「あけましておめでとうございます!」
「はい、おめでとう」
「おめでとう吉影、吉美ちゃん。今年もよろしく頼むのう」
「ニャーオ」
1992年1月1日の元日、1991年が終わり新しい一年が始まろうとしており吉良家では新年を祝い家族同士で挨拶を行っていた。
「さて、挨拶も終わった事だし寝るとしよう。大晦日だから特別に起きていたけど、本来は夜更かしなんて身体に悪いからね。ちゃんと8時間は睡眠を取らないと」
「はーい!クロミ、一緒に寝よ!」
「ニャン」
無事に挨拶が終わった吉影はそそくさと寝る準備を始める。大晦日という事でいつもとは違い日付が変わっても起きていた吉影だが、日付が変わり新年の挨拶も終わったとなれば起きておく理由はなかったのだ。
「初詣だけど三が日は混んでいるだろうから正月休みの最後に行こうか。三が日を過ぎれば神社も空いているだろうからね。吉美もそれでいいかな?」
「うん、わかった!」
「フフッ、いい子だ……じゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
「うむ、二人ともおやすみ。初夢はいいものが見れるといいのぅ」
「フミャ」
「うん、やっぱり空いているな。これなら待たずに参拝できそうだ」
三が日を家でゆっくりと過ごした吉良家は、正月休みの最終日に杜王町にあるぶどうヶ丘神社へ初詣の為に訪れていた。
「昔小さい頃に元日に行った時は神社の外にまで長い行列ができてたからなあ。あの時は本当に疲れたよ」
「お父さん、早く行こうよ!」
「コラコラ、慌てないの。雪が残ってて滑るかもしれないから足元に気をつけるんだよ」
元気一杯な吉美を見て苦笑しつつ吉影は神社を参拝する事にした。
(この世界に神がいるかはわからないが、超能力や幽霊が実在しているわけだし多分いるのだろうな。私としては娘が健やかに成長してくれればいいが、帰りに家内安全のお守りでも買おうかな?……ああでも、私の平穏な生活がこれからも続くように祈るとするか。ささやかな願いだしここの神様だって認めてくれるだろうさ)
相変わらず自分本位な考えであったが吉影はいるかもしれない神に祈ってみる事にした。そして参拝が終わった後はおみくじを引いて今年の運勢を占ってみるのであった。
「やったぁ、大吉!」
「おや、私も大吉だ。新年早々縁起が良いなぁ」
「よかったね!」
「あけましておめでとう、お前も家でゆっくりできたか?」
「ああ、いつも通り平穏で素晴らしい休みを過ごせたよ。それとあけましておめでとう」
正月休みが終わりカメユーチェーンに出社した吉良吉影は同僚と雑談していた。
「しかし昨日初詣に行くとはな。三が日に行かないのは珍しい」
「小さい頃に元日に行って酷い目にあったからな。雪が積もった寒い外でじっと待ち続けるなんて拷問だし娘が風邪を引いてしまうよ。だから今は三が日以降に行く事にしているのさ。神社も空いていてすぐ参拝できたぞ」
「なるほど、俺も来年はそうしようかな。元日に並んだけど同じように初詣に来た人達が大勢いてさァ〜〜〜ッ、一時間近く並んで寒くて仕方なかったし、息子は待ちくたびれて泣き始めるし新年早々大変だったぜ」
「おや、それは災難だったな」
同僚の愚痴の言葉に相槌を打ちつつ吉影は今日の予定を確認していた。
「新年明けて得意先への挨拶回りか。今日は一日中歩き回る事になるな」
「うへぇ、毎年恒例とはいえ勘弁してほしいよ。この寒い中を歩くなんてなぁ」
「文句を言うなよ、これも平社員の務めさ」
得意先への挨拶回りに同僚はウンザリした顔を浮かべ、吉影は内心で同意しつつも注意するのであった。
「……よおし、午前の挨拶回り終わり!じゃあ昼飯を食いに行くか。吉良、俺はそこの蕎麦屋にしようと思うけどお前はどうする?」
「そうだな、私も今日はそこにするよ。忙しいし呑気に食べてる暇はなさそうだからね」
「おおっ、お前が一緒に来るなんて珍しいな。じゃあ行こうぜ!」
昼食の時間となり吉影は同僚と一緒にすぐ近くにあった蕎麦の店で食べる事にした。これが冬以外の季節ならサンジェルマンのサンドイッチを買って食べていただろうが、杜王町の冬は厳しい寒さであり吉影も流石に外で食べる気にはならなかったのだ。
「なんだろうな、ここの美味くもなく不味くもない微妙な感じの味の蕎麦は」
「平均的な味といったところか。この店は外れではないが当たりでもないな」
「確かに。悪くはない、悪くはないんだが……他の美味い店を知っているとなあ」
