「じゃあ行ってきます!」
「いってらっしゃい。クリスマスパーティーを楽しんできなさい」
「うん!」
杜王町も12月となり街に雪が積もっていた。クリスマスという事で街のあちこちでクリスマスパーティーが開かれており、家族や友人達が集まってクリスマスを祝っていた。
そして吉良家でも日頃から親しくしている矢安宮家からクリスマスパーティーに誘われており、吉良吉影は娘の吉美を矢安宮家に車で送っていた。
「吉美も家に入ったようだね。じゃあ一度帰ってクリスマスの準備をしておこうか。親父も準備してくれているけどチキンの味付けとかは私がやらないといけないからね」
愛娘が矢安宮家に入ったのを確認した吉影は自宅で準備をする為に一度自宅に帰る事にした。
「おお吉影!家の飾り付けは終わっておるぞ!」
「ニャン」
「ああ、ありがとう」
家に帰宅した吉影は家の飾り付けが一通り完了しているのを見て満足しつつ夕飯となるクリスマスディナーの準備を始める。ペットのクロミは我関せずと呑気に寝転んでいたが吉影や吉廣も猫に手伝わせるつもりはないので問題なかった。
「吉美ちゃんがあの珍獣の誘いに乗るなんてのぉ~、大丈夫なのか?」
「問題ないよ、重清君はちょっと、いや、ちょっとどころではなく変わっているが悪い子ではないし、彼の両親は良識のあるまともな人達だからね」
「それもそうか」
心配する吉廣を宥めながら吉影は苦笑する。重ちーこと矢安宮重清は些か変わっているとは思うが、彼の両親は非常にまともで信頼できる人達だと吉影は評価していた。
「矢安宮家には煙突付きの暖炉があるそうだし、今頃吉美も楽しんでいるだろうね」
「むぅ、暖炉、暖炉かぁ……この家にも暖炉を増設するべきか?この家は冬が寒いからのぉ~」
「おいおい落ち着けよ、暖炉を増設だなんてどれだけ費用が掛かると思ってるんだ?それにウチのような数寄屋住宅に暖炉なんて似合わないだろうに」
「そ、そうじゃな」
父親を宥めながら料理の下拵えをしていた吉影は今後のクリスマスについて考える。
(ふむ、来年もクリスマスパーティーに誘われるかもしれないな。だとすれば来年は娘がクリスマスパーティーに出席している間に、私は家で
クリスマスの過ごし方を想像した吉良は上機嫌な様子で来年のクリスマスプランを考える事にした。
(よし、来年は絶対に
来年のクリスマスを考えた吉影は
(そうだ、彼女がいるじゃないか。あの運動会で見つけた東方朋子さんが!あの素晴らしい手をした女性を
娘の運動会で見つけた素晴らしい手をした女性……東方朋子の事を思い出した吉影は彼女と一緒にクリスマスを過ごす事を考え思わず笑顔を浮かべていた。
(うん、そうだ、彼女がいい。彼女と特別なひと時を過ごすのはすごくいいッ!冬ならすぐには腐らずに長く付き合えるし最高だ!絶対に
ウキウキとした様子で考えていた吉影だが一転して難しい表情を浮かべる。
(だが待てよ。朋子さんを
東方朋子を
(偶然を装って一人になった朋子さんと出会う……夏ならともかく冬の杜王町は寒くて人通りも少ないし、朋子さんも家で家族と過ごす事が多いだろうから可能性は殆どないな)
(買い物に行く時を狙う……うーーーん、難しいな。平日の昼間なら可能性はあるが私も会社員として働いているし、土日なら家族と行くだろうから一人になる事は少ないだろう)
(それに運動会で色々と聞いたが朋子さんの父親は優秀な警察官らしいじゃないか……警察なんて怖くないが、執念で私の事を見つけ出すかもしれない。キラークイーンがあるから証拠隠滅は完璧だが、もしもの可能性がある。私の平穏を乱されるのはごめんだ)
色々と考えた吉影は周囲に疑われる事なく東方朋子を
(ふーむ、ままならないものだね。あんな素晴らしい女性がいるとわかっているのに手が出せないなんて……まあいい、じっくりと調べ上げてから迎えるとしようか)
しかし吉影は東方朋子を諦めるつもりはなかった。吉影から見ても美しい女性である朋子は諦めるには非常に惜しいものであり、そして吉影は一度ターゲットにした女性を諦める事は決してなかったのだ。
(よぉし、入念に準備するとしよう。別に来年じゃなくてもいい。他の女性でも代用できるからね。だが本命は朋子さんだ。適度にストレスを発散しつつ準備を進めるとして……しかし私も我慢強くなったなぁ。昔の私なら我慢できずに後先考えず
ふざけた事を考えつつも吉影は朋子と楽しく充実したクリスマスを過ごす為にも年単位で準備しようと決意した。
