ゴジュウジャー世界に転生したので、指輪集めて願い叶えます 作:Matdya
「はぁ...疲れた...」
今日は塾だった。『今日は』というより、『今日も』。実は中学生になってから塾に入れさせられていたのだが、それからほぼ毎日、夜遅くに帰っている。これがまあ慣れない。
「「うわぁっ!!」」
夜の街に、どこかで聞いたことのある声と轟音が響き渡る。
まさか、またブライダンや厄災...?
気になったので、声が聞こえた場所へ向かい、隠れて見てみる。
「ダーリン、こいつ強すぎるわ!」
「連れてきたアーイーも倒されてしまった...ここは撤退だ、ハニー!」
「あ...」
あれって、ブライダン幹部のシャイニングなんちゃらとなんちゃらケーク...それと...
「指輪の戦士?」
「ふぅー...一体何だったんだ、アイツら...」
と言いながら、エンゲージを解除した指輪の戦士。
あの顔...嘘だろ?
「...こんなところで会えるなんて、思わなかったな...!」
「あんた誰?...って、その指輪...君も指輪の戦士か。一体俺に何の用?」
「『あんた誰』だって?僕はお前の顔を一日たりとも忘れたことはなかった!」
「えーと、本当に分かんねぇわ...」
「とぼけるなよ!僕は、お前が車で轢き殺した少女...忍野友香の親友だ!」
「あー...チッ、誰にも見つからずに指名手配が終わるまで逃げ切るつもりだったのに。」
「...!」
...は?
「逃げ切るつもりだった、だって...?」
「そうだよ。あの後何とか逃げ切って、家に帰ってテレビを見たらもうニュースになってて驚いたわ~!」
「ふざけんなよ...僕はお前を絶対に許さない!お前が指輪の戦士だというなら...全力で倒す!」
「『許さない』?酷いなぁ...俺はこのしがらみだらけの世界から彼女を救ってあげたってのに...」
「黙れぇッ!エンゲージ!」
<イマジン!パワーアップ!>
「ハァァァァァッ!」
「よっ、っと...怒りに任せてるからかな?攻撃が大振りで避けやすい。」
「...ッ!ハァッ!」
「まただ。啖呵を切ったわりに、大した事なさそうだね。...エンゲージ。」
<センタイリング!>
<ゴーゴーファイブ!>
「それじゃ、すぐに終わらせよう。
相手が指をパチン、と鳴らす。すると...
「うわ...何だこれ!」
「この指輪の能力は
「くっ...!」
「
「ヤバっ...うわぁッ!」
水で動きを制限された僕に、容赦なく雷が降り注ぐ。
大ダメージにより、イマジンの力が解けて通常のトッキュウ1号に弱体化してしまった。
「あぁッ...!」
「さて、とどめを刺そうか。ブイランサー!ハァッ!」
<ゴーゴーファイブ!フィニーーーッシュ!>
長槍が、僕の腹に向けて振り下ろされる。
万事休すか...!
「危ない!ハァッ!」
<ユニコーン!ドリルアタック!>
「うっ!...邪魔が入ったか。
「一河さん...!」
「大丈夫!?」
相手が砂嵐で撤退したので、こちらもエンゲージを解除する。
「夜中に大きい音が聞こえて、何事かと思ったら、君がいたの。」
「...」
「どうしたの?」
「...誰?」
助けに来たのがゴジュウユニコーンだったので、てっきり一河さんだと思ったら...知らない女性だった。
「ああ、顔と声が違うって思った?私ね、今超ハードな潜入捜査中で...テガソードに顔と声を変えてもらってるの。」
「あ、なるほど...」
...って、こんな話をしてる場合じゃない!
「アイツを追わなきゃ...!」
「ちょーっと待った!車井君、今日、なんかいつもと違うよ?どうしてそんなに急いで探そうとするの?」
「それは...」
「何かありそうだから...とりあえず、テガソードの里で君の話を聞かせてもらうよ。」
テガソードの里に連れていかれた。かなり抵抗したのだけれど、抜け出せなかった。
店内には、こんな夜中にも関わらずゴジュウジャーの皆さんが勢ぞろいしていた。
「じゃあ、話してもらえる?」
「はい...アイツの名前は、
「西野樹...どこかで聞いたことがあると思ったら事件の犯人か。」
「連日、ニュースで流れていたのを覚えているよ。」
僕の言葉に、暴神さんと百夜さんがそれぞれ呟く。
「確か、被害者は当時10歳の少女。名前は確か...忍野...なんだっけ。」
今度は、猛原さんが呟く。名字まで覚えていていたとは...