吉影と同僚は何とも言えない顔を浮かべて蕎麦を食べていた。杜王町駅のすぐ近くにあるこの店だが味は良くも悪くも普通であり、杜王町にある美味しい飲食店達に比べると少し評価が落ちる店であったが、二人は特に文句はなかった。
「まあ、別に不満はないかな。値段相応の味だとは思う。以前食べた別の蕎麦屋は本当に不味かった。会社のすぐ近くにできたから興味本位で入ったのを後悔したよ」
「ああ、あったあった!あそこは本当にダメだったなぁ〜、会計で金を払いたくないと思ったのは生まれて初めてだったぜ。まあ食い逃げは犯罪だしきちんと払ったけどさ」
「不良じゃないんだから当たり前だろ。あの店はすぐに潰れていたが当然だな」
吉影は同僚と雑談しつつ蕎麦を食べていく。周囲では同じように蕎麦を食べる会社員が大勢いて店はなんだかんだ賑わっていた。
「あーあ、いつも贔屓にしてるお店がまだ閉まってるだなんてガッカリですよォ〜」
「あのお店ったら正月休みが長いわよねぇ」
「……………おや」
OL達が文句を言いつつ蕎麦を食べているのを見つけた吉影は、その中の若い女性社員に興味を惹かれる。
(中々いい手をしている子だ。若くて瑞々しい手をしているし、おそらく去年入社したばかりの新入社員だな。絶好調な時なら
「どうした吉良?女の子達を見てるが気になる子でもいたのか?」
「いや、そういうわけじゃないが若いOLが蕎麦屋に来るのは珍しいと思ってね」
「ふぅん、確かに珍しいな。ああいう若い子はオシャレな店でランチでも食べてそうな感じだけどなぁ。まあ店が休みで仕方なくこの蕎麦屋に来たんじゃないか?」
「まあそうだろうな。店も混んできたし呑気に喋ってないで食べ終えるとしよう」
「おっと、おっと。よく見れば外で待ってる奴等がいるな。他の人達に迷惑だし急ぐか」
適当に誤魔化した吉影は蕎麦を食べ終えて店を出る事にした。
(よし、今日帰ったら爪の長さを測ってみるか)
「……ふむ、やはりそうだ。爪が全然伸びていない」
「フミャア?」
仕事を終えて帰宅した吉影は就寝する前に
「大晦日に爪を切ってから数日が経過した。去年の今頃なら1センチ近く伸びていたものが、今年は1ミリ未満とは。やれやれ、今年は絶不調のようだね」
去年とは打って変わって絶不調な事に吉影は苦笑しつつも何処か納得した様子を見せていた。
「去年が絶好調過ぎた反動かなぁ?あれだけ
去年が絶好調を超えた絶好調だったのを覚えている吉影は今年は絶不調なのはその反動だと思う事にした。
「今年は
吉影は
「でも朋子さんを迎える為の下調べくらいはしておこうかな。来年以降の楽しみの為にもね……フフフ、後悔のない一年を過ごすとしよう」
とりあえず今年は大人しくしつつ来年以降の楽しみの為に下準備をゆっくり進めていこうと吉影は決意するのであった。
<人物紹介>
●吉良 吉影
→正月は家でゆっくり過ごしリフレッシュした。大晦日は日付が変わればすぐに寝るし、初詣は三が日が過ぎて神社が空いてから行くタイプ。吉良吉影が寒い野外でひたすら待つなんて事はしないのだ。
杜王町の冬は寒いのでサンドイッチを買って野外で食べたりはせず、基本的に店で食べている。ちなみに正月のおせちは母親が遺したレシピを参考にして自分で作っていた。
今年は
●
→正月を大好きな家族と一緒にノンビリ過ごした。お年玉もちゃんと貰った。父親が涼しい顔で料理するのを見て自分も料理ができるようになりたいなと考えているようだ。
●吉良 吉廣
→孫娘を可愛がりつつ正月を過ごした。初詣は元日に行く派だが吉影の意思を尊重して黙っていた。
●クロミ
→杜王町の冬はとても寒いので家の中でゆっくりしていた。
●ぶどうヶ丘神社
→杜王町にある神社。そこそこ立派な神社で杜王町駅からも近いので初詣や七五三の時は混雑している。御祈祷も受け付けており料金は5000円から。ジョジョの世界なら神がいてもおかしくはないだろう。
●吉良の同僚
→元日に初詣に行って苦労したので、来年は三が日以降に行こうと決めた。クソ不味い店でもちゃんと金は払うまともな社会人である。
●蕎麦屋
→良くも悪くもない平均的な蕎麦を出すお店。杜王町駅のすぐ近くにあるのでなんだかんだ繁盛している。
カメユーチェーンのすぐ近くにあった蕎麦屋は非常に不味くて大不評でありすぐに潰れた模様。
●OL達
→お気に入りの店が休みだったので渋々蕎麦屋に来た女性社員達。新入社員の子は中々いい手をしていたが、幸運な事に吉影は絶不調だったので
趣味で書いているので更新は遅くなります。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。