(ああっ、待っててね朋子さん。いつか必ず、貴方を迎えにいきますからね……うん、次のクリスマスの事を考えるのはここまでにしておこう。未来も大事だが今日のクリスマスも大事だからね)
そうして吉影は思考を切り替えて娘が帰って来るまでに料理の準備を進める事にしたのであった。
「ただいまー!いい匂いがする!」
「おかえり吉美ちゃん。クリスマスパーティーは楽しかったかの?」
「うん!」
「そうかそうか!そりゃあよかったのぉ!」
矢安宮家のクリスマスパーティーが終わり吉影の車に乗って帰宅した吉美を祖父の吉廣が笑顔で出迎えていた。
「さぁて夕飯とするかの。儂と吉影が丹精込めて作ったクリスマスディナーがあるから楽しみにするんじゃぞ!クロミにはチキンの余りをやるからそれでも食っとれ」
「わぁい!」
「ニャッニャ」
「フフッ、あんなに楽しそうにしていると私も嬉しくなるよ」
無邪気に喜ぶ娘を吉影は微笑ましく見ており、自分が子供の頃のクリスマスをふと思い出していた。
「私の時もこうやって無邪気に楽しんでいたっけ。親父ったらサンタクロースの仮装をして祝ってくれてたよな」
「おおそうじゃったそうじゃった!儂も気合を入れてクリスマスを祝ったし、妻も腕によりをかけてご馳走を作ってくれてたなぁ~~ッ」
「あのチキン美味しかったな。私も再現しようと頑張っているけどあと一歩で上手くいかないのがなあ」
「う~~む、妻が残したレシピ通りに作っておるはずなのにのぉ。一体何が悪いのじゃろうな?」
今は亡き母親の手料理を思い出す二人は傍から見れば仲の良い親子であった……父親は既に死んでいる幽霊で、息子の方は女性をターゲットにしている連続殺人鬼という異常な組み合わせであったが大丈夫だ、問題ない。
「あの子は何時までサンタクロースを信じるだろうね?」
「吉影と同じくらいで小学三年生頃には気づくかもしれんのぉ。でも吉美ちゃんはクロミが超能力を使えるしサンタさんは絶対にいると信じているようじゃが」
「いやいや、確かに私や親父とクロミは異能が使えるけどサンタクロースが実在するかは別問題だろうに……でも超能力なんてオカルトが実在しているしサンタクロースも本当にいるかもしれないな」
「フフ、そうじゃな。サンタがいるならネッシーもおるかもしれんぞ?儂のような幽霊も実在するしサンタやネッシーがいても別にいいじゃろ」
「いやそれはそうだけど、流石にそれはないだろう……ないよな?」
吉廣と吉影は呑気な様子で雑談をしつつ吉美が美味しそうにチキンを食べるのを見て笑顔を浮かべていた。そうして吉良家のクリスマスは楽しく過ぎていくのであった。
<人物紹介>
●吉良 吉影
→父親と愛娘の三人でクリスマスを祝って満足する。重ちーの事は珍獣だと判断しつつも悪い子ではないし、重ちーの両親についてはまともで信頼できると評価している。サンタクロースやネッシーは存在しないと思いつつも、キラークイーンや幽霊となった父親がいるので完全に否定する事ができないようだ。
素晴らしい手をした女性である東方朋子とクリスマスを一緒に過ごす事を夢見て入念に準備を始める事を決意する。吉良吉影としては珍しいが今年は何人も
●
→矢安宮家で開かれたクリスマスパーティーを楽しんだ後、吉良家でクリスマスディナーを堪能し大満足する。そして翌日には枕元に置かれたプレゼントを見つけて無邪気に喜んでいた。プレゼントは猫のぬいぐるみである。
最近は寒いのでクロミを湯たんぽ代わりにして一緒に寝る事が多く、クロミも大人しく一緒に寝ているようだ。
●吉良 吉廣
→クリスマスを家族3人で過ごす為にウキウキとした様子で家の飾り付けを行っていた。今は亡き妻も天国で安心して見守っているだろうと確信している。それと重ちーの事は珍獣だと思っている。
昔はオカルトなど信じていなかったが、「矢」によって超能力を手に入れた事と、自分が幽霊として現世に存在しているのでサンタクロースやネッシーがいても別におかしくはないなと考えている。
●クロミ
→吞気な様子で寝転んで過ごしクリスマスの手伝いをしなかったが、吉影達は最初から戦力として期待してなかったので何も問題なかった。猫だからね仕方ないね。
チキンの余りを貰って満足しつつ、吉美と一緒に寝てあげるペットの鑑である。クロミとしても寒いので吉美と一緒に寝る事に不満はなかった。
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。