「忍野友香。当時小学4年生でした。そして...僕の、幼なじみでした。」
この発言で、場の空気が凍りつくのを感じた。
事件の被害者は幼なじみ。その発言を聞いて、私は先ほどの彼の態度に納得した。
「幼なじみ...?」
「はい。幼稚園から、ずっと一緒でした。毎日気が済むまで話して、疲れて動けなくなるまで遊んで。...あの頃は、今なんかよりずっと、ずうっと楽しかったです。」
そう言った彼の目は、どこか遠くを見つめているように見えた。彼の瞳には、寂しさと、怒りと、もっとたくさんの感情が混ざっていた。
「でも、あの日...僕らが、休日に買い物に出かけた帰り...突然こちらに突っ込んできた車に轢かれて、友香は重傷を負いました。もうダメだと悟ったのか、彼女は自分の想いを僕に伝えてくれました。」
話していて堪えきれなくなったのか、彼は涙を流しながら言葉をつづけた。
「『好きだ』って。『創の笑顔が見たい』って。最後のその言葉が、今でも...頭の中で残ってるんです。寝る前も、ぶらぶらと街を歩いている時も。どんな時でも、ふとした瞬間に、言葉と光景が、頭に浮かんでくるんです。」
『サバイバーズ・ギルト』。彼の言葉を聞いていると、その言葉が頭に思い浮かんできた。自分の目の前で人が死に、自分だけが生き残った。そんな状況に陥った人々が抱く、自分に対する怒りや無力感といったありとあらゆるネガティブな感覚を抱く症状。
「目の前で大切な人が死んだのに、何もできなかった自分が悔しくて...何で彼女が死んで僕は生き残ったんだろうって。きっと、逆のほうが何倍も良かったはずなのに。」
彼の年齢からは抱えきれない程に、私たちの想像が及ばない程に、彼の体には、重く苦しいものがのしかかっていた。
「そんな思いを抱いて3年が経とうとしていたある日、トッキュウジャーの指輪と出会いました。それ以降、僕の思いは固まりました。『忍野友香を蘇生させ、日常を取り戻す。』それが僕の願いです。」
彼の願いは、『大切な人を取り戻す』という意味では、私の願いと似通ったものだろう。彼がファイヤキャンドルを倒したあの日、私にシンケンジャーの指輪をくれたのは、単なるやさしさだと思っていたけれど、自分と似た境遇の私を少しでも気遣おうとしてくれたからなのだと、今、ようやく理解した。
「...もう、いいですかね?そろそろ時間も時間だし、早く帰らなきゃなので。」
「...じゃあせめて、最後に一言言わせて。」
彼の心に響くかはわからないけど、とりあえず、こちらも言いたいことを言わせてもらう。
「大切な人が突然目の前からいなくなった気持ちは、私も痛いほど分かる。だけど、彼女のことを第一に考えすぎて自分を見失うのは、絶対にやっちゃいけないことだから。まずは、自分のことを第一に考えて。」
私の過去の経験で公開したことを、彼に伝える。
「...あなたはいいですよね。」
「え?」
「あなたの大切な人は、意識を取り戻していないとはいえ、まだ生きてる。医療の発達によって助かるかもしれない。でも、友香は死んだ。そこには、どうにも越えられない壁があるんです。なのに、自分と僕が同じだと思って偉そうに。こっちが毎日どんな思いで生きているかもわからないくせに...!」
「車井君...」
「とにかく!...僕は、僕の手で西野を倒します。さようなら。」
「待って!車井君!」
「行かせてやれよ!...アイツも、突然彼女の仇を見つけて冷静じゃねぇんだ。頭を冷やす時間くらい与えてやれ。」
「あの言葉、明らかに本心じゃねぇぜ。そういう匂いを感じる。」
「それは、そうかもしれないけど...」
熊手と吠がそう言う。
結局、モヤモヤしたままこの場は解散となった。
やってしまった。
何で僕はあんなことを言ってしまったのだろう。一河さんも、僕と同じくらい、いや、それ以上つらいはずなのに。
今日はもう、西野を探す気力も、誰かと戦う気力も、何も湧かない。
さっさと家に帰って風呂に入って寝るとしよう。
「ただいまー...」
「おかえり、創!遅かったね。」
「うん、ちょっとね...」
「明日も学校だし、早く寝ちゃいなね!」
「うん...」
いつもと違う僕の様子に感づいてか、母は僕にさらに話しかけてきた。
「ねぇ、創。何かあった?」
「...別に。」
「何か悩んでることがあったら、誰かに相談するんだよ。私じゃなくて、他の仲良しな人でもいいから。」
「...」
僕はその言葉に、何も返事を返さぬまま眠りについた。
「創」
「創...!」
「創!」
「え...?」
「聞こえる?創。」
真っ白な空間の真ん中に、僕が姿を追い求めた少女がポツンと立っていた。
「友香...?」
「良かった...聞こえてた...」
