「すごい人の数だ、まだ早朝なのにこんなに集まっているなんて」
ぶどうヶ丘小学校で運動会が行われる当日、小学校を訪れた吉良吉影は既に大勢の保護者が集まっているのを見て驚いていた。
「チッ、これではいい席を確保するのは難しいな。親父の言っていた通りもっと早く家を出るべきだったか」
自分の想定が甘かった事を理解する吉良は舌打ちする。
「でも親父は深夜から行って場所を確保していたが、私はそんな恥ずかしい真似はできないな。小学校に迷惑がかかるし娘の弁当を作る時間もない。何より深夜に出るとなれば私の睡眠時間がなあ。私は必ず8時間しっかりと睡眠をとる事にしているからね」
娘の運動会も大事だが自分の生活習慣の方が重要だと吉良は結論を出しつつも少しでもいい場所を確保しようと動く事にした。
「運がよかったな、中々見晴らしのいい場所を確保できた。これなら吉美の活躍をしっかりと撮影できるな」
その後吉良は比較的いい場所を確保する事に成功していた。吉良は満足な様子を見せつつカメラを取りだし用意を始める。
「よし、カメラの準備もバッチリだ。後は運動会が始まるまでゆっくり待つとするか」
「おおっ、そのカメラは……もしかして吉良吉影さんですか?」
「ん?」
準備を終えた吉良は隣の中年男性から話しかけられた。
「失礼ですがどなたですか?」
「おっとすみません、貴方とは面識がなかったですな。私は貴方のお父さんである吉廣さんと知り合いでして」
「ああ、父の知り合いですか」
いきなり話し掛けられて困惑した吉良だが吉廣の知人と聞いて納得する。
「ハハッ、知り合いといっても運動会で何度かお会いしただけですがね。そのカメラは吉廣さんが愛用していたカメラですし、もしやと思って話しかけたら息子さんだとは。月日が経つのは早いですなぁ、息子さんの貴方がこうして父親として運動会に来ているなんて」
「このカメラはそんなに特徴的なのですか?」
「ええ、なにせそのカメラは当時の最高級品ですからなぁ。私も欲しかったですが到底手が出せず羨ましかったものです……うん、そのカメラはしっかりと手入れされているようですし今後も問題なく使えるでしょうな。いい物ですから大事になさってください」
「そうしますよ。父の形見ですからね」
(そんな高級品だったのか……そういえば親父はこのカメラを買う時にローンを組んでたっけ)
当時の事を思い出した吉良は苦笑しつつ、暇つぶしとして中年男性へ色々と聞く事にしたのであった。
「父は深夜から学校に行ってましたが貴方もですか?」
「ええ!私と吉廣さんはライバルでしたよ。子供達の活躍を特等席で見る為に競い合ったものです」
「ははあ、なるほど(下らないライバル関係だな)」
「席を確保した後は運動会が始まるまで吉廣さんと雑談をして待っていたものです。吉廣さんは貴方の事が本当に大好きでいつも自慢していましたよ」
「へぇ、そうなんですね」
「やれ算数のテストで100点を取ったとか、優秀な成績で賞状をもらったとか、父の日にプレゼントをもらったとか……実に嬉しそうに話してました」
「吉廣さんは癌で亡くなったそうですが、本当に残念ですよ。まだまだこれからだというのに、お孫さんの成長を傍で見る事ができないなんて。もし生きていたら今日の運動会にも張り切って参加していたでしょうな」
「ハハハ、確かに父ならそうするでしょうね」
(……まあ親父は幽霊になって現世にしがみついているのだけどね。吉美の事も溺愛してるし今後も傍で見守る事だろう。曾孫の顔を見るまでは死ねん!と言ってたしなぁ……もう死んでいるけど)
雑談をして時間を過ごしていると、いよいよ運動会が始まった。子供達が頑張る姿を見て保護者達は声援を上げて応援していた。
「おお、あの子が吉廣さんのお孫さんですか。とても可愛らしい子だ、小学一年生だというのにとてもしっかりしていますな。大切に育てられているのがよく分かりますよ」
「ええ、自慢の娘ですよ」
中年男性の称賛の言葉に気を良くした吉良は娘の活躍を見て上機嫌になりつつカメラで撮影する。
(うん、いい写真が撮れたと思う。現像するのが楽しみだな)
ベストショットが撮れたと確信した吉良は引き続き娘を応援しつつ撮影をする事にした。
「このおかずおいしい!」
「フフ、それはよかった。張り切って作った甲斐があったよ……いい顔だね、カメラで撮っておこうか」
お昼休み、保護者と子供達が集まって弁当を食べる時間であり、愛娘が笑顔で弁当を食べる姿を微笑ましく見ていた吉良はカメラで写真を撮っていた。
「重ちー君達と一緒に食べたかったなあ」
「重清君か、彼等は私達とは遠くの場所にいるようだから一緒には食べられないな。後で挨拶に行こうか」
「うん!」
娘と会話しつつ周囲を見回した吉良はふと非常に特徴的な髪型をしている小学生の存在に気付く。
「おや、あのリーゼントの子はこの前の授業参観の時にも見たな。最近の小学生はファッションにも全力なんだなぁ……………ん?ほぉ、これは……!」
吉良は嬉しそうに昼食を食べているリーゼントの子供……ではなくその隣の母親と思われる女性に目を奪われていた。
(なんて綺麗な手をしているんだ……!)
