセフを無視しつつ承太郎は仗助達を連れて調査を開始するのであった。
<人物紹介>
●広瀬 康一
→杜王町が誇る変人ホイホイ。この世界では「矢」によってスタンド使いに覚醒する事はなくなった。でも勇気と黄金の精神はそのままなので変人達を引き寄せていく事だろうが大丈夫だ、問題ない。
それと最近になって雌の黒猫に懐かれて家で飼う事にしたようだ。
●エリザベス
→去年生まれたばかりの若い雌猫。康一君の事を気に入り家に居座った。とても賢い猫であり広瀬家の人達から可愛がられている模様。
●空条 承太郎
→杜王町で猫達が増えている事に気付き調査する事にした。多分吉良家で飼われている黒猫のせいだろうなと察している。
ジョセフ達が同行する事に難色を示しつつ、最終的に一緒に調査する事にしたのであった。
●ジョセフ・ジョースター
→波紋の訓練を頑張っているので原作四部より若々しく元気である。見た目は三部ジョセフが少しスリムになった感じ。
仗助に経験を積ませようと考えて承太郎の調査に同行する。自分と承太郎がいるなら大丈夫だろうと呑気に考えているがまあ間違ってはいない。承太郎&ジョセフ&仗助のジョースタートリオとか誰も勝てないだろう。
「イタリアみたいにギャングやDIOの残党達が待ち構えているわけじゃないし大丈夫じゃろ!よーしいい機会だし仗助君にいい所見せるぞー!」と能天気に張り切っているが、いざとなれば躊躇なく命を懸けて仗助を逃がす父親の鑑である。
●東方 仗助
→黄金の精神を持つグレートな中学生。中学生になってお洒落に目覚めたがブランド物が好きなのは良平のせいである。
原作では15歳の時点で身長が175cmあったので、大人になる頃にはジョセフ並に成長していてもおかしくはないと思われる。まあジョセフの息子だし大丈夫だろう。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。