「友香...!友香!」
僕は彼女のもとへ、ただひたすらに駆けた。
「止まって。」
「え...?」
「それ以上こっちに来ちゃダメ。あなたにはまだ生きていてほしいの。」
「でも...」
「お願い。あなたが眠っている少しの間しか話せないから、私の話を聞いてくれる?」
「うん...」
『眠っている間』。その言葉でようやく、ここが夢の中だということが理解できた。
...どうせなら、彼女が死んだというこの現実ごと夢であれば良かったのに。
「ねぇ、創。あなたは今、なんのために生きているの?」
「え?それはもちろん、君のために...」
「フフッ、そういうと思った。」
彼女が悪戯っぽく笑う。
「でもね、創。私が一番望んでいるのは、あなたがあなたらしく生きること。」
「...?」
「私は死んだ日から、ずっとあなたのことをそばで見てたの。でも、私がいなくなった後のあなたの姿は、自分じゃなくて私のために動くロボットみたいになっちゃった。」
「...」
「創は、私を蘇らせるっていう願いのために色々頑張ってくれてるんだよね。ありがとう。でも、今のままの創が叶えた願いなら私はいらない。」
「どういうこと?」
「さっきも言ったけど、あなたの願いはあなた自身でうんと考えて決めて。『私のため』じゃなくて、『自分のため』に願いを叶えて。あなたが考えて決めた願いなら、私は何だって応援する。」
「...分かった!自分で考えて、悩んで、自分が一番叶えたい願いを見つける!」
「それでよし!...ああ、もう朝になっちゃうね。もう話せなくなっちゃう。」
「...待って、友香。」
「え?」
「最後に一つ、伝えたいことがあるんだ。...愛してる。」
僕の言葉を聞いた彼女は、また悪戯っぽい笑みを浮かべた。
最後に、彼女がまた口を動かしたのが見えたが、それが何だったのかを理解する前に、僕の意識は目覚めてしまった。
「おはよう~...」
「おはよう、創!大丈夫?昨日の様子を見てると、色々心配なんだけど...」
「大丈夫だよ、母さん。」
そして僕は、不敵に、堂々とした笑みを浮かべながら言う。
「もう、色々吹っ切れた!」
放課後。
「帰ったら、一河さんに昨日のこと謝らなきゃ...」
「やぁやぁ、少年!君の指輪を奪いに来たよ~!」
聞きたくない声が聞こえてきた。
「...何で、ここにいるってわかった?」
「何でって、ここら辺にある学校ってここぐらいしかないじゃない!」
「...そうか。」
「あれあれ?何かリアクション薄いね。怒ってる?」
つくづく、人の精神を逆撫でするような男だ。
「あのねぇ、昨日も言ったけど、俺は君のお友達を救ってあげたんだよ?それに仇討ちだのなんだのほざいてるほうがお門違いだと思わない?」
「フフフフ...ハハハハッ!ハハハハハッ!」
「...え?どうしたの?」
「さっきから聞いてれば、お前のほうがお門違いなこと言ってる気がするけど?」
「...は?」
「僕はもう吹っ切れた!もう仇討ちをしようだなんて微塵も思ってない!」
「...あっそう。じゃあ何?」
「僕は、仇討ちとしてじゃなくて、指輪を集めて、『友香を蘇らせる』という願いを叶えるために...お前を倒す。」
「フッ、彼女はそんなこと、望んでないだろうに...」
「違う。彼女が望んでるか、望んでないかじゃなくて、僕自身のために叶える願いだよ。」
「そんなの、ただの君のエゴだよ。」
「エゴ?上等だよ。こっちは、本人から『僕の叶える願いならなんだって応援する』って言われてるからな!」
「...君のこと、好きになれないな。エンゲージ。」
「お生憎様だよ!エンゲージ!」
<<センタイリング!>>
<変身いたしま〜す!>
<ゴーゴーファイブ!>
<トッキュウジャー!>
<トッキュウ、1号〜!>
「いざ掴め、ナンバー、ワーーーーーーーーーーーン!!!!!」
「ゴー!ゴー!ユニバース!」
「いつも、いつでも、俺の心の中にある。燃えるレスキュー魂、ゴーレッド。君のことも、救ってやろうか?」
「フレーーー!」
「ゴー!ゴー!ユニバース!」
「もう二度と、僕は止まらない。トッキュウ1号、車井創!見えた、お前の終着駅!」
「ナンバーワンバトル!レディー...ゴー!」
「「ハァッ!」」
2人の戦士は、同時に駆けだした。
「ファイブレイザー!ハァッ!」
「
「...動きが追えない!」
「そこだ!ハァッ!」
「うわッッ!」
相手の銃撃を高速移動で避けつつ、テガソードで鋭い一撃を加える。
「次だ!フッ!」
<センタイリング!>
<パトレンジャー!>
「パトメガボー!西野、止まれ!」
「うっ...動けない!」
「ダメ!ゼッタイ斬り!ハァッ!」
「うわぁッ!」
よし、効いてる。この調子で行ければ...