「お父さん?」
「んっ、ああいや、何でもないよ」
愛娘から心配されハッとした吉良は頭を振って思考を切り替える。
(おっといけない、今日は大事な娘の運動会だというのに
「どうされましたか?何か気になる事があったようですが」
「いえ、すごく気合の入った髪型をしている子がいたので気になってしまいまして」
「ああ、良平のお孫さんの仗助君の事ですね」
中年男性はリーゼントの子供……東方仗助の存在に気付き吉良が気になるのも無理はないと納得していた。
「確かにリーゼントは目立ちますし、ちょっと個性的ですがいい子ですよ。今日は母親の朋子ちゃんと祖父の良平も来ているようですね。後で挨拶しておこうかな」
「お知り合いなのですか?」
「ええ、良平とは同級生でして……」
中年男性が色々と話すのを聞きつつ吉良は考え込む。
(なるほど、あの女性は東方朋子というのか。名前を知る事が出来たのは幸運だったな……よし、決めたぞ。朋子さんはいつか
非常に魅力的な女性である東方朋子を見つけた吉良は
「お疲れ吉美、君も疲れただろう」
「ううん大丈夫!お父さん、わたし上手にできてたかな?」
「ああ、すごい活躍だったよ。流石私の自慢の娘だね」
「えへへ、よかったぁ」
運動会が終わり家に帰宅する吉良親子は仲のいい様子を見せていた。
「ねぇお父さん、来年の運動会も来てくれるかな?」
「もちろんさ、可愛い娘の活躍を見に絶対に行くつもりだよ」
「うれしい!あ、そうだ!今度はクロミも一緒に来てほしいな!」
「うぅ~~~ん、魅力的な提案だけどクロミは猫だからなあ。ずっと大人しくしてくれるかわからないな。クロミはとても賢い猫だし吉美の頼みには従うかもしれないけど、人混みの中だとストレスを感じるかもしれないしやめた方がいいと思うな」
「あ、そっか。じゃあやめる!」
「うん、その方がいい。吉美はいい子だね」
傍から見ればとても仲のいい親子は来年の運動会も楽しみだと笑顔を浮かべながら帰宅するのであった。
<人物紹介>
●吉良 吉影
→愛娘の運動会に保護者として参加し、娘の活躍を見て我が事のように喜んだ父親の鑑。そして東方朋子を見て
父親から譲ってもらったカメラについては中々いい物だと評価しており、愛娘の成長を撮る為に愛用している。カメラの取り扱いは吉廣から教えてもらったのでバッチリである。
●カメラ
→吉廣が息子の成長を撮る為に奮発した当時の最高級品のカメラ。ローンを組んで購入した。吉廣がきちんと手入れをしていたので今でも使える頑丈な名品。今後も吉美の成長していく姿を撮影していく事だろう。
●中年男性
→オリキャラで東方良平の同級生。東方家とは知り合いな模様。遅くに生まれた末っ子の勇姿を見る為に運動会に来ており、末っ子の事は溺愛している。今後出てくる事はない。
吉良吉影が愛娘を可愛がっている姿を見て「吉影君も娘が可愛いみたいだ。やっぱり親子なんだなあ……吉廣さんも天国で安心しているだろうな」と思ったとか。
●
→元気一杯な姿を見せて吉影を笑顔にしていた。重ちーの他にも友達はちゃんといる。クロミが運動会に来てくれないかなと思いつつも、クロミに嫌な事はさせないと思い直した飼い主の鑑である。
●吉良 吉廣
→今回は登場していないが吉美の傍で見守っており、孫娘の成長に感涙していた。吉廣なら息子の為に最高級品のカメラを購入するし、運動会でいい場所を確保する為に深夜に小学校に行ったり息子の事を自慢したりすると思います。
●東方仗助
→小学生の頃からリーゼントな気合の入った子供。髪型の事さえ馬鹿にしなければとてもいい奴だと周囲から評価されている。
●東方良平
→仗助の祖父。警察官として杜王町を守っている人間の鑑で、仗助の成長を厳しくも優しく見守っている祖父の鑑である。ジョセフは良平に土下座するべきだと思われる。
●東方朋子
→仗助のお母さんで美人。ジョセフの事は今でも愛しているらしい。ジョセフは本当に良平に土下座するべきである。
昼食の時に謎の悪寒を感じて風邪でも引いたのかなと思ったようだ。吉良吉影に気に入られてしまったが、はたして彼女は今後どうなるのだろうか?
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。