「くッ...このままやられてるだけって訳にもいかないよね!
「うわッ!」
「うっ...」
「へへっ、ちまちまダメージを与えるより、一撃でドカンと大きいダメージを与えたほうがいいと思わない?」
「ううっ...」
その時だった。
「ハッハッハッ!リベンジに来たぞ、指輪の戦士!」
「今度こそ、その指輪もらっちゃう~!」
「クソッ、いいところで...」
シャイニングナイフとスイートケークが、アーイーを引き連れてやって来たのだ。
「邪魔をするな!」
「そっちの事情なんて、関係ノンノン♪」
「「「「「「エンゲージ!」」」」」」
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「皆さん...!」
「お前の匂いがすると思ったら、まさかこいつらまで居るなんてなぁッ!」
「車井君、こいつらは私たちが倒すから、君はそいつとの戦いにだけ集中して!」
「はい!」
「...お仲間との友情か...気に食わないね。」
「へへっ!今の僕のパワーは、一人分じゃないからな!」
「...!」
「ファイヤキャンドル!お前が使ったあの技、僕も使わせてもらうよ!フッ!」
<<センタイリング!>>
「
体の周りに星のように輝く炎を纏わせ、超高速で突撃する。
―――その速度は、光をも超える。
<フラッシュマン!ゴーバスターズ!フィニーーーッシュ!>
「うッ、うわっ、うわぁっ!うわぁぁぁぁっ!!!」
「とどめだ!」
<センタイリング!>
<ゼンカイジャー!>
「四十五君、力を貸して...!ゼンカイフィニッシュバスター!ハァッ!」
<ダイゼンカイ!>
「フッ!」
「避けた!?」
「うっ、うぅ...あっさり、やられる、わけがない...!
「...!」
その言葉を、僕は聞き逃さなかった。
「もらった!
「うっ...何!?」
<23バーン!>
「フッ!」
<ババン!ババン!ババン!ババン!ババババーン!>
「え...?」
<ゴーゴーファイブ!>
「今までのお返しだ...!
「うっ...!」
最後の一撃を加えよう。
「フッ!」
<イマジン!パワーアップ!>
「今度こそとどめだ...!」
<イマジン!フィニッシュスラッシュ!>
雨で動きの取れない彼に向かって、超高速の斬撃を何度も食らわせる。
決着がつくのは、あまりにも一瞬だった。
「うぅっ...うわァァァァァッ!」
「僕こそ...エゴイストナンバーワン!」
「Winner!車井創!」
「よしッ、指輪ゲット!」
「へへっ、指輪なんてくれてやるよ。俺はそれがなくても逃げ切れ...えっ?」
「えっ?」
何か言おうとした彼の手には、手錠がかけられていた。
「西野樹、3年前のひき逃げ事件の危険運転致死罪などの罪で緊急逮捕する!」
「クソが...クソがぁっ!」
「お疲れ、車井君!」
「一河さん...本当にすみませんでした。あんなこと言ってしまって...」
「こちらこそだよ!君の気持ちを全然わかってなかったのに、説教臭いこと言ってごめん!」
「大丈夫です。もう吹っ切れましたから。それより...何でアイツは急に逮捕されたんでしょうかね?」
「あぁ...さっき、私の警察時代の同期に連絡したんだ!」
「なるほど...ありがとうございます!」
「これくらい、ハイクラス探偵にはお手の物よ!」
「ハハ...よし、今日で決意ができました!僕は絶対、願いを叶えます。そして、友香の笑顔を取り戻します!」
「がんばれ!...まぁ、最後に勝つのは私だけどね~。」
「負けませんよ~!」
一河さんと会話している時だった。
「がんばれ、創!」
夕暮れの町の中、彼女の声が、どこからか聞こえた気がした。
多分今回限りの復活だと思います。
筆が進めばもう1話くらい更新できるかも...?